”プロジェクトセカイ カラフルステージ”の、ワンダーランド×ショウタイム・ユニットストーリーをようやく最後まで読む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
大変面白く、制作を担当したクラフトエッグの集団的作家性、世界認識が強く滲んだ物語であった。
コンテンツの再起を賭けて撃つ弾として、”今”やる意味のある話だと思う。
総体を語るには未だ読んでいない物語が多いが(レオニ19、ニーゴ18,モモジャン・ビビバス13)、ユニットの話に入る前に、まず全体的に感じたことを。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
このアプリはVOCALOIDという文化、クラフトエッグという制作集団、二つの文脈に乗っかった物語であると思った。
オタクが消費する流行りとして、ホットなテックニュースとして飛び出した”ミク(に、ここでは集約させてもらう)”は、一時の熱病を文化へと整理し、すっかり馴染んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
元ボカロPがポピュラー音楽の最前線にいるのは、当たり前の光景だ。流行からインフラへ、的確に移行した結果であろう。
そんな空気が僕だけの錯覚ではないことは、リリース前のインタビュー(https://t.co/s4JMyeqgpo)からも感じ取れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
ミクは、まだまだ生きてる。僕らがそうであったように、とてもつらいこと、言葉にならない詩に寄り添ってくれる。
そんな強みを、どう活かせば良いのか。
そんなオーダーに向き合ったのが、”バンドリ! ガールズバンドパーティ”で良質な青春、人々の息吹を活写してきたクラフトエッグである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
彼らは様々な道具立てで、ティーンエイジャーが抱える重荷にメスを入れ、それに寄り添うデジタルな神様として、”ミク”を新生させた。
プロセカの主役はVOCALOIDではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
彼らは悩める青年たちに、デジタルでオカルティックな”セカイ”から手を差し伸べ、時に人間的なよろめきを見せながらも、非常に的確に、誠実に青春を支えてくれる。
そんな特別でありふれた体験が、”Untitled”という曲から始まるのが、僕は好きだ。
5ユニットがそれぞれであった、名前のない曲。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
それが青春の激浪を経て、ユニスト第19話で名前がつくことが、この物語の基本構造である。
みな共通して悩みつつ、しかしその名前も、音色も、歌う者たちも別々な”Untitled”。
それはつまり、名前のつかない青春そのものであろう。
20話のユニットストーリーは、多彩な音楽ジャンル、キャラクター、苦悩と問題を描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
それが物語開始時よりも良い形に収まり、形のない青春に目鼻を付ける(それはつまり、自分を見つけセカイに飛び込む武器を掴んだ、ということだ)時、ミクたちは歌を与えてくれる。
VOCALOID達があくまで、音楽ツールであることをリスペクトしているから、ユニットは様々な形で音楽に親しみ、自分たちの青春を曲に焼き付ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
私達は、ここまで来た。来ることが出来た。
その証明として、世に歌を問う道具として、”ミク”はいつでも強い。
そしてミクは様々に変容し、あらゆる人、あらゆる苦しみに寄り添ってくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
クール&スパイシーなお姉さんだったり、無垢な子供であったり、その表れは様々であるが、みな”ミク”である。
その多様性は、そのまま作品が見据えているセカイの広さに通じる。
ロック、ストリート、アイドル、アングラ、ショービズ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
ユニットに集う連中の個性も、彼らが描く音楽も皆バラバラだが、そこには緩やかな連帯と共鳴がある。
みな、青春に思い悩み、”ミク”の助けがあればこそ見落としていた初期衝動を思い出し、よろめく自分を歌で支えることが出来る。
そんなバラバラの豊かさはユニット内部で完結するのではなく、それを飛び出した現実で混ざり合い、より良くなっていける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
このことを、イベント”走れ! 体育祭!”でのまふゆとえむの接触は、的確に示してくれている。まふゆの仮面の奥にあるものを、ニーゴ以外の存在も触れ、変えていけるのだ。
それは”セカイ”という、個人の心象を反映しつつも他者に開かれた空間で、ユニットの仲間が出会い、現実の煩雑さから対比できればこそ、広がっていく横幅でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
セカイは個人の認識で出来ているが、そこには同じ熱、同じ痛みを抱えた仲間が、”Untitled”を鍵に入ることが出来る。
広大なセカイを作るほどの個人の思いは、けして孤独ではなく、想いを同じくする仲間と共有できるものなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
この個別性と共通性の同居、青春のアジールとしての異界、秘密基地的なワクワク感は、非常に優れた現代のファンタジーであると思った。
”セカイ”は現在の妖精郷であり、そこに住まうVOCALOID達は人生の正解をよく知る、『僕らがこうであってほしいと願う大人』である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
欲に汚れず、弱いものに寄り添い、答えを押し付けるのではなく見つける手助けをしてくれる。
優しく、頼れて、見守りつつ自立を促してくれる。
そういう存在が、生え揃わない羽根で青春の嵐と立ち向かわなければいけない青年たちには絶対必要で、この作品の”ミク”達は必ず、『いい大人』をやってくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
ボカロサイドのストーリーがあることで、それが自動的な反応ではなく、彼らも悩みつつ差し出してくれる価値なのだとも、しっかり判る。
ガルパの多幸感溢れる世界から開放されたクラフトエッグは、この物語に濃厚な軋轢と陰りを持ち込んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
人は自分のことを判ってくれず、すれ違いは心を傷つけ、無理解は解体されないまま人を離していく。
時には、消えたいと願うほど苦しいことだって沢山ある。
そんな苦界としての現実を色濃く描けばこそ、そこからの避難所たるセカイ、その主にして隣人である”ミク”達は、青年(と、かつて青年であった全ての人間)に憧れとなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
そこでは率直、真実、対話、理解の美質が、現実のノイズを遠くに聞きつつ、濁ることなく発現される。
僕は『善良でいたい』という希求は、存外人間にとって強いものなのではないか、と常々思っているけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
セカイと触れ合い、セカイを通じて他者と向き合うことで、友情は回復され、約束は果たされ、出会いは絆へと変わる。セカイもワタシもワタシたちも、どんどん良くなっていける。
そして歌を通じ、音楽ユニットとしての活動を通じて、”セカイ”という仮想で育まれたものはただの夢では終わらず、現実へと溢れ出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
言いたいことを焼き付けた歌は人に届き、普遍で不変なはずの無理解を切り崩していける。
薄暗い断絶の中、確かにあるポジティブな変化と連帯。
それはガルパの通奏低音であり、制作集団クラフトエッグの根っこにある現実認識だと思うが、影が濃くなった分より強く、輪郭が浮き彫りになった感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
人生は苦しい。
だからこそ、他人と共有できるセカイ、底に流れる顔のない歌と触れ合うことが、希望足り得る。
5つのユニット、彼らを見守る最新鋭の神様の物語は、そんな生き方の示唆を靭やかに提示していると、僕には思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
『こうすることが、人の善い生き方なのだ』
そう吠えることに衒いも照れもないことが、僕はクラフトエッグのとても偉い部分だと思う。その青臭い題目が、届くよう物語を研ぐ技量も。
ガールでもバンドでもパーティーでもない、異性と触れ合い、ロック以外の音楽にも挑み、薄暗い気配も濃厚にまとうこの物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
”ミク”を悩める衆生全ての支えとして描きなおした事含め、クラフトエッグの新境地と言えよう。新会社も作ったしな。
特に異質で魅力的なのはニーゴで、”消えたい”というフィルターをかけて描かれる希死念慮、優等生を演じる中獲得した虚無、才能の暴力性、嫉妬と憎悪、性別違和などなど、『ガルパじゃ出来ねーわな…』というネタが目白押しである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
通信制や定時制など”、普通”じゃない形態で学校と繋がるのもナウい
死にたい(つまり、死にたくない)という願いもまた、”ミク”はすくい上げてきた。それを歌にし世に問うことで、消えたい(つまり、消えたくない)という祈りはセカイに広がり、別の形へと変化できた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
そういう、闇にすら寄り添う”ミク”の強さを、プロセカ野独自性として、ユニットの魅力として描く。
そういう事が出来ているのは、やはり人間存在がどんなあり方をして、何に苦しみ、何を救いと受け取るか、しっかり考えた分解能の高さだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
キャラクター全て分かりやすい記号を背負いつつ、そこで終わらない人間性を持っている。神たるVOCALOIDも例外ではない。
それぞれにそれぞれの歴史があり、人格があり、苦しみがある。だから仲間との繋がり方も、”Untitled”な思いにどんなタイトルを付けるかも、バラバラになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
それが分断の寂しさではなく、個性が響き合う豊かさに見えるよう、人生の真を穿つと感じられるよう、筆を研ぎ澄ます。
ニーゴを描く時、誰もいないセカイに漂う希死念慮を絶対に”死にたい”とは言わないのが、優しいなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
それはこの作品が、実際に死にたくて暗い部屋で携帯電話をポチポチ叩いている少年少女を、モニタ越しに生の岸へと引っ張り出す野心を持って作られているからだと思う。
死にたいと思う気持ちが、その実自分のありのままが発露できない苦しみから、いっそ消えたいという苦鳴なのだと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
その生きた苦しさにも出口があるのだと、伝えて届けたいという、産業装置にあるまじき大望があるからこそ、死をフィルターする。そこにある、生を見る。
ニーゴほど暗くなくとも、そんな配慮と分解能は各ユニットの描写随所にあふれていて、非常に力強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
『人はかくあるべし』と語る時、必ず生まれてしまう傲慢さを少しでも崩すように、ユニットの多さ、人数の多彩さを活かして、色んな正解を用意する。
ここも、形式を乗りこなしていて良い。
青春のイラガっぽい部分、自分を見る下向きの視線を真ん中に据えつつも、その重力に抗い、ニヒリズムを跳ね除けて答えを探す。応えを吠える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月19日
そんな熱量が、ポップでキュートな物語の随所で燃えている所が、僕がプロセカで一番好きな所だ。