安達としまむら を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
春、桜の季節。
流れていく時間は環境を変え、繋がりを捻じ曲げる。
不器用に離れていった安達を、視界のどこかで探しながらしまむらは、新しい友達モドキと付き合い、”たるちゃん”との関係を再構築していく。
それが普通で当たり前。
そう諦めて、渇いていたはずなのに。
そんな感じのあだしま二年目! 新環境に亀裂ピキピキ編である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
ここまで過剰な自我を暴走させていた”子供”は安達であったが、大人に見えたしまむらは環境の変化、安達との断絶に心を揺らされ、かなり長尺のモノローグで己を語る。
安達と上手く繋がれない日々は、ひどく歪で息苦しい。
それが日常だったから、しまむらは心のなかに広漠たる渇きを飼い、安達と出逢って潤ったわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
その繋がりはひどく脆くて、移ろいやすいものだと思い知らされるのが、この春の物語である。
”たるちゃん”はその代用品にはならない。向き合ってると満たされるどころか、疲れるのだ。
顔の見えねぇ友達モドキは論外で、しまむらは慣れ親しんだ荒廃に飲み込まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
そんな当たり前の日々が、残酷で冷淡な自分を、それにぴっちりハマる特別な存在を縁取っていく。
渇いていくしまむらの視界に、安達は見えない。解らないままモヤモヤする役が、気づけば交代している。
それは胸に溢れる思いをどう扱ったものか、散々間違え暴れ倒したしまむらと同じくらい、デカくて熱いものがしまむらにも宿った、ということだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
四月の変化に揺らされ、上手く繋がれないまま迷ってようやく、二人の感情総量は釣り合いだす。
割れ鍋に綴じ蓋、似合いのバランスで落ち着く…のか。
それは次回、語られなかった安達の不在、その内心を覗き込んだ後に見えてくるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
”安達じゃない女”として、過去から飛び出し過去を求め、見事に空回りした樽見のリベンジにも期待したいところだが…あのヒキはほぼ100%、”勝てない”よなぁ…。
そんなワケで、お話は運命のクラス分けから開始。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
一年前はすれ違っていた視線は、もはやあまりに強く結びついて離れない。
その名前を見つけた時、子供のようにはしゃぐ安達を、しまむらもしっかり見守っている。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/Ow9OrYD5eJ
ここでは微笑ましく見守られている幼さは、後の樽見とのデートでは”疲れる”ものとして受け取られている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
無邪気、強すぎる希求。こっちの事情はあんまり見ずに、不器用に叩きつけられる好意。
安達と樽見が差し出すものは表面上似通っていて、受け止められ方が百八十度違っている。
それを分けるポイントは唯一つ、『安達か、安達じゃないか』であり、島村抱月という女はその乗り越えられない壁に対し、ひどく冷淡で残酷である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
ここまで奇妙に、噛み合ってんだか合ってないんだか解んないまま、積み上げてきた特別な時間、特別な存在。
それが差し出すなら、幼さにも微笑める。
その特別さはしかし、簡単なことで亀裂が入り、日常に流されて離れていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
ヴァレンタインにハグしたから、クリスマスに手を繋いだから。
そんな記号論的エピソードで永遠が約束されるほど、人間関係は甘くねぇ…。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/KahOMv061N
中身のない虚しさに息苦しさを覚えつつも、孤独の寂しさ、浮き上がる恐怖を避けるしまむらは、当たり前に新しい”友達モドキ”との関係を熱無く構築する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
そんな処世術は、特別に選ばれたい少女を傷つけ、安達は自分以外の誰かと一緒にいるしまむらから逃げ出す。
これが日野と永藤だったら、なんとなく許容できていたのだろうけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
三人組の友達モドキには、二人が持ってる奇妙なトンチキさがない。安達の大きな歪みが、確かに噛み合う手がかりがない。
何も疑問の思わずに、同じタピオカを飲む無貌。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/04WyrnZfK1
しまむらは(これまでそうしていたように)表情を固めてそれを飲み込み、安達は(これまでそうしていたように)そこから逃げ出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
当たり障りなく、面白くもなんともない”当たり前”が、のっぺりと流れていく時間。そこに窒息させられかけてる自分を、しまむらは自覚しながら止めない。
特別であることは傷を生み、当たり前を疑わない愚鈍は息継ぎを助ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
自分の外側にある社会で、どう呼吸して良いものか悩む不器用は、別に一年楽しい日々を過ごしたからって簡単には消えない。
同化と離反。
その反応は真逆でも、少女たちはずっと”普通”に殺されかけている。
別に友達モドキが、特別悪人という話ではない。普通にいい人で、普通に面白くなくて、普通に普通な人たち、というだけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
でもそのありきたりは毒ガスのように、安達を教室から遠ざけ、緑の聖域で自分を守らせてきた。
しまむらは兵器な顔を作って、窒息に耐え続けている。
一人特別な色彩の景色に身を置いて、己と世界を鑑みる思弁性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
普通の人があまり沈まない…ということにして、貌のない日常を当たり障りなく飲み込んでいる違和感が、しまむらの孤独を包んでいく。
少女はまた、息苦しい水底に沈んでいく。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/ZiSBBzUmKZ
友達モドキにそうしているように、多少ギクシャクしても形を繕って、当たり障りのない繋がりを安達とも作ればいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
世知はそう囁くのだろうけど、しまむらは安達相手にはそうしたくない。だからどう踏み込んで良いのか解らなくなって、安達が過去に戻ってしまうのを止められない。
世間に求められている対応を、小器用にこなして孤独を癒やす。己の中にある違和感を吐き出すことなく、大人で優等生に、適当にやっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
そういう賢い選択肢を、安達相手だけにはしまむらは取りたくない。
広がる断絶の背景には、秘めた繊細さを楽しく共有してくれた人への、特別な意識が匂う。
しまむらは相当歪な自意識を顕に、”当たり前”に棹を差して生きていく道を選べない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
溺れかけの息苦しさを抱えたまま、自分を一時開放してくれた緑色の聖域に踏み込むことができない。
それも心を殺して、大人っぽく器用にやればいいのに。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/bE0EYaXe9n
しかし、できない。しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
自分が小器用に乗りこなし…きれず、同化もできない”当たり前”を、安達相手に適応すること。
それは多分、彼女にとって猛烈なタブーだ。そこだけは、特別に譲れない。
そう思わされるだけの質量が、島村抱月の中にある安達桜には、もうあるのだ。
安達がいるだろう孤独な世界と、同じ色合いの帰り路。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
しまむらは安達からのSOS(あるいは譲歩、架け橋)を期待して携帯電話を取り、”安達じゃない女”に軽く失望する。
欲しいのは、それじゃない。幼くデカい声は、今は耳に痛い。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/YSsCqatbZO
幼稚園時代に戻ろうと、奇妙な力の入り方で”しまちゃん”に向き合う樽見と、そこから溢れる巨大なノイズを遠ざけるしまむら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
二人の時計はズレているし、求めているものも、魂が呼び合う波長も噛み合わない。
まぁ、安達じゃないしね。
しまむら、お前ほんとに残酷な…。
お互いを求める思いがどうにも繋がらない三人を尻目に、日野と永藤はまーっったノータイムで身魂を繋ぎ合わせていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
しまむらとどこか似ていて、でも個別の息苦しさ。日野を縛り付ける巨大すぎる家の重さを、永藤はよく見る。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/f5j5zsVTTv
幼い時間を共有していることは、二人にとって違和感ではなく、親愛を育む揺り籠だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
当たり前に止まって、当たり前に家族の苦しみを間近に見て、当たり前におっぱいを触らせて、当たり前に抱き合う。
こっちの二人には、しまむらを苦しめるお仕着せの”当たり前”は、気配すらない。
普通はしないだろうキス。普通はしないだろう抱擁。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
でもそれが、顔の見えない世界に押し潰される苦しさを唯一、癒やしてくれる特別だから。
日野と永藤は、おそらく”安達としまむら”が辿り着くだろうポイントに、とっくに指をかけている。二人で楽しく、バクバク食い散らかしている。
箸休めというにはあまりに濃厚で、緊密な少女たちのポートレート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
ヘンテコな、でも自分たちだけの特別な繋がり方を、意識すらせずに駆動させられる、幸福な共犯。安達が夢にしか見ない、美しい肌色。
そこに、安達としまむらも辿り着けるのか。樽見は牙を突き立てられるのか。
物語は続く。
というわけで、しばらく”安達じゃない女”をメコメコにする、しまむらの残酷絵巻が続いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
ずっと好きだった幼馴染との関係を取り戻すべく、過剰に入った気合。
それを感じ取りつつも、同調はできない。
だって、安達じゃないし。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/R1Wjfn9S5O
手を繋いでも、微笑みを交わしても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
”百合”なる曖昧模糊としたジャンルコードの中で、親愛の証明として扱われそうな行動をいくら積み重ねても、しまむらと樽見の間にある壁は、簡単には崩れない。
幼さも、大声も、空回りも、心には響かない。
だって、安達じゃないし。
『その人がその人である』という、絶対的な壁。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
それは個人の尊厳を、異質な他者を求める渇望を、特別にはなり得ない誰かを拒絶する残酷を生む。
後にヤシロがかけた言葉に、しまむらは救いを見出すけども。
そのトートロージーは、『安達は安達』で『樽見は安達じゃない』ことを、自動的に連れてくる
それは否定できないシンプルな真実であり、事実だからこそ泣けるほどに残酷で、どっしりしまむらの胸に、彼女を取り巻く世界に根を下ろしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
そんな残酷な自分を、どう扱っていくか。
必死に言葉を探す樽見を、どこか遠くで見ながら考える。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/ADMlFWvLip
樽見は友達モドキの凡庸なる愚鈍が見落とす、しまむらのシリアスな冷たさをしっかり見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
表情が薄く、人間関係も可愛いプレゼントも、『いらない』とほっぽりだしてしまいそうな危うさに気づいている。
多分その冷厳が、自分の中の情熱と噛み合っていない現状も。
だから自分を表す言葉に迷い、それでも伝えたいから必死に探す。テキトーに、みんなに合わせてタピオカを飲むようには、しまちゃんと向き合いたくないのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
そしてその誠実は、島村抱月を貫通し得ない。
しまむらの譲れない特別は、当たり前で済ませたくない相手は、樽見ではないのだ。
勇気を振り絞った友達ルネッサンス宣言も、しまむらはどこか遠くのノイズのように、自分から引き剥がして聞いてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
顔のない影がすぐに覆い隠してしまうほどに、それはごくごくありきたりの、人生につきものの厄介事なのだ。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/TInSjPAkpK
樽見は両手で、しまむらは片手で。繋がり直したように見える過去は、しかし島村抱月の中に消えようのないわだかまりを生む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
いつの間にか、幼さを失っていた自分。
当たり前の息苦しさを、仮面を付けて飲み込んで過ごす成熟。
それを苦しいと感じつつも、孤独を恐れて引き剥がせない。
しまむらの瞳には、樽見の幼い情熱、自分に向く特別な視線ではなく、そんな自己像が反射し続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
ヤシロが差し出した、シンプルな真実。
私は私、安達は安達、樽見は安達じゃない。
それを抱きかかえて、しまむらは複雑な内面を告げないまま、青春を歩いていく。
これまでのパターンを崩し、しまむらがモノローグの主体、見えないものを追う迷子の立場になることで、大人びて見えた彼女の抱える屈折…それを唯一突破しうる安達の特別さは、よく見えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
形にならないモヤモヤを、不格好に抱え込んでいるのは何も、しまむらだけじゃないのだ。
好きだからこそ上手く行かない不器用が、運命で繋がった二人だけでなく、その片割れを求め掴めない(だろう)樽見にも手を伸ばしているのが、ひどく視力が良くて痛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
彼女もまた、繊細な視線で目の前の人間を見る、普通じゃない少女だ。誰かを特別に求め、報われなさに身悶えもする。
だが樽見は樽見で、安達じゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
だからしまむらの特別にはなれないし、彼女が抱え込んだ成熟の檻に穴を開けて、息苦しさを開放させてあげる仕事もできない。
過去に強く向いた一方的な視線は、しまむらには”疲れる”のだ。幼い態度は、変わってしまった自分を思い知らされて重いのだ。
顔のない檻、ずっと閉じ込められてきた場所。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
そこを打ち破る特別は、三度目の正直。しまむらの世界に花を咲かすのは、やっぱり安達桜なのである。
さらば、顔のない友達モドキ。さらば、樽見とのすれ違い。待っていたものが、ようやく来た。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/7AxLa3npXq
とまぁ、無茶苦茶エグい春の物語でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
とにかくしまむらが、自分を慕って空回りする樽見を”安達じゃない女”と見続けていて、その嘘のなさと残酷にボコボコにされた。
小器用に世間を乗りこなせてきた彼女が、唯一不器用になるしかない相手。それは、樽見じゃない。
美辞麗句として世に流通する『貴方だけが特別なの』という言の葉が、どれだけ嘘なく運命を切りつけていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
安達が不在だからこそ、樽見という鏡があるからこそ、良く見えるエピソードだったと思います。
いやー…凄いね。こんだけ嘘なく踏み込んでくるとは、正直思ってなかった。期待はしてたが。
己を見据える孤独の裏で、安達は何を考え、どこを彷徨ったか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月11日
次回はそれが見えてきそうで、”解答編”的な楽しさがちょっとあります。
これまで見えない気持ちを追いかけ、色々もがく青春探偵役は安達だった。春が来て、そこら辺も反転したのだ。
特別な鼓動と残酷を抱え、青春は続く。次回も楽しみ。