憂国のモリアーティを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
時速100キロで疾走する、蒸気機関車という密室。
それを赤く染めた殺人事件を通じ、お互いを探り合うホームズとウィリアム。
犯罪を紐解くものと、犯罪を創るものの終着駅はどこにあるのか。
それはまだ、無明の闇の奥…。
そんな感じのモリアニ第1クール終了ッ! 因縁はどんどん絡まって深く!! な、列車殺人解決編である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
今回はモリアーティの計画犯罪ではなく、偶然居合わせた列車での殺人を通じ、お互いが手の内を探り合う感じのお話。
その分、ウィリアムの頑是ないところがよく出た気もする。
ルイスが隣で一生ピリピリしてるのも面白かったが、ホームズと遊んでるときだけ、ウィリアムは『誰かに求められること』ではなく、『自分がしたいこと』をやってるような感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
彼が憂国犯罪をどう感じてるのか、イマイチ見えきらないんだよな、モリアニの描き方…ここは多分意図的。
同時にこの作品独自のホームズ解釈も更に元気になってて、冷静な推理装置というよりは、理想主義者のがらっぱち、隙だらけの愛すべき隣人の顔色がよく見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
まぁ原典でも、相当なヤバ人間ではあるんだが…犯罪装置たるモリアーティに対置して、ヒューマニストの色が濃い感じ。
列車は停車前に事件を終えるが、この後の探偵と犯罪卿がどこに進んでいくかは、三ヶ月後のお楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
そこにウィリアムとホームズがどんな感情を乗せているか、隣りにいるルイスとワトソンくんの表情はどんなか。
推理合戦に乗せて見せる回でした。
というわけで、血まみれワトソンくんは土手っ腹抜かれた、というわけではなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
鉄道警察との押し問答で、事件解決のチャンスを不意にするよりは、名声と強権をぶん回して事件の懐に入る。
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ホームズとウィリアムが現場に入るまでのやり取りは、”緋色の研究”以来どんだけホームズの名声が上がったか、色々横車を押せるようになったかが見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
手続きをぶっ飛ばして、事件に介入できる高名と権力。でもホームズは、そんなんが欲しかったわけではない。
この後のトリックもそうだけど、血液検査や指紋鑑定がシステム化されておらず、中世と近代の間くらいの司法システムだからこそ、押し込める無理だよなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
ウィリアムのトリックにしたって、誰の血か判る科学捜査があるんなら、成立してないわけで。
天網恢恢疎にして漏らさず…とはいかない、科学的なシステムとしても、平等な司法としても未完成のシステム。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
その端緒を担うのが、名探偵シャーロックゴームズ、とも言えるか。
身分制度的にも、”非・近代”としてヴィクトリア朝を見るのは面白い視点だよなー。
つうわけで、狐と狸が馬鹿し合いつつ、あっという間の真実見抜く緑の部屋。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
常人には見えていないものが見える二人は、お互い世界で唯一、本気で遊べる相手なのだろう。
脳内で組み上げた惨劇を、セピアに描く演出はスタイリッシュで好き。
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見えざるものを見て、追うべき謎を定める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
慧眼合戦はウィリアムのほうが、一枚上手として描かれ続ける。
ホームズがどのくらいのタイミングで自分に追いつき、状況を作るか。ウィリアムは人情派探偵の解析の、一歩先を常に行き続ける。
その上で、その未完成を喜び、一緒に踊るのを楽しんでる感じ。
眼と眼で通じ合う、まるで青春を共にする親友のような二人に、ルイスは嫉妬の炎を燃やす。こえーなお前…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
身内以外は全部捨て駒。炎の契約を顔に刻んで以来、彼は命に軽重をつけることを躊躇わなくなっている。
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それは使用人ごと”モリアーティ”を焼いたウィリアムも同じだと思うが、しかしその視線の中で現状、一番特別なのはホームズに見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
実際のところ、兄弟や同志と名探偵を天秤にかけて、どっちに傾くんだろうな…その重さのズレ、破滅に繋がってそう。
ホームズが現場に鼻を突っ込んでいる間に、ウィリアムは推理を済ませ優雅にティータイム。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
先週のヨークでもそうだけど、全然”安楽椅子探偵”ではないよね、このお話のホームズ。
書斎は動かず犯罪劇を操る、蜘蛛の領分って感じ。
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現実感覚のなさはモリアーティ側の特色として、特に前半強調されて描かれた部分だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
その”遠さ”は、人間存在へのホームズの親しさと対比するためにあるのかなと、現状思う。
現場で失われる、人間の尊厳で自分が汚れない距離を保つ、犯罪顧問役。
彼は犯罪を”創る”事にためらいがない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
まだ司法機関が科学の目を持たず、張り巡らされた蜘蛛糸を見抜けない隙間を縫って、そこかしこに自分に都合のいいサインを残す。
それが、ツメの甘い名探偵の事件解決を助ける。糸繰り役の特権だ。
人を殺して謎に溺れればよかったと、ワトソンくんに見限られかけたホームズだが、事件解決のために証拠を捏造する発想は、彼の頭の中にはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
やっぱり名探偵は、モリアーティが越えた一線で踏みとどまり、だからこそ後塵を拝しもする。
悪徳を躊躇わないからこその優越と、それ故の低劣。
ウィリアムのホームズびいきは、目的のためには手段を選ばない己達が、人のあり方として決定的に劣っている事実を、一味で唯一見てればこそ…なのかなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
やっぱ『ウィリアムの微笑みの奥にあるものが、最大のミステリである』という構成で、この話は二期に続いていくのね。読めないからこそ、面白い
さてウィリアムの期待通り、的を絞ったホームズは最後のツメを誤る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
血に濡れた掌が悪事の証拠と、指を突きつけてみても悪漢は言い逃れる。
いつ出来た傷か、誰の血か。読み解く瞳がまだ、成熟していない時代。
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犯罪者は犯罪を知る。偽りの血で罪を隠すなら、同じく偽りの血で証拠を作ろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
ウィリアムが仕掛けたブラフの真相を、ホームズは読み解いてる気配がある。こいつは”やる”男だという確信が、このとき探偵の中に生まれたのではないか。
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その上でホームズは、都合よく証言を引っ張り出した血痕の真相を暴かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
そんな事をしたら、楽しい遊び相手がいなくなってしまうからか。
推理ゲーム…犯罪ゲームで一枚上をいかれてる現実を、素直に飲み込んだからか。
真相は青と赤の入り交じる美しい夕焼けに、煙と流れていく。綺麗だ…。
ホームズは犯罪を創らないが、ウィリアムの手妻を見逃した。彼のツルリとした貌の奥にあるどす黒いものを、見据えて微笑んだ。食事の約束までする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
正義にも名声にも興味はないが、謎のために人倫を踏みつけにも出来ない。
全てを見据えるほど透通もせず、薄汚れた世間に馴染めるほど鈍感でもない。
この作品のホームズは、ひどく人間臭い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
その表情に、ウィリアムが何を見ているのか。車窓を鏡と反射する表情が、なかなかに意味深である。
あとルイスがこえーよ。”ジーザス・クライスト・スーパースター”のユダみてーなやつだよ絶対…。
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ウィリアムは自分に追いつききれないホームズの未完成をこそ、愛し身近においていたいのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
とすれば、彼はなぜ憂国の装置として犯罪に手を染め、悪に身を沈めるのだろうか。
話が折り返すこのタイミングで、ちらりと見えた堕天使の人間味。それが、完全犯罪に孔を開けるのか。
それは三ヶ月後のお楽しみとして、ホームズのツンデレ仲直りが炸裂し、ワトソンくんとヨリが戻る。殺人事件を肴に、イチャイチャイチャイチャしてんじゃないよ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
まぁホームズとワトソンは、他人の死を薪に燃えるもんだとは思う。
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名コンビの復縁は微笑ましく描かれ、しかしそれを緑の疑念が覆う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
遠巻きに探偵たちを監視するのは、一体誰か。
英国に陰りを伸ばす、重大な事件とは。
安元さんのマイクロフトも顔を出し、気になるところで二期に続く…と。
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という感じの、一期最終話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
序盤感じていた主役の”遠さ”が、ホームズ登場で(自分の中で)ピチリとハマった感じがして、続きが凄く気になりますね。
ルイスの狂熱との温度差も丁寧に積まれたし、いや絶対ろくでもないことになるでしょ…ならないわけがないけど。クソ犯罪者だし。
兄弟一味の運命を年経、犯罪劇場計画すら奇妙な冷たさで見通してるウィリアムが、未熟さすらも愛着する現場派名探偵。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
謎と犯罪に惹かれつつも、どうしても一線を越えられない彼をなぜ、犯罪卿は見つめているのか。
対立してなお、”犯罪”を捨てられないのか。
ウィリアムのクールな表情が、疑問を弾く
女王陛下も顔を見せて、遂にタイトルに相応しい”国”が舞台に上がってきた感じもします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月22日
黄金の堕天使を追って、物語は続く。…だが、今じゃない。
なかなか憎いお預けを、思いを馳せ推理を巡らせる時間をくれたのだと、思うことにします。
いやー…何をどこまで描くつもりなんだろうね。
四月が楽しみ