ましろのおと を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
梅子に押し付けられた学園生活に、いまいち馴染めない雪。
三同好会唯一の部員、朱利の思い出の曲に縁を感じつつ、バチを取れずにいた。
三味線を握った静かなる修羅、神木清流の前で思い知らされる、己の中の白い虚無。
俺は、なんのために弾くべきなのか。
そんな感じの、三味線青春学園ストーリーの第三話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
あからさまにラスボスオーラをムンムン出している神木清流が登場し、雪くんがどういう弾き手なのか、浮き彫りになる話だった。
ユナさんへの情、母への反発、兄との思い出。
今まで弾いてきた曲には、全て彼の情が乗っていた。
しかしただ試したり、理由もなく奏でる時彼は真っ白になってしまう。なんの艶もなく、空疎に響き渡るだけの音は聞く側にも、弾く側にも何も生み出さない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
バチを取るのに、燃え上がるストーリーがないと弾けない子なのだ。
これまでは、偉大な祖父が彼の物語になってくれた。
しかし彼はもういない。どれだけ真似しても真似しきれない、憧れても追いつけない壁は、もういないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
とすれば、彼は弾く意味を自分の外側に、そこに呼応する自分自身に見つけていかなければいけない。
誰かと関わり、何かを思う自分と向き合わなければいけない。
それが、三味線でコミュニケーションできる…それがないとコミュニケーションできない少年を主役にした、この物語の大きな軸なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
なぜ弾くか、なにを弾くのか。
納得し、手応えを掴まなければ雪の音に色は付かない。
そういう主役を置くことで、情念の楽器として三味線が立ち上がってくる。
あらゆる事にスジを求め、納得しなければ不器用に正面衝突してしまう雪の純情は、これからも彼の人生を難しくしていくと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
だが譲れないからこその真摯な思いが、バチに宿ったときは何かが変わる。
そういう熱は、ここまでの二話で既に描けている。
となれば、あまりに真摯に”おばあちゃんの曲”の意味を考え、その重さを知ればこそ『弾けない』と考えていた彼が、朱利ちゃんに真っ直ぐ向き合って『弾かせて欲しい』と願ったことは、なにか大きいものを動かす決意になると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
純白の雪のように、汚れることが出来ない純粋さ。
誤解と衝突のタネである雪の個性が、今後物語をどう動かしていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
それが大変気になる、良い第三話であった。
ツカミの段階を終えてラスボスが顔を出し、グッと話が大きくうねってきた手応えがあったな。
こういう話数は大好きだ。主役と作品を好きになれた。
雪くんの学園生活も本格始動してきたが、彼の一本気は今風の生活に馴染まない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
今を適当に乗りこなす結ちゃんの部員勧誘に『興味持ってから誘え』と、余りにスパルタな答えを返す真っ直ぐさは、そらー波風たくさん生むだろう。
しかしそれは、怠け心や他人を侮る思いから出てくるものではない。
彼は凄く三味線が好きで、その難しさも面白さもよく知っていて、だからこそ忽せには出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
この生真面目さは他人と向き合うときにも言えて、朱利ちゃんがどれほど真摯に”春暁”に向き合っているのか、そのストーリーをしっかり見ている。重さを、自分の手のひらで図っている。
だから安請け合いはしない。相手も本気なのか、おずおずと探りながら間合いを図る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
そのシャイでシリアスな生真面目さが、非常に好感である。
今回は後に同好会の仲間となる(だろう)メンバーの紹介も兼ねている。
朱利ちゃんの純朴な一途さは、常時好感度が高い。可愛いねぇ…。
そんな彼女の間近にいる結ちゃんが、調子のいい現代っ子と思わせて、雪の演奏に何がこもっているかを感じられる”耳”を持っている描写が、とても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
流されるようにたどり着いた、神木清流の演奏。
雪はそこに、吸い込まれるような虚空を感じ取る。怖さがある。
ここまで作品を満たしてきた曲はグッと拳を握らされ、体温が上る感じの調子であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
神木清流がその実力を雪に、そして僕らに思い知らせるオリジナル曲は、あくまで嫋々と静かに鳴り、穏やかながら底しれぬ奥行きを演出してきた。
それは、雪の情念の三味線にはない魅力だ。
彼は”澤村”の名前を試すように雪に弾かせ、理由のない演奏に雪は戸惑う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
それは彼も初めて出会う自分の中の虚空であり、試されて初めて、彼は物語のない演奏が出来ない自分を知る。
たとえエゴから生まれたものでも、こういう”試し”が出来る存在は、人生において希少だ。
三味線に本気で取り組めばこそ、その資質を試したい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
神木清流がその流麗の奥に隠した、燃え盛る修羅の思い。それに、雪は演奏で答えきれない。
それしか言葉を持てない彼にとって、自分の実力と思いを載せきれない事は、とても辛いことだろう。
その空疎な演奏(これが”ましろのおと”の一つなのだと思う)に、結ちゃんが噛み付く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
自分が心動かされたあの響きが、今回はない。手ぇ抜きやがってと、理解ってしまう。だから噛み付く。
そのぶつかり方に、青春の勢いがあって凄く良い。ただの親友Aではねぇってことか…。
結ちゃんの思いを受けて、雪も自分の中にあるもの、そして”無い”と確認してしまったものを、ゴツゴツと言葉にしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
三味線界の若き王に、何を差し出すのか。なぜ、今弾くのか。
それが掴めないと、あんなに腑抜けた演奏をしてしまう。理由がないと、ストーリーを感じないと、俺は弾けない。
”おばあちゃんの曲”を雪がどう受け取っていたのか、階段の向こうで朱利ちゃんが聴いているのが良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
聞かれていると知らず、自分がどれだけその思いを重く受けとめ、三味線に本気なのか語る雪が良い。
融通の利かない武骨者と、雪を侮っていた結ちゃんが揺るがされていくのが良い。
底しれぬ奥行きを共鳴板に、凄みのある演奏を成し遂げる神木清流に対し、雪は自分の中に他人をしっかり置いて、そこに思いを反響させないと弾けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
祖父を失った虚無、それをどうして良いかわからない無骨は、実は誰かを凄く強く思える人格あってこそ、生まれる広がりだ。
ここに、何を差し出せば良いのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
泣き方も解らぬ雪の代わりに、空が驟雨に泣いている。ここの雨の降らし方は階段奥の熱いやり取りと合わせて、大変良い演出だった。
祖父が人生をかけて完成させた”春暁”が、答えなのは解っている。だがその重さを知ればこそ、今の俺では弾けない。
そんな自縄自縛から抜け出そうと、雨に駆け出した雪を桜ちゃんが受け止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
ここで自分より小さな少女に、凄くシリアスな問いかけを思わず預けてしまう雪の無防備と、理由も知らずそこに”答え”を返す桜ちゃんも、また良い。
朱利ちゃんブッチギリかと思ってたが…”ある”のか!?
至らないと解っていても、差し出す必要を感じたなら、未熟でも進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
小さな少女の大きな勇気に、雪は自分が挑むべき物語を掴む。
”おばあちゃんの曲”を、自分だけの”春暁”をヒキ理由を見つけて、音のならない虚空を満たす筋道をつけるのだ。
この迷妄と発見のカタルシスが、凄く良い。
拙い仕草で三味線を繰る朱利ちゃんに、雪がそっと、無骨に歩み寄る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
正しい弾き方を教え、彼女が真摯に三味線に向き合う同志だと認めていく。
ここからの歩み寄り方も、情が深くてとてもいい。
雪にとって弾くことが重いからこそ、生半には触れ合いたくなかった。
本気で挑むのだと判るまで、距離を取っていたかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
しかしそんな風に関わりを絶っていては、自分の音は色のないままだ。また、ストーリーのない虚空が溢れてくる。
だから、朱利が大事にしてる”おばあちゃんの曲”を弾かせて欲しい。
自分の未熟さも、二人の思い出も、バチに込めて。
そういう風に手を伸ばせるようになったのは、あまりに真剣であまりに未熟な少年にとって、凄く大きな一歩だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
朱利ちゃんはその重さを知るからこそ、雪の提案に涙を流しもする。
弾くこと、生きることに真剣な人が、自分にとっての宝物に手を添えて、隣りに座ってくれた。
それが彼女が追い求めてきた、ずっと未完成だった”ましろのおと”に、熱と色を込めていく予感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
最後にそれを画面に焼き付けて、第三話は終わる。
大変良かった。ユナさんの時もそうだったが、人間の情が通い合う瞬間の画角が、たいへん鋭く優しい。この作品のいいところである。
とにかく雪と神木清龍、朱利ちゃんと結ちゃんが三味線に絡んで回る主軸が太かったが、雪をライバル視する女の子とか、朱利ちゃんに甘酸っぱい思いを抱く海人くんとか、今後話が面白くなりそうな要素も、丁寧に積まれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
雪-朱利ラインが現状強すぎるが、海人くん割り込めるんかな…?
何かとトラブルを生みがちな雪の資質が、三味線への愛、他者への真摯さから生まれているとよく解ったのが、彼を好きになる大きな助けで、大変ありがたかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
人と繋がる手段が三味線しか無いのに、人と繋がるしか音に色を乗せる手段がない。
誰かと向き合い、その思いを載せて弾き、その音で繋がる。
それしか出来ない主役で、それをやっていく物語なのだと、凄くよく伝わってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
そしてそんな音へと進んでいく歩みは確かに、雪とその周囲に実りを生み出しのだと、判る終盤のふれあいも良い。
メッチャ三味線修羅顔してた神木清流も、そのうちましろのおとが胸に届くのか。
ヤツの”凄み”の出し方も良かったな。ただ闇が深いだけでなく、三味線に本気だからこその試しが確かに、雪の真実をエグッている塩梅が。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
ヤツとの再対峙は先の話として、今は同好会が軌道に乗る物語と、”おばあちゃんの曲”を弾く話が今後転がる感じかな?
祖父を失った虚無に流され、たどり着いた東京で初めて、雪が誰かに差し出した掌。そこに宿る熱を思えば、奇跡が起きないわけないんだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月17日
次回奏でられるだろう純白の音符(ノート)が、大変楽しみです。
良い盛り上げで引いたなぁ…カタルシスの作り方、タイミング巧いね。いいアニメだ。