ましろのおと を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
澤村雪は悩んでいた。
朱利の求める”おばあちゃんの曲”…祖父の編み出した”春暁”を、いかに弾くべきか。
眉間に集まる皺を解し、捨てて生み出す自分だけの音にたどり着く。
縁にすがり、膝を正して向き合った果てに、結ばれていく過去と未来。
今純白の世界に、色が付く。
そんな感じの、今回もいい最終回、噛みごたえたっぷりの人情三昧三味線青春賦である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
やっぱ話の骨になる部分が非常に強くて、雪が朱利の祈りに、己と祖父と音楽の関係に真摯に向き合う中で、他人と出会い繋がっていく物語が、ただただ面白い。
自分の中の虚無を思い知らされ、それでも弾きたい、弾くべきだと思えた出会いの不思議。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
悩みつつ向き合う中で、雪は祖父の後を追う歩みからいつしか外れ、自分だけの音を探し求めていく。
それは彼を故郷から追い出した、祖父の呪いを解く道のりだ。
長い時間を経て、お互いバラバラなはずの雪と祖父、朱利とおばあちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
受け継がれ変化した”春暁”の音色はその断絶を繋ぎ、辛いばかりの疎開の思い出、死にゆく女最後の夢に色を添えていく。
長い冬を越えてたどり着いたこの春は、けして悪いものではない。
雪解けの涙のように流れる涙は、死にゆく老人に安らぎを与えるだけでなく、未来に漕ぎ出していく少年の道標ともなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
終わること、始まることが”春暁”で繋がり、祖父の音を捨てることで祖父に出会い直す雪の歩みが、新たなステージへと進んでいく。
そんな話でした。大変良かった。
まず冒頭、若菜ちゃんとお話するシーンからして良いのよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
『食いながらでいいか?』と言いつつ、愛弟からの真剣な相談に思わず箸を止め、前のめりにアドバイスするお兄ちゃんが、大変チャーミングで良い。
若菜ちゃん可愛いよな~~~~、声もほそやんだし。
雪の悩みは祖父への敬愛、三味線への真摯さから生まれるもので、これは若菜にも共通のもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
同じ師、同じ祖父、同じ家を背負う同志であり、”兄”でもある若菜の言葉は、迷える雪に染み込んでいく。
己の音で、思い出を塗り替えろ。
なかなか難しい課題だが、立派な指針である。
ここから雪の苦吟が始まるわけだが、おにぎり作ってくれた桜ちゃんを筆頭に、カセット再生させてくれた海人くんとか、眉間のシワを取ってくれた雷さんとか、色んな子との縁が増えていく描写が、なんだか良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
桜ちゃんのおにぎりが、過去の蒸かし芋に通じてるところ好きだなぁ…情の糧よね。
結ちゃんもそうなんだけど、三味線同好会メンバーはみんな耳が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
ダランと聞いてた演奏の奥にどんな情景があって、どんだけ真剣に弾いているのか共鳴できる感性がある。
今後みんなの部活が本格始動してくんだと思うが、バチ握る資格が既にあると見せられてるのは非常に良い。
底しれぬ人間力を感じさせる雷さんも、今後色々絡んでくるんだろうけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
無縁になろうと東京に出てきて、初手からド濃厚な人間劇場をユナさんと演じて以来、雪には否応なく他人が絡んでくる。
それはストーリーなしで演奏できない雪の、音の畑である。
三味線の修羅・神木清流がしっかり見抜いているように、雪は他人に育ててもらう弾き手である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
つまり他者との触れ合いが大事なのだが、生来の不器用、軋轢も多いだろう。
そんな彼が世界と他人に繋がる道具も、また三味線である。弾けば心が動き、縁が繋がっていく。
自分で弾き、他人に聞かせる理由がしっかり主人公にあるところが、話の骨がどっしり安定する大きな理由かなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
作品が選び取ったテーマを駆動させ続けなければいけない切実さが、しっかり話の真ん中にある。
物語の基本であるが、やっぱちゃんとやると強いな…。
そんな彼を中心に、人間模様もなんか複雑な感じで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
『桜→雪←→朱利←海人←結』ってことなんだろうか、結ちゃんのキレ方を見てると。
爽やか青春物語の内側、結構ドロリとしてんな…。
海人くんの家庭環境とか、色んな場所にさり気なく地雷が埋まっててんだよな…次回以降、連鎖爆発してく感じか。
色んな人に触れ合いつつ、雪は難曲”春暁”に向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
天下の名人の華やかな手数を、削って捨てて真芯にたどり着く。
自分なりのアレンジを加えていく中で、雪は自分自身と向き合っていく。ここの描写が、やはり良い。
思い出を抱えるのではなく、塗り替えて進む。
彼が祖父の曲と向き合う歩みが、そうして仕上がった”雪の春暁”を通じておばあちゃんの中に蘇る景色と、凄く豊かに重なっていくのよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
年月に擦り切れ色がなくなっていた景色に、静かに熱い血を滾らせる若人の音が色を付けていく。
死んだはずの祖父の音を、捨てることで取り戻していく。
それは三味線が立派だとか、どのくらいの手数で弾くかといった曲の表面を超えて、音に宿る優しい魂に宿っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
吹きすさぶ風雪を奏でる曲は、やがて来る春の暁にたどり着く。
それは孤独に飛ぶ鶴が、仲間を連れて安住の地にたどり着く物語だ。
松五郎が差し出した音と、『生きねば!』という言葉。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
おばあちゃんが差し出した、配給の蒸かし芋。
あまりに辛い時代、幼い二人は一瞬だけ触れ合い、その思い出を互いに携え長い道を歩んだ。
それがけして、辛いだけの雪道ではなかったと、思い出させてくれる春の音。
雪がたどり着いた演奏は、人生の終わりに近づいたおばあちゃんに再び、生きる意味を与えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
その行いにこそ、名人・松吾郎の音を形を変えて継承した証明が、確かに宿っている。
そしてそれは、一方通行ではない。
おばあちゃんの思い出に、それを蘇らせようとする朱利の想いに。
応える自分でありたいと、音を通じて誰かと繋がろうとした雪にも、受け取るものはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
確かに、神木清流は名人である。ガッカリ演奏の奥にある雪の本質を、しっかりと見抜いていたわけだ。
聴くものに育ててもらう弾き手。良い出会いからしか、良い演奏が生まれない少年。
雪の資質は、”おばあちゃんの曲”に向き合うここまでの物語でしっかりと浮き彫りにされていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
弾いてくれてありがとう、弾かせてくれてありがとう。
そう言い合えるような関係を作んないと、雪は上手くなんないんだな。難儀な子だ…。
しかし、雪はそれを掴み取った。
雪の張り詰めた演奏から、雪景の寂しさを感じ取って涙を滲ませる朱利の感受性と、そこを歩んできた思い出に思わず微笑むおばあちゃんの対比も良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
人生の旅路を終えんとする老人と、今まさに漕ぎ出さんとする青年達。
見えるものは、当然違う。
だがそこに通じ合うものがあり、蘇るものがある。未来の予感は過去にしかなく、死せるものを取り戻すには捨てるしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
そんな豊かな不可思議が、弦に弾んで歌に踊る。
三味線は情を乗せ、想いに震える楽器なのだという主張が、再生する”春暁”から伝わる。
雪はおばあちゃんの思い出を真摯に蘇らせるべく向き合った曲によって、祖父との再会を果たしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
祖父のコピーから離れて自分になっていくことで、寂しく真っ白な情景に色が付き、そこにけして削れない音が…松吾郎から継承した魂があることが判る。
そういう演奏になっていて、大変良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
『こんなデカい情動描いちゃって、次どうすんだろ…』と思ってたら、梅子がなんかデケェ大会起動させてた。
やっぱ行動理念と行動力がメチャクチャで、金と実力もってる血縁者は便利だなぁ!!
つーかあんだけ親子関係こじらせつつ、巨額つぎ込んだだろう大会を”松吾郎杯”にするあたり、梅子も相当めんどくせぇな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
ここを目標に同好会が機動し、青春のネトネトがバチに絡んで色々あるのが、今後の軸…ってところかな。
ド素人共の三味線奮戦記と合わせて、次回も楽しみです!
追記 歌は世につれ、世は人につれ。情念の楽器としての三味線を、かなり大事に古臭く仕上げてるところが、この話の好きなところだ。
ましろ追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
やっぱ雪が”春暁”に挑むにあたって”削る”の凄く好きで、それは何も持たねぇ若造な自分と真摯に向き合ってる決断だからなのよね。
泰然と全てを受け入れてるように思えた祖父にも、生きるために弾いている時代が、一本の芋に涙を流す青春があった。
そういう時代を経て弾いて弾いて、人生と音を太らせて三十年、ようやく”春暁”が成る。それがあっての、指が十本あるような手数の演奏である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
雪にはそういうテクニックも、人生経験もない。雪は朱利やおばあちゃんだけでなく、自分自身のストーリーにも真摯に向き合い、それに相応しい演奏に近づく。
なんにもねぇんだから、なんにもねぇように弾く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
それは率直で、かなり勇気のいる決断だと思う。
祖父を失った彼にとって、その音を捨てるというのは分離への不安を掻き立てるだろうし。
しかしそうでなければ弾けないと、雪はしっかり考えて自分なりのアレンジを加えていく。
そんな”捨てる”決断は、勇気がいるし真摯でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月24日
曲と向き合い自分なりに編して行く中で、主役のニンがしっかり見えるんだよな。
このメインテーマとキャラ描写の重ね方が、作品の骨をまた太くし、安定させている感じもする。
音を描くほど、人が見える。
これ出来れば、面白い話に絶対なるよね。