シャドーハウスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
庭園迷宮を彷徨いながら、己の半身を探る”お披露目”は続く。
謎と困難を前に、生き人形とシャドーは心を通わせ、力を合わせていく。
相手を押しのけることが勝利条件と、厳しく定められたサバイバルの中でも、花は麗しくオレンジは甘い。
友情も、おそらくは。
そんな感じの楽しいお披露目第三回! 一歩間違えば奈落に真っ逆さま!! な、シャドーハウス第7話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
高みから子供たちの奮戦をエンタメ消費する、ハイクラス・シャドー達のろくでもなさに頭が痛くなりつつ、迷宮の少年少女は健気で必死であった。
見廻組+ジョン様の良い子チームは当然として、高慢に思えたパトリックも涙にくれる脆さ、自分の半身を信じる強さを見せて、『な、なかなか可愛いボーイじゃねぇの…』と思わせてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
彼を救うべく邁進するリッキーも、利己的に見えてルウの血は見過ごせないし、鋏も盗めない。
未だ総体を見せざるシャドーハウスの掟が、どれだけ苛烈で抑圧的かは測りかねるが、この”お披露目”でその成員資格を図られる子供たちは、等身大に善良であり純粋である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
これは人間の顔をしている生き人形だけでなく、黒く塗りつぶされた異形のシャドーも同じであろう。
しかし迷宮を出て、”お披露目”を蕩尽する立場になると他人の不幸を喜んだり、情け無用のサバイバルレースを企てたりと、人格が荒廃しているように見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
館内部で肯定されている価値観は、物語の外側から見る僕らからすれば…そしてそれに投げ込まれんとする子供たちからすれば、異様で危険に見える
謎解きと協力のワクワク感はありつつ、この”お披露目”は総体としては邪悪であり、それはこれを企画したエドワードの邪悪さというよりも、彼(ら)を取り込み支配する館全体…その中心にある”お祖父様”の邪悪さな気はする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
まぁ、お祖父様が一人格として実際存在しているかは、謎だし要点でもないが
仮にお祖父様が実在しない中心であったとしても、抑圧と我欲を是とするハウスの価値観システムは駆動してしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
今まさに子供たちが庭園で発揮している、誰かを思い助ける善良さは、”お披露目”に合格すれば塗りつぶされ、消えてしまうとしか、”大人”を見ていると思えない。
ならば様々に微笑ましい子供たちの美質、彼ら”らしさ”を抑圧せずに活かし続けるためには、彼らを試し…多分殺すシステムに反抗し、ぶっ壊す必要も将来的にはあるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
多分ここの先頭に立つのが、誇り高き異物たるケイトなんだと思う。啓蒙の話だからね、そらー革命は必然よ。
それは先の話として、彼女の半身たるエミリコが色んな事を学び、同志と心を通わせていく革命の準備運動としても、この”お披露目”はあるんだろうなー、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
みーんな、かわいいエミリコたんにズブズブになっとるからね…パト様の即落ち加減とか最高よ。
狭く暗い孤独に閉じ込められたパトリックは、自分の弱さを唯一わかってくれているリッキーを求めて泣く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
リッキーもまた、社会的立場としては優位にあるはずの”彼の影”が、一人では立ち向かえない弱さがあると心配する。
ここには狭くも強く、また平等で真実な絆があると判る。仲いいよね君等…。
しかしリッキーはまだ、主のもとにたどり着けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
本来無関係なはずのエミリコが先にやってきて、言葉と花を届け、暗闇に光をもたらす。
たった一人は心細くて、並だが流れるのは当然。
エミリコは、人間心理への鋭い洞察と深い共感を迷わず差し出す。
(画像は"シャドーハウス"第7話より引用) pic.twitter.com/ynJMMh2EuA
あらゆる局面で『考えるな、共感するな』と言い続けるシャドーハウスにおいて、エミリコの溢れる人間性(この表象が、役に立たず、美しく、儚く脆い”花”であるが)は危険思想であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
しかし彼女に触れたもの…少なくとも掟を内面化していない子供たちは皆、その輝きに惹かれる。
それは顔のあるものもないものも、皆瑞々しい人間性を最初は有していて、それを摩耗させるように館のシステムが(思想的にも、おそらくは物理的にも)組まれているからだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
影を跳ね除ける光を求めていると、気づかれてしまえば殺される。なかなかシビアな場所だ。
エミリコに花を預けられ、壁越しに手を握られることでパトリックは強さを取り戻し、己の半身であるリッキーの救済を待つことを選ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
おそらく、シャドーと生き人形の相補敵関係性は、ただ収奪するだけではない喜ばしい可能性に対しても開かれている。
特別な誰かにこそ、たった一つ運命を預ける。
そういう強さがあることを、エミリコはパトリックに教えられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
この学びは、エミリコが優しく泣いてる子供に寄り添ったからこそ、手渡されたものである。
少なくとも子供たちの領域においては、善因は善果に繋がっているようだし、そんなポジティブなルールを彼も求めてもいる。
パトリックはエミリコと触れ合うことで、孤独を癒やす相手が特別なリッキーだけでないことを、多分学んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
これは館の外では信頼や、ともすれば愛といわれる公平な感覚であり、阪神とべったり張り付くだけでなく、離れればこそ手に入る大事な宝である。
エミリコもおぞキアナにべったり目をつけているだけでは見えないものを、”お披露目”のルールを無視してパトリックを気にかけたことで引き寄せた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
大事な誰かと、そうではない誰か。
それを分ける線は確かにあるが、しかし特別ではないからこそ見えるもの、掴めるものもまたある。
自己の延長線上にいる半身と、そこから離れた他者をバランスよく、共感の範疇に置くこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
エミリコとパトリックの接触は、そういう価値観を強く肯定しているように思う。
ともすれば特別な二人の閉じた関係に終わってしまいそうな話で、この風通しの良さは心地よい。
つーか強制的に子供帰りさせてくる暗黒の子宮に、あーんな輝きと温もりを強制注入させられちまったら、もうパト様は”ズブ”でしょ、エミリコたんに。理解る…理解るよ~。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
出会う人間全員狂わせる超人間力ガールとして、エミリコの魅力が濃く描けてるの、とても良いよなぁ…”納得”がある。
エミリコがパトリックに花を差し出せたのも、重てぇ荷物を持ち運べる荷車を、あの時選べばこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
そこには一見役に立たないものがいっぱい入っていて、オレンジを差し出して一緒に食べたり、地図から情報をあぶり出したり出来る。
(画像は"シャドーハウス"第7話より引用) pic.twitter.com/9IAGeE8RCf
何が役に立つかなんて誰にも解らないのだから、断定せず全てをみんなで持ち運ぼう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
ラムのランタンと、ショーンのルーペを組み合わせて、一人では解らなかった秘密を捕まえよう。
エミリコは自由奔放に走り回りつつ、そんな風に色んなものを、色んな人を結びつけていく。
他人を押しのける孤独な利己を館は肯定するが、エミリコ(に共鳴する、未だ選抜されざる子供たち)はそれをおかしいと感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
この瑞々しい感性は、ケイトがその芽を潰さず肯定し、文字を教えパンを与えて育んだ結果として、今ここで息をしている。
自分と似た誰かだけを、価値と認める狭い了見。
それをこの物語の主役たちは拒絶しているし、その価値観は暖かなぬくもりを持って、連帯を生み出しつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
未来に何があるかは解らないから、何を捨てるかは決めないでおこう。
エミリコの荷車は、余裕ある多様性を乗せてもいるのだろう。館が一番排除したいヒューマニティだな、コレ。
エミリコは間をつなぐ存在として常に描かれていて、ルウは自分の言葉をエミリコに預けることで、ショーンやジョンとコミュニケーションしていく(可愛い)。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
エミリコを挟むことで、超常的な記憶力という強みを、ショーンのために活かせる。
(画像は"シャドーハウス"第7話より引用) pic.twitter.com/SFkBFADKR8
既に開放されたジョン様は生き人形にも偏見なく、闊達に振る舞う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
ケイト-エミリコの関係・人格・資質が、性別込みで反転しているのがジョン-ショーン組だと思うけど、人たるエミリコと影たるジョンが、直感・直情・自由つう性質で、鏡に相対してる形かな。
ルウはかつて、役立たずのクズと罵られるのが辛くて、一人で泣いていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
そこに寄り添ってくれたエミリコを信じ、地図を差し出し力を示すことで、ショーンが彼女を見る目も変わる。
『お前は凄いやつだ』と、求めていた承認を力強くもぎ取ることも出来る。
こういう喜ばしい呼応が、子供たちを正しい道に導いていくと思うのだが、やはり一番欲しいのは運命の半身からの言葉である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
黙して語らないシャーリーを思うと、ラムの視線はどうしても迷う。自分だけの”御影様”からしか、得れないものは確かに在る。
それを掴み取るためにも、片手を開けて誰かの手を掴むことは大事なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
それぞれの個性、それぞれの資質。
自由気ままに高い所に登り、何かを見ることが未来の指針になるかもしれない。
ここら辺の行動が、エミリコとジョン様で共通なのは、面白い書き方だ。共鳴は、人と影の壁を超えるわけね。
今回は子供たちが持つ靭やかな人間性が、色んな場所、形で結びついていくエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
色んな荷物をみんなで持って、手を携えて進んでいく。
子供たちだけを見ていれば、それはとても喜ばしく、正しく見える。
このまま、誰も欠けることなく迷路を抜けて欲しいと。
しかし館の価値観は、生まれつつある温もりと絆を肯定はしないだろう。ここはシャドーハウス、煤にまみれた影の国である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
上位階層が脱落者を望んでる描写もあるし、誰かが蹴落とされてひどい目に合いそうでもあって、どんどん子供らが好きになってる身としては大変に恐い。
しかし物語の筆致は、エミリコが媒介し広げる光が間違っていないことを、強く伝えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
答えはいつでも、その輝きの中にあるのだ。
そして、彼らを取り巻くシステムはそれを否定してくる。
試練は続く。多分、”お披露目”が終わった後も。
次回が楽しみですね。
追記 情緒面でも物語構造としても、相当に上手く組み上げられた話と思えるので、ある程度以上安心して先を読み、作者サイドの指し手を読める(読みたくなる)ってのはあるね。
ここで安心させてる理由、チラ見せされてる不穏さの意図……そういうものを勝手に探るのはもはや僕の癖であるが、色々考えても無駄に終わらないだろう信頼感みたいなものを、僕はすでにこの作品にある程度置いている。多分、錯覚ではない。
しかし”お披露目”運営してる連中の煤能力は”コマを動かす””煤鳥で情報をやり取りする”と、結構なバリエーションがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
『服を汚すな』というのはつまり、『煤能力を勝手に使うな、子供でいろ』という縛りなんだと思うが、一人前のシャドーとは煤が使える存在と=なのか。
煤を用いた異能は館のシステムに反抗するための武器にもなりうるから、制御不能な子供の領域にとどまっている間は、発現されては困る…のかな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
しかしそんな館の思惑は、ジョン様の自由を求める魂でぶっ飛ばされてしまった。無邪気ゆえの爆発力は、やっぱエミリコに似ている。
とすれば、生人形にとってもシャドーにとっても、システムの監視と抑圧をどう超えて、自分の願いと力を守り発揮してくかってのが、大事になるんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
ケイトは慎重に、それを表に出すタイミングを図っている。それは卑屈な隠蔽ではなく、必勝の機会を狙う戦士の目線だ。
やっぱ”お披露目”の苦労と、それが醸し出す達成感自体がある種のフェイクで、本当の抑圧と闘いはそれを越えた先にあるんだろうなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
物語の設計として、この一大イベントを越えた先にスゲーぶん殴りがあって、『え、終わりじゃなかったの?』というサプライズを仕組んでる感じあるんだよなぁ…。
サスペンスの作り方、使い方が上手いお話なので、その心地よい裏切りがさらに、作品世界に前のめりにさせてくだろうしね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
”お披露目”に漂う冒険小説的なやりがいで、『ここも結構良いところじゃん』と錯覚させたところで、クソ抑圧で殴ってくる…かな?
ここまで予測して、その贄がラムたんになった時の俺の落胆とキレっぷりは尋常じゃなくなりそうなのも見えてきました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
暗く冷たい館の中で、己の誇りを抱きしめてくれる誰かを求め震えてる少女を踏みつけにするのは、マジ許せねぇからよ…キレちまうからよ(言語化して、情緒暴走対策をしておくマン)
あと、上の階層のシャドー達に軒並み、生き人形が付き従ってないのは気になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
”お披露目”を終えて館の秩序を内面化/館に捕食された時、半身と定められたものはどうなるのか。
その末路には、かなりキナ臭い香りが漂ってる。使い捨てて大人になるっぽいんだよなぁ…。