憂国のモリアーティを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
平等の旗印を掲げ、選挙改革を推し進めるホワイトリー議員。
その志が本物か、”犯罪卿”は白騎士に試しの演台を用意する。
そしてもう一人、影で舌出す蛇がいる。
ロンドンの恐喝王、ミルヴァートンの毒牙が迫りつつあった…。
そんな感じの事件前夜、ロンドンの騎士前編である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
悪しき手段で理想を体現しようとするモリアーティを、光の方向に反転させたようなホワイトリー議員。
悪しき悦楽のために悪を弄ぶ、影の鏡像たるミルヴァートン。
この二人が、表舞台に上がってくるエピソードとなった。
暴力含む実力なしで理想は実現し得ないと、屋敷を使用人ごと燃やして”モリアーティ”を簒奪するところから、この物語は始まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
英国浄化の大望があっても、義賊と言われていても、犯罪卿は陰謀家で殺人者である。
それでも良い、それでしか世界は動かないと開き直って悪事しているわけだが…
少なくともウィリアムは、可能であれば手段を選びたい未練みたいなのがあると、ホワイトリーの無力な善行を見つめる視線からは感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
彼の怜悧な頭脳は、ダイバーシティに配慮した好演を100年早く完成させる清廉が、悪に塗れたこのロンドンでは脆すぎることを知っている。
だから暴力を選び取って、悪による逞しい善行に邁進しているわけだが、可能ならば綺麗な無力を選びたい…そっちのほうが(当然)価値がある、という判断をしている感じがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
そらー、”モリアーティ”が目指すものは善なんだから、実現する手段も善良な方が当然良い。しかし現実は、それを赦さない。
善が善たり得ていないロンドンの歪みに、悪を以て善を為す矛盾で対抗することを選んだモリアーティの末路が、どんなものになるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
クライマックスを前に、善を以て善を為す正道…の無力を描くべく、ホワイトリーが表に出てきた感じはある。
彼は、ウィリアムが選べなかった未来なのだろう。
犯罪による人心操作、内通者による権力掌握。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
公平も平和も一切ない”モリアーティ”の方法論を、果たしてウィリアムが望んで選んだのか。
ホワイトリーのような危うい正道が、確かに世界を変えうるのなら、そちらを選んでいたのではないか。
ホームズ物語のIfを描くこのお話に、隠されたもう一つのIf。
犯罪卿が犯罪卿になるしかなかった厳しさを示すために、ホワイトリーの正しさは今後瓦解していくんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
あの綺麗なアマちゃんが何事かなしうるのなら、わざわざ人殺したりそれを演出して愚民を操ったりする必要は無いんで、まぁ酷いことになるよな…弟くん、的にかけられてるし。
ミルヴァートンはウィリアムのもう一つの影であり、彼が善のための手段として選んだ悪を、喜んで目的化する邪悪な存在である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
清い白騎士が堕ちるのが楽しいから、陰謀の網を編む。他人を脅し、殺し、奪う悪徳自体が目的となり、その先にはなにもない。
原典でお話終わらせるために顔だした、空疎な悪の機械だった”モリアーティ”が、矛盾する善として主役になった隙間を、ちょうど埋めるようなキャラ造形である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
多分ウィリアムが唾棄するだろう、その悪なる虚無主義はしかし、否定し得ない強さで犯罪卿の悪行を反射する。
殺された側、脅された側、奪われた側にとって、モリアーティとミルヴァートンは区別がつかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
手段として選び取った悪が実は善であるなんて、志を同じくする”モリアーティ”以外には判らない。
どっちにしたってクズはクズなのだ。人殺しの時点で。
色んな場所に手先を送り込み、状況をコントロールする手法もよく似ていて、真実に繋がる道を死体で塞ぐやり口を、汚いと批判する口を”モリアーティ”は持たない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
同じ穴の狢、似た者同士のクズ。
違うのは、スタイルと快楽の出処だけ。
そういうシビアな疑問を、ミルヴァートンは投げてくる。
彼が”一味”の形式を模してるのも、ホワイトリーが道を誤る原因になりそうなのが”弟”なのも、”モリアーティ”を反転させた結果だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
家族を的にかけられれば、清廉潔白な天使も地獄に落ちる。煮えたぎる身内主義は、この物語を駆動させる重要な燃料である。
ホワイトリーの浮ついた善に、ミルヴァートンが血みどろの足払いを仕掛けてきそうな状況が、丁寧に整った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
貴族院のスキャンダル・ノートを手渡し、白騎士に自己防衛の剣を授けた”モリアーティ”は、恐喝王の長い腕をどれだけ止めうるのか。
あるいは、穢れた悪に砕かれた正義の残骸を、どう活かすか。
そこら辺が気になる前編であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
『俺はお前と同じだ』と言ってるのは、ミルヴァートンもホワイトリーも同じ。
でも、”モリアーティ”は”モリアーティ”にしかなれない。悪を用いて善を為す道しか、彼らには選べなかった。
その独自性を、どう焼き付けて作品を先に進めるか。そこが気になってます。
何処かが同じで、何処かが違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
共通点と差異点を活かしたシャドウを作中に配置して、このキャラクター、この物語でなければいけない理由を鮮明にしていく手腕は、ストーリー・テリングの基本にして要点だと思っている。
ウィリアムとホームズ、ホームズとワトスンの対照も、その一環だろう。
白い理想に燃えるホワイトリーも、黒い欲望に踊るミルヴァートンも、ウィリアムに似ていて、そして違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
なりたくて、なれなかった自分の影をそこに見たからこそ、ウィリアムはホワイトリーを試し、スキャンダルの爆弾を預けたんだと思う。
理想よ、清く正しく強くあってくれ。
それが無力な祈りであることを、散々殺し脅し奪ってきたウィリアムは知っている。多分ミルヴァートンの謀略が、それを更に思い知らせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
そこで、”犯罪卿”が何を選び、何に抗うかが彼の…彼を主役とするこの物語の顔を、濃く縁取るんじゃないかな、と期待してます。
次回も楽しみ。
あ、ラストに唐突に出てきた頭蓋粉砕マンとそのハンドラーが、あまりにN◎VAの戦闘用ゲスト造形過ぎて爆笑してしまった。(TRPGモノ特有の反応)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月24日
あのざっくりしたキャラ性、普段喰ってるメシの味そのまんまなので、不意打ちすぎてちょいビックリした。敵ゲスト定食のお手本みてーだ…。