オッドタクシーを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
駆け引きと記憶を乗せて、今日も小戸川のタクシーは夜を走る。
夢破れた猿猴の苦い涙と、剥き出しの暴力が詰め込まれた倉庫を横切る。
乗りこなすのは謀略の波、綱渡りこなしながら思い出す三毛猫の記憶。
冷や汗を押し殺して、演じるタフガイの視線の先に、降って湧いた十億。
そんな感じの、本格アーバンサスペンス第8話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
夜の街をバラバラに進行していた物語の車線が、段々と合流しつつ危険な領域まで加速していく感覚が、なかなかに楽しいエピソードだった。
まぁ柿花は心も体もボロッカスにされてて、”楽しい”どころじゃねーがな…。
伏せ札がめくれて、意外な真相に驚きつつも楽しく納得できるのは、そこに隠されたものの輪郭を適切に描けた証拠だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
山本さんとミステリーキッスに香ってたきな臭ささが、彼らを支配するヤノの本格参戦で裏打ちされて、かなりうんざり風味なアイドル残酷稼業が顕になる。
そこに柿花が巻き込まれてるのは気に食わねぇが、細やかなヒントを拾ってアレじゃねぇコレじゃねぇ、色々考えていた時間に答えが出て、パズルのピースがハマっていくのは楽しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
こうなるように、しっかり編み上げてきた物語の真骨頂が、今動き始めている。
一つの真相が見えたら三つの謎を出して、ミステリー・トレインをけして止めないのがこの作品の巧さでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
小戸川が主演を張るハードなクライム・サスペンスに並走する形で、剛力が医者の本分をぶん回し、小戸川の精神を腑分けしていくミステリもまた、動き出した。
それは興味本位ではなくて、奇妙な縁で結ばれた中年男の友情と、不眠と不適合を抱え込んだ患者を救おうとする医者の意地が根っこにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
色々のたくった道を歩いて、小戸川のことが好きになった白川さんのロマンスも、そこにしっかりくっついている。
パッと見た存在を忘れられない、小戸川の異様な世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
それは心に大きな負荷をかけるだろうし、人間社会に一人迷い込んでしまった怪物のような寄る辺なさを、彼に押し付ける。
親に捨てられたストレスと合わせて、皮肉屋の鎧はそういう場所への、防衛反応としても練り上げられたのだろう。
だがその異能こそが、後部座席を流れていく客の違和感を見落とさず、柿花が見せた夢の三毛猫を思い出ささせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
小戸川を追い込むものは、彼を助けるものにもなりうる。
ソリッドな手触りの犯罪描写を、ユーモアと静かな友情が裏打ちするのと同じく、反対に見えるものが繋がっている。
そういう面白さとままならなさを、シニカルで優しい視線で見つめ続け、謎と笑いで引き込む力強さで描き続ける筆は、今いい感じに波に乗っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
でもそれは、その全体像が見える前から丁寧に輪郭をなぞってきた下書きがあって、初めて躍動するものだと思う。
下拵えが丁寧だから、本番が熱いのだ。
ヤノは倉庫に柿花を監禁し、殴りつけて夢をぶっ壊す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
アイドルで稼げねぇなら、美人局で稼げ。銭盗むので飽き足らず、殺して沈めろ。
キレるラップが印象に残るヤノは、常人が足を止めるところを迷わない、プロな悪党である。
関口が柿花の喉を締め上げ、吊り上げる場面の最悪が、それをよく教える。
あそこは作画も演技も気合が乗っていて、惨めな背伸びが全部ぶっ壊れちまった柿花の憐れさとか、アニマル顔じゃもう誤魔化せない暴力の生々しさとか、このお話が持つ冷えた感触が、非常によく出たシーンだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
最悪なものを、ちゃんと最悪と書ける。それは最高ってことだ。
承認欲求をこじらせたボンクラ素人共に比べ、プロの犯罪者は頭がいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
ヤノはドブの打つ手を先読みし、ドライブレコーダーの映像をめぐる差し合いに勝利しようと思考を巡らす。
ドブもまた、自分のアドバンテージを生かしてヤノをハメるべく、手筋を考え抜く。
彼らは嫌いな相手だろうと、どう考えるか共鳴することを怠らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
だがその賢さは、優しさには繋がらない。相手の弱点を嗅ぎつけて食いちぎる、畜生の習性でしかない。
柿花の携帯で、母に電話を入れさせた時の、ヤノの笑顔。全く、笑えねぇ。
そういうムードを作るため、母の声を乗せない演出も良い
対して小戸川とその周辺の人達は、記憶を探り真相を手繰り寄せようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
不躾だけど笑っちまった出会いに、すでに散りばめられていたヒント。
柿花の背中だけで、当人を特定できる異常知覚。
その奥に込められた異質性とストレスを、クリニックを閉じた医者は探偵めいて探る。
小戸川も厄介な道に迷い込みつつも、ろくでもない暴力が飛び火しないよう手を尽くす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
心の底では、ヤバい状況に冷や汗を流しているかもしれないが、それを表には出さない。
目の前の狒々は、弱みを見せれば即座に感づく。噛み付いてくる。
(画像は"オッドタクシー"第8話より引用) pic.twitter.com/17pAXPL0pp
だから汗をかくのは瓶ビールだけであって、小戸川はタフに情報を引き出し、保存し、前回関係を作っておいた大門弟に委ねる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
ここは少しでも良い結末に自分のタクシーを導くべく、タフに立ち回る小戸川の心が見える、最高の演出であった。渋いぜ…。
客の意向、街と人のうねりに流されつつも、ハンドルを手放さないタクシードライバーがこの物語の主役である意味が、小戸川の静かな反抗から徐々に匂い立ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
彼はお人好しでも善人でもないが、他人を食い物にして何も感じない獣でもない。
ハードな状況に追い込まれ、世界を歪ませながら…
それでも自分のハンドルを握って、なんとか生きようとしてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
ドブとの共犯関係だって、白川さんを狂った道から引き剥がそうとした結果、深まってしまったものだ。
何もかもが最悪に流れていく道の中で、タクシードライバーだけが抜け道を探している。
今井くんに警告したのもその一環で、自分自身ケツに火が付いてるのに、バカなスカンクを放ってはおけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
そんな仏心が思わぬヒントを連れてきて、小戸川は柿花が見せた三毛猫を思い出す。
記憶を掘り返し、行ったり来たりする言葉のやり取りは洒脱で、シビアな状況でも一笑貰ってしまった。有り難い
人間を動物として認識してしまう、小戸川の異能。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
平らじゃなかっただろう人生で仇にもなったそれが、親友が今まさにぶっ殺されそうになってる窮地に飛び込む、突破口となるのか。
しかしヤクザの睨み合いに十億を挟んで、簡単に飛び込める道でもない。さて、どうなるか。
ネットの寵児となった樺沢が、ネットサロン囲い込みという定形ムーブに突っ走ってて、またため息一つである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
このアニメ、”現代”で描ける生っぽいヤダ味、動物顔に隠して全部やりきるつもりだな…。
すでに破滅の匂いが漂ってきてるけど、こっちはどう落ち着くんかねぇ。
ホモサピエンスの漫才道もね
今井くんの十億見せびらかしをこう活かしてきたり、ドライブレコーダーの映像を”手に入れるか”ではなく、”手に入れている状態でどう使うか、使わないか”の駆け引きで見せてたり、やっぱサスペンスの捻り方が巧いんだな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
予測できるポイントから、半歩ずらした所でネタを伸ばしてくる。
他人を食い物にする連中の極悪な賢さとか、食い物にされて当然の愚かさとか、コミカルにノリで回しているように見えて、凄くシビアなルールでキャラもドラマも動かしてんのよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
この怜悧が、犯罪と野望と策謀が入り交じるお話の背骨を、ビンと立ててる印象。
そういう地金の鋭さを笑いで覆って、気づけば後戻りできないところまでキャラも視聴者も追い込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
ここまで来てしまったら、行き着くところまで見守るしか無い。
そういうハラハラとワクワクが元気なのは、やっぱいいアニメ、いいサスペンスだと思います。
取り敢えず目下の難題は、柿花の命なんですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月25日
暴力描写が容赦ないので、『死ぬかも』感が半端なくて一切油断できないの、良い運びだなぁ、と思います。
そしてヤノから溢れる暴力の濁流に、山本さんもしほちゃんも抗えず、流されるまま、と。ここら辺、小戸川と対置だなぁ…。
次回も楽しみです。