NOMAD メガロボクス2を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
絶対王者 VS 不屈の英雄。
リュウとマックの試合は、血の惨劇に終わった。
新たなチャンピオン誕生のドラマに、湧き上がる群衆達の裏で、その仕掛け人がほくそ笑む。
奇跡のマックタイムに埋められた爆弾が、まずはユーリの夢を砕く。
悲劇は、始まったばかりだ。
そんな感じのやっぱりこうなったよー! 晴れやかなる大惨事、NOMAD第8話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
ある程度予測はしていたが、信じたくはなかった佐久間の悪辣、マックの悲惨。
英雄伝説に熱狂できれば、株価が上がるなら、赤く染まるマットも、ぶっ壊された人間もお構いなしの熱狂。
『やっぱメガロボクスは、メガロボクスなんだなぁ…』と思わされる、嵐の前の大惨事でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
前回一話でリュウとマックへ共感を高めておいたから、やっぱ諦めきれないジョーの悔しさ、くすぶった夢を燃やした勇利の無念、佐久間の外道がよく刺さる。
佐久間さん…アンタを、無邪気に信じていたかった…
というわけで決戦のゴングが鳴るわけだが、脳チップで奇跡を演出する佐久間の外面から、漏れる人品の悪さが見える回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
口じゃ真っ当なことを嘯きながら、ポップコーン片手にボクサーの人生を消費し、貪るその口が薄汚い。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第8話より引用) pic.twitter.com/QQ3N8LBxRk
ガラス越しの安全圏ではしゃぎ、Tシャツは足蹴にして恥じない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
妻からの必死の訴えも真っすぐには受けず、窓の向こうのバビロンを見つめている。
今回の佐久間の書き方は、何もかもが軽く、汚く、遠い。間近に手を伸ばし、一線を越えないよう止める身体性がない。
それはマックタイムを待ち望むファン達も同じで、奇跡の逆転機械に巻き込まれ、血まみれに壊されていく相手の顔は見ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
七年の時が流れても、他人の人生を消費する残酷ショーとしての側面が、まだメガロボクスにはある。
…この生臭い残酷を取り込むために、”ボクシング”じゃないのかもな、この話。
大事な話と口では言いつつ、本音は『何分ロスした?』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
佐久間のスタンスは今回の描写で、よく見えたと思う。
拳と拳で通じ合うこの物語、ガラスで自分を守って汚れないヤツは、あんま良い奴じゃあない。
例えば樹生みたいに、高い場所に座ってなお、相手の顔を見るやつだっている。
ノマド時代のジョーも、ある意味贋作の死、己の過ちから幻影で距離を取っていたわけだが、カーサでの体験がその壁を壊し、亡霊すらいない現実に手を伸ばし、光を掴んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
死や悲惨や哀しみの泥に塗れた”今”を、剥き出しの拳で掴み取る当事者性。
そこに溺れる仲間に、手を差し出す強さ。
そういうものが肯定されている物語だと思うから、佐久間の遠さはやはり、悪いものとして目に刺さる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
確たる事はまだ言えないが、まぁ、ロクでもねぇよ。
…哀しいことばっかりの話だから、ロクでもあってほしかったね、俺は。
そんな気持ちだから、衆生もマックタイムを待ち望むんだろうけど。
リュウは相手に打たせる横綱相撲で勝利を掴みかけ、怪物めいた再動に押し流されて、全てを断ち切られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
こんだけ殴れば倒れるだろう。痛みを身体が覚えれば、このパンチは入るだろう。
リュウが身につけた拳闘の方程式から、マックははみ出ている。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第8話より引用) pic.twitter.com/6djXt0Y3UN
ドラマと考えれば劇的なマックタイムには、なにか真っ当な殴り合いを越えた違和感がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
勇利もジョーも、殴り合ってるリュウこそがそれに表情を歪め、スローモーションの致命打に夢を砕かれていく。
気道確保から頚椎カラー、あからさまに超ヤバい処置でリングの外に運ばれていく敗者に、向ける視線
それは壊れたのが自分でなくてよかった、という安堵なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
勇利も口にしていたリングの宿命を、真摯に見据える目線なのか。
一度ぶち壊れ、機械の力で立ち上がった男の世界に、ハチドリが幻視される。
戦う前の祈りと合わせて、ジョー(と僕ら)はそこに、チーフの姿を重ねてしまう。
家族を守る。栄光を掴む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
そのために知らず一線を越えさせられ、他人…と自分を壊す機械にさせられている。
魔法のカラクリがそういうものだとしたら、その勝利は称賛されるべきものじゃない。
だが経済とメディアの眩い光は、悲惨な現状を覆い隠すのに十分だ。
皆、金ピカの夢を見ている。
越えてはならない一線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
サンタはカメラを携えて”それ”を超えるのを、ボンジリに止められる。
勇利はタオルを投げ、死闘を止めるタイミングを見誤った自分を、砕かれた夢の痛みを震えながら握りしめる。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第8話より引用) pic.twitter.com/v7zv69aglO
重役会議で展開される、利益の折れ線グラフ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
それより重たいものが、今目の前に在るんじゃないかと樹生は告げる。
嫌というほど殴りつけられ、己の敗北を噛み締めたからこそ、何処に線があるのかよく判っている男の言葉。
それが、ゆき子にガラスの向こう側を見させる。
ボンジリが隣にいなければ、サンタはリュウの手術をカメラに捕らえ、メディアに売っぱらっただろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
そうして手にする銭は魂を汚し、歪めていく。
生きていくためにしょうがねぇ、大事なものが別にある。
そう口にして、リングに逃げ、贋作を殺したジョーと同じ道に進んでいただろう。
止めてくれる誰かがいる。手を握ってくれる誰かがいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
そのちっぽけな手触りが夢を見させ、夢が後悔を強くこすり付ける。
愛弟子に預けた、燃え尽きたはずの夢。
それがたどり着いた血みどろに、ユーリは涙も流せず震えている。
俺が、コイツをここに連れてきてしまった。
その思いは亡霊を伴に荒野を彷徨っていたノマドと同じで、ジョーはそこを超えて、今ここにいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
まだ、タオル投げるにゃ早えだろ。
リュウの不屈を信じるジョーの言葉は、奇跡を信じて何もかも壊してしまった過去と、形の上では同じだ。
諦められない。
それがジョーの美徳であり、弱さなのだろう。
だがICUで必死に生きようと藻掻いている(だからこそ、商売のタネにしてはいけない)リュウは、確かに生きることを投げちゃあいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
ファイターは死んでも戦おうとするから、それが危うく尊い思いだから、セコンドがタオルを投げるタイミングはあまりに難しい。
進むのか、止まるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
経営責任者として、メガロボクス技術を医療に結びつけたい理想の持ち主として、ゆき子も道を悩んでいる。
樹生は経済から離れ、科学者として、グローブを使わないファイターとして、己の疑念と正義を”マックタイム”の熱狂に叩き付ける覚悟を、すでに決めている。
遺言めいた忠告といい、お兄様の死亡フラグがすんごいことになっててブルブル震えておるけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
地下メガロボクスとは、全く違う規模の狂乱。
夢を渇望し、伝説を求める連中のポケットから、チャリンチャリンと堕ちる銭を拾い集める道は血まみれだ。
リュウを壊し、自分を壊し続けているマックの、餓鬼めいた有様。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
それをゆき子は知らないが、兄の忠言を間近に受けて、ガラスの向こうの虚像ではなく、背後にある実像を見つめる決意を固める。
その勇気ある撤退は、踊る佐久間には遠い。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第8話より引用) pic.twitter.com/06uFH1plnn
華麗には程遠い愚者のステップは、色んなものを踏みつけにしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
その不格好なビートは、しかし佐久間だけの欲望ではない。
輝かしい街を照らす、ギラついた欲望。
英雄を求める、熱狂の声。
動き出したら止まらない、経済という拳闘士。
その全てが、佐久間を踊らせている。
動き出したものを止めるのは難しいが、ときにはぶっ壊れてでも止まることでしか、正しい形に癒やされる事はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
バイクを盗まれたことで、暴走する運命を変えたジョーを思うと、佐久間がまたがる欲望という列車、英雄という夢も、止まるべきなのだろう。
すでにその車輪が、リュウを踏み潰した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
脳チップを埋め込まれ、不随の身体が玉座に座る夢を見てるマックも、また踏み潰されるだろう。
判っていても、止まらない。
夢破れ、身体も動かぬ敗残者に戻れと、誰がマックに告げるのか。
佐久間じゃねぇ。あんなダンサー野郎に、言わせちゃいけねぇ。
嵐のように制御できないものが、再び近づいている。あの時押し流されたものを、ジョーはちっぽけなトンカチ握って、大事に釘付け出来るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
不屈という美徳の裏にある、残酷と悲哀を知ってなお、まだ諦めないというのか。
壊れると知って拳を握るか、一戦を前にタオルを投げるか。判断は難しい。
『立て、立つんだジョー!』という、コスられすぎてビカビカになってた言葉をメガロボクスは一回しか告げていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
それだけ、不屈を希うのは重たいのだと、自分に任じている物語だからだ。
佐久間は気楽に、ポップコーン喰らいながら『立つんだマック!』と言いやがった。
ジョーはもう、亡霊がここにいないことを知っている。虚無の手触りを、その奥にある光を知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
それでもなお、拳を交え素裸で理解りあった友に、タオルを投げるのは早いと告げた。
それが残酷であることも、危ういことも知っている。
でも、命を諦めるには早え。
ジョーはそう言い続けるし、そういう風にしか生きられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
贋作とのラストマッチでは、哀しい別離に終わったその闘志が、リュウが戻ってきた時その魂を収める”家(カーサ)”になるといいなと、僕は思っている。
拳を握り続けることも、タオルが入るのも、どっちもボクシングだ。
パンチドランカー症状を、脳チップによるサイバーアップで変奏したマックに、タオルを投げてやるのは誰なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
踊る佐久間の虚栄を、経済と熱狂のジャガーノートから引っ剥がして、ブレーキをかけるのは誰なのか。
物語は後半戦へと進んでいく。シンプルな成り上がり物語は、もう終わってる。
そこに広がるのは不屈の持つ残酷、瓦解とかすかな再生、過ってなお取り戻せる希望だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
真っ白に燃え尽きてなお、終われなかった者たち…過去を噛み締めて変わっていくしか無い人間たちの物語だ。
ハッピーエンドのその先に、現実が待ってる。
金に狂い、業に噛みつかれ、難問が山積みの”今”だ。
ジョーは間違えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月26日
リュウに夢を託した勇利も、その決断が間違いだったか、必死に揺らぐ命の灯を抱きしめながら悩んでいる。
間違えてなお、その先に進めるのなら、それは間違いじゃないのか。
全てが瓦解する一線はどこにあり、どう見定めるべきか。
嵐が近い。次回も楽しみです。