NOMAD メガロボクス2 第11話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
倒れたジョーを、番外地の仲間たちは優しく包み込む。
自分の過去、とある男の話、守りたいもの。
ジョーの率直な言葉が、壊れた縁を静かに繋げる。
一方機械の悪夢に苦しむマックは、嘘と愛の出口なき迷宮に囚われていた。
ハチドリ達は、何処へ行くのか。
そんな感じの和解後の朝、メガロボクス第11話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
長く苦しかった贖罪の季節が終わりかけ、番外地は絆を取り戻す。
死せる者たちも花に呼ばれて戻り、ジョーは全てを率直に、力強く家族に預ける。
許すとか、許さないとかを超越した場所へ、俺達は漕ぎ出していく。
ようやく全てのものがあるべき場所へ戻りそうな安心と、危険なリングへの畏れ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
その片岸に立つマックも、英雄を生み出した嘘、愛ゆえに苦しむ家族の涙に揺れる。
主役サイドが落ち着いてきたから、ライバル側で揺らしてきやがったな…巧いバランス取りだ。
絶対どっちも勝って欲しくなるので、これ以上マックを好きになりたくないのだが、たっぷりと時間を使って父として夫としての苦悩、奇跡の代償に苦しむ姿を描かれ、好きにならざるを得ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
地に置かれた人は皆苦しみ、それを神の試練だと受け入れることで救われる。越えられない壁はないのだと。
不屈の象徴として、人民皆が見上げるヒーローは嘘の象徴だった。永遠の信頼に思えたものは、ただの我欲だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
それもまた、神が人を試す”丁度いい”試練なのか。ジョーの遍歴はようやく我が家に戻りつつあるが、マックの旅路はまだまだかかりそうだ。
NOMADであるジョーが得られなかった、夫婦と親子の縁。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
血縁なき番外地が真実の輝きを取り戻したように、マック一家(あるいはチーフと息子)を繋げるものも、偽りのない光に満ちている。
だが…だからこそ、その足元には長い影が伸びる。それもひっくるめて、マックは抱きしめられるか。
チーフが、リュウがそうであったように、二期初登場のボクサー達がどんどん陰影と人間味を深めていって、それが激突するリングへの期待、拳が開け放つ未来への祈りが、更に強くなっていく。ありがたいことだ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
敵なんて何処にもいなくて、敬意と愛と夢を込めて…だからこそ殴り合う場所。
リングは、残酷な代償と確かな導きを同時に与えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
チーフの回想は、検査を受けるジョーが見ている夢なのだろうか?
先に死の国へ旅立った彼は影の中に立ち、未だ生きるジョーは光の中にいる。
そこは思い出であり、涅槃に近い場所だ。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第11話より引用) pic.twitter.com/INBU4A4XIG
モノクロで幾度も回想されてきた、南部贋作の死の床。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
ジョーの病床がそこに重なるように描かれているのは、おそらく意図的だろう。
かつて敗残に終わり、沢山の人に深い傷を残した”それ”が、もう一度繰り返されるのか。
はたまた、死や弱さの中に確かにあったものを見つけ治し、今度は勝つのか。
ジョーは様々な出会いや発見を、それを与えてくれた人達を見えないセコンドにして、運命のリングへと挑んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
そこでは、取り戻したものが確かに見守ってくれる。ベッドサイド、親身に前のめり体重を預ける番外地の子供たちが、その事実を教える。
ようやく…皆仲良くなれて…凄く良かった…。
今回のエピソードは番外地の緊密さと、ロスコ陣営の遠さを対比させていく構造だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
ゆき子の意向を受けてマックの家族に、真実の一端を手渡す朝本さんの手は優しい。
泥団子も素手で掴み、あまつさえ食べようとすらする。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第11話より引用) pic.twitter.com/DySWXMVct3
それはなんの実りにもならない戯れだが、だからこそ相手に生身で寄り添う体温がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
拳で分かり合う”ボクシング”を主題にした物語で、その親しさは重要である。
佐久間は、絶対に泥団子を素手で掴まない。
サプライズを演出し、ゆき子との円満な関係を踊りながら、冷たい牽制を小さく投げ合う。
BESが生み出す輝かしい未来。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
それが生み出す名声や富を、佐久間が求めているのは間違いない。
同時にゆき子と同じ理想も確かにあって、しかしそこに人間の手触りはない。
理想のための実験台にされるマック、個人の血しぶきを至近距離で浴び、それを掌で止めようとする熱がない。
あの躁病的な戯けた態度が、本心なのか演技なのか、読みきれないところに佐久間の怖さ、悍ましさ…そして人間味がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
彼自身も、自分がどんな存在なのか把握しきらず、都合のいい綺麗な夢でセルフイメージを覆いきってしまう危うさがある気がする。
…社会的成功者に、結構ある気質だな。
血みどろで夢を追い、間違っていると知りつつ止まれなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
機械じかけの夢に邁進する佐久間は、やはりジョーたちの歪みし陰画なのだろう。
ノマドもバイクを盗まれなければ、彼と似た暴走を繰り返し、その車輪で自分含めた色んな人を踏みつけていただろう。
夢という名前の怪物、理想という名のジャガーノート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
サクセスストーリーだった一期では描ききれなかった、眩い光の中にある危うさを、やっぱり二期は掘り下げたいのかなー、と思う。
栄光も喝采も、必ず代償を伴う。正しく使うためには、善き知恵と魂、偽りなき連帯が必要なのだ。
佐久間が立ち止まれない宿り木に、番外地の皆はたどり着いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
迷い、傷つけあい、それでももう一度同じ場所に座る。花と暖かな糧が満ち、皆が笑顔でいられる家へ戻ってこれた。
そこには、確かな体温を宿す”手”が満ちている。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第11話より引用) pic.twitter.com/jJ40oXgC3H
過ちに満ちた過去に、震えつつ向き合い率直に告げる時、自分の拳を包む掌。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
かつてのライバルが、愛弟子の言葉に背中を押され差し伸べてくれる手。
”ギアレス”の勇名をあえて降ろし、託されたハチドリの鎧を愛おしく撫でる指。
全てに、魂の血潮がしっかりと宿っている。
マック周辺が悲しい嘘で満ちているのに対し、地獄のギスギス本音ぶつけ合い祭りを経た新生番外地は、全てを率直に伝える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
薬に逃げた弱さも、闘いを望み拒む思いも、殴り合いで手に入れたものも、何も覆われてはいない。
死すらもベールを剥がれ、その奥にある確かな生の息吹を、花に乗せて蘇らす。
ボンジリ謹製の美味しいご飯が、食卓を豊かに満たす情景に、やっぱり泣いてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
ジョーにすがっていたガキが英雄に見捨てられて、それでも一人で生きていくべく自分で、周りの人に支えられて身につけた技術があればこそ、この食卓があるんだよなぁ…。
前回見ているものの魂を揺さぶった、抱擁のクロスカウンター。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
そこにたどり着くためには、情け容赦なく殴り倒し、嘘偽りなく想いを拳に乗せるしかなかった。
”ボクシング”が成し遂げうるものを、なかなか素直に家族の食卓に身を寄せれないサチオの独白は、鮮明にしてくれる。
許せなくても、それで良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
そこから全力で、俺の今を生き続ける決意を、サチオは最後のリングで掴み取った。”ボクシング”は、そういうモノを生み出しうるのだ。
それはジョーが、マックとの闘いに挑まなければいけない理由である。多分、マックも同じだ。
かつては眼前に迫った死からの逃避だった闘争が、今は明日にたどり着くための挑戦になっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
同じエキシビジョンの枠に、過去のリュウ戦と現在のマック戦を入れていることが、深く傷付きつつも力強く生き直す人々を照らす。
それは、もうランキングには関係ない闘いだ。
勝って勝って希望を掴んできたからこそ、勝ちさえすれば、闘い続ければ答えが見つかると、思い込んでしまった日々。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
しかし立ち止まり、負けを受け入れてなお立ち上がることこそ、南部贋作の死に向き合い、それを越えていくためには必要だった。
今ここに集うものは、みなそれを知っている。
ここにたどり着くための長い時間は、”信頼”という壊れやすく治りにくい宝石を、もう一度輝かせる難しさを教えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
ジョーは子供を見捨てて逃げた。闘うべきリングから下りた。
それで、宝石は一度砕けた。
取り戻すために、殴られ、なじられ、それでも愚直に、壊れたものを治し続ける。
そんな生き様を、過酷な状況で息子の死を背負い、ただただ壁にペンキを塗り続けたチーフから学んだのだと、花盛りの番外地…その復活を見上げるジョーとサチオの背中からよく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
ようやく、ここにたどり着いてくれた。長く苦しい道だったが、とてもありがたい。
一方佐久間は、目の前に在るものを都合よく改ざんさせ、ガラス越しに闘士を見下ろし続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
隣り合っていても、樹生との講堂ファイトで倫理に火がついちまった主任さんの、すがるような目を受け止めはしない。
いい加減倫理で殴り合え、佐久間…。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第11話より引用) pic.twitter.com/E5keY4dCAJ
佐久間が指先一つで消し去る”データ”が実際どんなものか、ズタボロになったハチドリの絵本と、家族が涙に暮れ触れ合えない事実で、良く判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
坊やが流す涙は、どこかかつてのサチオに重なり、やはりジョーとマックが運命の双子であることを教えてくれる。
マックは愛しい家族に手を伸ばし、その温もりを受け止めたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
しかし脳髄に暴れる機械の悪魔が、栄光を掴むために選んだ嘘が、ふれあいを阻む。
彼の拳が掴んだ豪邸、その壁に飾られた抽象画が、越えられないラインを上手く画面に宿している。
誠実な家庭人であり、社会の辛酸を嘗めて栄光を掴んだマックが”子供に戻って”実子を泣かせてしまうのも、またやりきれないが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
しかしバラバラに砕かれたものを、坊やはその手で治してもいる。そこが、かすかな希望である。
修繕のモチーフ、マジで頻発するし大事だよなーNOMAD。
我が子と夫への愛ゆえに、悪魔の契約書にサインした妻。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
衝撃の真実を抱え、マックは車をひた走らせる。彼もまた、荒野を走ったノマドと同じく、運命の戦車に乗り込む男なのである。
そしてそれを走らせる熱を、佐久間は正面から(変わらず)受けない
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第11話より引用) pic.twitter.com/IcpmWtwtXU
『また調子いいことばっかぶっこきやがって…』と苛立ったが、襟元を掴み上げられてなお夢と希望を語り続ける瞳のキマり方を見ると、やはりただの小悪党ではないと思わされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
佐久間の理想…あるいは妄執は本物なのだ。
BESは世界を変える。それを自分が導く。不屈の確信がある。
ジョーが立ち止まり、鎧を外せた所で佐久間は止まれない。”HERO”と銘打たれた虚像を壁に飾り、崩れ落ちた英雄にあくまで、優しい言葉をかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月22日
”ギアレス”の伝説すら脱ぎ捨てて、負けうる弱い存在としての自分を、ハチドリの鎧で守るジョーの決断が、佐久間には出来ない。
ボクシングをしない彼が、作中随一の悪役(と言って良いものか、個人的には悩んでいるが。なんだかんだ、俺佐久間のこと好きなのかもしれん。マジぶん殴りたいのも事実だが)になってるのは、懸命に生きる拳闘士たちのシャドウとして、完成度が高いからだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月23日
その場その場、自分に都合のいい情報だけをピックアップして身を処してるのに、嘘をついてる感覚がなく、自分を徹底的に信じられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月23日
凶暴なポジティブさ、共感能力の表層的な高さ、根本的な欠如が、生々しくて怖い。
こんだけ自我が強いと、そらー世には出るわなぁ…。
運命の決戦に向けて、人々が想いを滾らせる夜。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月23日
ボクサーの拳ではなく、エンジニアの指先でハチドリの鎧をメンテナンスするサチオに、一つの決着を実感し心が温まり。
ラップトップに虚しく輝く、主任さんのかつての夢がまた哀しい。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第11話より引用) pic.twitter.com/wNuKG5FgCo
軍服連中と歓談する佐久間のギラつき、友に未来を見据えるゆき子と朝本さん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月23日
坊や手づから修復されたハチドリの絵本は、既に修繕を終えた番外地と同じく、壊れかけの絆が回復しうる希望を示すのか。
ネオンの海に迷うマックの背中に、答えはない。
群像が、未だ揺れている。
という所で、次回に続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月23日
いやー…作品の地力と殴り合えなくて腰が砕けたヘナチョコが言っても説得力ないが、マジで面白い。
それぞれのままならなさと、個別の苦しみ。
それを越えて繋がる人類普遍の救いと涙が、縁で繋がりながら街に瞬いている。
この渋く苦く甘い味わいは、やはりこの作品独特で最高だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月23日
番外地一家が再び集えた喜び、ここに至るまでの険しい道が無意味ではなかった実感に浸りつつも、マックと家族の苦闘が照らされ、彼らも救われて欲しいと願ってしまう。
許すも許さないも、何もかもを越えていける場所。
サチオとジョーが一足早く踏んだ、幸福のジャンプボード…四角い天国に、迷えるマックも飛び込めるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月23日
ジョー最後の試合でぶつかる強敵(とも)の明日は、一体どっちだ。
煉獄をさまよう魂たちに、鐘の音高らかに鳴り響く日を待ちつつ、次回も楽しみです。