ヴァニタスの手記を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
吸血鬼を切り刻み、その根源を探るモローの外道…ヴァニタスはその実験体”69”だった。
心を押し殺し情報を探るヴァニタスの代わりに、ノエが鬼神の憤怒を突き立てる。
全てを喰らう”影法師”すら救いうる、鬼と人の友情を前に、聖騎士もまた己の生き方を変えていく。
そんな感じの、巴里地下迷宮編終結である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
ローランとは善の、モローとは悪の因縁が更に深まり、研究所爆破で水入り…という結末になった。
そしてまさかまさかの共犯者、一体何を考えているのやら。
ヴァニタスの言動に付きまとう、ヴァンパイア終末論と関係あるんだろうなぁ、ルスヴン卿…。
モローの『コイツ殺していいか…?』感がなかなか凄くて、なかなかいい敵ゲストだな、と思った。(TRPG脳)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
自分の目で見た輝きを信じて大胆に変わるローランが”狩人”という古い宗教組織に属し、奴が悍ましき近代理性の怪物なの、面白い対比だなー、と思う。
属性が人のあり方を決めるわけではないのだ
物語は断片的に、”ヴァニタス”の過去をカットインしながら進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
”狩人”からモローに攫われ、蒼月の吸血鬼に救われて袂を分かって、”書”と名前を継承(あるいは剥奪)して現在に至る…って感じか。
蒼月との出会いが運命構図なの、ちょっと面白いネ。
(画像は"ヴァニタスの手記"第10話より引用) pic.twitter.com/HokNTsL8av
モローの研究室を俯瞰で見ると、複雑に配置されたコードが脳梁のようで、なかなかにグロテスクだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
人を人として見ない外道の脳髄が、頭蓋に収まりきらず吹き出しているようにも見える。
”69”としてしか目の前の存在を呼ばず、己の所業を一切顧みない醜悪。
それはいつか。吸血種の高みに至るため。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
非人間的な印象を与えるゴーグルが”朱”なのも、ヤツの変身願望の現れだろうか?
どちらにしても、世界の真実だけを知ろうとするモローの在り方はグロテスクである。
ここら辺、ヴァニタスにも式で構築された世界を探求する知恵者の側面があるのと、面白い対比
ヴァンピールの呪い名を治療することは、バベルによって変化してしまった世界の本質にアクセスする行為だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
治療行為は自動的に知的探求と繋がり、しかしそれはあくまで、誰かを癒やし何かを掴む倫理的行為でなければならない。
モローは世界の本質を探求するために、人の本質に目を塞いでいる。
ではヴァニタスは、何を見据えて呪い名に挑むのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
彼もまた、憎悪や復讐に目を塞ぎ、目の前の人間(とても傷ついてる彼自身を含む)が見れていないのではないか。
心を押し殺し、モローに都合のいい”69”を演じ通す彼を見ていると、そういう疑念も湧く。
実験動物への過剰な愛玩と、実験動物だからこその冷徹が同居する、モローの抱擁。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
それを受けるヴァニタスの眼は露骨に死んでいるが、しかし彼は激高しない。
心を殺して必要な情報を引き出し、駆け引きの中で優位に立つ計算を、常時忘れない。
多分、そうしなければ生きてけなかったのだろう。
これはルスヴン卿を激怒させ、追放されることで手札を晒さぬまま勝ちきった、アルタス・パリでの会合にも通じる姿勢だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
柔らかで率直な心を保ったノエには出来ない、政治的腹芸、現実的対応。
しかし冷徹な仮面の奥で、傷つく心はまだ死んでいない…気がする。
それを遠目にしっかり観察していればこそ、ノエは外道に耐えきれず激昂し、戦端も開かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
情報収集の観点からすれば悪手だけど、でも友達としては大事なブチ切れだったと思う。
ヴァニタスは自分ではもう怒れないから、ノエが代わりに怒るんだなぁ…。
(画像は"ヴァニタスの手記"第10話より引用) pic.twitter.com/xYjOfYa4La
蜘蛛男の乱入で、モローとシャルラタンを繋ぐ線が表に出つつ、吐き出された”71”の名にヴァニタスは愕然と膝を折る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
その名は多分彼の急所で、一番暴かれたくないモノなのだろう。
どうやらヴァニタスとともに蒼月の吸血鬼に”助けられた”はずの彼は、今ヴァニタスの隣にはいない。
秘せられていた過去が見えてきて、ヴァニタスの謎がまた1ページ読解され…また謎が増える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
モローの生み出した科学の地獄から、蒼月の吸血鬼が彼らを救い出したとするのならば、何故今その名は”ヴァニタス”に継承されているのか。
”69”でも”ヴァニタス”でもない、彼の真の名は何なのか。
どうやら暴力的に袂を分かったらしい、”71”は生きているのか、死んでいるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
決定的な所はやはり保留され、”69”が”ヴァニタス”となった事件の真相は、未だ不明である。
多分ここが、ヴァニタスという青年を知るヴァイタルパートなのだろう。切開はまだ先、ということだ。
ノエにとってのルイに伍するだろう、ヴァニタスにとっての”71”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
その喪失がいまだ言えぬ傷だと解って、彼は初めて己の血を流す。
鉄面に顔を覆って、外道にも顔色を変えない人形から、ノエと同じく体温と感情のある存在へと戻ってくる。
戻ってこれるのは、ノエが隣で声をかけるからだ。
幼い時代、決定的な誰かを残酷に喪失した穴を、お互いに投影するエゴイズム。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
ノエとヴァニタスを繋ぐ綾にはそんな糸も交じるのだろうけど、青年らしく現実に擦り切れない、とても純粋な色合いも絡んでいる。
この清濁真偽混じり合う関係性を見てるのが、このお話の大きな楽しみであるね。
怪物であり犠牲者でもある”影法師”の治療を、ヴァニタスは一度諦め、諦めないノエの無茶苦茶でもって突破していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
遠い記憶の中で問われた、自分が今ここにいる理由。
それを治療者であることに求めたのは、救済を求める弱さゆえ。
(画像は"ヴァニタスの手記"第10話より引用) pic.twitter.com/5pNCFKrZhO
そしてそれでも、(モローのように)”知る”ことではなく”助ける”ことに足場を置く、選択された善良故だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
『お前は何故、ここにいるのか』とクエリーを投げる行為は、キャラクターや物語の輪郭を鮮明に暴き出すので、とても好きである。
それが過去と現在、ヴァニタスの二人の男から伸びるのが良い。
”71”からの問いかけは呪いで、彼を絶望の奈落に引き落とそうとする。(これはノエの回想の中のルイと近似)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
ノエからの問いかけは祝福で、治療者の責務を諦めようとした現実主義の自分を、奇跡を掴む理想主義者へと変化させていく。
過去から伸びる痛みと引力、未来へ引っ張る希望と輝き。
その中間地点に、ヴァニタスもノエもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
希望の塊のようにも見えるノエが、どんだけ凄惨な過去を経験した上で今ここに立っているか、事前に書いておいたのが効いてると思う。
ルイとの地獄絵図を知らなきゃ、上から目線のピカピカ言葉になりかねないもんな、ノエの踏み込み。
しかし(ヴァニタスと同じように)数多の痛みを背負った上で、絶望に膝を屈したくないからこそノエは前に進み、ヴァニタスと出逢った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
自分と真逆で、どこか似ている人間に惹かれて、共に肩を並べて血を流すことで、どこかにある救いを掴もうと踏み出した。
そこには、切実なものが宿る。
今回モローとの過去…そこから伸びる蒼月の縁を描かれたことで、傲慢な救済主義者がどんな思いでここに立っているか、よく見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
やっぱそんな風に、キャラクターに血が通う瞬間を鮮烈に描ける物語は、見ていて楽しい。
そこに”誰か”の強い働きかけが、複雑に絡んでいると更に良い。
頑なな教条主義者に見えたローランが、思いの外目の前に在る人の息吹に敏感で、自分自身も組織のあり方も変えていく靭やかなガッツがあるのも、嬉しい発見であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
超変人で困った人だが、極めて善良で開明的なのよね。変人だけど…。
(画像は"ヴァニタスの手記"第10話より引用) pic.twitter.com/pgkVeRs65I
ローラン莫逆の友たるオリヴィエも出てきて、ロマンス脳を刺激され大興奮であるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
”吸血鬼=悪”の構図で何百年やってきただろう人類守護組織を、根底から揺るがす道にローランは笑顔で進んでいく。
カビの生えた偏見よりも、目の前で息づく友情の奇跡をこそ、自分の光と選び取る。
後ろも前も一切顧みず、爽やかに信念を貫くそのスタイルが、大変に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
オリヴィエが危惧するように”狩人”改革は大変な難行であろうけど、人間サイドに味方ができたのは良いことだよなー、多分。
若人を送り出し一旦別れた道が、合流する時何が起こるか。再会が楽しみだ。
(信仰者という側面から見ると、教会組織によって定められた教条ではなく、自分自身の豊かな霊性、それが捉えた人と人の輝きにこそ足場を置く、活きた信仰の実践者といえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
組織に身を置き律をちゃんと学びつつも、それを柔軟に変えていける可能性にこそ、人と神の媒を見るのは、極めて叡明だろう)
(モローには信仰がない…ように見えて、世界の真理を探求する特別な自分への猛烈なエゴイズムが、神の代用品として彼を支えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
自分は特別だから、他人を切り刻んで踏みにじっても良い。
固定された意識は、そういうところまで人間を持っていってしまう。他人の話を聞かないのは、恐ろしい事だ)
(物語の序盤においてローラン/信仰者が話を聞かず剣を振るう人として描かれ、ノエとヴァニタスの友情をしっかり見て、自分と組織の在り方を変えるべく踏み出す存在として描かれ終わるのは、肥大化したエゴに耳を塞ぎ、他者を蔑ろにするモロー/科学者との対比といえる)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
(無論信仰/科学は対立項ではなく、ヴァニタスは”狩人”に属しながら実験体に落ち、世界の成り立ちを探る医療科学を杖にして、救済を探し求めてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
信仰/科学といった属性ではなく、目の前の人間を見れるか否かを軸に善悪を書き分ける作品の視線は、僕には好ましく思える)
聖騎士に背中を押され、ようやく抜け出した地上の輝き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
疲れ果てた心身を相棒に預け、ヴァニタスは一時安らぎを得る。
その重みと温もりを感じながら、ノエは彼が叫んだ信条の裏を読む。
救済を叫ぶものこそ、最も救済を求めているのではないか。
(画像は"ヴァニタスの手記"第10話より引用) pic.twitter.com/rlNMqukub0
”ヴァニタス”を名乗るエキセントリックな青年は、(自分と同じように)とても傷ついているのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
そんな思いはいつでも彼の中にあって、だからこそ彼は怒らず泣かないヴァニタスの代わりに、もろーを投げ飛ばしたのだ。
喪われた心の代用を果たしてくれる友がいるのは、確かに幸福である。
だがそれよりも、ヴァニタス自身が己の感じているものに率直に、喜びや哀しみや痛みを表に出せたほうが、自然ではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
そう出来ないほどの使命と傷が、彼の過去と未来には刻まれているのか。
迷宮を抜けても、過去の一端を知っても、謎は残る。それが面白い。
それでも柔らかな内面を奇人の外装に包んで、救済に向かってひた走る青年が、優しい吸血鬼に出会えたのは良かったなぁと、セーヌに輝く眩い友情を見ながら思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
そしてその背後に蠢く、謀略の闇。
蜘蛛の巣の奥に、ルスヴン卿の隻眼が燃える。
(画像は"ヴァニタスの手記"第10話より引用) pic.twitter.com/BXFHNKJhUq
これでモロー-シャルラタン-ルスヴン卿ってラインが繋がった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
吸血鬼に呪いをバラ撒く計画が、アルタス・パリ随一の権力者と接続されることで、何を狙うのか。
呪い名のシステム、蒼月との関わり、破滅に見えるものの真実。
やはり、謎は多い。
地下墳墓を舞台に描かれた救済への希求を敷衍すると、ルスヴン卿の謀略もヴァンパイア全体を救うための、冷たい方程式を解いた結果なのかなー、と思ったりもするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
『彼もまた傲慢な救済を滅びゆく種族に、彼なりもたらそうとしてる』って考えると、ヴァニタスの影としていい塩梅なのよね。
そこら辺は今後追うべき謎として、色んなものが見え、変わり、続いていく地下墳墓の激闘でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
モローとのロクでもない因縁が見えたと思ったら、蒼月と”71”にまつわる地獄がチラ見せされて、全く落ち着くタイミングがねぇな!
サスペンスを牽引する腕力があって、大変良いですね。
今回の騒動を通じて、また1ページノエ(と僕ら)はヴァニタスという書物を読んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月4日
解ったものは暖かく確かで、見えないものは未だ多い。その二つを探っていく物語は、まだまだ続く。
この物語を踏まえての次回新章、どんなお話が紡がれるか。大変楽しみです。
追記 見目麗しいキャラクターたちの濃厚な感情のドラマをしっかりうねらせつつ、こういう細かい謎の提示に隙がない所が、なかなか強い作品だと感じる。
ヴァニタス追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月5日
”69”と”71”の間には当然”70”があるはずで、さてこの意味深な不在をどう使ってくるから気になるところである。
まぁ”71”ですら存在がほのめかされただけで、詳細が分からんアニメの現状だと掘り込みようもないんだが、謎のチラ見せと暴露がうまい作品だからなぁ…つい色々考えたくなる。