輪るピングドラム 第10話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
死の運命は晶馬を避けて、しかし新たなハンターが追いすがる。
苹果を、冠葉を。
影から狩り出す新たな登場人物…その名は!
そんな感じの、真砂子本格登場のエピソードである。
今見ると、後藤圭二のクセが全面に出まくって面白い。
晶ちゃんとかお目々でっかく髪モサモサで、凄くショタっぽく見えるもんな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
このブレはクリエーターの味を大事にしてる感じで、当時から好きだった。
各話の作り手が結構好きにやっても、塗りつぶしきれない猛烈な芯があればこその作風、とも言えるか…。
さて物語は、晶馬の自己犠牲を通じて苹果ちゃんの呪いが解けた…と思ったら、新たなヤバ女が本格リングインしてくるエピソードだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
自分と自分の家族、失われた過去にトラ割れていたときは、頑なに崩れることがなかった”M”への意志。
それは、晶馬の行動一つで解れていく。
目が覚めた…というよりは、元々他人が差し出してくれるものの重さがしっかり解っていて、だからこそ歪んでしまった少女が、晶馬の己を顧みない愛を間近で食らって、自分を取り戻した感じがある変化である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
命を差し出されたのなら、命を返す。
命よりも大事なものなら、無論それを。
そういう、己を計算から外した反復に対し(姉と同じく、あるいは姉の影響で)目が開いている子なので、あの路上で晶馬が何を差し出したかに関しては、それにジブンが何をしなければいけないかは、ちゃんと見えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
だから、あれだけ固執していたピングドラムを手放し、差し出せるようにもなる。
そうさせたのは、死せる妹の運命を逆転させるために他人の大事なものを踏みつけにするよう命じられ、しかしその子がどれだけ苦しみどれだけ囚われているか、ずっと晶馬が見てきたからである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
彼自身、目の前に在るものに扉を開けていたことが、苹果ちゃんの扉を開けていく。
手放すことこそ永遠への一歩目であり、愛の物語であるこのアニメにとって、最も尊く…難しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
冠葉が重くてうんざりと語る、押し付けるような愛の形。
後に真砂子が、アリアドネの迷宮で幾度も差し出し直す、望まぬ我執の形。
それは後に、彼自身に返ってくる刃でもある。
弟のために必死になって走り、踊らされる中、ひどく歪んだ音階で流れるのは”遠き山に日は落ちて”…別名”家路”である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
真砂子と冠葉の関係性、彼女の”M”をゴールを知る立場から思い返すと、この段階で答えは示されていたんだなぁ、という気持ちは強くなる。
少年よ、我に返れ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
愛に満ちた”家”の引力に囚われ、透明なガラスが心臓に突き刺さって抜けない子供たちの物語が、これをテーマソングにしているのはとても意味深だ。
それは自分で判断できる孤独な知性を取り戻すと同時に、分断されない”わたし達”への帰還を誘う。
真砂子まさかの口づけが、毒のように呪いのように、謎めいて突き刺さる今回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
”だって好きだから”は他のサブタイトルと同じように、多彩な主語を隠しながら物語を飾る。
”好きだから”という愛を理由に、誰が、何を成し遂げているのか。
この段階で見えるもの、隠されているもの、示されているもの。
それが、奇っ怪な病院迷宮でのやり取り、半分のピングドラムをやり取りする攻防の中で既に描かれていたと、終わりを知って確認し直す行為。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
この再視聴には、そういう面白さがある。
糸を手繰る冠葉がテセウスなら、そこには牛頭の怪物がいて、それは迷宮の中心にいるアリアドネーの異父弟である。
迷宮からアリアドネーを連れ出した勇者は心変わりをして、少女を島に置き去りにしてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
彼女は自分のもとに訪れたディオニソス神に復讐を願い、黒い帆は誤解を生んでアイゲウスはその身を投げる。
”南極物語”をモチーフの一つとし、希望に置き去りにされた者たちの呪いをこそ、中心に据える物語。
複雑に絡み合って血の引力、希望と絶望の糸玉を手繰っていく物語に、真砂子が参入するこのエピソードで、冠葉がラビュリントスを迷うのは納得の描写である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
まー初見だと不協和音と狂愛の圧力が凄くて、何言いたいかサッパリなんだけどな! いつものイクニだッ!!
冠葉が彼女のプリンセス・オブ・ザ・クリスタルのために、他の全てをなげうってひた走る道を。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
真砂子は二人の肉親を共に愛したが故に、けして走りきれない。
亡霊に呪われ、愛ゆえに世界を燃やす役割は、彼女が綺麗に保ちたかったものにこそ伸びていく。
後に判明していく彼女の桎梏と執念、献身と愛を思うと、やっぱりただのヤバ女ではなく切実かつ猛烈な愛の人ではあるのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
この段階だと、苹果ちゃんより更に強火の大型新人である。
そういう予断を作っておいて、『あ、人間だ…』と足払いをぶっ込むのが、このアニメ大好き!
巧妙に操作されるサスペンスの奥にあるものを、既にカンニングした状態で見直すこの視聴は、皆が哀しくも美しく、愚かしくも切なく愛に生きていると、確信し確認しながら見れるのが、とても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
”だって好きだから”
それは全てを正当化する悪魔の呪文であり、偽りのない真実でもある。
沢山の”好き”が一方通行、凶暴な加速を見せながら突き刺さっていく世界の中で、苹果ちゃんは傷を受けた晶馬のために自分の大事なものを投げ、姉に”ごめんね”を告げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
それは悲しい諦観であると同時に、幸福な卒業でもあったのではないか。
引き裂かれ奪われていく行為の中にこそ、苹果ちゃん…に代表される、様々愛に囚われた人間たちが片手を離してより豊かな場所へ巣立てる軽やかさの種が、眠っているのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
冠葉がおもすぎる不協和音の中で何かを思い出し、口づけに引きずられ迷宮に踏み込むこのエピソードに、そんなことを思う
苹果ちゃんがこの回で果たした決断を、ここから秘めたる凶暴さを、燃え盛る愛をそれぞれ見せてくる登場人物たちは、なかなか果たせない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
気軽にトンチキストーカーごっこしてた小娘とは、背負ってるものが違う。
そういう見方もできるかも知れないけど、僕は賛同しない。
目の前に差し出されたものの真の意味を虚心坦懐に受け止め、それにふさわしいものを送り返す勇気は、自分が差し出す愛の重さに満足し、地面に脚を縫い止めてしまっているものには、なかなか掴み得ないのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
愛された証明のように、置き去りにされた場所で己を呪う。現在地に縛る。
屋上からピングドラムの半分を投げれた苹果ちゃんは、とても難しいことをここでやってのけた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月15日
それがどれだけの偉業かは、この後苛烈さを増す物語の中で、ジワリジワリと染み出してくる。
それを導いた、晶馬の保身なき突撃の意味も。
今思うと、本当に彼は立派な人であるね…。
次回も楽しみ。