ブルーピリオドを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
三年生になった八虎と龍二は、美術予備校へと通い出す。
奇人、変人、そして天才。
新たな出会いは焦りと衝撃をもたらし、過ぎゆく時は鏨のように八虎を鍛えていく。
凡人で、何が好きかも解らず、レベルの低い自分。
思い知らされながら、藻掻く日々に入り交じる、陰りと光明
そんな感じの群青色の青春絵巻、新章開幕の第3話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
予備校という新しい環境で、アクの強い連中と付き合っていく中で八虎がどんな衝撃を受け、凹んで迷って何かを掴み、まーた迷って足掻く過程が、独特のテンポで描かれていた。
先の見えぬ影に投げ込まれたような絶望と、突如開ける視界。
閉塞する自意識と、出会いによって爆破されていく道のり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
青く青く、絞れば青汁が取れるほどに真っ青な時代を共に進んでいく、悪友であり戦友でもある、堀の深い顔をした青年たち。
八虎のモノローグを色濃く拾いながら、そんな群像が何処か爽やかに、スケッチされていく。
チェック柄着た一見冴えないボーイ、世田助くんが初めてやったスケッチは圧倒的で、八虎は真っ黒な闇の中に投げ込まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
ぐうの音もひり出せないほどに、圧倒的な実力。
相手を神様の粋に押し込めて、自分のプライドを守りたくなる才能。
(画像は"ブルーピリオド"第3話より引用) pic.twitter.com/WUMpqt5FEI
そうして凹めている事自体が、貪欲でポジティブな心の現れだと、龍二は蹴りと一緒に八虎に教える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
通過していく車のヘッドライトを上手く使って、どん詰まりだった八虎の心が何で解放され、人との出会いが何を生み出すかが、上手くライトアップされていく演出だ。
絵を描く前、優等生ノルマをこなせてしまっていた時代は遠巻きに見つめる珍獣だった龍二とは、絵に向き合う真摯さ、美術部という場を共有する仲間として、既に何かが通じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
合わないな、嫌だな、という第一印象をひょいと越えて、手を差し伸べてしまう奇妙な引力。
それは八虎の周囲にある恒星系を、不可思議に動かす見えない縁だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
自分にだけ青く見えた渋谷を肯定してもらって、そのとおりに描いて理解ってもらったときから、八虎は出会いやメッセージに対して、感受性を開いた。
他人に対して閉じて守るのではなく、窓を開けて飛び出す生き方に踏み出した。
龍二もそれを感じ取ったから、凸凹奇妙に噛み合わない仲間が凹んでいる時に、風と光を蹴り渡したのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
前回母の肖像を描くことで、その手の傷に気付いたように。
この藻の語りの登場人物は、描くことで窓を開けて、外に繋がり内側に何かを取り込んでいく。
賢いからこそ八虎は様々なことを考え、それはたった一人でいれば引力に惹かれて落下し、容易に腐敗していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
絵画と出会い、導かれて出逢った誰かに横っ面を張り飛ばされることで、八虎の世界は換気をして、思念が腐敗していくのを避けていける。
暗闇に光が差し込み、風が吹く。
豪快で声がデカい大葉先生、おさげの美術変態・橋田。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
予備校での日々が流れる中で、八虎は色んな人と出会い、新しい可能性を探っていく。
自分のレベルの低さを思い知らされ、そこからどう抜け出せばいいか迷いつつ、一つ、また一つ、新しい窓を開けていく。
(画像は"ブルーピリオド"第3話より引用) pic.twitter.com/onekPB5yD4
美術鑑賞を食事に例える見巧者・橋田の言葉…それを届けてくれる出会いに助けられて、八虎はもう一回、影から抜けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
『絵はこう見なければいけない』という思い込み。
美術と縁遠かった、経験値の少なさ。
求められるまま不良も優等生もこなせてしまう、空白の自我。
本気で描くことは小手先の技術ではなく、否応なく人格をキャンバスに引っ張り出される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
広い美術館でどう過ごしたものか迷い、自分の空っぽさを思い知るのは、八虎が本気で描こうと藻掻き、世界と自意識が擦れ生まれた火花が、その周囲を焼いているからだ。
それは熱いし痛い経験だが、むき出しの生が自分に迫ってくる体験を忘れられないから…青い渋谷と天使のウィンクに呪われたから、八虎はお母さんの信頼を勝ち取って、予備校にも通っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
そういう真っ直ぐさは、躊躇いつつも世田助に接近し、その面倒くさい人格を超えて触れ合う試みにも現れている
八虎が余計なおせっかいをして、世田助くんと美術館に行こうと思ったから、そこに橋田も同行した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
そうして生まれた縁が、凝り固まった美術の味方を爆破し、絵が瞳の中に入ってくる経験…”好き”という光が目の前に広がる瞬間を、八虎に届ける。
何かを求めて無様に手を伸ばす行為は、思わず報われる。
しかしそれは、誰かが求めるレールの上を走れば必ず与えられる報酬ではなく、どんな形で実を結ぶかは判らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
だからこそ、様々なものに窓を開き、全てをかっ喰らって自分の舌で判断する。
体験で”好き”を肥やして、それを絵筆にフィードバックしていく。
『”好き”を探せ』という大葉先生の指導は非常に的確で、学び導かれる子供たちだけでなく、教え広げる大人の書き方も、優れた作品である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
佐伯先生が夏休みの課題として、スクラップブックを含めていたのも、興味領域を広げ自分を深堀りする、インプットの入れ物を育てる一環と言えるだろう。
ぶち壊されて、繋がって広がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
そんな体験は必ずしも美術には直結しておらず、泣きじゃくる友人の隣に煙草を差し出す、気まずく重たい空気が生み出したりもする。
八虎が探していた”好き”を、龍二は世界から唯一自分を守ってくれる鎧に定めようとする。
(画像は"ブルーピリオド"第3話より引用) pic.twitter.com/hJ9ZXARFE7
都合のいい檻の中に存在を閉じ込め、反りが合わなければ、優しさを装って跳ね除ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
男でも女でもないフェアリーとして、己のシビアな人生には関係しない、浮遊した便利な王子様。
”好き”を追えば普通から遊離するしかない青年が、魂の奥底から絞り出すうめき声。
八虎はそこに、気の利いた答えを差し出すことは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
芸術の輩としてだけでなく、人間としてレベルの低い自分を思い知らされて、深く沈んでいくだけだ。
でもそこで、解ったフリができない…龍二を相手にそういう事をしないように変わった彼の誠実が、やっぱり僕は好きである。
誰かが好き、何かが好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
十人十色の願望が、龍二を守り泣かせる。
好きを貫こうとすることで、女子に扉越しワーキャーだけ言われて、人間味のある赤い血を誰にも受け止めてもらえない、妖精扱いに遠ざけられる。
否。
龍二が絞り出した血潮を、ただ隣り合って聞いてくれる青年は、確かに一人いた。
それが、自分の非才を思い知らされる出会いに凹んでいた青年に、蹴りと一緒に元気をくれた恩返しなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
そういうシンプルな貸し借りで、計算しきれない奇妙な人間模様の、一つのスケッチか。
泣きじゃくっていた龍二は、ケロリと舌を出して新しい恋に踊る。
軽妙に、王子様のように、妖精のように。
そうやって、シリアスに傷ついていない自分を、グチャグチャの感情の奥底から引っ張り出して強気に演じる彼が、僕は好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
そうせざるを得ないほどに、包囲され追い込まれ、それでも”好き”を捨てないために、殺されないために戦い続けている彼が。
その深奥に迫るのは、まだ先のお話。
明瞭に順位がつく、夏休みのコンクール。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
八虎の天使が、下から五番目だった厳しい場所。
不安に突き動かされ、あるいは恍惚に震えながら、青年たちはキャンバスに向かう。
眉間を苦しくしかめながら、パクリ上等と足掻き、描き、歯を食いしばる。
(画像は"ブルーピリオド"第3話より引用) pic.twitter.com/bM0fKzBuyV
パレットナイフに押し付けられた赤…そこに籠もる過剰な力が、答えが見えないまま藻掻く八虎の”今”を上手く象徴していて、好きなクローズアップだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
それは何かをもたらすかも知れないし、無駄に終わるかも知れない。
努力と運命がどこに至るかなんて誰にも判らないまま、それでも足掻く。
その先にしか道がないと、頭で理解れるくらいには八虎は賢く、だからこそその檻をぶっ壊さないと、先には進みきれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
ここら辺の資質と課題も、大葉先生は絵と人間観察、対話を通じてよく見抜いている。
越えられるよう、適切に方向づけする技量も高い。いい先生だよなーホント。好きだわ。
自分ではピンとこない、努力の結晶。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
藻掻いているはずなのに何も掴めないなら、誰かに引っ張り上げて貰うしかない。
例えば、畏れつつ憧れている、隣の席の天才とか。
そんな甘えたSOSを、世田助は全力で蹴り飛ばす。
(画像は"ブルーピリオド"第3話より引用) pic.twitter.com/zdXzDeFQEU
芸の表面を掬っただけの、真実を欠片も見抜いていないミメーシス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
真向向き合っての言葉は、ナイフよりも鋭く八虎に突き刺さる。
それがどん詰まりを切開する青春手術となるか、全てを終わらせる致命打となるか。
出会いも変化も、望んだ通りになんざ転がっちゃくれない。
それでも八虎は七転八倒藻掻きまくって、誰かに出会い、何かに己を開き、誰かの手を取っていくのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
出来る、やるべきと信じたことに、必死に突き進んで大間違いして、思わぬヒントに突き刺されて、たどり着いたと思ったら足を踏み外し、そこを踏みしめて這い上がる。
そんな本気の足掻きが、実は八虎以外の誰かにぶつかって、何かを壊し何かを変えてもいると、静かにスケッチする回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
とにかく花守ゆみりが圧倒的で、フェアリックな女装男子…というラベルを引っ剥がして滲む魂の血の色が、重たくも爽やかでした。
今後もこんな風にゴツゴツ、他人と表現と自分と世界にぶつかり、擦り傷だらけに転がっていく青春模様。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
まずは世田助に爆弾投げつけられた八虎が、どう壊れてどう治るか…なかなかの正念場です。
ホントよたクン、戯れが出来ない抜身のナイフ人間のまま突っ走るからな…。
小器用に自分を抑え込んで、人間関係の海を泳げてしまう八虎が否応なく惹かれる天才がこういう造形なのも、良い対比だよなー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月16日
反りが合わないからこそ擦れあい、燃え盛る青春の火花。
それが照らす群像は、まだまだ泥濘を必死に走る。
先に待つのは何なのか、次回も楽しみです。