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— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
城門前の攻防は、凄惨の度合いを増していった。
十重二十重に取り囲む魔獣、機を伺う凶漢の群れ。
友が、主が血に沈む惨劇を前に、アピスの心もまた揺れていた。
その愁嘆場をゆらり抜けて、剣の幽鬼が街を斬る。
オウケンの謎が深まる中、遂にボッジが帰還の剣閃を抜き放つ!
そんな感じの人生曼荼羅血みどろ編、戦の血生臭さが色濃く漂う、王様ランキング第13話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
ここまであくまでその輪郭をなぞってきた”闘い”の本質が、敵味方入り乱れての殺し合いを通じ、血の色の絵の具で中身を塗りつぶされていくような、なんとも重たい感触のある回だった。
刃を抜けば血に染まり、人を殺めれば報いがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
これまで過去の回想、あるいは深甚な暗喩の中で描かれてきた闘いの意味は、城門前の攻防戦で遂に、今を生きる人々達を捉える。
死んで欲しくない人も、とっとと死んでほしい獣も皆、平等に血に塗れ、傷を受けて倒れていく。
そこに”バトル回”と称されるような軽表な心地よさはなく、決死の奮戦の重たさ、生き死にを前に揺れる心が、今まで通り深く刻まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
人が死ぬ、人を殺すということは、兎にも角にも重い。
それを軽く扱えるほどに荒廃した心にも、重苦しい凄惨は常に突きつけられる。
そういうルールはこれまでも描いてきたわけで、画角を変えて同じテーマを扱っているわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
しかしドルーシが倒れ、ヒリング様が追い込まれ、アピスが叫ぶ今回、やはり特別重たい感慨があった気がする。
実際血が流れてみると、観念で解っていたつもりのものが、熱を持って迫る。
闘いの天秤がどちらに傾くか、一切の予断を許さぬ戦運びが上手く、その切迫感を支えていたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
ヒリング配下の”正義”に立ちふさがる”悪”は強く、奇跡は簡単にやってこない。
傷を治すのも命がけ、手を尽くし魂を振り絞ってなお、勝てるか…生き残れるかも分からない。
考えてみれば”戦う”という行為はおしなべてそういうもので、どこか遠くにあったその実相が、かけがえのない人の血を見てようやく、自分の側に近寄ってきた形なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
それにしたって、いい人たちが血みどろになっていくのは大変辛い。
その辛さを容赦なく描きぬく筆には、やはり信頼が置ける。
玉座の惨劇を知らぬまま、城門前で睨み合う者達も遂に刃を交える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
高みからヒリングを見つめるオウケンの視線に、一体何が宿るのか。
後の闘いで顕になる異様さと合わせて、不気味な存在感があるキャラクターだ。
(画像は"王様ランキング"第13話より引用) pic.twitter.com/jLXKCCrEJu
魔獣くん達がミランジョに操られるだけのただの動物で、家に帰れば守るべき家族がある生命だと知ってしまっていると、ヒリング防衛隊の奮戦をただ、無邪気に喜ぶことも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
殺す相手も、守る相手も兜の下に瞳を隠し、宿命に押し流されて刃を交える。
瞳が見えて人間だと判ると、”騎士その1”でしかなかったアンさんの見え方も変わってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
どうやら王女と側近以上の間柄で繋がった投げナイフ使いは、戦のコマから顔があって血を流すかけがえのない存在へと、物語を読む僕の前に存在感を増していく。
そういう人が、無惨に死ぬ場所。それが戦場である
心情がよく見えて共感もできるヒリング側を応援したくなる場面だが、そういうシンプルな切り分けを許さない真実が、”敵”の死体にも埋まってんだろうなー、という予測も立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
もー魔獣たちが死ぬ度に、すんごいゲンナリした顔になる。森に返したげてよーホント…。
そんな事情とは関係なく、命のやり取りは容赦なく血を求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
ゆらり、幽鬼のように降り立ったオウケンはヒリングの手首を切り裂き、伽藍堂の仮面を愉悦に揺るがす。
その顔面に突き刺さる短刀を、ものともせず蘇る不死身は、いかな秘密を隠すのか。
(画像は"王様ランキング"第13話より引用) pic.twitter.com/fKStmoulHw
なかなかに謎の多い、中盤の焦点となる存在であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
目くらましに過ぎないはずのホーリーライトで大きく怯み、点穴剣術を操るボッジの天敵ということを考えると、カゲくんに近い存在か、鎧に取り付いた亡霊か…。
冥府の重要人物っぽい扱いも、ヒントなんだろうなぁ。
さておき手首斬られるはヒールの反動で逝きかけるわ…この作品最強のヒロインに、状況は厳しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
”癒やし”という一見安楽そうな行為が、傷口から命が逃げ出すまでの時間勝負であり、魂を削って命がけでブチ込む大勝負であるとしたのは、ヒリングを安全圏に置かない描写で大変良い。
譲れぬ者のために剣を取り、鎧をまとったヒリングは、戦場の天秤にその身を預けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
勝って執念を叶えるか、死んで屍を晒すか。
畢竟そういう答えしか用意されていない場所に、否応なく身を晒す事を選んだ彼女は、己を慕って死地に挑んだ仲間と同じく、命をかけて剣を握り、剣に斬られる。
ここで理想だけを他人に押し付けて城に篭もらない所が、ボッジの母であるな、と思わされるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
その高潔も勇敢も、必ずしも報われるわけではない。
彼女に王妃の冠を与えた国の礎は、このような理不尽の中で、敵と味方の血を素材に気づかれたのだ。
貴種として、この土壇場での実地演習…とも言えるか
魔獣に取り囲まれながら、魂の奥底から戦う理由を引きずり出し剣を握る王妃の顔が、青ざめているのが良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
死ぬのは怖いし、傷つくのは痛い。
そんな弱さを当たり前に抱えて、彼女はただ癒やす存在で終わらず、殺し守る存在として剣を握るのだ。
それは苛烈で、哀しく美しい。
かくして絶体絶命の窮地が訪れるわけだが、王妃を助けるヒーローが間に合わないことを、丁寧に重ねていく描写が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
四天王はあるものは倒れ、あるものは己の道の途中。
息子は未だ遠くにあり、夫は牢獄に繋がれている。
誰一人、奇跡を手渡すものはいない
(画像は"王様ランキング"第13話より引用) pic.twitter.com/rkG23imxbR
そこで慮外の一撃、忠義と恩義、友情と愛着の狭間に苦しむ”王の槍”が、思いの丈を投げつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
ここでアピスが横槍を入れる展開は想像していなかったし、後にミランジョと重ねるやり取りの中で、彼の背負う懊悩が『なるほど…』と思わせてくれた。
こういう意外性、最高に良い。
ボッス王の志に集い、共に戦った記憶。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
魂を捧げるに相応しいと、敬慕を委ねた相手。
城壁の高みは一度諦めたはずのものがあまりに遠く、しかし痛いほどに脈を打っていることをアピスに教える。
片腕に抱いたもう一人の貴婦人の重さもまた、けして嘘ではない。
思わず槍を投げ、しかし鏡を手放すことも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
アピスの苦しい思いを、ミランジョもまた無碍にはしない。
槍を追って忠臣に戻るか、叛逆の奥に蠢く思いに殉じるか。
どちらかを選ぶ自由を、アピスに許す。
嫌だー! 俺は性悪魔女を嫌いでいたいんだー!
子供たちを悪辣に犠牲にした謀略は、人の心が解らぬ冷たい場所から出たわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
むしろ情も理も分かればこそ、譲れぬ決意を込めて叛徒の汚名を背負い、人道に背いて夢を追う器量が、どうやらミランジョにはあるらしい。
その重さが判るからこそ、アピスも城壁を降りて忠義に戻ることが出来ない。
惨劇の予感を遠く見下ろしながら、アピスは呆然と、己がたどり着いてしまった運命の岐路を噛みしめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
彼の弱さが招いた土壇場であり、彼の強さが導く道程でもあろう。
どちらに進んでも、もはや血塗れの定め。
アピスは一つの道を選び…その歩みもまた、平坦ではない。
友の叫びに魂を燃やすも、ドルーシの奮戦もまた、戦場の無情に飲まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
身を裂かれる戦士も、それを見ることしか出来ないかつての友も、赤い血を流す。
なぜ、こんなに辛い道を進まねばならないのか。
鏡はその問いに、執念を返す。
(画像は"王様ランキング"第13話より引用) pic.twitter.com/U3D3KUNBSw
命の予備として子を為せと、人の形を捨ててなお告げる魔女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
その禍々しさを、謀略の借り腹と選ばれた女は見抜き、遠ざけた。
人形であり、鏡である己がけして掴み得なかった妻としての座、暖かな家族。
そんな遠い幸福への嫉妬が、黒い炎となって国を焼く…とも、思っていたのだが。
やはりどうにも、そういう情念から半歩進んだ所に、ミランジョの野心はあるようだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
やっぱボッス王が何故、我が子を食らう悪魔の謀略を飲み込んだかが気になるんだよなー。
ここら辺は牢獄の前にスックと立ちふさがった、蛇おじさんが掘り下げてくれる部分…かなぁ。
配下が命がけで作った最後の好機に、王族として再起を図るでも、戦士として剣を握るでもなく、死にかけの人を”癒やし”てしまう所に、Healing様の本質がある気もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
やっぱ鎧着て人殺すの、アンタ似合わないよ…でもそういうコトしなきゃ、どうにもならないトコまで進んじゃってんのよな…。
では無辜の人民を剣の贄にする幽鬼は、見た目通りの殺戮の鬼なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
冥府騎士団長に極太死亡フラグがおっ立つ中、ボッジは一足先に運命の決戦場へとひた走る。
一方一段落の好機を見逃さず、悪党どもは鏡を奪い、アピスは修羅の顔で追いすがる。
(画像は"王様ランキング"第13話より引用) pic.twitter.com/GOPntgQQ3L
色んな修羅場を行ったり来たり、なかなか状況が複雑になってきて楽しい…と言い切るには、まぁ血腥い状況だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
オウケンの正体、凶暴な実力も読みきれないし、器物でしか無いミランジョ争奪戦という、新たな闘いも勃発する。
欲をむき出しにしたブラックが、金の塊と化した鏡を抱ききれないのは面白い。
鏡は持つものの愚かさを反射し、忠義に誠実を返す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
欲しか見ないブラックが、現世利益の塊と化した魔女を抱ききれないのは、その愛故に強くなり、忠義を引き裂かれて苦しむアピスが彼女を片手で持てていた描写と、面白く呼応する。
愛は鴻毛のごとく軽く、欲は黄金めいて重い。
人が抱えた魂の奥を暴き、反射する浄玻璃鏡。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
憎き謀略の主と思ってきたミランジョに、また新しい顔が見えてきた感じもある。
ここから更に、浅ましい謀略に翻弄されるヒロインの顔まで乗っかってきて、さてはてどうなることか…戦況は複雑な顔を見せてきた
(画像は"王様ランキング"第13話より引用) pic.twitter.com/PGqpAVzJ4q
ゾックは死刑囚の中でもやはり面白い立場のキャラで、知略をもって強者を陥れるずる賢さを、随所で発揮している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
それはデスパーさんがボッジに道を示した賢さの影であり、強い思い故に人道を外れたミランジョの照り返しなのだろう。
知恵の刃もまた、浅ましい目的に使うことが出来る。
アピスは果たして、山賊王の卑劣な刃に伏してしまったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
冥府に通じる門、王城の奥にある闇に向き合う戦士たちは、どんな闘いを果たすのか。
そして細き刃を携えて故国に凱旋したボッジは、手に入れた力でどんな未来を切り開くのか。
様々な場所で、因縁と思惑が静かに燃えてきている。
王城前の血みどろも全く収まっていないし、オウケンの正体もまだまだ謎。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月17日
全く先が読みきれず、しかし続きを楽しみにしたくなるワクワク…それで収まらぬ無情の哀しみが混ざりあって、大変に面白い展開である。
血を絵の具に描かれた、戦の真の顔。
それを幼子の純真が切り裂くか、次回も楽しみです。