薔薇王の葬列を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
囚われた兄王エドワードを救出するべく、ウォリック伯の領地へ赴くリチャード。
そこで出逢ったのは、仇敵たるランカスターのエドワード。
お互いの真の名を知らぬまま、すれ違いながら燃える恋。
慕情と策謀の桎梏は、王冠を目指す者たちを複雑に絡め取っていく…。
て感じの、泥沼の奥に泥沼…どっちに進んでもズブズブな、薔薇王の葬列第7話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
ランカスターのエドワードがいいヤツポイントを稼ぎながら、彼の助けを借りた兄王救出劇が見事成功し、第二次内乱は陣容を変えつつ、さらなる血を求める。
いやー、史実通りながら、メッチャネトネトしてきた!
ランカスターのエドワード(長いので以下、”兄王エドワード”と”エドワード王子”と呼び分ける)は、父と同じく素性も知らないまま、”女”としてのリチャードに惚れ込み、その助けをする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
リチャードは娼婦を装い、無自覚に恋を利用して、父王の悲願たる”ヨークの玉座”を取り戻そうとする。
捻れきった旅路は奇妙に純情で、エドワード王子は(父に似て、といえば彼も怒るだろうけど)良いヤツである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
そして、良いヤツが玉座の重責に耐えられないのは、ここまで既に描かれたもの。
何処かリチャードと響き合うように、母の重圧に反発し王冠を求める彼を待つのは、悲惨な運命である。
今回のクライマックスで心なき婚礼を果たす、アンとエドワード王子。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
反ヨーク同盟を強化するためだけの婚姻儀礼で、お互いが思い合うのが同じ人というのが、なんとも奇っ怪である。
加えて言えば、この婚礼で王権を強化したいヘンリー六世も、想い人はリチャードだからな…。
エドワード王子には女として、アンには男として慕われるリチャードは、そのどちらの性も肯定できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
性をアイデンティティとする自分自身を、全く肯定できていないのだから、その延長線上にある”性”もまた、汚れていながら便利に使える、武器であり隠れ蓑にしかならない。
男の獣欲を誘い、自分を傷つける”女”であることで、リチャードは旅の安全を買い、敵の油断を誘う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
このプラグマティズムは激動の時代を生き抜く上で大事であるが、同時に知らず、道具にしたものを傷つけてしまう。
それが紐付いている、魂の価値も。
”女”である自分を嫌悪し(あるいは、性を蔑ろにする世間を見据えることで、嫌悪させられた)リチャードは、おそらくエドワードの想いには気づいていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
気づいていたとしても、それが全てをなげうって人生を賭ける価値のあるものだとは、到底思えない。
では何が、生と死に値するのか。
王冠…が一つの答えであろうが、リチャードがそれを求める根幹は、『自分を肯定し導いてくれた父王が、そう望んだから』という、借り物の願望に過ぎない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
神に背く大罪(なので、CrimeではなくSinをサブタイは使っている)だとしても、己の人生の証明として、それを掴みたい。
エドワード王子が突きつけた問いかけを、今のリチャードは不遜と跳ね除ける。バッキンガム公の誘いもだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
しかし運命は、彼を王冠の簒奪者と定めている。
世間が、血が、神が許さないとしても、否応なく王冠を求める定め…あるいは激情が、彼の未来には焼き付いている。
予言のように、あるいは呪いのように、リチャードはやがて歩むべき血みどろで冷たい玉座への道を、関わる人達によって舗装されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
今は兄王を救い、”ヨークの玉座”を回復する目的に邁進しているが、果たしてエドワード四世にその器はない。
ウォリック伯に担がれた、ヘンリー六世もだ。
無論、時流に流され覚悟もないジョージは論外である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
千々に乱れた国は強い王を求め、しかしそれを果たしうるものはいない。
このジレンマを解消するために、リチャードは玉座を目指す…のだろうか?
それとも父の亡霊、己の在り処を、ひどく人間的に渇望して?
ここら辺、第二次内乱が収まった後の、兄弟骨肉の争いでどう描かれるか…楽しみであるし、また悲しいことでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
王冠こそが救いなのだと、父王に幼年期焼き付けられてしまったことが、リチャードの思考を狭め、執着に囚われる原因担ってる感じあるな。
あと母親の情緒虐待。
とまれ、リチャードは王冠を狙いうるヨークに生まれついてしまったのだし、”国”なる不安定で貪欲な獣の顔を見れてしまう、公益的な性格を育んでしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
私的な愛がどれほど醜く、しかしそれに溺れて国が傾くことも、よく知っている。
愛を離れ、玉座を求める足場は整っている。
血と欲に塗れた世間がよく見えているのならば、それを裏切る真実の愛、無私の献身もリチャードの前に立ち現れて良さそうなものだが、悪王としての未来を約束されたリチャードの前に、そんな瞬間は訪れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
訪れたとしても、それは一瞬の幻として通り過ぎ、魂に焼き付くことは無い。
あるいは『これこそが愛だ!』と抱きしめたものに裏切られ(たと思い込み)、あるいは狂気の中で愛が腐敗して毒ともなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
冬の城でのアンとの触れ合いと、致命的なすれ違い。
首だけになった父王が、黒翼の堕天使となって囁く野心。
…つくづく、悲惨だな。
エドワード王子との、お互いの”家”を明かさぬふれあいもまた、そんな感じで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
ランカスターの男に相応しく、王冠を奪って愛を掴もうとする正々堂々が、よりにも寄って恋する”女”と殺し合うしか無い道を舗装していくのも、また悲惨である。
良いヤツなんだがなぁ…だからこそ、か。
ただのエドワードとして、エドワード四世救出を助けたことが、ランカスターのエドワードとしての道を歪めると知りつつ、それでも愛に殉じる純情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
あるいはそれが、どんだけ致命的なことなのか気づけ無い愚かさ。
そういうものが、エドワード王子の人間味である。
彼が思いの証と送った薔薇は、赤も白も染まっていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
しかし現実には、玉座を狙い合う宿敵として旗印は色分けされ、互いの家名を知る時は戦場…あるいは処刑場にいるだろう。
”ただの”エドワード、あるいはリチャードとして、生きることは許されない者たち。
彼ら二人共、苛烈極まる母たちの強い影響を受け、その支配から抜け出さんと暴挙に踏み出す辺り、”我が母なる暗黒”を巡る物語でもある…かな?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
その母たちも、”家”なる怪物に向き合った結果自身、我が子を食らう怪物になってんだから、時代と家名の鎖は、とにかく重いわな…。
そしてアンとエドワード王子の婚礼は、その”家”を結び合わせる楔であり、この時代の貴族たちの”愛”は、何よりもその証明として使われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
この公的婚礼から外れ、私情で突っ走った愛が何を生み出すかは、エドワード四世とエリザベス見てればよく分かる。
それは答えではないのだ。
では、何処に答えがあるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
リチャードが兄王を救い出し、国を二分する闘いの舳先に立ちながら進む物語は、それを問い続ける。
玉座になく、褥にもない、私の存在証明。
女として男として、愛される私を遠ざけることでしか、近づいていかない血塗られた玉座。
何処にどう転がっても、出口なしの地獄絵図しか待ってなくて、史実スゲーな…って感じだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
それでも何処か、微かな光を求めて運命に押し流されていく人たちの表情を、アンとエドワード王子の哀しき婚礼は、よく描いていたと思う。
二人共、良いヤツなんだがなぁ…。
権力を求める私心も、愛を求める切実も、共に裏切りと血を必要とする時代…あるいは立場。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月22日
戦の敗残者として首を切られるか、孤独な玉座に立ちすくむか。
未来は不確かなまま、犠牲を待っている。
血のインクでしか描かれない年表が、一つ進んでまた次回。
大変楽しみです。