東京24区を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
機械が命の軽重を判断する重責から、全ては始まった。
積み重なる幸福と悲劇、ねじ曲がっていく運命と決断。
天啓と無念に突き動かされて選んだ先に、いつかの明日はありふれた今日になっていく。
そうしてたどり着いた今の、足下に横渡る昨日の遺骸。
それを、掘り起こそうか。
そんな感じの東京24区ZERO! 皆こうして狂っていったよ!! っていう、第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
クライマックス前に一話使って、未来を選ぶ青年たちの導きとなり壁となる世代が、何に苦しみ何を夢見て”今”を選んだか、時間的遠近法で立体感を出すエピソードである。
なかなかにろくでもなくて、大変良かった。
今までほのめかされるだけだったものが明瞭に書かれると、過去世代と現役世代の対照関係も鮮明になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
今≒過去
アスミ≒香苗
ラン≒ゼロス
コウキ≒区長
シュウタ≒筑紫
マリ≒黒葛川
っていう配置なんだろうな。
とにかく悲劇が重なる話で、のんきに”大人”やってる風に見えた連中の魂がよく見えた
物語のスタートとなる車両事故が、なかなか現実味と未来感が同居したリアルな状況設定で、お話の点火剤としてとても良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
自動運転される車両が行う価値判断は、その設計者の世界認識を反映する。
機械が殺したものはその操縦者・同乗者を越えて、設計者の責務になる時代。
意思なき機械がやったことでも、実際に人は死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
技術が先鋭化し、その上に乗っかる社会的リソースが多くなればなるほど、それで奪われる幸福の総量は大きくなる。
徹頭徹尾マテリアルでロジカルな、価値の根底にある不定形の神秘を問えない領域とは関係ないはずの物質が、人間の形を規定する。
その流れを止めえないからこそ、香苗は適切な価値論設計をAIに埋め込もうと藻掻き、未来を掴む自分の長い腕が命の選別を行った事実を、重く受け止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
後にカルデアネスが出す二者択一のジレンマは、ゲーム的にショーアップされなくとも、ずっと現実に存在し続けている。
このジレンマは、ビッグデータによる未来設計にも通じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
過去を収益することでしか未来を予測できないが、不確定な可能性はそこにはなく、描かれるのは現状を強化するよう方向づけられた明日だ。
そこからはじき出されるものが多いのは、シャンティタウンを見れば分かる通り。
ではいかにして、希望なり可能性なり、キラキラ輝いているわりにあんまりに不定形なものを、データに取り込むか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
現実でもでっかく横たわるこの難問を、香苗の天才は解決し得なかった。
その困難を理解しつつ、必死に答えを探し求め、教育に救いを求めた在り方は立派だと思う。
『その衣装どこで売ってんの…』と聞きたくなる、口切クン時代のゼロスは先進情報技術者として、文字と理性で世界を見ていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
事故による失読症で世界認識が変わったことで、彼は非言語的感性を先鋭化させ、言葉にもデータにも出来ない芸術の才を開花させていく。
この直感力が、筑紫さんが最初に気づいてその全貌を把握し得なかった”コルヌコピア”復活の意味を、最速でゼロスに理解させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
失ったことで得たもの、喪失の穴埋めをする天啓。
それが眩い輝きばかりに満ちていないことを、時の急流はよく教えていく。
不幸に思えるものを幸福に書き換えるタフな認識こそが、理不尽な二択ばかりを迫る世界を生き延びる大事な鍵。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
『大事なのは気の持ちよう』と卑近にまとめるには、あんまりにヒドい事が起きすぎる、ハードコアな過去。
絶望に潰されないために、手に入れた答えは天の恵みか、地の呪いか。
機械が果した価値判断、その結果としてのゼロス誕生に呪われかけた香苗を、のちの夫は開放する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
傷つき失われたからこそ見えるようになった世界を、壁画にし世界と共有できる希望。
あの時ゼロスは、確かにアーティストだった。
そういう方向に人を導いた区長が、後に後悔に呪われ囚われるのは皮肉だ
かつての未来こそが目の前の現在であり、様々な決断が未来の形を変え、善にも悪にもなりうる不定形の可能性を定めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
黒葛川は助けられてしまった重責に人生を捻じ曲げられ、筑紫さんは助けられなかった傷に未来を固定する。
頑なに動かないように思える大人たちにも、不定形の過去が確かにあった
何かを置き去りに暴走しているように見える人の根幹が、愛と正義と夢に満ちてて、でも世界はその輝きを許してくれないから全部が歪むことを、今回のエピソードは強調する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
己の在り方を定め、未来を固定していくもの達は皆、誰かが失ったものを背負うことで可能性を狭めていく。
ヒーローショーやってメロンパン配っていても、”現実”に追い込まれた人の凶刃は止まらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
だから俺は”大人”になって、二度と殺させないために拳銃を手にとった。
黒葛川さんとの因縁含め、筑紫さんの存在感が今回グッと膨らんだのはとても良かった。
存在質量がデカ過ぎて、皆死人を忘れられず人生歪んでいるのは、翠堂母娘に共通の異質性で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
黒葛川さんがコウキに向ける視線の重さは、かつて佳苗に向け、その生と死でねじ曲がった結果なのだとも解った。
いやまぁ、あれは歪むよ。
翠堂家は呪われ過ぎだよなー…。
口切クンが不幸を善き変化と受け止めたように、祈りを呪いに変えないまま進めれば望ましいんだろうけど、それはいつでも難しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
遺志を継いだ結果ガンガンに歪んでいく過去世代を見ていると、受け継ぐことの難しさ、死の超越法は作品一つの主題なんだろうな、と思う。
皆、愛と死という重荷を背負う。
だからこそ譲れないし、変われないし、なにか大事なものを取りこぼしても気が付かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
過去世代がどん詰まりまでガッポリ囚われた所に、アスミに呪われつつある現役世代も足を突っ込んでいるが、さて同じことの繰り返しか、新たな答えを紡げるのか。
区長にしてもゼロスにしても、一度は前向きで正しい未来に踏み出せた…他人の重荷を開放してそこに導けたはずなのに、因縁と未練が気づけば道を歪めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
でもその重さを諦めてしまえば、生きる意味も愛した思い出も、どこかに消えてしまいそうで…。
妻を刺し殺され、娘を焼き殺され。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
地獄の只中に放り込まれた区長が、”コルヌコピア”という魔法にすがるのも、ある意味納得の過去編ではあった。
それが人間の制御範囲を超えた、人間の定義を書き換えてしまう神の炎だとしても、確かにそこに愛した人達がいるなら。
ある意味間違った死者蘇生法を選び、それと24区を心中させようとしている区長。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
香苗が教育という”種まき”を選んだ意味も、今の彼には見えていないのだろう。
このままヤバい所まで突っ走るとは思うのだが、決定的な破局の前に誰が止め、故人の遺志を思い出させるのか。
やっぱ息子かな…。
区長もゼロスも、個人を超えた理不尽を前に、個人を超えた天啓を得て、なんとか生き延びていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
それをデジタル化したのがアスミからの電話であるなら、大人たちが手に入れたメッセージと同じく、そこから伸びる未来は善にも悪にもなりうるだろう。
ヴィジョンを得て、何を選び何を掴むか。
その選択権は啓示を与える側ではなく、受け取る側にこそある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
大人たちが未来を選んだ結果、生まれた間違いだらけの今の中で、神ならぬアスミは全治に溺れSOSを、彼女のヒーローに発している。
死者であり生者であり、神であり人でもある彼女の声を、正しく聞いて歪めることなく未来に繋げる。
それが今後、RGBに求められるクエストなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
そして彼らの周囲にいる大人たちも、かつてそれに挑み間違えた。
選ぶこと、背負うこと自体が過ちではないけれども、気づけば分断は加速し不和は世界に満ちている。
それにこそ、佳苗は打ち勝ちたかったのに。
過去編の登場人物、皆なんとか世界を良くしようと藻掻き、大事な人の思いを無駄にしないよう頑張ってて、でも『ま、こんなもんよな…』と思わされる現実的で歪んだ場所に着地してて、どうにもやるせなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
同時にその煮え切らない感じが、生っぽくて良かったとも思う。
かつて何かを選ぶ可能性に満ちていた者たちが、流れ着いたこのどん詰まり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
それを突破しうる希望と力が、24区の若人達にはあるのか。
あるいは理不尽極まる現実に『それでも』と諦めない姿勢が、大人の中で眠っていた可能性を目覚めさせ、世界と自分を変えうる契機となるのか。
過去世代を現在の鏡にすることで、繰り返される世の宿命と、それを越えていける可能性を同時に照らす、観測のエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
死者の思いを忘れず、世界をより良く改める。
そんな魂の根っこは大人も子供も同じなのに、気づけば何もかもが上手くいかない。
”現実”なるもののニヒルでリアルな引力を強く感じる過去編でしたが、さてこれを経て”今”をどう描くか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月9日
時を遡り様々な人の心を描くことで、お話のキャンバスがグッと広がった感じはあります。
このスケール感を生かして、ここからの終盤をどう仕上げていくか。
次回も楽しみです。