からかい上手の高木さん3 を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
順繰りに四季を追ってきたこのアニメも残り二話、冬の総決算はこれッ! ってんで、ヴァレンタインデーの二人とクラスを追いかけるエピソード。
ド直球に恋を扱う日なので、”からかい”に包んで成立してた重さが表に染み出して、ややホラーテイストすら漂う仕上がりに
”からかい”は幼い西片が大人びた高木さんと繋がっているための、重要なコミュニケーション・メディアだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
しかしそれは、高木さんが抱え込んだ感情の巨大質量で自壊し、黒くて重い恋心のブラックホールにならないための、安全マージンでもあったのかもしれない。
西片の靴箱に入り込んだチョコレートは当人だけでなく、それを目撃してしまった高木さんも強く動揺させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
いつもの調子で楽しいコミュニケーションを取ろうとする西片に、今日の高木さんはそっけない。
せっかく”ニボシ”で繋がれて嬉しいのに、その味を噛みしめるどころではない。
ずーっと繰り返してきたいつもの”からかい”に戻りたくて、でもなかなか上手く切り出せなくて、おずおずと高木さんの表情を探る西片。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
そこに立ち現れる拒絶は、今まで”からかい”の中で見せてきた心地よいミステリアスとは、明らかに色が違う。
そして同時に、密接に繋がってもいる。
高木さんに、後輩からのチョコを見せたくなかった理由。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
散々迷った挙げ句、差し出されたチョコを断った理由。
上手くその輪郭を掴めないまま、山盛りの”からかい”と胸キュンイベントを積み上げて、西片は中学二年生になった。
戸惑いのわけは、それを認めれば大人になってしまうときめきと同根だ。
恋の形がどんなものであるか、西片は怯えつつ真っ直ぐ見れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
しかし真心のある青年なので、逃げすぎた結果何かを踏みにじることはしない。
散々グダグダ悩んだ末に思いを伝え、向き合うべき相手に真っ直ぐ対峙する。
その誠実に、高木さんも惹かれているのだろう。
二人きりの”からかい”の範疇に収まっているのなら、高木さんも無敵のモンスターでいられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
しかし前回描かれた”相談”でもそうだったように、方程式に別の要素が混じってくると、”からかい”は大人びて濁り”いじわる”になってしまう。
高木さんがあまり好きではない、西片に向き合えない自分が出てくる
西片が恋し大人になっていく自分の輪郭を、照れと未熟で上手く掴めないように、高木さんも恋する自分を制御しきれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
その時彼女は、ミステリアスで永遠に追いつけない…だから追いたくなる”高木さん”ではなく、一人の少女、一人の人間としての揺らぎを身にまとう。
逆に言うと、大好きな西片と”からかい”で繋がる間は、そういう揺らぎを表に出さないよう必死に振る舞って、その鎧で関係を維持してきた…とも言えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
しかし進む時に従い彼らの世界は広がり、時に世界は他人の介入を受ける。
それは喜ばしい健やかな成長であり、何かが終わる恐怖に満ちている。
西片相手には無敵を演じる高木さんも、世界で最も愛しい関係が変化することに、それと向き合えない自分に怯えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
余裕が剥奪された高木さんはいつもと違う人に見えて、しかしいつも以上に剥き出しの”高木さん”でもある。
この矛盾した空気が、どんな原因で発生しているか。
西片はいつものように、それを具体的に直視するわけではないが、誠実で率直な…大人びた高木さんが置き去りにした幼さの、最上の形でもって無形のまま感じ取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
こういうセンサーが優れており、受け取ったものに背中を向けない青年なので、”からかい”では連敗でも、人生の勝負所では絶対負けない。
今までさんざん描いてきた”からかい”のルーティーンを踏襲しつつ、そこからはみ出す…あるいは余裕がなくなり覆いきれない冷たく暗い影が濃い、今回のエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
それは二人の関係と人格が、永遠のからかいからはみ出し、新たなステージに進みつつある様子を描いていく。
その変化は、より純情ラブコメ色を強めた三期の筆致が、ずっと育んできたものでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
微笑ましい”からかい”に収まりきれない、傍から見てりゃぁ露骨に過ぎる慕情と、季節の中積み重なる特別な出来事。
何かが変わり、終わりつつあって、それは怖く不確かだけど、けして不幸せではないという予感。
この三期はそういうモンを沢山描いて、中学二年生の一年間を終えようとしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
最終コーナーが見えてきたこのタイミングで、”高木さん”が押し隠してきた人間的な震えと、見え隠れする新たな素顔に戸惑う西片を描くのは、子供らに誠実な筆致だな、と思う。
メッセージを書いては消し、書いては消し。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
おそらくこれまでの”からかい”の狭間でも、幾度も揺れていただろう心をようやく送信した後で、”高木さん”は西片に追いつかれる。
青春の夕景は、あまりにも運命的で綺麗だ。
(画像は”からかい上手の高木さん 3”第11話から引用) pic.twitter.com/pUOogOhycE
今回のエピソードが、西片にどう見えていたかを示す顔に見えないカットをたくさん積んだ後に、本心を告げてようやく笑顔に出会える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
ここの緊張感と可愛らしさが、とても力強く演出されていて大変良かった。
”高木さん”の顔が見えないのは西片だけでなく、彼女自身にとってもそうなのだろう。
二人だけの特別な時間をかき乱す、予測不能の乱入者に心を乱された時、余裕綽々な”高木さん”の顔は乱され、自分の嫌いな自分が出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
でもそれも”高木さん”であって…でも西片が絡まなければ、けして出てこない。
冴えない中学二年生が、時折たった一人の勇者になれるように。
特別な誰かと向き合う時、自分すら知らない自分が顔を出して、何かをやってのける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
そのまばゆい輝きを大事にしている作品なので、西片だけが特権的に持っていた日常からの変化を、重くて暗い嫉妬を背負わせる形で高木さんにも宿したのは、公平でいいな、と思う。
誰かを思うことは時に怖くて、苦しいことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
それをちゃんと描いて陰影をつければこそ、恋の生み出す奇跡にも生々しい感触が、陰を越えて光に飛び込んでいく眩しさが、より強くなるのだと思う。
西片はまだ幼くて、そういう人間的な暗さが染み出さないから…つーか、ちょっとバカだから。
そしてその純朴な眩しさこそが、暗く揺れる高木さんを強く引きつけ、時に救いもするから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
”高木さん”を内破させかねない震えにクローズアップすることで、これまでのからかい勝負がどんだけ微細なバランスで成立していた、幼年期の奇跡なのかもよく分かる。
人が生きていく上で避け得ない、暗くて重い場所。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
西片はそこがどういう領域なのか、確と確かめることなくしっかり踏み込み、”高木さん”を取り戻す。
その証を受取る時、指が触れ合わないよう、不自然なくらい上から取るのが良い。
(画像は”からかい上手の高木さん3”第11話から引用) pic.twitter.com/byH1UbpH4u
西片に己のどす黒い部分、そこに向き合う怖さを告白することで、高木さんは眩い光の中へ、爽やかな風と共に進んでいくことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
心晴れ晴れと空を見上げ、いつもの”からかい”に戻れるのは、電子のメッセージよりも早く、西片が高木さんの心に追いつけるからだ。
大人びた少女が一人、恋の暗い側面に滑り落ちてしまいそうになる局面で、西片は無自覚なままその手を掴み、光に引き戻す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
彼から見た”高木さん”はいつものように眩く遠く、自分の遙か先を進んでいるように思える。
高木さんから見たら、彼自身がそう見える事にも、西片は無自覚だ。
偶発的な事故から揺らいだ”からかい”は、いつもの罪なく幼い質感を取り戻して終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
あれだけ飽きることなく、高木さんが西片をからかい続けることで何を得ていたのか…つまり大人びていく少女から世界が、何を奪っていくかも、良く分かるエピソードでした。
西片が高木さんが何に悩み、何故いつもの”からかい”で通じ合ってくれないのか、状況を乗り越えても理解していないのが、凄くこのお話らしいな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
そこを自覚できる”大人の男”になってしまったら、もうこの頑是ない遊びは別の形になって、作品は終わってしまうのだろう。
でも彼がそういう、人間にとても大事なものを消して取り逃がさない少年だということはこれまでも描かれてきたし、だからこそ高木さんは西片が好きなんだ、ということにも納得はいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
この無垢で無自覚な状況が、ホワイトデー告白大決戦でどう変化するのか。
次回最終回、大変楽しみです。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
永遠に思える一瞬は必ず終わり、人は変化を免れない。
そんな当たり前の法則が作品に染み出してきて、微笑ましくももどかしい恋模様に決着の気配が漂っているのは、やっぱ意図的なもんだと思う。
変わり、終わることは一つの必然だ。
しかしそれは、悲しむべきでも恐れることでもない。
西片と高木さんのジュブナイルな震えと痛みが、作品自体がどう転がっていくかというメタな語り口と歩調を合わせ、今この瞬間にしか宿らない詩情を生み出しているのは、なかなかに凄いことだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
なんつーか…映画に続くだろう三期には、メチャクチャ”覚悟”があったと思うのね、僕は。
それが僕の錯覚なのか、作者達の意図したものなのかを確かめる意味でも、最終回で描かれるもの、映画(とその先)に繰り越すものが何なのかは、大変楽しみだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
物語に意味を与えるのは、より善く終わろうと意図だと僕はずっと思っているので、三期の”覚悟”はすごく好きなんだ。
超長寿番組を多数抱え、”終わらない物語”を編み上げる手腕に実績があるシンエイ動画だからこそ、この三期の手触りかな、という感じもあるしね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月19日
何かが形を変え終わっていく切なさと、そこから新たに芽生えるものへの期待。
思春期に必要な空気を、朗らかに培い続けた事。僕は本当に偉いと思う。