薔薇王の葬列を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
呪詛の濡れ衣を着せられ、ジョージはロンドン塔へと幽閉させられた。
リチャードは王位への一歩目として、その悲惨な死を、悲しみの涙を演出する。
酒樽の奥に見た黄金と愛は、死出の幻。
より冷たく悍ましいものが、これより宮廷に踊るだろう…。
そんな感じの第2クール始まったばっかなのにフルスロットル、中世英蘭残酷無惨劇の第14話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
かつて三連の幻日に揺るがぬ絆を夢見たヨークの兄弟であるが、ジョージは錯乱の果てに陰謀の糧となり、エドワードは酒色と重責に心身を病んで乱の苗床と成り果てた。
そして末っ子は麗しい修羅と化して、ヨーク家と玉座の安寧のために、兄弟を殺し王を弑する血塗られた道を、ひたすらに歩んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
リチャードの言う”ヨーク家”とは具体的な兄弟などではなく、亡父の思い出に相応しい観念であり、それを汚すものは軒並み排除する覚悟が整ってしまった。
彼が追う玉座もまた、ヘンリーやエドワードが腰掛けた、どうにもならないほどに複雑で、そこから生まれ出る権力は人の手に余り、志を腐らせ悪徳を生み出す、偽物の黄金であってはならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
ある意味ピューリタン的な潔癖さを先取りするように、リチャードは高潔で邪悪な観念の人として、謀略を弄ぶ。
ここら辺の苛烈な身体性の無さが、リチャード自身己の”身体と性”を一切肯定できず、あの森の中で愛されるべき心と体を埋葬してしまったことと、通じ合っているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
他の描画と同じく、作中で格言があるわけではなく思いを馳せるような描き方であるけども、そういう薫りは確かにある。
後にバッキンガムとの確執の種ともなる、誰にも告げられない秘密。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
悪魔の身体とかつて母に呪われ、今回も神に守護を祈られる”愛しい息子”にはカウントされていないリチャードの、癒やされることのない傷。
完璧なる玉座、無謬なる”ヨーク”の追求は、そこに起因するのか。
ここら辺は玉座簒奪を超えて、リチャードの命運が行き着くところまで行かなければ…あるいは、ボズワースを超えても結局、解らないのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
血と陰謀、祈りと性が複雑に絡みつく、ねっとりと見晴らしの悪い人間模様。
その一筆一筆を、しっかり見ていくことが大事なのだろう。
高貴なる憂鬱を晴らすべく繰り出したロンドンの街は、中世的な猥雑と悲惨に満ちていて、リチャードはそこに己の姿を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
貧困と業病に呪われた下賤と、家名と財力に守られた自分の間に差を感じず、共に楽園を追放された罪人の哀れさを感じる公平さは、王の資質かもしれない。
酒に浮かれた小娘ベスの呑気も、べっとり作品を覆う酒毒のキツさを考えるとあまり救いにはならず、しかし彼女が投げかけた波紋は興味深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
ケイツビー…お前…。
リチャードの秘密を守り、己の思いも秘める忠義の従者と、キングメーカーとしてその全てを探りたがるバッキンガム。
新旧側近が秘密と愛を巡って、世界を軋ませる綱引きの様相も見えてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
エドワードとウォリック伯の”絶対の約束”がぶっ壊れるのはそれなりに時間がかかったが、バッキンガムが前回立てたフラグ回収するのマジ超音速で、運命のうねりが加速してるのを感じる。
ジョージもあっさりと、、政治喜劇のコマと踊って死んでいった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
思えば赤薔薇の陣営から父の幻影を見て、兄王の旗下に帰参したのも、リチャードの生み出した人造の恐怖に踊らされたのものだった。
その死も狂気も、玉座を取り巻くウッドヴィルの茨を取り除く先触れとして利用されていく。
慈悲深さを装いつつ、狂気の告発を操って一手、王妃一族にヒビを入れ、用済みとなれば酒樽に沈める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
狂えるジャック、もはや”ヨークの男”にあらず。
否…もともと暖かな家族の夢など、何処にもなかったのだ。
かくしてリチャードは、決定的な一線を越える。
ここから先に待ち構えるのは、血族も婚族もなくお互いの喉笛を狙い合う謀略戦であり、ロンドン塔も眠る暇なし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
理想の玉座のために何もかも犠牲にする覚悟は、幼い王子たちも容赦なく牙を突き立てる事となる。
ジャックの遺骸が運命のドミノを倒した先に、子供の遺骸があるのは、知っててもやるせない
ジャックの末期は悍ましくも幻想的な風景で、大変に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
マームジーの酒樽に沈められ、黄金と髑髏の夢に溺れる。
最後に愛妻の声を効いたのは、アンの末期もまた同じであった事を思えば、微かな希望なのか、儚い幻か。
ともあれ、ジャックが見た地獄は現世そのままだ。
かつて父が約束した、金輪の先にある楽園。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
誰もが現世の苦しみから解き放たれ、幸福に正しく暮らすことが出来る夢の場所。
しかし王冠を追い求めるほどに手は血に塗れ、憂鬱は積み重なり、酒に女に出口を求めるほどに心身は苛まれていく。
腐敗の先に、この死に様である。
リチャードが早い段階から苛まれ、その人生を左右してきた危険な幻。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
個人の中にある狂気が時を経て、兄たちに染み出し侵食を始めたような展開でもあるが、これは”ヨーク家”に留まらない。
王権を目指すものの人格は、玉座を取り巻く人間も、そこから広がる国土も汚す。
ここら辺、ヘンリー六世の柔弱がイングランドに乱を呼び込み、リチャード主役で演じられてる残酷喜劇の遠因になってるのと、面白くも悲しい呼応だな、と思ったりもするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
王の身体も心も、王個人のものではない。
それを超えた巨大で制御不能なものへと、否応なく拡大していく。
あるいはジョージもそれに魅入られて迷い、挙句の果てに酒樽に沈んだのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
兄王エドワードの乱行も、玉座の退屈と重責故…と思えなくもない。
どちらにしても、リチャードが打った布石は様々なものを揺るがし、王権への道は血と嘘で塗り固められていくことになる。
前夫の形見を投げ捨て、イングランド王妃であると高らかに宣言したマーガレットからも、”王”という概念と添い遂げた、ある種の狂気を感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
王権に間近に触れ、その後継者を己が胎から生み出し、揺らぐことのない系譜…”朝”の始祖として一刻を担う、重責と不安。
女傑はそれを受け止める覚悟を総身に漲らせているが、その一族はどうなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
ヨークとウッドヴィル…”真実の愛”に基づく婚礼で交わったはずの血は、内乱の予感を孕んで、不和の腫瘍へと結実しつつある。
ここで王が倒れれば、それが破裂するのは確実だろう。
リチャードの、狙う通りに。
全ては、ヨークのため。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
呪文のようにその言葉を噛み砕いて、街での乱痴気騒ぎにも、兄殺しも果たしてきた。
妻への愛も、子への情も、責務のための偽りと嘘で固めた中には、もう何もない。
人間の形をした美しい空虚が、ただ玉座を求めてロンドンを行く。
後に待つのは、当然惨劇だろう。
幼きエドワードとの触れ合いに、かつて父と過ごした日々を思い出しつつも、抱きしめることを己に許さないリチャード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
安息の全てをあの森に殺したはずの男は、謀略の相棒たるバッキンガムに、己の全てを預けていない。
このほころびが、修羅道にどんな乱れを与えるか。
あるいはその真実へとバッキンガムを近づけた、ジェーンの思惑は。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
そして汚れ仕事を請け負った、ジェイムズ・ティレルの”どっかで見た顔”は、どんな表情をしているのか。
ジョージの死はただの始まりに過ぎず、数多の謎と残酷が、暴かれる日を待っている。
相変わらず重いよーッ!
…って文句たれても、史実と原案がそういう調子なんだからしょうがない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
この出口のない重苦しさに、どういうファンタジーを交え何を語るか。
リチャードの性っていう奇想が、史実の悲惨を呼び寄せる引力源として機能してるの、歴史伝奇の王道って感じがあるわな。
そんな感じで、さらなる乱に向けて思惑が混ざり合うエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月19日
荒廃し硬直しきった亡霊と、己を見限ったように思えるリチャードが、未だ人間の血潮をどこか宿して、それが計画のほころびにもなってるのが、なんとも因果だなぁと思います。
未だ、グランギニョールの幕は閉じず。
次回も楽しみ