ヒーラー・ガールを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
玲美の家に遊びにいったかなと響は、音大に通いつつメイドをする葵と出会う。
孤独な幼少期から、玲美の夢を家族代わりに見守ってきた彼女は、自分自身の夢を眠らせてきた。
エアメールの山が教える己の罪と向き合うべく、玲美はメイド服を着込む…。
そんな感じの…いや、前置き飛ばそう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
”ヒーラー・ガール”にしか作れないだろう、傑作であり怪作だった。
評価に迷ってこんな時間まで抱え込んでしまったが、優れたアニメであり、凄い話であるのは間違いない。
すべての評価は、Cパートの衝撃をどう受け止めるか次第…だと思う。
お話としては待ってましたの玲美ちゃん回であり、序盤は軽やかに心地よく、剽軽な日常が積み上がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
やっぱダイアログの作り方が特殊かつ的確で、キャラの掛け合いを聞いているだけで気持ちよくなってしまうのは、この作品の強み。
ややツマり気味に、矢継ぎ早に畳み掛ける会話が楽しい。
無理くりテンションを上げているわけでもないし、常識はずれの変人で固めているわけでもなく、少し奇妙で、でも一緒にいるととびきり楽しい時間がそこに在るのだと、説明するのではなく納得させる描画力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
ここに葵さんが自然と混ざることで、その存在が心地よく受け止められていく。
それは玲美ちゃんが当たり前に感受してきた日常で、親はなくとも葵さんがいてくれるから、夢を殺さず生きていける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
家事もしてくれるし、守ってくれる。
そんな幼年期から、玲美ちゃんはちょとずつ出ていく。
慣れない家事を頑張り、一人で立つ力をつけようとする。健気である。
メイドさんなのに指仕事をしない描写が入ることで、葵さんの”本職”が別にあることが、自然と見ている側に解ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
その暗い影が書斎に広がって、序盤のアップテンポが一気に落ち着くのが、エアメールの発見である。
ここで、お話がスッと冷えていく。
分水嶺の書き分けは、鮮烈である。
今回歌要素の使い方も特殊かつ的確で、自分のために夢を押し殺してきた事実を前に、涙混じりで激情を伝える形で、まず玲美は歌う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
これはワンフレーズの小さな使い方で、だからこそ穏やかな日常が因縁と感情によって変化したことを、的確に伝えてくる。
この後かなと響が葵さんの話を聞き、玲美の家庭環境が解ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
あくまで勝ち気な玲美お嬢様は、自分からウェットな部分を晒しはしない。
ここで葵さん側からアプローチがかかるのが、僕らがここまで見てきた玲美ちゃんのイメージを補強し、彼女がどんな存在か解る手助けにもなっている。
なまじ音楽ジャンルで成功を得て、結果家を空にして顧みない両親は、ヒーラーという夢を土足で踏む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
その痛みにうずくまりかけた時、葵さんはただ一人、玲美を信じてくれた。
玲美ちゃんはあの年で、肉親を見限り他人の手に縋る決断を果たしている。
アーパーお嬢様(善人)は、その上に咲く華だ。
こういう重いところに切り込んでこその個別回であるし、その上で自分の夢を追って欲しいと願う玲美の気持ちに、かなと響が寄り添える関係も描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
葵さんの手を振りほどく決断は、もう一方の手をつなぎとめてくれる親友が、いてくれればこそ出来るのだろう。
玲美ちゃんが家事を学ぶことは、守られる子供から一人で立つ大人へと育った…少なくともその過渡期に在ることの、証明としてある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
半ば”家”が破綻している彼女が、家事労働者/家族代行として葵さんを束縛・消費してしまっている現状に甘んじず、自由と別れを手渡そうとする時。
歌は過剰に飾った明るさ、涙を見せないための鎧として、どこか空々しく響いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
メイド姿で朗々と歌い上げる玲美ちゃんが、葵さんを巻き込めていないこと。
心に響くはずのヒーラーの歌が、空回りしてむしろ哀しい事が、上手く玲美ちゃんの決意を演出していく。
ここで作品の主題であり、万能の解決策になるべき”歌”が持つ、空気の読めない浮かれた感じを強調して描いてくるのは、勇気のある使い方だな、と感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
その無理くりな感じが、玲美ちゃんの痛ましさと決意、脆さと強さを際立たせているのも、主題を別角度から照らす良い演出だ。
親友の助けも借り、一人でも生きていけると強がりを証明して、玲美ちゃんは思いの丈をぶちまける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
激情は歌に乗らず吐き出され、しかしその後万感の愛がメロディを得て、今度の歌は葵さんを優しいイメージに飲み込む。
二度冷たく響いた”歌”を経て、玲美ちゃんはヒーラーが奏でるべき歌を演じきる
葵さんが離別を決断する決定打が、職業としてのヒーラーに必要な歌の力であるのは、なかなか興味深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
家事が出来ること、相手を思えばこその決断であること。
それも巣立ちの証明であるが、葵さん(だけ)が後押ししてくれた夢が、職業として身になっていると示して、二人は別れていく。
葵さんに見守られて積み上げてきた、玲美ちゃんの歌。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
そこにはこらえていた涙の湿り気は混じらず、暖かで優しいイメージだけがしっかり届く。
友に背中を抱かれて初めて泣けるプロフェッショナリズムを、少なくとも愛する人には保てるだけの、歌い手としての成長証明。
このお話が歌う癒やし手の物語である以上、意固地な執着と未来への不安を”癒やす”ための決定打は、やはり歌でなければいけないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
女達は涙を隠し、お互いの道へと進んでいく。
さらば、愛おしき日々よ。
苛烈ながら、玲美ちゃんの気高さと優しさが強く響く、良いエピソードである。
…で収まりそうなところに、どんでん返しのハッピーエンドが降ってくるわけですよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
いやー…ここがホントに難しい。
『戻ってくるなら、玲美ちゃんの決断は何だったの!? 巣立ちの歌の意味は?』となるし、『でも幸運が二人を助けてくれるなら、それは有り難いなぁ…』とも思う。
この結末に落ち着いても、今回玲美ちゃんが証明した成長も、それを育んだ葵さんの献身も、消えたり無駄になったりはしないと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
ただまー…Cパートまでに醸造されたムードと、オチの大逆転っぷりが収まりどころを見つけてくれねぇ! ってのは、確実にある。
特大級の膝カックンだったな…。
しかしまー、作品世界に生きている存在として玲美ちゃんたちを感じ、お話として収まりが悪かろうがより幸せな物語を、いつの間にか望むようにもなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
その視線から見ると、せっかくの決意に水を差す幸運は、待ってましたの僥倖でもある。
涙より、笑顔のほうがやっぱ良いわな。
ぶっ壊れた”家”の身代わりとして、幼子を守ることが葵さんの夢となり、それを知ってしまった玲美ちゃんがメイド服で武装して両足で立ち、信じてくれた夢の力を証明する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
今回のエピソードで生まれた尊い行いが、この結末で消えるわけでもない。
つまりここから玲美ちゃんと葵さん…その人生に深く絡んだかなと響の関係が、どう変わりどう変わらないかをちゃんと描くことが、このお話の値段を決めるかな~…と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
のんびりゆったりに見えて、生まれた変化を大事に育てて、より良く開花させていく事を忘れない作品でもあるので。
悲しいことも人生の一幕と、涙をこらえて背中を押す強さと優しさを描きつつ、それで終わることを良しとしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
作品が持つ朗らかな凶暴さが、力強く暴れるエピソードでもあったかな。
ホントなぁ…一筋縄ではいかないアニメだよ、つくづく。そこが好き。
玲美ちゃんにフォーカスした話はかなり待ったので、しっかり掘り下げてくれたのは嬉しかったですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月30日
幸運に微笑まれ、未だ続く縁にツンデレかました彼女が、どんなヒーラー修行を続けていくのか。
これから先の物語も、大変楽しみです。