であいもん を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
気づけば柚子も色づき、木枯らしの吹く季節。
一陽来復を告げるゆず羊羹は、和に幼い頃の記憶を呼び覚ます。
一果に届いたもみの木は、かさぶた混じりの母の愛。
フラフラと、二人の女の間を木の葉のように惑いながら、和のクリスマスが更ける。
年も幸せも、一つ巡ってまた一つ。
そんな感じの、歳の瀬京都のスケッチである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
このお話らしい穏やかな空気と軽やかな剽軽を織り交ぜながら、色んな人の現在地が冬景色に浮かび上がるようなお話だった。
こういう手触りのエピソードを出せるのは、やっぱ作品独自の強みだなぁ…などと思う。
お話の方は大きな事件もなく、かといって波風なしというわけでもなく、僕らの好きな”緑松”の空気そのままに転がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
古い機械で絞る柚子の、指切り傷に染みること。
細かい裏方仕事のしんどさが書かれると、和菓子屋のアニメだなー、という感じがある。
祖父が和の誕生日を祝って作ってくれたゆず羊羹は、周りが言うほどの美談でなし、生々しい辛さと嫌気がまじりつつ、それでも愛しい味がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
うんざり顔と懐かしさが入り交じる、甘くて少し酸っぱい喉越しは、このお話が”思い出”を描く筆に良くあっている。
あんこの黒と寒天の白に塗り分けられたデザインも、モダンで清潔感があり、なかなか良い菓子だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
思い出を上手く象徴化したこの菓子で足を止めず、物語は和菓子関係者のクリスマスへと転がっていく。
それは”今”の物語である。
芋名月の頃、母との因縁にケリを付けたようで、もみのきを見上げる一果の表情は複雑だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
複雑で良かったなぁ、と思った。
割り切るにはあんまり深い傷を一果は受けてきたし、そこでキッパリ大人びた対応をされると、逆に心配になってしまう。
また、約束を破られるのではないか。
感じて当然の疑念に立ちすくみ、その背中を一果に押してもらって、ちょっとずつ進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
そういう、あんま賢くないのったりのったりの歩みが見れる方が、一果も人が歩んで当然の平坦じゃない道を自分の足で歩いてる感じがする。
そこは、一回実の家族に踏み荒らされた獣道で…
おっかなびっくり今一度、一果が足を入れてる楽しい道である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
そこでは鈍感男が自分を空いてる女二人を、なーんも気にせんと同時に侍らせて、クリスマスの街を進んだりする。
過去の罪をどう贖ったものか、真剣に悩んでるお母ちゃんよりも、”今”の一果はそっちに目が行く。
薄情といえば薄情であるが、真理がずっしり抱え込んだままの重荷は、和や他の人達の助けもありつつ、”今”の一果にはそこまで食い込んでいない…ということなんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
それは当の一果だけでなく、どうあがいても彼女の母である真理にとっても、まだまだ続く獣道に絶望しなくていい、良い材料だ。
ようやく家族コメディが演じられる距離感で、顔合わせ同じ席につけるようになった…ということでもあり、今回のトンチキ親子体面は僕は凄く良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
色んな縁が重なってこういう間合いの親子になったが、お互いを繋ぐものは基本笑顔なわけで…未だ姿を見せぬ、親父と違ってな!
さて一果をそういう場所に持っていった功労者は、歳の瀬ものほほん浮かんでいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
笑顔でジャブを打ち合う美弦と佳乃子の関係も、なかなかコクがあって良いもんだが、いい加減気持ちに気づいてケリ付けたれや…という気持ちにもなる。
まぁ、気づけば何かが確実に終わる構図だけども…。
ハタから見てっと、恋に恋してる気配のある美弦よりも、色々ややこしいことありつつ客観性に優れてる佳乃子のほうが、状況有利…って感じがするけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
当の和がさっぱり心を見せないので、どう転がるかは全く不明である。
この状況のためにも、和は顔の見えにくい主役であり続けてんのかなー。
美弦と佳乃子の関係が大変いい感じで、ビシバシ牽制し合いつつ年の離れた友達でもある塩梅は、このあやふやな状況を重くしすぎず、笑って済む軽さにまとめてくれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
恋一本に視界を狭めず、どうすれば自分も他人も笑って過ごせるか、ちゃんと考えられる人たちの話なのはありがたい。
どっちつかずの和が出した、ギター一つのクリスマスプレゼント。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
その音色が、糸の切れた凧のような彼の”今”なのだろうと、しっとり染みるエピソードであった。
自分の指先に職人としての未熟を見て、元恋人の顔色見れない姿は、ちゃらんぽらんの奥に結構、しっかりした芯があることを教える。
運命に流されたようでいて、『家に戻って和菓子やる』『一果に家族として向き合う』つうミッションに一生懸命で、だからこそ周りから寄せられる好意に目がいかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
そういう和なりの誠実さみたいなもんが、寒風にホッコリ匂い立つのは、この作品らしい語り口だ。
一果なりのツンデレで差し出された誕生日プレゼントが、どんなふうに芽吹くかを楽しみにしつつ、作中年も暮れていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月2日
戻って、出会って、笑って。
色んなことに一生懸命だった日々が、明日に続いていく。
その足取りが、やっぱりいいなと思える回だった。
次回も楽しみ。