であいもん を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
桜咲き誇る季節、一果と和は遊園地にいた。
ずっと約束したおでかけを、心から楽しむ視線の端で、和は父の影を追う一果を見つめる。
心騒ぐ春の日だからこそ、取り残された陰りが濃い場所で、一果は半歩、小さく踏み出す。
そんな風に追いかけあって、この先の一年を、また共に…
そんな感じの京都舞台の家族絵巻、春に戻っての最終回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
大変良かった。
巴との関係に決定的な伸展はあえてなく、しかし和が実家に帰ってからの一年間、一果二年目の”緑松”での日々が何を変えたのか、良く伝わるフィナーレとなった。
焦りなく、丁寧に日々を重ねる。
和菓子を隣において、このアニメが12話紡いできたものに全く嘘のない、落ち着いて深みのある、良い最終回であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
周辺の人々も横幅広く切り取りつつ、あくまで一果と和二人にカメラを寄せて、交わるようで重ならず、すれ違ってるようで寄り添う距離感が、良く伝わってきた。
おでかけ本番が印象に残る回だが、早朝親父さんと修行している場面の静けさが、大変に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
散々遊び呆け、気軽に戻ってきたように思えた息子が、思いの外本腰で家業に取り組み、和菓子に向き合っている。
その姿勢を一年通じて確認したからこそ、一粒万倍日を選んで、一つ段階が進む。
あえてBGMを廃し、生活音を色濃く入れて魅せる構成は、一果が和を見つめ直す視線と上手く重なっていて、見ているものをお話の中に引き込む力があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
待ちに待った約束のおでかけ、浮かれた空気で”いつもの和”を印象付けておいて、親子の生真面目な表情をお出しされると、目を離せなくなる。
賢い表情でツンと他人を遠ざけて甘えないのは、一果なりの防衛策だったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
優しい日々に絆されて、捨てられたなお好きなお父さんを忘れていってしまう自分を許さない、健気で厳しい姿勢もあろう。
しかしその頑なさも、そろそろほぐれて良い頃合いである。
その一助として、テキトー極まる変なおじさんが、幾度目か見せた本気の表情は、遊園地での交流と同じくらい、良く効いたのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
一果が迷子を見つけ、迷子になっている自分を見つけるシーンの無音と合わせて、音響がよく仕事をした回といえる。
凄くこのアニメっぽい演出で、総まとめに相応しい
一果が泣いている子供を見つけた時、そこには自分自身の姿が反射していたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
一人で泣いているので、お父さんに見つけて欲しい。
しかし目の前の子供は当然自分ではなく、声をかける間もなく親が迎えに来ることで、寂しい静けさが自分を包囲していることに気付かされてしまう。
春、遊園地、楽しそうな親子連れ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
心騒ぐ祝祭の季節だからこそ、そこに馴染めず踏み出せない自分は、浮かび上がって見える。
一果はニ年を経て、ようやく自分が辛くて寂しい、ただの子供である事実を見つめれるようになったのだと思う。
それを受け止めるのは、とても辛いことだ。
和の袖を引けるようになったこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
お父さんの話ができるようになったこと。
思い出をなぞっても辛さだけが溢れなくなったこと。
和が来る前の一年間、”緑松”の人々が寄り添ってなお切り崩せなかった、賢く強い子供の仮面が、春に綻ぶつぼみのように、内側から砕けていく。
それはじっくり時間をかけて見守ったからこそ生まれる変化であり、静かに時が流れ、日常に思いを重ねたからこそ生まれた癒やしでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
とても深く傷ついて、その痛みを表に出せないほどに苦しい少女と、その生き方にどっしり寄り添うお気楽男を描く隣に、添わった”和菓子”
それは穏やかに積み重なり、確かに移り変わっていく”時”そのものに形を与え、美味しく噛みしめることが出来る存在として、作中描かれていたように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
食べると甘くて楽しくて、明日へ進む心の糧になってくれるもの。
見て美しく、様々なメッセージを込められる、菓子の形をしたひとつの文。
そういうもんとして”和菓子”を作るのだと、ヘラヘラ顔の奥に結構なマジを入れて実家に帰ってきた男が、毎日毎日静かに、血の繋がらない娘に送り続けてきた愛。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
それを少し斜めな姿勢のまま、受け取ってあげてもいいかなと、一果は今回自分に許した。
それはけして消えない父への愛憎を、子の身で背負うには重すぎる想いを、頼れる他人の袖引いて、半分持ってもらう決断だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
そこに一果が至れたことと、和が導けたことがこの物語の幕となるのは、僕は凄く良いなと感じた。
じわじわと、一年かけてようやく”ここ”。
和はそんな歩みに焦りもしないし、一果に何が正しいかを押し付けもしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
ただただ隣で、つれない態度にも痛ましい健気にもめげることなく、ずーっとアホ言いながら寄り添い続ける。
その根気は、気楽に見えてそうそう出来ることでもない。立派で、偉いことである。
ずーっと一果を見つめ続けてるのに、視線の重さを感じさせないようアホでい続けて、受け取る姿勢ができたのを確認してから、自分の思いを預ける態度は、凄くジェントルだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
一果の癒えない傷と、それに向き合ってる一果自身を、子供とナメず、一人間として尊重した、焦りのない態度。
それは作品全体の語り口でもあって、ずっと父の残影を追ってしまう一果の寂しさを、尊重しながら一年過ぎたな…と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
それは消えない。無くならない。
しかしその上で、ちょっとずつ変わっていくことは確かにできる。
”和菓子”はそういう変化と幸福に続く、大事な糧になれる。
そういうメッセージも、積み重なる日々の確かな描写の奥に静かに紛れていて、とても品が良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
この春の先に、まだ物語は続いていく。
可愛い可愛い一果ちゃんを、こんだけ追い込んでるクソ親父を草の根分けても探し出し、決着付ける話も見たくはある。
しかしそんな結末を焦らずとも、確かに変わって生まれていくものがあり、小さな幸せもそこに在る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
そう認められるように、一果も変わっていく。
そこを確認できていれば、幸せな結末へと物語が進んでいくことを確信して、満足したまま見終われるのだ。
というわけで、であいもん全12話、無事終了しました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
大変面白かったです。
水彩の背景に京都の四季を溶かして、流れ行く時間をゆったりと楽しませてくれる舞台の作り込み。
基本明るく楽しく、時に微かに苦く、色んな人の色んな人生が転がっていく面白さ。
どっしり落ち着いた描線で描かれる、和菓子屋の手仕事には確かな実在感があって、ゆっくり焦らず何かが積み上がっていくドラマの方向性を、しっかり下支えもしてくれました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
全体的にどういう”空気”を作っていくか、明確なヴィジョンに基いて、アニメの全領域が頑張っていた印象。そういうの凄く好き
お話全体としてみると恋にしろ家族にしろ、何かが決着したわけでもなく、充実感には程遠い話運び…とは、けして言えず。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
一話一話移り変わり積み重なる、当たり前で大事な日々と、そこに活きる”和菓子”の姿を明瞭に切り取ってくれたおかげで、変化の途中にある皆の人生を、我が事のように感じれました
12話で一年、あくまでそこまで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
ドラマとしての盛り上がりよりも、時間的フレームを優先して転がしていく構成を選び取ったことが、作品から焦りを抜き取り、奥行きと温もりを作っていたと思います。
何かが終わって、何かが始まる大きなドラマは確かに大事だけど、それが無いから無意味…ではない。
”いい子”の外装に凄くナイーブな痛みを詰め込んだ一果の迷い道を丁寧に追いかけ、それを見つめ続ける和を一年どっしり描くことで、人と人が繋がり、変わっていく歯ざわりを伝える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
そんな物語が、しっかり形になっていました。
彼らの歩みを包んでくれる、京都という街の優しさ、美しさも良かった。
和は正直言えば、最初感じた『なんだコイツ…』という感覚が抜けない主人公で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
その内側にあるものをなかなか語らず、むしろ不定形で不透明だからこそいろんな状況を打破できる、ジョーカーみたいな存在として描かれ続けて。
こんにゃくを箸で掴むようなとらえどころのなさに、難しさを感じもしました
しかしあえて内言を封じて、和の人柄をその行い、他人への影響から感じ取っていく筆致は、一果が変なおじさんを見つめ、好きになっていく過程と同じで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
こういう形で、作中人物とのシンクロ率を上げていくレトリックは個人的に新鮮で、なかなかに面白かったです。
和がどんな人間か、一果と一緒に読み取っていく日々は楽しかったし、読ませてくれる懐の深さ、軽薄の奥にある味わいを自分で見つけていくのは、得難い視聴体験でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
それはつまり、和という主役、このお話を好きになっていった、ということです。
焦りのない筆致で、だんだん変わっていく世界と人生を描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
そういう作品を、だんだんと理解っていく、好きになっていく事が出来たのは、僕はとても幸運な体験だと思う。
そしてそんな歩みは、凄く精妙に丁寧にアニメを作り上げたから、生まれたのだとも。
そういう所に僕を連れて行ってくれるお話を、1クール見れてとても良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月23日
選び取った語り口と作中のドラマ、フィクションと現実の歩調がしっかりと噛み合ってる作品は、やっぱりとっても好きだなぁ…。
”であいもん”、大変良いアニメで、面白かったです。
ありがとう、お疲れ様!