デリシャスパーティ♡プリキュアを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
はごろも堂閉店の報を受け、らんは終わりを拒絶するべく一人駆けずり回る。
終わるものには終わるなりの理由と事情があると、諭す周囲の声は聞こえない。
悪いデパートが、思い出を奪う。
そんなシンプルな世界観から、一人の少女が巣立っていくお話。
そんな感じの、いいんですか! らんらん個別エピでこんなに”死”の匂い漂わせて!! という、デパプリ第21話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
嬉しい不意打ちで、大変良かった。
ぶっちゃけはごろも堂閉店回避のため、みんなで協力するエピソードだとばかり思いこんでいたので、この展開は意外かつ興味深かった。
前回と合わせて、プリキュアチーム内部の人格的成熟度、周辺視野の差異が良く見えるお話になったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
ここねとあまねは”いい子”同士、お互いが見落としていたものを差し出してくれた意味を即座に理解し、言葉にして伝え合う。
他人が見ている世界を想像する力も、そこに歩み寄る手筋も整っている。
しかしらんちゃんは、思い立ったら一直線、自分の世界の中で正しいと思えることに向かって、ただただ真っすぐ進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
世の中、そんなシンプルに割り切れることばっかじゃない。
あまねが見据えているもの、後にらんが理解ることにまで、視線がいかない。
ではそれは、おバカで恥ずかしいことなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
今回の話運びは、そういうシンプルな切り分けも静かに拒絶していく。
らんちゃんには料理への情熱と、それを言葉にする能力、発信する手段がちゃんとある。
あまねも感心する強みがあって、それは狭くて強い彼女の視界と、深く結びついている。
思い込んだら一直線、好きなものに真っ直ぐ体当りする気質があって、らんちゃんは人気キュアスタグラマーの地位を得ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
そんな視界が取りこぼす、世の中の複雑さ。
『悪いデパートが可愛そうな和菓子屋さんを追い詰めて、お客がいなくなっちゃうから止める』という、シンプルな物語の否定。
実際に老婆の言葉を受け取るまで、らんちゃんは自分の世界を疑えないし、それに反する友達の言葉も素直には受け取れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
それは未熟であるし、成熟するために絶対必要な前段階でもある。
体験して、納得して、白紙の自分に新たに書き加える素直さを、らんちゃんはちゃんと持ってる。
暴走もせず周りを気にする『(大人の都合に)いい子』の成熟に、自分を浸しきれないらんちゃんの未熟。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
それを嘲ることもなく、無理くり物わかりよくすることもなく、未熟で狭い視界のまま、善良に突っ走らせて、しっかり学ばせる。
そういう視線が、しっかりある回だった。
今回らんちゃんは、歴史がいかに作られていくかということと、終わっていくことの意味を手探りしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
水無月の由来を知り、菓子という文化に育まれた歴史を大事にしてるあまねが、すでに体得しているもの。
それを知っていればこそ、はごろも堂の事情を想像できたもの。
そういうものを、迷って間違えて自分のものにしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
その言葉の真の意味で、賢くなっていくのだ。
これはらんちゃんに見えないもの、知らないことがいっぱいあるからこそ作れる物語で、思春期の少女の生活に寄り添う物語として、とても大事なお話だと思う。
自分が良いと思った救済策に、手を貸してくれないあまねにらんは怒る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
それを同い年の友達に伝えると、むしろあまねの見ている世界にここねは身を寄せ、バランスの良い人格してるゆいは、おばあちゃんがすでに与えてくれた学びによって、よく知ることの意味を諭す。
らんちゃんは友達の成熟度から置いていかれて、一人暴走気味に善意を振り回すことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
それは何も間違っていないが正しくもなくて、ガキの身勝手と切り捨てるには純粋にすぎ、自分で納得して引っ込めるしかない想いだ。
それを知ってるから、あまねもらんを抑え込まない。
終わらされるのではなく、譲って終わっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
はごろも堂店主の思いを知ると、らんちゃんの世界はぐるりと回転する。
悪いデパートがかわいそうな老舗をいじめるという、分かりやすい善悪の構図は何処にもなくて、否応なく老いて去っていく切ない摂理を、肌で知って受け止めていく。
世の中、そういうもんだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
文字にすると諦めの色が濃い心境を、らんちゃんはしんみりと受け入れた上で、思い出を歴史にしていくにはどうしたら良いのか、他人の思いを尊重した上で自分の願いを貫く手段を、彼女なりに考え始める。
ここで幼さにしがみつかないのは、とても強いと思う。
単純でゆらぎのない世界に活きていたほうが、他人の心境とか事情とか、物事の裏側なんて探らなくていいから、楽に過ごせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
でも、世の中そんな風には出来てないと学んでしまった以上、らんちゃんは賢く、強く、優しくなっていくしかない。
自分よりちょっと大人びてる友達も、多分おんなじように…
驚きと寂しさと痛みを込めて、自分の世界を揺るがされたからちょとずつ、賢く優しくなれたのだろうし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
そんな実感を込めて、らんちゃんはキュアスタグラムという自分の領域に、はごろも堂の思い出を書き記し、歴史として保護していく道を掴み取る。
思い出に宿った魂の熱量を、覚えていればこそ歴史が生まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
街の小さな和菓子屋の終わりに、ひっそり寄り添う今回は、ナルシストルーが奪う”食の思い出”がどんだけ大事で、壊れやすいかを静かに語りもする。
分かりやすい大事な思い出ってのはないんだけども、60年間人の営みに寄り添ってきたモノ
そのしみじみと大事な感触と、誇りある終わりを、ナルシストルーの簒奪は台無しにする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
こういう形で、”悪の組織”がなんで許せないか、話のメインテーマを大切にしなきゃいけないかを語りに来るのは、非常に渋いが力強いと思う。
そらー、土足で踏んじゃダメだろう。
キャスタグラムという最新のITメディアが、消えゆく老舗の思い出を永遠にとどめ、歴史に変えていく希望として描かれているのも、趣があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
新しいものは古いものと繋がり、終わることは新しい始まりでもある。
ゆずり葉の常磐が、葉を落とし入れ替わることで成り立っているように…
世代が移り変わり、形が変わっても確かに、繋がれる志がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
最後の華やぎを眩しく輝かせる瞬間ではなく、全てが終わって寂しく消えゆくはごろも堂の、しかし誇り高く愛に満ちた夕日の中の”死”をしっかり書いて終わったのは、かなり踏み込んだ描画でとても良かった。
らんちゃん幼くて善良なので、何かが終わることが凄く怖かったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
自分が大事だと思うものが終わっていくのに、何も出来ないのも耐えられなくて、自分が正しいと信じることを振り回して、自分を守ろうとしていた。
でもそれは、終わることを選んだ人の誇りを、横からぶっ叩くことでもあった。
世の中そんな風に、自分の見てる世界だけではなんともならないことが確かにあって、終わっていくことの中に色んな正しさや眩しさがあって、複雑で難しくて面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
そんな風に思える終わりと出会い、迷ったり間違ったりして自分で納得したから、らんちゃんは老婆の決断を邪魔せず見届けることを選べた
これは(他の仲間と同じように)未熟な部分が沢山ある、だからこそどこまでも成長できる一青年のお話として、凄くしっかりしていたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
あまねの正しさを飲み込めない未熟を、ここねとゆいが諭し、補い、らんを一人にさせなかったのが、なんか凄く良かった。
抱き合ったり見つめ合ったり、『これが友情ですよ!』っていう分かりやすいサインはないんだけども、お互い別々だからこそ足りないものを補い合って、肩を組んで一緒に進んでいける彼女たちの未来が、丁寧に描かれてた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
いつからんちゃんにあって皆にないものが、今回の恩返しをするだろう。
そういう公平で、相補的で、お互いの強さと至らなさを尊重しあえる関係で繋がっていたから、らんちゃんの幼く真っ直ぐな怒りを、友だちは見守れたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
そういう間柄があの四人にあるのは、俺は凄く良いことで、恵まれているありがたいことだと感じている。
なにかとフワッとした質感で転がるデパプリにしては、かなり異質なリアリティで進む話であったけども、らんちゃんが萌え記号のあざとい塊ではなく、自分なりの世界を持って今を生きて、ぶつかったり迷ったりしながら、ちょっとずつ自分を変えていける人なのだと伝えるに、最上のエピソードだったと思う
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
この地道な手触りは、おいしーなタウンのローカルでノスタルジックな雰囲気あってこその語り口だと思うし、浮いているようで背景世界を生かしたエピソードだと感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
個人商店の衰退という、時代性のあるネタに更に半歩踏み込んで、終わりゆくものの尊厳を描けたのも良かった。
今回のお話があることで、デパプリの物語が永遠に続く祝祭に停滞しているのではなく、巡るゆく時の中、滅びと再生の宿命の中で積み上げられる、人の営みの話なのだということも、また示せたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
ファンタジックな変身ヒロインの話だからこそ、こういう手触りは大事よなー。
というわけで、大変面白いエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月2日
らんちゃんらしからぬ湿り気と重さなんだが、だからこそこういうお話を必要とする、ごくごく普通で素敵な子だよと理解った感じがして、らんちゃん個別エピとしてめっちゃ良かったです。
”らしさ”はいつでも、”らしくなさ”の中にこそある。
次回も楽しみ。