よふかしのうた 第7話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
楽しいだけの夜が終わって、夜種たちなりのケジメが二人を追いかけてくる。
そんな感じの後半戦開始、いろんな吸血お姉さんがどんどん出てくる回である。
ナズナちゃんと二人ぼっち、狭く閉じていた世間が暴力と恋バナで揺さぶられて、真実がかすかに見えても来る。
前回コウくんが果たした初めての”仕事”は、奇妙な充実感と当惑を連れてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
モラトリアムの境目で踊り続ける存在が、そこにいてくれる事自体が、日常に食われかけた人の救いともなる。
そんな実感をコーラと一緒に手渡されながら、少年は女達を遠くから見る
(画像は”よふかしのうた”第7話から引用) pic.twitter.com/UhSZkKd1RX
恋なるものの質感、恋する自分の実在が上手く掴めないからこそ、この後の物語は面倒くさく転がっていくのだが、だからといって頭だけで分かったつもりになれば、成熟が少年に追いつくわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
恋をしたと思いこめば恋になるなら、コウくんはとっくに吸血鬼になる夢を叶えている。
では境目の向こう側にきらめく異性の感触、成熟の実感に、どう近づいていけば良いのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
ずっとビカビカ眩しいテーマパークに溺れて、吸血鬼であることの社会的リアルを考えてこなかったコウくん(考えさせなかったナズナちゃん)のもとに、同族が降り立って問いただしに来る。
コウくんは居場所なき女子高生を装うセリの、形なき寄る辺なさに安易に『解るよ!』と叫ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
しかしそれは彼女の本性に目を向けない浅はかな踏み込みであって、別に何かの境目を確かに越える説得力があるわけではない。
(画像は”よふかしのうた”第7話から引用) pic.twitter.com/sraMQqEvJo
踏み込んだ先にどんな牙が待っていて、吸血鬼たちはどんな社会を営み、そこにどんなルールがあるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
コウくんは何も知らないまま過ごしてきたし、だからこそ夜は綺羅びやかに眩しかったとも言える。
あらゆる重力から自由になれる、特別な存在。
思春期のクソガキが憧れる、重力から解き放たれた天使
生殖にも性食にも責任を持てず、吸血鬼社会から距離を取ってフラフラ生きてる末っ子が、そう見られたいと思っていた虚像。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
それは不意打ちの咬撃で砕かれかけて、唐突な暴力行使で妨げられる。
他人の獲物、盗ってんじゃねぇ。
御大層なご口上だが、所有権を主張できるだけの責任は果たしているのか。
そもそも綺羅びやかで気楽な吸血鬼稼業に、そういう責任がつきまとうこと自体を、ナズナちゃんを通してしか夜を見てこなかったコウくんは初めて知る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
何も知ろうとしなかったし、知らせてくれなかったし、知らなかったからこそ二人ぼっち、あまりに楽しい夜が過ぎていった。
そんな時代が終わるのだ。
…あるいは少し形を変えて、新たに始まるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
吸血鬼たちの会議場は、地上≒日常からどう入ったものか想像もつかない、非常に特別で閉鎖的な空間として設計されている。
空を舞う特別な力抜きでは、けしてたどり着けない夜族の根城。
(画像は”よふかしのうた”第7話から引用) pic.twitter.com/4ZO5EYfGb1
そこにさらわれていくことで、コウくんは吸血鬼社会のスタンダードを、否応なく学んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
誰かを好きになって、眷属になって、命を保証されるという、夜の当たり前。
ナズナちゃんがけして、コウくんに差し出そうとしなかったモノ。
それを守ろうと、獣の眼光と乙女の表情を差し出すモノ。
人間に擬態し、恋に適応して社会に潜んでいる吸血鬼たちには、どうしても馴染めない、初心で暴力的で幼い末っ子は、大事な存在を盗られまいと暴れるくせに、性愛で繋ぎ止める吸血鬼のフツーとは、照れて真っ直ぐ向き合えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
ナズナちゃんもまた、コウくんが逃げた何かから逃げる、幼い子供だ。
なんてことはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
夜をよく知るエロティックな大人に見えた人は、その実理想郷にも当然あったルールからはみ出し、自分なりのやり方を探している子供なのだ。
大人のお姉さんたちが差し出してくる、恋と吸血のスタンダードは、コウくんからも遠い。
(画像は”よふかしのうた”第7話から引用) pic.twitter.com/RitYb7odFz
そもそも”それ”が良く解らないからこそ、コウくんは優等生であることに疲れて、夜に迷い出したのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
誰かを好きになって、誰かのことをずっと考えて、生殖したいと願う気持ち。
世界を動かしている一般的なルールは、しかし少年と幼き吸血鬼には馴染みがない。
何も知らないコウくんはここで奇妙な図太さを発揮し、世間一般には必殺である恋の手練手管を跳ね除けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
恋とかよくわからない自分。
だからこそ、ナズナちゃんへの思いが恋であればいいなと願う自分。
気楽に夜を彷徨って見つけた、小さな宝物を前面に押し出してくる。
恋バナと殺戮の、奇妙で危ういバランスが踊る現場で、ナズナちゃんは告白に固まり、コウくんは物怖じせず自分だけの真実を言葉にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
この率直さが、二人をどこに連れて行くのか。
これまで演じ見せてきた程大人でもなく、世慣れているわけでもないと分かった乙女は、どんな答えを掴むのか。
ナズナちゃん以外の吸血鬼がワッと登場して、一気に社会が広がった今回、『少年がお姉さんに導かれる』という構図はグラリと揺らぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
そうやって手を引かれている間、お姫様のように抱きとめられジェットコースターのように浮遊している間は、背負わなくてよかった責任、果たさなくて良かった決断。
出る答えが”保留”であったとしても、そこにちゃんと向き合って自分たちなりの答えを出す必要を、ナズナちゃんの”姉”達は問いかけてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
吸血鬼なりの秩序、責任、生殖…夜のスタンダードにちゃんと向き合って、自分たちなりの生活を確保している存在。
末っ子として、ナズナちゃんを見下ろせる立場。
その襲撃が、色んなものを暴いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
ヌルい現状を変更しろと迫られた時、ナズナちゃんが言葉による大人なコミュニケーションではなく、短絡的な暴力に頼ることとか。
それを納める物わかりの良さ、意志の強さは、むしろコウくんの領分だとか。
(画像は”よふかしのうた”第7話から引用) pic.twitter.com/lz44WgSbIx
好きとか嫌いとか、愛するとか殺すとか、シンプルに割り切れない自分たちだけのリアル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
それを大事にしたいという、あまりに青臭い想いは笑いとともに受け止められて、しかしシビアな現実は消えてなくならない。
吸血鬼になる。
ヘンテコな少年の必死な夢は、実は一年の期限付きである。
これも伝えずノロノロヘラヘラ、楽しいだけの夜を駆け抜けてきたあたり、ナズナちゃんホント…って感じではあるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
今まで描かれたエロティックな大人の顔は、コウくんがそうであって欲しいと願った夜の具現であり、ナズナちゃんが在りたいと願った儚い祈りそのものでもあった…のだろう。
そしてそれは、否応なく揺らいだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
夜はすべての重力から解放される場所ではなく、ただ夜というだけで楽しいトートロジーの楽園でもなく、独自のルールと社会がある。
現実の白けたつまらなさから逃げようと選んだ、ビカビカ輝くテーマパーク。
全てから解き放たれた、自由なる夜の女神。
そんな幻像が揺れた時、コウくんは何を選ぶのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月27日
全部ウソだったのだと背中を向けて、一度拒絶したつまらない現実に戻っていくのか。
それとも夜の奥にある真実に目を向けて、自分なりの納得を込めて、新しい道を探っていくのか。
お話は、確実に一つのジャンクションを超えた。
次回も楽しみである。