シャドーハウス 2nd Seasonを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
栄光の廊下を渡り、大人たちの棟へと引き渡されていく叛逆者。
それを見送る旧友の胸に蘇る、黄金時代とその破綻。
理想と秘密が交錯し、現実に耐えきれずへし折れた先に待っていたのは、それぞれの孤闘。
幼子が出口なき館をさまよい、最後にたどり着いたのは…
そんな感じの長い長い渡り廊下、シャドーハウス二期第11話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
やはりそういう事であり、そういう事になったか…という決着であった。
予想が外れなかった安堵と喜びは微かにあれど、大人になることを社会が規定する館の犠牲として、死を選ぶしかなかった二人、取り残される子供が哀れで悲しい。
二期を見ながらずっと感じていたことだが、クリストファー世代はこれから未来を編むケイト世代の可能性であり、そうなってはいけない失敗の手本でもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
身体能力に優れた、天真爛漫で可憐なる過去のバービーは、エミリコにそっくりだ。
しかし悲劇は、彼女の瞳から光を奪った。
主たるバーバラも変革の希望に燃え、カリスマの死と砕けた連帯によって全てを諦め、永遠の子供であることを館に強要されながら、子どもたちを苛烈に支配する側に立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
大人になること、大人であることを拒絶し、友の手を取れなかったマリーローズが、ケイトの敵であり教師だったのは、既に見た通りだ
建造物を物語全体のフェティッシュとして使うのが上手い作品だが、子供の世界と大人の世界を繋ぐ廊下が、”栄光”と名付けられつつ叛逆と心中の舞台になるのは、とても良い象徴だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
その危うい境界線に足を取られて、クリストファーは…彼が背負っていた変革の希望は、奈落に落ちた。
マリーローズによって洗脳を解かれ、館が押し付ける抑圧を引っ剥がして彼が見据えた、人間のあるべき姿。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
教育、多様性、敬愛、他者の尊重。
そういうモノを食いつぶすことでしか大人になれない世界を、マリーローズは拒絶した。
遅延戦術を用い、テロルで乱した。
結果、結末は”ああ”である。
悲しい
”顔”に傷がついたバービーは、大人になれない/させないと告げられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
本来心身の発達により、誰に認められることもなく自然と成りうるはずの”大人”は、シャドーハウスにおいてはお祖父様の権威に認められ、残酷なシステムに大事な半身を捧げる忠誠の結果、一様な価値観との一体化を意味する。
他人を陥れ、権力闘争に汲々とし、館の役に立つか/立たないかだけで他人を判断する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
クリストファー亡き後、その轍を踏むまいと”顔”を食ったエドワードが、内面化(ヒトに成り変わるシャドーにとって、それは同時に外面化でもある)した、おぞましく傲慢な価値観に染まらねば、生き延びられない場所
導き手の敗死に絶望し、大人になることを拒絶したマリーローズは、シャドーハウスに適応しないことを選んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
ここではない何処かへの出口を探し、どこにも見つからないまま時に追いつめられ、ローズマリーと二人抱き合って、奈落の外を終わりと定めた。
死だけが、この館からの出口だ。
それはクリストファーの自死が、教え子たちに刻み込んでしまった結論であり、彼女は尊敬するカリスマの終わりを忠実になぞった…とも言えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
ケイトが目指す変革に先んじ、しかし館にすり潰されたクリストファーが、自分の生き人形を己の名と関係ない”アンソニー”と呼んでいた事実が、また悲しい。
バーバラの弱さを可能性と捉え、弱者を排除する館から守ってくれた彼。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
社会システムが存在を否定するものにこそ、自分と世界がより善くなっていく未来を見つけ出して、大事に温める優しさ。
それに抱かれて、バーバラは夢を見た。
綺麗で優しくて、あまりに脆い夢だ。
それが、何より大事なバービーの顔、自分の社会的体面、大人になりうる資格を壊す形で破綻してしまったのは、あまりにも哀しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
強すぎる力を制御しきれなかった結果、生まれた悲劇…と考えると、これもケイトの世代を照らす鏡像なのかなー、と思ったりもする。
モーフ時代の記憶を持ち、己がヒトではないこと、顔と生命を剥奪する権利を持たない自覚があったマリーローズは、クリストファー(と、彼の鏡たるアンソニー)に自我を差し出す立場にあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
『コーヒーを飲むな! 館に食われず自分でいろ!』と叫ぶ姿は、今のケイトそのままだ。
しかしこの苛烈な環境で、己であることはあまりに高価な自由であり、クリストファーもマリーローズもそれに食われていってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
彼らの”レッスン”を戦場という特等席で受け、その出口なき終わりを見届けたケイトとエミリコは、繰り返す悲劇を変えられるのか。
それが3rd Seasonでアニメとして描かれることを、僕は待望しているけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
ここまでの11話は、同じ歪みに立ち向かい、同じ尊さを大事にした古参兵達が、巨大すぎる館に食い殺される様子を描く物語だった。
それは死に終わったクリストファーやマリーローズだけの、敗北ではない。
館のシステムに適合し、生き人形を食っておとなになってしまったエドワードも、永遠の子供のままかつての自分を抑圧する立場に、一人追い込まれたバーバラも同じだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
彼女はマリーローズの真意も館の秘密も、教えられないまま旧友を憎んで、死に別れていく。
哀しすぎる結末だ。
しかし連帯はケイトの特権であり、マリーローズは人たる己の弱さと、あまりに苛烈なシステムに引き裂かれて、誰かの手を繋ぐことは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
せめてバーバラとは、思いを繋いで終わってほしかった。
そんな僕の感傷を、過酷で公平な運命は見事に裏切っていく。
正しい筆致である。
真実を告げなかったのは、あまりに純真で脆く…子供であるバーバラを案じてのことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
自分が獣の巣に囚われ、人食いであることを求められているという現状認識は、あまりに残酷で凶暴だ。
それに耐えうる強さを、儚きバーバラは持ってない。
その判断には、魂への信頼が欠けている。
迂闊な相手に真意を預ければ、簡単に密告され死に至る全体主義の邸宅。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
そこで真実を見つけ、広げていく判断はとても難しい。
しかしマリーローズが真実、彼女が求めるより善き人になりたいのであれば、親友を頼り、重荷を半分預けるべきだったのだろう。
外野の後知恵でしかないけどね…。
それが出来ないから彼女たちの”今”はこんなになったのであり、そこを超えてケイトたちの”今”が紡がれても行くのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
孤独は英雄すらも死に至らしめ、眩い可能性を煤の中に投げ込んでしまう。
そういうルールを物語に刻むために、間違えてしまった過去の世代、その悲劇が必要だった…とも言える。
冒頭、冷たい牢獄に分断され思い出しか繋がれないマリーローズと、エミリコを優しい煤で抱きしめ、間近に触れ合えるケイトの対比が残酷だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
既に己の闘いに負けきった罪人と、その生き様を学び取って進んでいく教え子の道は、こんなにもかけ離れてしまったのだ。
そこを冷たく空疎な理念ではなく、最愛なる生き人形の手触り…その不在で描いたのが、すごく”シャドーハウス”っぽいなと感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
メチャクチャ壮大な概念闘争を描いてんだけども、チャーミングで切ない人間の実在をけして忘れずに、柔らかな”あなた”の手触りあればこそ闘えると描く。
同時に”あなた”を贄に捧げて、館の求める大人になってしまえる存在も、そんな宿命に耐えきれず死を出口と選ぶしかないモノ…それに置いてけぼりにされる少女も描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
バーバラがニ度、大人と子供の間で置いてけぼりなのは、あまりに可愛そうだった。
バービーがいてくれるから救われる話でもねぇしな…
己と同じ顔をした、でも個別の意思と能力と尊厳を持つ生き人形は、かけがえない存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
そんな特別な”あなた”がいるから、自分が信じる理想を諦めず社会と闘える。
そんな間近な温もりを描きつつも、マリーローズの終わりとバーバラの孤独は、それだけでは足りないことを教えている。
でも手を繋ぎきれなかった二人を、愚かだとか弱いとか、高いところからどやしつけるつもりも権利も、僕にはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
この過酷すぎる世界で、必死に生きて流れ着いた場所に、”間違ってる”というほど、僕の面の皮は厚くない。
彼らは、ここに行き着くしかなかった。
そうなってしまった。
そのどん詰りを重く受け止めつつ、なお顔が上げれるのは、マリーローズ達が体現した悲惨を変えうる意思をケイトが持ち、彼らが掴めなかった連帯を強く、握りしめているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
頼む…このクソみてぇな館ぶっ壊してくれ。
クリストファーとマリーローズがたどり着けなかった、”出口”作ってくれ!
そう期待をかけるに足りる気高さ、強さ、幸運、友情…革命に必要な豊かな種子を、ケイトと仲間たちが持っていると描いてくれたから、この悲劇にもなんとか耐えうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
冷たい荒野を、微かな希望と喜びで耕す試みは無惨に砕けた。
しかしそこに蒔かれた可能性は、確かに芽を出している。
二期で中間管理職的な苦しさ、人間味たっぷりの可愛げ、絶望の中揺るがない決意を見せてくれた星付きが、なぜこの暗闇でなお人であれるのかも、今回分かる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
死で終わり空中分解したかに見えたクリストファーの夢が、確かに彼らの胸に宿り芽を出しているからだ。
館の価値基準では弾き飛ばされるはずだった、様々な個性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
そこにこそ意味と価値があるのだと教え、抱きしめられた記憶は、残酷な現実に押し潰されてなお、消えはしない。
消えてくれないからこそ、皆が苦しいのかもしれない。
それでも、彼らは大人と子供の間で生きている。
ある者は崖に身を投げ、ある者は生の岸に取り残される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
死んでなお芽吹くものがあり、死ねば終わってしまうものがある。
本来社会が優しく見守り、正しく導くべき儚さ…クリストファーが彼の教室で護りたかったものは、この館では無価値で有害と迫害される。
マジクソだな権威主義国家…。
この寂しく哀しい断崖から、何を学び立ち上がるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
過去に広がる死の荒野を、どう耕し人間性を掲げるのか。
ケイトとエミリコの両肩にのしかかるものは、散った生命と消えた理想の分、重さを増した。
人には…一人には耐えきれない重荷だろう。
しかしそれに屈せぬ強さを、主人公は既に示している。
それが花開く未来を救いと信じつつ、今は子どもたちに弔花を。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
この出口なき館で、二人がたどり着くしかなかった未来。
その先にも続いていく、永遠の子供の歩み。
また生に取り残されてしまったバーバラが、本当に可愛そうで哀しいよ、俺は。
次回、第ニ期最終回。
とても楽しみですね。
追記 作品の明暗は目の前に立ち現れる事象ではなく、根底に流れる哲学で判断するようにしている。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
マリーローズとバーバラの遍歴を、正しくはないがそれしか選び得なかった必然と納得できるのは、館のシステムが極めて残酷でグロテスクに演出されているからだ。
ここまで凶悪なものに飲み込まれてしまったら、普通はこうなってしまう。
そういう納得と共感がある。
人間性の極限を描く上で、極限的な環境を試金石として使うのは、フィクションにおいて大事な手法だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
一見ゴシックで美しい館の臓物が、どれだけ腐臭を放ち人を殺すか。
徐々に解ってくるミステリの手腕が、彼女たちが至った運命を一つの必然と、こちらに飲み込ませてくる。
同時にあんまり酷すぎる人食い屋敷を、ぶっ壊す未来を主人公に期待したくなるし、悲劇を超えうる勝因が、今の世代にあることも鮮烈になった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月16日
勝てる材料はあるが、敵はあまりに強大で道は長い。
それでも諦めず闘う勇姿を見たくなるお話なのは、とても良いことだ。
明るいよね、シャドーハウス。