機動戦士ガンダム水星の魔女 PROLOGUEを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
ポップカルチャー界の金看板、"ガンダム"の新作前日譚。
シャープでスタイリシュなビジュアルが画面全体を引き締め、なかなか今っぽい印象の出だしとなった。
主人公・エリーに刻まれた祝福と呪いを見せる回として、一話のまとまりも良い。
世界観としては地球拠点のアーシアンと、宇宙拠点のスペーシアンが宇宙適応用サイボーグ技術”ガンド”の是非…を足場にしているが、結局のところ党利と我欲のために対立している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
地球という揺り籠を出ても人間の根っこは変わらず、物語の誕生は爆発と血潮で祝われる。
ハッピーバースデー、水星の魔女
ガンド技術は未だ未制御で危険な技術であり、過酷極まる宇宙環境に人間が適応し、新たな未来を拓くには不可欠でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
人間性とされるものを投げ捨ててまで、人は新たな領域に活路を見出すべきか、否か。
地球を故郷とする保守派と、宇宙をフロンティアにする開拓者では、足場が根本的に異なろう。
『新技術にカネを入れるのは、まず軍部』というセオリーに従い、ガンド技術も医療民生より早く兵器に応用され、スポンサーから結果を出せとせっつれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
エリーの父母、今回燃えた研究所の人々が夢見る、ガンド技術を制御した果てにある新たな未来は、人殺しの道具を仕上げた先にしかない。
強火の皆殺し演説キメてきた”カテドラル”代表おじさんは、『銃を握る手に意思が宿ることが人間の証明』という考えらしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
『人殺し自体が、非人間的行為の極地だろ…』というツッコミと、『そういう行為だからこそ、コントロール可能な範囲に置きたい気持ちはわかる』つう納得が、同時に芽生える。
鉄条網と機関銃、絨毯爆撃と核兵器、ドローン兵器とSNS戦争。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
技術革新により常に戦場の形は代わり、それを取り巻く社会の規範…それを強要しうる実力の形態はいつでも、残酷で非人間的な現状を必死に追いかける。
人が人でいられる、人殺しの範疇はどこにあるのか?
技術はその形も変えるのか?
ここら辺の視座はP・W・シンガーの著作に通じるモノ(特に『こども兵の戦争』『ロボット兵士の戦争』)を感じて、なかなか現代的な始点だなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
選ばれた主役として、呪いへの適正を与えられた四歳のエリーが、遊戯のように人を殺す様はガンド技術の悪魔的側面を、とても良く照らす。
ガンド兵器(GAND-ARM)は実際、銃を取るべきでない幼子を最適効率の殺戮者へと変える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
エリーはそのおぞましさも罪も、父の死も知らぬまま微笑んで、戦場を離れる。
機械と接合された生身の身体は、もはや無条件に”人間性”を保証されない。
…サイバーパンクリバイバル、同時多発的にキテるな…。
サイボーグ技術は双方向的なものであり、特別な機械であるガンダムは常人の魂を喰い、死に至らしめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
このフィードバックが身体にとどまらず、精神まで侵すのか…はたまた、身体と精神の古臭い二分法では話を作らないのか。
拡張身体論をどう書いてくかは、とても気になるポイントだ。
星間政治と国際権益、新技術と倫理が入り混じったデカい話が、爆炎で生まれる風を帆に受けて進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
ガンダムらしい話であるが、四歳のエリーにそういう難しいことは良くわからない。
ガンド技術はパパとママに機械の手をくれて、なにか良いものを連れてくる素敵な魔法。
そう無邪気に信じるに足りる生活が、あの研究所に確かにあったのだと伝わる描画力が、スタイリッシュなメカ描写と並走して存在しているのは、なかなか頼もしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
人間の体温が宿って初めて、鋼鉄のドラマも熱を帯びるのだろうしね。
そしてその暖かさは、生き死にの冷たさと混ざらない。
とても家族的で幸福な"お誕生会"を、巨利とイデオロギーの摩擦熱で燃える物語の生誕に重ねて見せる、ある種の悪趣味。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
一人間が当たり前に求める幸福は、時代だの技術だの倫理だの戦争だの、巨大すぎる機構に噛み潰され、燃えて消えるしかないものか。
古くて新しい対比が、初回から元気である。
エリーの子狸っぽさが大変可愛くて、そのキャラクターとしての存在感が全く、悲惨な潮流に影響してないところが良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
どんだけ可愛かろうと、希望に燃えようと家族の思いがあろうと、デカくて残酷なものが何もかも踏み潰していく。
それを前提として、では個人と社会の何を書くのか。
そこが大事かなー、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
ガンド技術の身体的、倫理的危うさは、家族の悲劇に思わず肩入れしてしまう話運びの中でちゃんとエグられてて、”カテドラル”のガンダム否定論にも一部の理はあると、納得してスタートした。
このバランスをどう取って、どう転がしていくか…だろうなぁ。
catedralはキリスト教の大聖堂なわけで、中央集権的な秩序思考の父権的アーシアンと、草の根から異端技術で叛逆を試みる宇宙の魔女との対立を、最初から織り込んだ話なのかな、とも感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
男/女を対立前提として話を編むと、めっちゃ危ない構造が自動的に生まれかねないが、さて…。
そういう意味でも、今回幼年期から追い出されたエリーがどう育ち、どんな風に己の性(セイ/サガ)を認識していくかは気になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
彼女にとって異性/同性と触れ合う自分はどう認識され、彼女の恋はどんな形で描かれる?
それを通じてこの作品は、男/女という曼荼羅を切り取りこちらに突き出す?
半歩間違えるとトンデモナイところに落ちていく、大変ナイーブな話でもあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
魔女は別に女だけを言うわけではないので、男のガンダム乗りが出てきた時、面白くなりそうな要素かな…。
カテドラル側が扱う"清潔な殺しの技術"が、魔女の呪いとどんだけ違うかも気になるか。
機体とのシンクロ率が高く、運動性で無双カマしそうな設定を見せておいて、秩序側にガンダム殺しが既に用意されているのも、なかなか良いバランス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
ガンダム否定から始まんだから、そら銀の弾丸は作っとるわな。
開拓者/少数派の物語的優位には、既にメタが当たった状態からお話がスタートするわけだ
作中の政治的/地理的対立がどのくらいの温度で世界を燃やすかを示しつつ、魔女の起源に宿る家族的体温をしっかり教えてもくれる、良い序章だと感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
具体的個別名はなかなか脳に染みないが、話が面白けりゃ、見ているうちに馴染むだろうッ!(新番組見てる時特有の開き直り)
そもそもにおいて殺しの道具たるガンダムが超ろくでもないもんで、それでもそれを必要とする人のカルマに、初手真正面から挑んできたのは好感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
同時にこういう理念って、実際の物語がクネクネ絡み合い、ロボがカッケェ興奮の中で置き去りにされがちなので、手放さず大事にしてくれると嬉しいかな…。
先の心配はさておき、古く普遍的な題材を新たな切り口と描き方で見せようという気合が感じられ、実際に確かな手触りを宿してました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
モニターデザインや研究所の美術が、全体的にスッキリ肌に馴染む未来感をちゃんと宿してかっこよかったの、大変良かったです。
魔女に呪いと祝福を与える、鋼の使い魔。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
18mのサイボーグ的身体としてガンダムを描き直す筆が、ロボアクションと政治闘争の中でどういう形に結実するかも、今後を見守りたくなるポイント。
モノ特有の従順さを、サイバネティックフィードバックで覆してきたの、面白い設定だよな…。
物言わぬ兵器のはずのガンダムが、呪いをバラ撒く制御不能な独自性を持ってる描き方は、”ガンダム”ってジャンルが独自の文化、生命になってる自覚の反射かなとも、門外漢ながら考える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
そういう”ガンダム”の怪物性をドラマに交えながら描けたら、また面白くなるんじゃないか。
そんな風に、色んな期待が膨らむ良いプロローグでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月28日
色々コクがでそうな素材が一杯あって、こっからの長丁場でどう煮込んでくるか、大変楽しみです。
サイボーグとファンネル、二重のインターフェースで隔たれた殺人って、ガンダム化されたドローン・キルだよな…。