メイドインアビス 烈日の黄金郷を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
激闘に崩れ行く、成れ果ての村。
未知なる記憶に突き動かされ、憤怒の炎とは別の滾りがファプタを突き動かす。
我が元に集えと叫ぶ貴種の声に、皆それぞれの終わりを選ぶ。
死の、痛みの、諦めの色をした闇の奥の、暖かな光。
黄金は、母なる窯を出て未来へと…
そんな感じの黄金錬成(アルス・マグナ)完了、烈日最終回一時間スペシャルである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
成れ果て村の皆が生命の使い所を定め、ファプタは生まれたときから定められていた使命を果たしきり、子どもたちは新たな仲間を加え旅を続ける。
意思と記憶に編み上げられた、不帰にして永遠たる決死行。
人肉喰いの惨劇、出口なき停滞に終わった"ガンジャ"の旅は終わり、リコ達の旅路へと継がれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
母を苦痛から解き放ち、村を壊せば存在意義をなくすはずの復讐姫を新たな道連れとして、奈落の奥底へ進む旅は継く。
無惨な夢の屍から、それでも伸びる折れない花を、たしかに記憶に受け取って。
継がれるということ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
一人の命を超えて挑まれ、時の流れにかき消されず残るもの。
このお話が見据えているものの大きな総体が、しっかりと照らされて終わる、正に烈日の最終回であったと思います。
同じ愚行を繰り返しているように見えて、探窟家の冒険はそれぞれ個別で、大きく変化していく。
残したメモ、告げられた言葉、託された命。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
そんな残留物をヒントに危機を越え、あるいは運命に食い殺され、深い闇の中に積み重なっていくもの。
海底に降り注ぐ、マリンスノーの頂きに足を踏みしめて、リコと仲間たちの旅は更に続くのだ。
そこでは闇と光、死と生の境目は不明瞭だ。
世に善とされ力とされるものが、必ずしも光ではないような場所。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
蔑まれてきたものが開拓者となり、思い出は未来の中にしかなく、死地にこそ生きる意味を知る、さかしまの大伽藍。
絶望のみが待つはずの闇にこそ、自分だけの暖かさが確かにあったと、末期に思い返せるような、見知らぬ望郷の地。
そんな異質で異様で、だからこそ人間の真実を強烈に暴き立てる真理を、色んな人の生き様を絵の具にしっかり描くアニメでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
大変良かったです。
第一期、劇場版と来てこの烈日、緩みや疲れが見えるかと思いきや、誰よりも”アビス”らしく苛烈に燃えきった。
素晴らしい。
というわけで覚醒を果たし、”黄金”をその白い羽毛に宿したファプタ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
醜悪なる父権の剣にも燃え盛る炎が宿るが、それはもはや復讐の刃ではない。
二度目の戦いは、餌食の取り合いだった一戦目とは様相を変えている。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/Vj8ofwy101
ファプタはイルミューイに死をもたらす希望としてその外部に生み出され、母を貪る村民鏖殺の機構として、この瞬間まで生きてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
しかし個別の命として何が大事で何に喜ぶか、自分で決める魂を宿す以上、他者との出会いはファプタを変える。
黄金は怒りによって溶かされ、邂逅によって打たれたのだ。
南米のコンキスタドールを思わせる、外部からの簒奪者としてのガンジャの描写から始まり、簒奪されるべきエルドラドとして”烈日の黄金郷”を最初描いておいて、ここでより秘教錬金術的な意味合いで"黄金"が照らされるのは、大変に面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
魂を溶かし、不純物を取り除き、反応を促し、黄金へと変える。
それは物質的な繁栄を越えたより純粋で、より大きなものに真っ向から向き合える価値へと、人間を繋ぐための技術である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
イルミューイの子でしかなく、価値の塊でしかなく、復讐の道具でしかなかったファプタは、不動なる物質的黄金から、自在に形を変える魂の黄金へと、真の輝きを目覚めさせていく。
それは自分を支配していた理由なき…というより、外部から与えられた強すぎる”理由”から生まれる憎悪を焼き尽くして、今ここにあるファプタ一人の価値判断で、村と村人を見つめ直すことを意味する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
奴らは許されざる罪人であり、皆殺しは今でも相応しいのか。
それを悩む自由が、ファプタには在る。
生まれた時から繋がり、村の外で永遠に外れていたへその緒から流れ込んでくる、母の無念と一つの使命。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それを疑い投げ捨てれる自由と、それでもなお自分の意志で成し遂げる尊厳の両方が、ファプタには在る。
その2つを備えるものは、もはや幼子ではないのだ。
文字も知らぬ獣だったファプタは、埋もれた機械に出会うことで文字を知り、価値を知り、愛を知った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
ガブールンおじさんとの暖かな思い出がよぎるのも、憎悪に突き動かされていた心が落ち着き、人を人たらしめる輝きにたどり着いたからか。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/dZBKEnuDwO
ファプタは遠くて高い場所に立つ存在として、主にレグとの交流の中、このアニメでは描かれてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
ガブールンとの邂逅、心温まる生活を経て変化していく関係もまた、その始まりは高くて光に満ちた場所から始まり、闇の中の光に降りてその質感を確かめる形で描かれる。https://t.co/dlKsb1Gquq
砂と花に埋もれたガブールンと出会い、庇護され教えられる中でファプタは復讐の道具ではない自分を目覚めさせ、育んできた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それは暖かく心地よい闇の中の光で、丸まって眠るのにちょうどいい場所だ。
レグもまた、彼女にとってそういう存在であることは、実は構図と構造を同じくして既に描かれている
何かとセンセーショナルでグロテスクな表現が際立つこのアニメだが、こういう高低と明暗を生かした心象表現の巧みさ、演者を変えた同一セッティングで運命的な重なり合わせを見せる技法と、映像表現の基本的な手腕が大変優れている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
こういうところが巧いから、エグさの奥にエモも宿る。
ファプタとガブールンの距離は、他者の質感を己の手で触れ目で確かめる触れ合いにより近づき、それにより光は出会ったときよりも更に大きく、強くなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
この光にファプタが身を投げ、ガブールンが受け止めたことで、彼女は思考なき獣…今村を食らい付くしてる連中と一線を画した。
そらー体を張って、ファプタが憎悪のままリコ殺すの止めるよなぁ…と思うし、ガブールンおじさんがなって欲しかった”人間”というのは、生まれ方や身体の組成、背負った宿命に左右されない、魂の中の黄金だったと解る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
血みどろの畜生界をくぐり抜けて、それは確かに獣の姫に目覚めた。
『最終回…かわいいファプタの百面相も出し惜しみなしだッ!』とばかり、色んな”眼”が見れる思い出。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
ファプタはガブが教えてくれる文字に驚き、学びに目を開く。
ここら辺成れ果て語勉強してたリコと重なる部分で、殺さずホント良かったよ…
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/XocieSqOPj
彼らを村に導いたプルシュカの略奪も、人には聞こえぬ声を聴くファプタによる、優しき導きだったと解ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
現実時間軸だとド修羅場なので、あざといアピールを過去から猛ラッシュしてくるの、ズルい作りだなぁって感動するね。
可愛いねぇお姫様…王子様好きなのねホント。
二つ目がコワいのもガブとの暮らしが長すぎたせいだろうし、長いふれあいはお互いがどんな存在か、愛の手触りをよく教えてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それも無惨に踏み砕かれ、命なき残骸が惨状を見守るばかり。
どれだけ尊く思えるものもあっけなく壊れ、しかしその儚さは、消え去るものから価値を消すのだろうか?
死という闇を超えて瞬く、確かにそこにあった思い出の光。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
ガブールンの遺骸を情け容赦なく映し出しつつ、それは理不尽な”現実”なるものの勝利を意味しない。
そうならないように、様々な人が命の終わり際、尊厳在る死を求めて前に進んでいくのだ。
マジャカジャ輸送形態の背に揺られ、リコ達はワズキャンの末期に行き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
神がかりの人でなしが求めたのは、愚劣で矮小な”人間”を超えて輝く魂。
奈落な過酷な環境に耐える身体に成れ果て、永遠の停滞を越えて、未来への意思を継ぎうる存在
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/oIKXLAPhv4
閃光の如く儚く尽きる一代の命も、意思を継ぐことでより善く、より先へと進みうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
ここで終わってしまったと嘆くのではなく、ここまで来たのだと微笑みながら、人でなしの”ガンジャ”リーダーは死んでいく。
自分が追い求めた黄金が、確かに次代に継がれていることを感じ取りながら。
リコは凄惨で矛盾だらけなこの成れ果て村を、一切の躊躇なく肯定する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
そこには素晴らしい人達がいて、美味しいご飯があり、旅のワクワクが、出会いと学びが山とあった。
レグとナナチが一瞬答えに詰まるところで、迷いなく『YES』と叫べるブレーキのなさが、彼女の危うさであり強さだ。
出口なき揺り籠に夢を腐らせ、成れ果てることしか出来なかった村民が皆『如何に死ぬか』を考えるこの局面で、未来に向かって駆けていく主人公が村と人が『如何に生きたか』を全肯定してくれるのは、微かながら大事な救いであったようにも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
覚悟を固めたムーギィ姐さん、マジかっこよすぎだが…
その餞に応えるように、母の遺産を買い戻しリコに手渡してくれるのは、粋だなぁと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
継ぐ。
ワズキャンがあの所業に、この歪な村の在り方の果てに見いだしていた価値を、『お母さんの手記を取り戻す』という形でここに別角度から描くの、かなり好きな補筆なんだよな…。
死産から奈落の祝福を受けて生まれ直したリコは、天性の”メイドインアビス”であり、人間の領域に一度戻りながら、母なる場所に惹かれて不帰の旅に挑む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それは自分が生まれてきた場所…過去から呼ぶ声を継いで進んでいく旅だし、旅の中偉大な白笛が何を感じたか、母を取り戻していく旅でもある。
烈日でファプタが成し遂げた旅に、リコは”メイドインアビス”全体を通じて挑んでいる…とも言えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
ここで父を知る旅に失敗して、人の形では共に旅立てなかったプルシュカがちゃんと存在しているの、暗黒童話としてのバランスが良いよね…。
皆己が生まれてきた場所に挑むが、生きる死ぬは個別の話だ
そしてプルシュカやミーティが証明しているように、死は物語の終わりでは勿論ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
イルブルの結界が破られ、危険な呪いが流入する場所で、ヴエコは何かを求めて彷徨う。
高い場所に在る輝きの先、確かに一瞬垣間見た光。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/ecP5nG0GrB
そこには仲間がいて、家族となり、思い出があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
”ガンジャ”の旅こそが、闇に叩き落されもがいた彼女が見つけた光であり、過酷な烈日に消えない暖かな闇でもあった。
上昇不可に成れ果て、身体を引き裂かれてなお蘇る愛しさは、一人の成れ果てにも宿る。
死を越え、突き動かす。
”ガンジャ”最古参として常に共にあり、しかしヴエコの一番にはなれなかった女の成れ果ては、彼女を光の中に投げ戻す事を、運命の使い道と選んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
思えばその単眼も、たった1つしか見つめていない、見たくない欲望の現れだったのだろうか?
その愛の重さを、ナナチが継ぐ。
ナナチ自身はミーティと別れることで己を前に勧めたわけだが、命を抛って愛を未来に繋げた行いの根は、自分と同じなのだと強く理解している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
生きること、死ぬこと。
見送ること、見届けること。
逆さまに見えても根は一緒なのだと、あの霧の中でつくづく実感して、今のナナチはつくづく強い。
ヴエコが成れ果ててまで、もう一度出会いたいと思えるファプタ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
彼女にとってイルミューイの娘は、ナナチにとってのミーティと同じであり、生きるの死ぬのの明暗を越えた魂の繋がりを果たすことの意味を、ナナチは既にその身に刻んでいる。
最期に一目、もう一度逢えること。
ちゃんと終わらせることの意味を知っているからこそ、パッコヤンの遺志を受け継ぎ、ヴエコをファプタに逢わせる仕事は、ナナチが担当するのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
欲望の揺り籠に成れ果ててなお、ヴエコだけは人の形を守ってたイルミューイ、優しい…で終わらない妄執を感じる。
まさに地母神、母なる暗黒。
村を巡る激戦も佳境。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
子どもたちは”眼”に眩い光を宿して、それぞれの魂を滾らせる。プルシュカもいるの、最高中の最高。
ベラフ…あんた自身が手放したとしても、賢者が見つけた人間の証明は、やっぱり正しかったんだと思うよ。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/XnAf6tEKN0
命がけのバフぶっこむ前に、リコが飯食ってんの好きなんですよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
食ってクソして他人と喋って、必死に前に進む存在としての人間を大事にしてきた話で、一番食ってクソして他人と喋ってきたのがリコなわけで。
そんな彼女が闘うためには、やっぱメシを食わんといかんのよ。コレが奈落のデパプリだ!
レグは結局、約束を思い出せない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
しかし戦いの中見えたファプタの魂に報いるべく、獣のように牙をむき出し、彼女が過去の罪と…仇と憎む村人と向き合う時間を作る決意は硬い。
ここでレグが獣っぽいの、最高に良い。一方通行じゃないね。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/xo98dUVbgm
恋に悶える乙女とも、気高き獣の姫とも、復讐に狂う炎とも、様々に”眼”を変えてきたファプタ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
レグとガブールン…二人の機械騎士が作った道の先で、罪深き村人と向き合う時、ファプタはとても平静な…人の目をしている。
そういう眼で向き合うために、血みどろで暖かな旅が必要だったのだろう。
ファプタは村≒遺物そのものと化したイルミューイにより深くアプローチし、その崩壊≒解放を加速させるために、母の因子を継いで成れ果てた村民を食う必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それは怒りに狂った復讐、一滴後も飲み込まない惨殺ではなく、明日を切り開く糧を求めての聖餐である。
憎悪の叫びではなく、人として同族を呼ぶ”声”に死地を定めた人々は、粛々とその生命を使っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それは夢を揺り籠に諦めた旅人が、自分の意志で定めた決着であり、噛みしめるごとに記憶が、思いが、胸に迫る。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/ShF9yBYytN
捕食を通じて相手を理解れば、二度と語り合うことは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
生き延びて同じ道を進むにはあまりに因果がもつれ、それを断ち切る好機はこの瞬間、この牙にしか無いと思い定めたから、ムーギィ達は喰われ、ファプタは食う。
そういう繋がり方も、この奈落、成れ果ての村にはありうる。
イルミューイの仔を喰らって生まれた村に、流れ着いて旅を諦めていた者たちが、イルミューイの仔に喰われてその末期に、自分の意志で先に進む”旅”を取り戻す円環の構造は、始原の罪を赤い献身へと書き直していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それで、悲しい過去が消えるわけではない。
死に行く命が戻るわけでもない。
しかし確かに形なき”糧”が、喰うものと喰われるものの間に平等に交換されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それは村の中ねじれて存在していた、価値交換のシステムが正統に、厳密に機能した瞬間なのかもしれない。
崩壊の瞬間にしか、価値交換の体系が真価を発揮できないのは皮肉であり、真実でもあろう。
ファプタは流れ込む人の記憶、村の記憶、母の記憶に翻弄されつつ、自分が生まれてきた意味を果たそうと総力を振り絞る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
村人を聖なる糧と食らったがゆえに開いた道を辿って、肥大しきった母を殺す。
それは親子の決着であり、遺物としての格付けマッチのようでもある。
崩壊していく村≒イルミューイを見上げながら、ヴエコは過去を思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
闇の中ただ一つの光とすがった”ガンジャ”が行き着いてしまった結末は、人としての尊厳を砕き魂を闇に落とした。
行き着いた先に眠る母なる闇に微睡みつつ、ただただ忘却に抗う。
想いを継ぐことが、ヴエコ唯一の戦いだった。
それを強引に引っ張り上げて、現実に決着を付け旅を終わらせる(つまり始まらせる)烈日となりうるのが、この話の主人公の特性である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
イルミューイは確かにあまりに特別で、己に欠けたものを補う唯一の存在で、しかしその成れ果てに包まれたままでは、何もかもが終わりきっていた。
先陣を切り、手を差し伸べ真っ直ぐに進むものがいることで、そのままでは終わっていたはずの物語が動き出し、継がれるべきものが動き直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
その結末は、分かり易いハッピーエンドでは常に無い。
ここは奈落。
地上で明瞭に分かれているものが混ざり合う、混沌の胎だ。
胎動を始め産み落とされるものは何かを壊し、代価を求め、理不尽で残酷極まる闇にも見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
しかしそこに確かにある光こそが、真実温もりと思える唯一である瞬間が、確かにある。
暗い瞳をしていればこそ、闇の中うずくまる傷だらけの子供に気づけることだって、確かにあるのだ。
そんな明暗入り交じる旅路を、ヴエコは走ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それが終わる。
死にたいほどに焦がれたあの子によく似ていて、あの子ではけしてない、あの子の娘に出会って。
出会わせるために、母の残骸に生きた成れ果てが、生命の使い所を決めていく
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/hIaJIdhS12
獣としての理論に従ってリコ達を食っていれば、ファプタ一人は助かったかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
しかし黄金となった彼女はそうしなかったし、そうしたことが食い殺し一人生き残るより、多くの人が助かる結末を連れてくる。
知らないことはファプタの外に沢山あって、名もなき成れ果てには”マアア”という名がある
名前を与えられること、誰かを特別と選ぶこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
それはファプタがガブと果たしてきた関係性であり、知らないことの中にも沢山、自分と繋がる不思議な共鳴が宿っている。
ファプタは生きてその渦中に飛び込むことを選び、成れ果て達は死の中にこそ魂の輝きを見出す。
ここら辺の入り混じり方が、ヴエコとファプタの邂逅と離別に最も鮮明になるのは、良いクライマックスだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
気高く特別な獣の姫、イルミューイの末子であるがゆえに。ファプタは成れ果てたヴエコの末期を聞けるし、思い出を嗅げる。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/87B9ESy5SF
死に満ちた暗い聖堂に確かに開いている、明るい窓の向こう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
ファプタ自身が殺した母の残骸が、眩い光に照らされるその場所を見つめながら、彼女は自分に与えられなかったものを思う。
人でなしの地母神に成れ果てて、唯一手放したくなかったものを識る。
それこそが、ファプタとイルミューイの運命のへその緒を決定的に切り、彼女を一個の生命として子宮の外に送り出す決め手なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
母の憎悪と無念の分け身として生まれたはずの自分が、知らないものがあった。
それだけは譲れないと、腹に抱えた愛があった。
これを知るためにはファプタとヴエコは生きて出会わなければならず、血と涙と暴力と愛に塗れた黄金郷の冒険は、この結末のためにあったのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
子宮をモチーフとした場所の閉じた冒険が、その暴力的解放、母に愛され呪われた子供の自立と旅立ちで終わっていくのは、大変綺麗な構図だ。
全ての決着に思える深い闇の側には、新たな物語へと開かれた未知が眩く輝いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
二人の母の墓標に愛を刻んで、王子様二度目の約束を手にとって、ファプタは故郷を旅立っていく。
復讐の機械ではなく、自由な旅人として。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/dan26iq7lk
リーダーであり主人公であるリコが誘うより早く、レグが自分の意志で手を差し出すのが気持ち強くて好きな描写だし、今更遅すぎるエンゲージを受け取って頭の上を跳ね回る仕草が、ガブの頭上を”家”としてきた過去を継いでもいて、大変良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
好きなヤツの頭には乗るのだ。
かつて”ガンジャ”が初めて足跡を刻み、あるいはリコが街から見下ろしたように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
ファプタは足下に広がる無限の闇を、ようやく見下ろす。
光に包まれ運命に縛られ、未知なる無明に旅立てなかった獣の姫は、母を殺してようやく、自由を得た。
それは思い出から継がれたもので、過去が越えれなかったもの
深すぎる闇に食われ、欲望と業に飲まれて足を止め成れ果てた者たちが、かつて夢見焦がれた光。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
愛が呪いとなり、夢が終わりを連れてくるこの奈落で、それでも確かに燃える炎へと、ファプタは己を生み直した。
旅は続く。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第12話から引用) pic.twitter.com/vnxdzxcaDC
しかし物語は、一旦の幕である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
大変良かったです。
情け容赦なく性と暴力、残酷と悲惨に挑み続けたからこそ描けた奈落の曼荼羅が、色んな色の絵の具で眩しく輝いて、とても生き生きしていました。
極めて過酷な、夢物語を許さない奈落の現実が、”ガンジャ”を飲み込み生まれた村。
その終わりに向かって駆けていくお話の中で、鮮烈に滲む人間の情、叶わないやるせなさ、おぞましき罪。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
たどり着けず道半ば、それでもだからこそ燃え盛る望郷を継いで、奈落の子どもたちを未来へ旅立たせるためにはどんな精算が必要なのか。
どれだけハラワタをえぐれば、答えが見えるか。
しっかり挑み、描き切る物語でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
”継ぐ”というテーマを第1話、”ガンジャ”の過去から始める奇策が見事に具体化し、リコ達の物語が背負う時間的、運命的奥行きがしっかり形になる構成が見事でした。
ここの時を超える風通しが在るから、血生臭くも爽やかな読後感なのよな。
異国情緒溢れる成れ果て村の美術、そこに宿る広々した閉塞感はファンタジーの楽しさ、その精髄だったし、そんな美術の強さに甘えないキャラの魅力の引き出し方、天国から地獄まで真っ逆さまに突っ走るドラマのスピード感は、まさに圧倒的。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
悲惨で綺麗で、嘘のないこの旅をどう語り切るか。
気合と覚悟と夢のある、素晴らしいアニメだったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月29日
ファプタを加えた一行がどこにたどり着き、どんな旅を続けていくか。
こんな仕上がりで殴りつけられたら、絶対アニメで見たくもなりますが。
今はやっぱり、ありがとうとお疲れ様を。
凄く良かったです、ありがとう!!