イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-:第4話『DIYって、どこでも・いごこち・よくなるよ』感想

 手仕事で一つ一つ組み立てていく思春期の宝物、爽やかな少女群像劇の第4話である。


 コンテ演出作監に俊英・米森雄紀を迎え、ガッチリ吠えるセンスと心地よい脱力の同居が作風に噛み合う、見どころの多い回となった。
 ここまで話の中心にいたせるふをちょっと遠いところに置いて、同じ屋根の下暮らしていくこととなるぷりんとジョブ子の結構複雑で、既に実りの多い関係を優しく切り取っていく筆が、バキバキの構図と描線で冴える。

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第4話より引用

 カメラの置所がかなり特異で、穏やかに進む日常にハッとするような異化作用を投げかけつつ、全体的なトーンは緩やかで爽やか。
 せるふの自転車シーンも才気が容赦なしに暴れつつ、出会いが生んだ風の心地よさ、光の眩しさを上手くアニメートして、巧さが悪目立ちしてる感じがない。
 ありモノの画面をそのまま持ってきて回してると、どっかでモッタリした鈍らな感じが出てくると思うので、このくらい攻めつつ調性を見据えた絵作りが”四話”に入ってくると、『力の入ったオリジナルアニメだ!』という驚きと喜びを、美味しく食べることも出来る。
 やっぱどっかで新たな意欲と野心を味わえるからこそ、こういうお話を見る楽しさもあるな……と思わせてくれる話数で、大変良かった。

 

 画作りはかなりシャープに冴えつつ、むしろその鋭さがとても柔らかなものを、柔らかいまま切開していくような、今回のお話。
 相変わらず窓の向こう、一人で輝きを見つめているぷりんが今回の主役であり、前回嵐の来日をキメたジョブ子が、ツンデレの奥にあるチャーミングな魂を照らす仕事をしていく。

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第4話より引用

 なにしろ前回あんだけの”縁”(えにし)キメちまったので、ジョブ子とせるふの間合いが近づいているのは当然。
 大好きなのに素直になれない思春期の難しさを、ここまで強調してきたぷりんが二人の同居に嫉妬の炎を燃やす! ……という定番を予測させておいて、お話は心地よくそこを外していく。

 せるふママのでっけぇ器に飲み込まれて、久々に結愛家に呼ばれたぷりんは、孤独で冷たい家から暖かく眩い場所に近づき、誰かと一緒に飯を食べる。
 明らかに”救い”として描かれている一連の流れが、ジョブ子の新たなホームとなっていく須理出家を置き去りにせずに、そこもまた暖かく眩い場所なのだと描き直される筆も、また心地よい。
 普通に話組み立てると、成熟して孤独で最新鋭なぷりんの家と、幼く暖かく懐かしいせるふの家を対比・対立させて交わらせないところだと思うけど、ハイ・テクノロジーの申し子二人を主役にするこの回(そしてこの作品)は、そういう構図は選ばない。
 ジョブ子はツンツンしたぷりんの袖を掴み、一緒にお風呂に入り、最新テクノロジーの話題で一緒に盛り上がって、感情をお湯と一緒に溢れさせる。
 可愛いかわいい12歳がなつくことで、プリプリ尖って見えたぷりんの柔らかな心がどんどん暴かれていくの、最高に良い。

 のんびり尖ったところのないせるふの人格に、前回ジョブ子は手を差し伸べられ居場所を手に入れたわけだが、ではナノ炭素の素材特性、シンギュラリティが生み出す社会的影響に興味津々な少女は、彼女に暖かなものをもたらさないのか。
 ジョブ子との出会いは、せるふとの関係の難しさに凝り固まったぷりんの思春期に、影響を及ぼさないのか。
 今回のお話はジョブ子の居場所がどこに定まるかをコロコロ転がしながら、そんな相互作用を丁寧に追いかけていく。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第4話より引用

 同時にぷりんにとってせるふがどれだけ大きな存在かも、彼女の新たな生活を切り取る中で丁寧に刻まれる。
 新技術がもたらした新たな隣人であり、せるふ家の犬猫豚に劣らぬ可愛さを持つアシスタントロボが、なぜ”くらげ”なのか。
 そこにあの時送りあった、美しい思い出のDIYが眩しく輝いていることが、ジョブ子とぷりんの関係性の合間に……二人を繋ぐ役目を果たした少女の存在感を告げるように、挟み込まれていく。

 ぷりんにクローズアップすることで、彼女の生活を包み瑞々しい興味を育んでジョブ子との縁を紡いでくれた新しい技術が、どれだけ”人間的”かもよく見えてくる。
 そこには幼く美しい思い出を受け入れる余地があり、優しく護って大きく育む強さが、確かにある。
 なかなか素直に繋がれない二人にとって、自分の手で作った思い出がいまだ大事な所に響いて、風を含んで活き活き揺れていることが見えてくること……ハイテクと新たな友人がそれと対立し、損なうものではけしてないと見えてくるのは、とても大事で嬉しい描写だ。

 

 

 画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第4話より引用

 

 せるふの隣りにいてはなかなか見えてこない、ジョブ子の最新技術への高い適性と、それが生み出す確かなワクワク。
 ドローン輸送にARタグ、仮装スケーリング。
 未来技術が手の届く範囲にある生活の息吹は、それが一緒にご飯を食べたり寝しなに思いを伝えたりする、人間の当たり前な暮らしにどれだけ寄り添ってくれるかを、良く教えてくれる。
 新鋭技術のサポートを受けたDIYはスマート&スムーズで、ボロな部室に漂う埃臭く愛しい手触りとは、また違った顔を見せてくる。
 それもまた”DIY”のあるべき姿だし、こういう可能性に日常の温もりを添えて、良いものとして差し出せるのは、このお話が持っているとても良い強さだと思う。
 新たなものと古きものをどう馴染ませて、より善き日々の助けにしていくか。
 否応なく変わっていく少女達の関係性、そこで揺れる感情を追いかける歩みと、メインテーマに選んだものの質感がしっかりシンクロしているのは、大変に良い。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第4話より引用

 口ではせるふアレルギーだのDIYは時代遅れだの強がってるぷりんが、どれだけ”DIY”に向いてて、何かを一緒に作ることで他人と繋がることが出来て、とても柔らかな心を持っているのか。
 降って湧いた天才少女との同居、心地よく自分らしい部屋を自分たちの手で一緒に作っていく作業は、そういう事を豊かに語ってくれる。
 12歳の新しい同居人のために黙々とハンモックを編める女は、もう”為る”しかねぇんだよなぁ……天才少女三条での”姉”にッ!

 冷えたライティングでぷりんの孤独(それ故せるふより一足先に成熟して自分を守る必要があり、それがコミュニケーションを阻害してる原因でもあるもの)を強調しつつも、それが優しく解けていく様子もしっかり追いかけて、彼女を満たすものを多角的に切り取っているのは素晴らしい。
 DIY、幼なじみとの間に挟まる謎の天才少女、私を置いてけぼりにするママ。
 ぷりんが反発し遠ざけていると描かれたものは、それらと間近に触れ合い共に笑うことで、新しくも懐かしい光を取り戻していく。
 というよりその眩さは元々そこに……気づけば頑なになって自分を守っていたぷりんの心の中にちゃんとあって、ジョブ子の引っ越し騒動を通じて蘇った、と言えるだろう。

 魂を蘇らせる大事な触媒であるジョブ子は、寂しさに涙する小さな子供であると同時に、大人びて賢く、自分に似て寂しい女の子を放っておけない一つの人格として描かれる。
 ぷりんとの間柄を年齢に合わせて庇護医一本で染め上げず、ジョブ子の特長である大人びた賢さ、じっと周囲を観察し大事なものを見通す鋭さを交えて複雑に書いているのは、彼女の存在を尊んだ筆致だと思う。
 年下でも誰かの揺れる魂を守ること、手を差し伸べて導くことは出来るし、そのありがたさを間近に感じながら、何かを手渡し返すことで”姉”の変化を促せる。
 そういう対等で爽やかな距離感が、今回初めてであった二人の間に生まれているのは、大変良い感じだ。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第4話より引用

 空に揺れるクラゲの夢、ツリーハウスの思い出は、はたして離れてしまった二人をつなぐのか。
 あの夢を誰が見ているのか、明示しない所が青春すれ違いストーリーとしての切なさの核だし、上手さでもあろう。
 柔らかな作風だが、ぷりんとせるふを隔ててしまっている壁には確かな存在感があり、普遍的な思春期の難しさ、そこで素直になれず沢山の人が悲しい結末を迎えているリアリティを、しっかり感じさせる。
 DIYはそういう当たり前の青春の間を繋ぎ、素直な喜びを導く大事な仲間として、この話の真中に座る。
 メインテーマの扱い、ジャンルと要素の繋ぎ方、なじませ方が、やっぱり良いわな。

 ジョブ子が仲立ちになって、ツンツンしてる手前せるふ≒DIYにぷりんが言い出しにくい提言を部が受け取り、新しく大きな目標が導かれていく展開にも、なにか新しいことが生まれる期待感が満ちている。
 OPで示唆されている幸福な風景にぷりんが飛び込むには、猫口の闖入者しーちゃんとの一騒動、ツリーハウスを作り上げる一仕事を超える必要があるだろう。
 ……しかし今回のエピソードが、ぷりんが青春の仲間として共に何かを作り上げていくに足りる、思い出と心と優しさを持っていること、そこにジョブ子が同居人として友人として”妹”として、大事な仕事を果たすことを、既に教えてくれた。
 幸福を手作りする未来への道は、もう見えている。大変ありがたいことだ。
 次回も楽しみです!

 

追記 貴方の優しい夢の中に、私の居場所を置き続けていて。