手作業少女たちの小規模な幸福、梅雨空でも明るいDIY第7話である。
あんまデカいイベントも感情のうねりもなく、DIY部がくれい部長の家に上がり込んでシコシコ作業しまくる回なのだが……最高に良いッ!
大会も試合もないこのアニメ、地道な手仕事描写こそが最大の見せ場って側面はあり、くれい部長に導かれて実力をつけてきたDIY戦士たちが楽しみながら寡黙に作業する様子を、丁寧に丁寧に追いかける極めて地味な描画こそが、一番ありがたい。
出来ない時代をちゃんと書いてたおかげで、どんだけ成長したかもしっかり伝わるし、世間一般のキラキラ青春イメージとは遠くとも、五人が同じ場所に集いそれぞれのやりたい事を、時折隣を見ながら進めていく充実感も、格別の味わいだ。
『部があってよかったね、友達がいてよかったね……』と、しみじみ沁みるこの感触、終盤ジョブ子の帰国が迫り廃部問題が表に立ってくると、ずっしり心に刺さりそうな感じもあるが……。
しかし確かな手触りで描かれる青春と友情が、未来を切り開いてくれる明るい期待感にも満ちてて、落ち着いた折り返し点ながらも満足度百点の、とってもいいエピソードでした。
というわけでくれい部長の実家にして、ホームセンター”WAKUWAKUWANWAN”でもある場所へ、足を進めるDIY部。
広い敷地にツールがぎっしり、ホムセンに足を運んだ時特有のWAKUWAKU感がちゃんと感じられるのは、DIYアニメの大事なところだろう。”
父を”専務”、母を”店長”とプライベートでも言うのは『お店の子だなぁ~』って感じがあり、今まで部活動の先頭に立って後輩を導いてくれてた部長の、私的で柔らかな部分がドンドン出てくる回でもある。
私室を公開したり、結構なオトメ趣味が解ったり、そういう部分を共有できる関係性が部に育ったのだと思うと、穏やかな青春スケッチに特別な温もりも宿る。
そういう部長の”内側”に踏み込むことで、思い出のブックスタンドを実地で使い続けてくれてるまごころとか、思わぬ所で共通の趣味を見つけて加速していく前のめりとか、色んなモノが見えてくる。
『ウチ来ないか?』っていい出すまでのモジモジ、家に上げてからの照れ加減に、友達と一歩踏み込んだ関係になることへの期待と不安が上手く滲んでて、『自分の柔らかさを預けてもいいかな……預けたいな……』と思えるようになった部長と仲間の時間が、じんわり染みる。
”日常系”の一番強い所、全力でぶん回してる感じだ。
そういう私的で柔らかな部分が描かれつつも、作業が始まるとくれい部長は頼もしく後輩を導き教える。
しーちゃんにアドバイスする時、膝を曲げて視線を合わせて伝えるところに、彼女のキャプテンシーと人格が良く見える気がする。
親身に丁寧に技術を伝えつつ、相手の実力や気持ちをちゃんと見据えた上で何を手渡すべきか、考えて動けるのは素敵だ。
現実味のある作業工程を地道に展開しつつ、端々にこういう、キャラを感じる描線が埋め込まれてるのが、欲張りな筆先で好きだな。
ど派手にキャラを主張する場面は少ないんだが、日常的仕草にこそキャラの”らしさ”が宿っているのは、地道に何かを作り上げていくDIYというテーマとも噛み合った書き方で、大変良い。
あとジョブ子を対等な仲間と認めつつ、あくまで年下であることを忘れず見守る視線が随所に溢れてて、『DIY部……”人間”の集まり……』ってなった。
ジョブ子が結構色んなこと我慢できなくて、思ったことが口をついて飛び出す性格なのは既に描かれているが、そういうある種の幼さに摩擦を感じるのではなく、魅力的な個性として微笑んで受け止め、どんどん自由にやらせてる空気を、モニタを貫通して肌に感じられる。
俺は血の繋がらねぇお姉ちゃん達が、年下のヤンチャを微笑んで見守り、そうして自分の”楽しい”を静かに肯定してもらうことで子どもの人格が育まれていく描写が大好きなので、ジョブ子がDIY部で楽しく過ごす……過ごさせてもらってる様子を見られるのは、大変嬉しい。
自分の”楽しい”に一生懸命に見えて、めっちゃ友達の様子見てる子ばっかなの、あったけえ空間だなと思う。
というわけでシコシコものづくりに励む描写が、一個一個の工程を丁寧に積み重ねながら進んでいく。
飲み込みの早いしーちゃん、ITの助けを借りてぐんぐん進むジョブ子、細やかな作業に適性を見せるたくみんと、相変わらず失敗多めなせるふ。
出来る・出来ないは人それぞれグラデーションがあって、でも『出来ない』は仲間の助けを借りたり、自分の得意な分野と組み合わせたりしながら『出来る』になっていく。
そういう手触りが思いの外個性豊かに、しっかりした表現で手渡しされているのは、見ていてとても嬉しいところだ。DIYデザイン・監修・指導のスワロさん、本当にありがとうございます……。
工具使って手で作る、昔ながらの地道な仕事っぷりを積み重ねつつも、『電子商取引』っていう新しい技術をジョブ子の専門にせず、おっとりたくみんが挑む様子を書いてきたのも、とても良かった。
やっぱ新たな技術と古い手仕事はこのアニメにおいて、対立項ではなく等しく”好いもの”として描かれ続けていて、加速していく時代が取り残していくものも、舳先に立って早く走るものも、人間の暮らしを豊かにするための大事な仲間だ。
電動工具が唸る派手な仕事だけでなく、UVレジンを細やかに扱うアクセサリー作りとかも”DIY”なんだと、作中の描写で示す姿勢含めて、横幅広く肯定的に題材を扱う手付きがありがたい。
いい意味でこだわりがないというか、不要な偏見を”こだわり”と考えてないというか……ここら辺の風通しが良くて柔軟なのは、構えず見れる大事なポイントだろう。
キャラの個性の書き分けという意味では、海外にルーツを持つジョブ子としーちゃんが土産と謙遜という、日本特有の文化に飛び込む回でもあった。
気を使って生焼けクッキーを飲み込み、部長の喜びを壊さぬよう考え込む”ザ・日本人”なたくみんとせるふに対し、しーちゃんは心の底から美味しく頬張り、その感情を率直に表に出す。
違った部分は色々あれど、同居人にその土地での振る舞い方を教えてもらったり、むしろその違いを楽しんだりしながら、楽しく心を通わすことは出来る。
DIY描写において古い技術と新しい可能性が隣り合っているように、三条市というローカルな場所の良さを(六角凧サブレとかで)しっかり示しつつも、国際化していく時流とどう向き合えば良いのか、構えることなく前向きに書いているのは良いと思う。
ノスタルジックな気配を大事にしつつ、実は相当に未来志向で開明的なのは、このアニメが”今”描かれる上で凄く強いところよね。
自分を置き去りに楽しく過ごす幼染みと同居人に、ぷんすこカマすぷりん……それを見ているジョブ子なども書きつつ、DIY部の地道で楽しい活動はあっという間に過ぎて、希望に満ちたきららジャンブでキメッ! である。(DIYはオリジナル企画であり、まんがタイムきらら掲載作ではありません)
俺は楽しい努力をさらっと積み上げていく、切れ味の良いモンタージュ演出がいっとう好きなんだけども、そこで『お姉ちゃん達の頼むカレーに挑んでみたもののやっぱり厳しくて、ヒーヒー言ってるジョブ子の面倒をみるDIY部』が見れちまって……好きなもののスーパーフィバータイム過ぎて、まことありがたいッ!
梅雨のジメジメもぶっ飛ばす最高の順風満帆青春タイムであるが、こんだけ順調だとどっかでなんか起きそうだな……という不安も、ちょっとある。
しかし小さな困難をしっかり乗り越え、自分の手で成長を積み上げていく地道な描写だけでも、十分以上に満ち足りたお話が成り立ってしまっているので、定番アクシデントとかいらねーかな……って感じもある。
『どういう方向に転がっていっても、皆で支え合って楽しく力強く、未来を切り開いてくれるだろう!』つう信頼感も作品とキャラにあるので、こっからの後半戦、必ず楽しませてくれると思います。
ぷりん加入?
もう”入部(はい)”ってるようなもんだろ”魂”はよー……じっくりコトコト善良極まるツンデレ少女を煮込むことでしか、出ねー味ってのがあるわけよ……。