イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

SPY×FAMILY:第20話『総合病院を調査せよ/ 難解な暗号を解読せよ』感想

 嘘つき家族のすっとぼけすれ違いコメディ、アーニャちゃんの可愛さ大暴れな第20話である。
 色んな軸を用意できる多彩さがこのお話の強みだと思うが、今回はイーデン校を離れて父の職場に潜入したり、暗号ごっこで遊んだり、賢い四歳児が奔放に世界を楽しむ様子がたっぷり楽しめて、大変良かった。
 読心能力を活かして、ロイドさんのすっとぼけた内面を覗き見して笑いを生んだり、精神科医というカバーを完全に乗りこなしてるのに娘の秘密にだけ気づかない面白さを堪能したり、基本設定の妙味もたっぷり味わえる作りだった。
 『僕らが見たい理想の四歳児』として、圧倒的な完成度を誇るアーニャちゃんの造形といい、やっぱ初期設定の強さ、拡張性の良さが光る作品だ。

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第20話より引用

 というわけで、デカくて白い犬がいるフォージャー家の日常がたっぷりと味わえちまうわけよッ!!
 今回は学校行かないし、アーニャちゃんの愉快な日々を丁寧に追いかけるお話なので、家族の一員となった賢い犬がどんな感じで子どもに鼻を寄せ、TVを見る時間に寄り添い、同じベッドで眠るかがいい作画で山盛り食える。最高。
 病院の美術とかも良かったけど、仮想世界を異様なクオリティで作り込み、その空気をたっぷり吸わせてくれる作品なので、こういう何気ない時間の”粒”がバッチリ立っている。
 そうするとボンドがフォージャー家で生きてる様子、家族に馴染んで犬なりのポジションを占めている様子が原液で押し寄せてきて、オレのアニメA10神経もフル回転、多幸物質がドバドバ分泌され大変ハッピー! って寸法よ……。
 ボンド加入以来、こういう描写をたっぷり食べたかったので、今回は最高に良かった。
 今後もデカくて白い犬が家にいて、勝手気ままに生きてる四歳児を好いて近くに寄ってくる様子を、克明に記録していって欲しい。

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第20話より引用

 あと冒頭、”はは”の思考を読んで展開されるスタイリッシュ殺戮劇の表現が、大変スタイリッシュで良かった。
 シンプルなモノトーンに染め上げるのではなく、赤系統だけ残して瞳と唇……そして流れる血を印象付けて、ヨルさんの”仕事”ぶりを気持ちよく思い出せる感じ。
 危険度120%のモノローグで示されるとおり、ヨルさんが所属してる組織は『国家のコントロール下にない、実力行使を一切ためらわない民間愛国結社』という最悪に厄介な連中なので、そこに飼われてたらそらー倫理も常識もぶっ壊れるよなぁ、などと思う。
 一殺多生七生報国の理念を疑わず、守るために殺す矛盾に悩まないヨルさんの素っ頓狂を、不思議な味わいで堪能できる演出だったと思う。
 なんでこの人の中でここまで”殺し”の観念がネジレているのか、『そういうもん』と見てる側を麻痺させておいて、そのうちデカい落とし穴としてシリアスに活用してきそうな要素でもある。
 アーニャちゃんが間に挟まることで今回はコメディになっているが、あの紅いモノトーンは少女の妄想などではなく、ヨル・ブライアが身を染めている現実の色だからな……。

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第20話より引用

 それはさておき、本題は可愛いかわいいアーニャちゃん祭り with 父 in 職場である。
 こうして並べてみるとやっぱりぶっちぎりに設計が良く、『それを最高に可愛く描いて、お前らの脳髄を激しく揺らすぞッ!』ていう気合も、しっかり乗っかっている。
 アニメの全領域において、ハイクオリティを破綻なく維持しているこの作品だが、その恩恵を最大限受け取ってるのはやっぱりこの少女だと思う。あと街並み。

 精神科医というペルソナを偽装して、職場に溶け込みスパイ稼業をこなす<黄昏>は、アーニャがテレパスである事に気づいておらず、そこが完璧さの魅力的なほころびともなっている。
 バチッとキメて隙がないのに、その内面をダダ漏れに……しかも扶養対象で年齢一桁の少女に読まれてしまっている”ズレ”が、なんとも言えないチャーミングなおかしみを生んでいる。
 完璧スパイとテレパス少女の組み合わせが生み出す、作品で最も基本的な面白さをたっぷり堪能できて、大変良かった。
 テレパスだからこその珍行動に、ロイドさんが体温低くツッコむ様子も最高。

 テレパスによる内面ダダ漏れは、父がどんな風に精神科医の仕事をこなし、スパイの任務を果たし、そこからはみ出して人道的かを良く語る。
 ワクワクの職場探検をたっぷり楽しみ、時間切れ寸前で間に合わせたカオスを見て『心の傷……オレが間違っていたッ!』と思うスパイ、どう考えても他人を犠牲にして大義を為すのに向いてない。
 しかしそれを成し遂げるべく完璧な能力を鍛え上げ、実際世界平和を守ってしまうのだから、ロイドさんも大概である。
 加えてアーニャちゃんのダディとして、得難い体験を沢山手渡し、大人として父として人として理想的な対応で包み込むことまでする。
 『この地に足がついたスーパーマンっぷりを堪能したくて、この作品見とるなやっぱ……』という実感を、アーニャちゃんと一緒に穏やかで楽しい日々を過ごすことで、確かめることが出来た。

 

 というわけで、”SPY×FAMILY”の基本中の基本をどっしり味わえる、大満足のエピソードとなりました。
 色々変化球で攻めたり、魅力的なサブキャラクターに軸足を預けたりも出来るんだけど、その多彩さもお話の体幹が強いからこそ。
 やっぱフォージャー家の魅力と面白さで、エンジンブン回してるお話だなぁ……と思いつつ、次回<夜帳>本格参戦を楽しみに待つ。
 あのコマをアニメでどういう表現してくるか、ずっと気になってるからなー……。