機動戦士ガンダム 水星の魔女を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
強化人士四号の死を以て、決闘編は一区切り。
こっからは金とスキームで殴り合うビジネスバトルだ! という、インキュベーションパーティーである。
ネタの賞味期限がしゃぶり尽くされるより早く、ドラスティックに舵を切ることで生まれる、圧倒的スピード感。
かといって早く走りすぎて置いていかれてる感じもなく、意外ながらしっくりもくる新展開をワクワク楽しめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
とてもこのアニメらしい話運びで、大変良かったです。
MSバトルだと後方腕組みなミオリネが、社会戦特化の性能を存分に発揮する戦場に本格参戦ッ! って感じだったな。花嫁宣言もしたし。
グループ内部の政治闘争を、制御可能な形で象徴化した決闘システム…それを実演するための、箱庭たる学園。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
ここを飛び出した今回は、大人たちが身を置くビジネスの世界である。
”incubation”という名前のとおり、卵の殻に閉じこもっていた物語が一段階外側に”孵化”するエピソードだ。
最初は素敵なドレスに身を包み、大人な雰囲気に酔える学園モノの気配を上手く醸し出しておいて、後半の経済裁判でもってシビアでハードコアな状況を描写、落差を生かして一気に世界観を広げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
今まで話しの主題だったMS決闘も、経済という大きなエコシステムの一部でしかなく…
そのうねりを乗りこなして自分と大事なものを守るためには、ファンネル飛ばす以外の戦い方が必要になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
そんな新たな局面に、鮮烈に叩きつけられた”株式会社ガンダム”
学生ベンチャーという、現代的で魅力的なお話を新たな火種に、どんな物語が展開していくか。
大変ワクワクする。
戦場が切り替わったので、水星たぬきはMSで無双する余裕もなく、可哀想な生贄としてなんか高いところに引っ張り上げられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
彼女が決闘者からヒロインに役割を変えることで、これまでヒロインだったミオリネが経済戦の決闘者として、意思と能力と成長を示す機会を得ることになる。
それは無条件の信頼で繋がっていた母との関係に、否応なくヒビを入れ新たな段階へと進めていく火種でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
今回”エアリアル=ガンダム”という事実が突きつけられたことで、スレッタは母が用意した揺りかごで微睡む時代を終えて、自分の足で進むしかない青春の荒野に本格参戦する。
そしてそこは、父との関係に複雑な難しさを抱え込んでいたミオリネが一足先に、悩み反発し進みだした場所でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
あらゆる家族、あらゆる企業は複雑怪奇な現実の中、解けない結び目に縛られて動けない中、赤と白の魔女たちは手を取り合って、より自由になれる場所へと己を進める。
お話を切り取る画角が変化したことで、ミオリネとスレッタがようやく対等(タメ)になった感じもあり、新章開幕に相応しいインパクトと奥行きがあるお話だと感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
今回鮮烈な切り口を見せた”経済”は、既に作品の主題だとゴリゴリ描かれていたから、唐突感もないしね。
というわけで色んなことが起きている今回、メインは地獄の決闘裁判である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
とにかく舞台装置のケレンが良くて、会議室舞台に描いたら退屈そうな資金調達やら企業政治やらを、MS決闘に負けない見せ場として成立させている。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第7話から引用) pic.twitter.com/oROGs8d999
WWEとかスーパーボウル並のど派手な演出で、戦争ビジネスへのデビュタントを飾り立て、『資金調達成るや、成らざるや』のワクワク感、変な棒が上がったり下がったりして政治戦を分かりやすく可視化する舞台装置…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
『相当優秀な演出家が、専属で付いてんだろうなー…』って感じだ。
顔面の圧力が強すぎるペイルの四魔女を、ドデカ画面で魅せるサービス精神も旺盛で、そら一大スペクタクルとして、企業宮廷のお歴々も満足よ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
秘密裏に悪事や密約を重ねることも、ド派手に外に向かってぶち上げることも、両方あってビジネスなのだ。
この舞台装置はスレッタのかわいそう加減、御三家の陰湿な気質を分かりやすくするだけでなく、学園と世界を包んでいる戦争ビジネスの現状も、上手く見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
ここには電子化された金と書類上の経済計画、複雑怪奇な人間関係と火花散らす牽制があり、死体と銃弾がない。
生身の人間が死んでいく戦争のリアルから遠ざけられた所で、戦争で稼ぐための大きな枠組みがプレゼンされ、出資され、意気揚々とデビューを果たす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
それは世界を律するもう一つのリアルとして、空疎で重たい圧力を放っている。
透明で残酷な神としての経済を、可視化する装置。
それがあの、過剰にショーアップされたプレゼンバトル会場なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
話の趨勢に従って、後ろのモニターとか謎の棒とかが上がったり下がったりするのがホント面白くて、台本のないドラマを極限まで物語化する裏方の才能に、惜しみない拍手を送りたい。
エアリアルとスレッタが生まれ、物語が始まったヴァナディースのラボ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
そこを満たした血と炎から、学園で清潔な決闘に勤しむ学生たちは遠ざけられている。
これは後に血みどろになる前フリだと思うけど、そういう生き死にの切実から経済を牛耳る王達が遠いのは、強化人士四号の死が教えてくれた。
…ちょっと違うか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
デリングが君臨する企業宮廷の中で、自分と家族と企業の命運を賭けて陰謀張り巡らせ、ビジネスプランを提示し、国家予算以上の銭金を動かしている人たちは、”死”の観念が古い時代の人間と大きく異なっている…という感じかな。
倫理観がサイボーグ化されてんだ、ハイランダーは。
生身の人間が死ぬ様子から遠い存在は、生身で生きる実感からも遠いのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
そんな問い掛けを残しつつ、大人の事情に振り回される子どもたちのスケッチは続く。
クローン使い潰しで余裕の立場かと思ったエランくん(真)、早すぎる損切りの後始末に奔走してて、結構苦労人だったな…。
数多の死でその生誕を飾ったスレッタは、21年の断絶を間に挟んで、その事実を知らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
エアリアルはガンダム…人命を喰う悪魔の兵器ではなく、お母さんは嘘を言わない優しい人で、自分は望まれて世界に生まれてきた。
事実に反してそう信じ込んでいる、田舎から来たお姫様。
その純粋をシャディクは、他人を変えていく魔法と嘯くけども、大人が用意した経済社会戦に巻き込まれた時、純朴さは武器にならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
真実を知らないこと、事実から目を背けること。
子どもが子どもでいることは、有象無象が牙をむくビジネス・ジャングルでは致命的だ。
そんな不慣れな領域でプルプル震える同志のために、ミオリネ大地に立つッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
自分にない信用を父から借りて、願いの第一歩を踏み出す時、少女はガラスの靴を投げ捨てる。
王子様に助けてもらうシンデレラ・ストーリーなんて、まっぴら御免。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第7話から引用) pic.twitter.com/8EdXZiLwrr
派手にショーアップされ、罠が仕込まれた既存の舞台から外れて、父に反発するだけだった幼い自分を乗り越える時、ミオリネはオフィシャルな決闘場から遠い、父により近い場所へと進みだしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
そこで問われるのは常に真実で、実利と信念だけを求める厳しさに、少女は生身を晒す。
呪われ封印されたGUND-ARMを、制御可能で倫理的なスキームに書き換えることで、大きなスチャンスを生み出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
”株式会社ガンダム”は経済という大海を揺るがす大きなアイデアであり、それだけで経済は動かない。
実績に裏打ちされた信頼という、形なく巨大なものを手に入れ…あるいは借り受ける。
そういう大人のロジックを突きつけられた時、スレッタは『エアリアルはガンダムじゃない』という夢にすがって立ち止まり、ミオリネは靴を脱ぎ捨て舞台を降りて走った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
この差が厳しい真実だけを与える父と、優しい嘘だけを手渡す母の違いでもあるのが、なかなかに面白い。
…どっちもキビシいな。
そんなミオリネの歩みを煽って後押しする魔女として、プロスペロの存在感は抜群だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
悪役としての影が濃くなるほど、仮面が人間的なフォルムを消して蛇の怪物みたいに見えるデザインが際立つの、いい仕事だなぁ…。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”より引用) pic.twitter.com/kZ6oQcetFb
『健気なお嫁さんをネチネチいびる姑』つう立ち位置で、ミオリネとスレッタの夫婦感を強めているのもナイスな立ち回りだが、ミオリネを縛っている意固地の鎖を厳しく指摘し、出資に必要な信用を借り受ける決断を嫌味に混ぜて後押ししてるのも、クレバーな立ち回りだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
”株式会社ガンダム”が、禁忌兵器を巡る経済と倫理の局面を書き換えることで、プロスペラは自分の会社と夢…あるいは呪いを守る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
仇の娘であり娘の配偶者(候補)でもある小娘を焚き付け、その欠点を指摘して勝ち筋に誘導することは、シン・セー開発公社CEOの利に叶うわけだ。
ミオリネは父そのものが嫌いなわけではなく、分かり合いたいと願う娘なら当然の気持ちをはねのけ、相談もなしに全てを押し付けられる距離感を嫌っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
現実としてデリングが経済王であり、それ以外のルールで動けない生き様の囚人である以上、対等な関係を望むなら同じルールに飛び込むしかない。
真実家族であるためには、血縁だろうと殺し合う仁義なき経済の理屈に、頭まで浸る必要があるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
その事実から逃げて、トマト育てて地球に逃げることばかり考えていたミオリネは、魔女の薫陶を支えに”逃げない”事を選ぶ。
さて、この前進で”2つ”は掴めたのだろうか?
それは空前絶後の出資を引き出した学生ベンチャーが、どう転がっていくか次第である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
学園のキャラがこの波紋にどう踊るか、色々期待と想像が膨らむところが、視聴者を気持ちよく手玉に取ってるこのアニメらしい一撃で、大変良い。
ここに噛ませるために、グエル先輩”家”から出した感じすらあるな…。
『ガンダムは私たちの世代のものじゃない』とか、『急すぎるよ会社とか~』とか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
視聴者が感じてる違和感を作中人物に語らせて、メタな視線と物語の展開をなじませる工夫も、ひっそり上手かったですね。
こういう物語的宙返りを気づかれないよう沢山仕込んで、この幸福な急展開が成立しとるのだな。
学園という卵から半歩踏み出して、大人たちが身を置く経済の荒野に進みだしたのなら、夢が食い物にされる惨事も他人事ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
この世界は、エランくんが殺される世界なのだ。
…ってことを一瞬忘れそうになる『イケそう!』感がしっかり出てるの、気持ちよくノセられてんなーって感じ。ありがたい…
しかしデリングが忠告してたとおり、ガンダムの呪いは重く、ビジネスという戦場は容赦がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
スレッタやエアリアルを守るというミオリネの決意を、出資者達は様々な経済戦術で骨抜きにし、捻じ曲げてくるだろう。
呪いを祈りに変える新会社代表は、そういうモノとも今後戦わなければいけない。
その奮戦を助ける騎士として、エアリアルを駆る魔女の娘は、青春の同士となりうるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
『オメーに嘘ついてたし、家族は命を食いつぶす呪いの兵器だよ。知ってて乗せてたよ』と、大好きなお母さんに告げられたスレッタ…実際マジショック!
水星たぬきがいじめられてプルプル震えるの、マジ許せねぇよ!
そう思う心と、かわいそうかわいい有り様に口角が釣り上がるのを止められない自分の間で、僕も重力崩壊しそうです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月22日
経済戦士として、子供の殻から己を出したスレッタが、友の窮地にどんな手を差し伸べるのか。
そうして繋がれた手のひらが、掴む未来は。
次回も大変楽しみです。