イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-:第8話『DIYって、できない?・いいえ!・やれますとも!』感想

 自分たちの手で『出来ない』を『出来る』に変えていく青春、DIY第8話である。
 小物販売による資金集めも順調、いざツリーハウス建造に本格着手! の前に、イメージをまとめ上げ設計図を作って、実作業の足場固めをするまでのお話。
 手先が器用ではないせるふの強み……奔放に溢れるイマジネーションを実直なたくみんが手助けして、実務的なクリエイティビティを整えていく様子。
 そこから先のエンジニアリングへ、ジョブ子とぷりんが初めてのCADに挑み、設計図を形にしていく姿。
 ふわっと温かいDIYらしさを残しつつ、モノを作っていく上で各人の才能や努力がどう組み合わさり、夢や希望も自分たちの手で形にしていく様子が、堅実に誠実に描かれた。

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第8話より引用

 ものづくりを主題とするこのお話、豊かなイマジネーションがクリエイティビティに繋がり、実際に手を動かして形にしていく過程は、丁寧に切り取られる。
 これまでは様々な工具を用いた実務的なレイヤーで描かれていたが、ツリーハウス建造という大きなプロジェクトが動く中で、より抽象的で根本的な歩みも掘り下げられていくことになる。
 たくみんは大好きな青春小説に憧れて、DIY部のユニフォームをちまちま作り上げる。
 それは細かい作業をいとわない今期と、途切れない集中力……何より皆を思う優しい気持ちという、彼女の強みが形になったものだ。
 後にせるふが自宅で吠えるように、皆がDIY部という場所をかけがえなく思い、その一人として仲間に役立つ自分でありたいと願う。
 その”役立ち方”は人それぞれ、様々な形があっていいはずだ。

 せるふは手先が不器用で、彼女の作ったアイテムだけが商品レベルに達しない。
 それは現実をおろそかにするほど、大量のイメージに包まれているからでもある。
 皆の夢をたっぷり詰め込んだイラストを一晩で書き上げ、曖昧な祈りを具体化していく能力は、せるふのかけがえない強みだ。

 

 同時にそれは野放図に過ぎて、日程や材料や予算に縛られる現実に納めるには、スケールが大きすぎる。
 その良さを殺さぬまま方向づけて、せるふの魅力をそのままに実現可能な形にまとめていく、アイデアの産婆役。
 他人を否定しないたくみんの優しさは、イマジネーションとクリエイティティブを繋げる大事な橋として、大きな仕事をしている。
 味気ない”現実”なるものへの適応能力があまり育っていないせるふが、彼女らしく皆の”役に立つ”時、その特性と長所を理解して適切な助言を与えてくれるたくみんがいてくれることは、幸福であり必要でもある。
 実現可能性だけを重視して夢が死んでしまうのも、実現不可能な夢だけが空中浮遊しているのも、関わる皆がワクワク挑む”仕事”としてはあまりにもったいない。
 だからせるふだけでも、せるふがいなくても最高のツリーハウスは完成せず、色んな強みと個性があるバラバラな人たちが集うから、面白いものが作れるのだ。

 DIY部に入る前、一足早く成熟したぷりんが見ている世界と、幼く野放図な夢に包まれたせるふの世界は衝突し、幼なじみは気持ちを上手く繋げられなかった。
 しかしDIY部の活動、ツリーハウス建造の大計画において、かけがえない仲間がせるふだけの強みを現実とつなぎ合わせ”役に立てる”ことで、せるふはせるふのまま現実との向き合い方を学習していく。
 それは豊か過ぎるイマジネーションに時に飲まれる、今までのせるふをちょっと作り変えて、苦手な手仕事に挑み、集中力を維持してコツコツ具体的なモノに向き合う歩みでもある。
 『そのままのせるふさんがとっても素敵だから、それを活かして形にしていきましょう!』と手を差し伸べてくれるたくみんと、『凄いみんなと肩を並べるために、このままの自分じゃなくなろう!』と気合を入れるせるふ。
 その両方があって、せるふは豊かなイメージを空転させることなく、現実や社会や他社や自分と噛み合わせて前に進んでいける、より善い自分へと変わっていく。

 

 この個人的自己実現が、部という小さな社会全体で取り組むツリーハウス建造に大きく寄与し、着実に作業工程を進めていく足取りとしっかりリンクしているのが、手応えある視聴感を生み出している。
 せるふが自分を変え、あるいはありのままの自分の生かし方を見つけていくことが、部全体の目標であるツリーハウスの完成へと、確かに繋がっている。
 それは人間が真実”役に立つ”ということが何を意味するのか、希望を持って個人と社会を見つめる視線にも、強くリンクしている。
 手を動かし、時に自分の至らなさに苦しみながらも皆で何かを成し遂げ、その過程で新しく喜ばしい自分を見つける。
 理想化された”仕事”の手触りが、明るく楽しい部活動にしっかり響き合いながら見えているのが、大変に良い。
 それを描く筆が自己発見/自己実現の工程、一つ一つをかなり丁寧に描く堅実さで支えられているのが、ふわっと暖かな雰囲気を壊さないまま、硬派な確かさを生み出してもいる。
 ゆるふわに見えてちゃんとしてるのは、DIYの作業描写だけじゃない……って話ね。



画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第8話より引用

 せるふが進む青春の道のりは、彼女だけの特別で孤独なものではない。
 少女たちはそれぞれの能力と適性、思い出と性格を抱えて自分なりの歩みを進めていて、時にそれは人と交わる。
 飛び級天才少女であることにプライドがあるジョブ子は、実は全く経験がない設計図製作を強気に請け負い、苦悩する。
 まーた窓の向こう側に幼なじみを見つめているぷりんは、年下の同居人の悩みに歩み寄りを魅せ、クソガキの素直じゃない対応にビキビキ来つつ、そのプライドを守ったまま本心を引き出していく。
 課題で忙しいとか抜かしつつ幼い同居人の悩みと、楽しいDIYで頭がいっぱいなぷりんも。
 ツンツン強がってるのに、お姉ちゃんに話聴いてもらいたくて風呂場に上がり込んでくるジョブ子も、愛しさが高まりすぎてヤバかった。


 ジョブ子が設計図書きを引き受けたのを『安請け合い』にしてないのが、僕はとても好きだ。
 そこには母との楽しい思い出があり、それを大事な仲間と共有したい、瑞々しい気持ちがあった。
 せるふが豊かに広げたイマジネーションは、ジョブ子の大事な思い出と響き合って、ツリーハウス作りを絶対に譲れない夢へと羽ばたかせていく。
 それがせるふの見えない所で起こっている(幼なじみが、その対応を知らずしてくれている)ことが、人と人がつながっていく不思議な豊かさに、せるふの強みがどういう仕事を果たしているかを教えて、とても良い。

 無論『さすが無敵の天才少女!』と自分を褒め称える言葉に鼻が伸びてもいたけど、天才だって出来ないことは沢山あって、それでも計画を止めたくなくて、思わず引き受けてしまった。
 そんな同居人の思いをでっけー檜風呂で引き出し受け止め、『二人なら辛さははんぶんこ、楽しさは二倍!』と前に出るぷりん……あまりにも善良。
 ふたりともすぐさま天使の顔が出てくるわけじゃなくて、下手に出てくれないと頼み事が出来ない面倒くささとか、そこにビキビキ来てる当然の反応とか、等身大の人間っぽい部分を描いた上で、麗しきピュアさがドドンと殴りつける塩梅が、また良いわけよ……。

 DIY部に入り浸らず、幼なじみへの感情と関係性でキャラが閉じてしまいそうなせるふを、素直になれない天才少女と同居させ、年齢差を生かしつつ奥行きを出した話運びは、最高に良い。
 俺はジョブ子が12歳であること、天才少女としての自負が強いこと、その癖脆くて甘えん坊なことを大事にしてほしいと常々思っているので、その全部を至近距離で見届け、手を伸ばし、受け止めてくれる”三条市の姉”がいてくれるのが、大変に嬉しい。
 そういうぷりんを描くことで、幼なじみにはツンツンしちゃう彼女がどんだけ心豊かで賢く、優れた人なのかも見えてくるしね。
 須理出家の同居生活という画角を増やしたことで、キャラにもお話にも立体感が生まれてる感じはある。
 ちびっ子が思わず漏らしたスケジュールのタイトさに、思わず立ち上がって裸身を顕にする描写、『もう裸は見られて当然の距離感で、この二人は日々を暮らしてんだな……』という納得があって、大変良かった。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第8話より引用

 かくして頼れる相棒に支えられ、天才少女の密かな挑戦は転がっていく。
 うめーフルーツサンドで”リキ”養って、雨天でもワイワイ元気に進んでいく四人組と、そこから外れた所でシコシコ最新技術を駆使しつつ、CAD学習に勤しむ二人。
 別々のことをしながらも心意気は同じで、それぞれの歩みがあるから計画が先に進んでいく手触りが、よく宿るモンタージュだった。
 DIYは夢へのロードマップを着実に進んでいくアニメなので、冴えたモンタージュ演出が多くてありがたい。(モンタージュ大好き人間)

 設計図待ちの実作業班の心地よい泥臭さと、設計班のシャープな洗練が良い対比で描かれてたのも、好みの見せ方だったな。
 飛び級天才少女と湯女のエリート、未体験の分野を自分の中に積み上げ経験値重ねていく能力が、おそらく異様に高いんだろうな……賢くなっていくためのノウハウが、既に確立されているタイプの人種だ。
 そういうクレバーさが、ローカルな味わいのある歩みを遠ざけず、別の場所に離れつつもどこか繋がっている。
 夢が手作りされていく街・三条市には、色んな良さがあるのだ。
 地方創生アニメとしても相当力強く魅力的なのも、このアニメの美徳の一つだね。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第8話より引用

 かくして他人に秘密の付け焼き刃は見事な切れ味を発揮し、”天才少女”は流石の実力で、計画に必要な設計図を完成させる。
 天才にも出来ないことはあって、それでも叶えたい夢だってあって、それをなかなか表に出さず愛しい強がりを重ねている……というのは、第5話におけるしーちゃんの書き方と通じるものがある。
 そんなツンデレの柔らけぇ中身を、同じツンデレが受け止め、相互に秘密を抱えあってる状況があまりに美味しい。
 こんなの……後々ジョブ子が”姉”の青春ピンチに助け舟出すための前フリじゃんッ!
 自分の窮地を一緒に駆け抜けた人の眩い笑顔も、その優しさを素直には表せない震えも、間近で受け止めちまってるからよ、ジュリエット・クイーン・エリザベス8世はよ……。
 そういうもんを見届け、間近にいることの意味がわからねぇジョブ子ではなく、というかぷりん自身が、自分の柔らかい部分を素直に差し出せない難しさ、それを受け止めてもらえる有り難さを同居人に今回教えたわけでね。
 絶対あるでしょ……人生の恩返しがッ!

 そしてぷりんの秘めたる純情が着弾する青春のキャンバス、結愛せるふも一歩、自分を未来へ進めていた。
 待望の設計図が書き上がり、梅雨も明けてさぁ汗流す時間だ! ……というタイミングで、切り出された家庭訪問のお願い。
 出来ないままの自分を出来る自分に変えようと、トンテンカン努力していた不器用少女はそこで、何を見せるか。
 次回も大変楽しみです。

 ……みんな自分たちらしく、支え合いながら真っ直ぐ青春を歩んでいて、死ぬほど愛しく眩しいよ。
 ほんと良いアニメだなコレ。