イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アキバ冥途戦争:第8話『鮮血に染まる白球 栄光は君に輝キュン♡』感想

 暑苦しい一本気がヤクザな世の中変えてくか、主人公覚醒直後の冥途戦争……往くぞ野球だホームランだッ!! という回。
 最高にろくでもなく、しかししっかり野球もしていて、真顔でやり切り続けてるこのアニメの醍醐味を、奥歯でたっぷり噛みしめることが出来るエピソードだった。
 おもしれーなオイ……。

 

 

画像は”アキバ冥途戦争”第8話から引用


 もう題材の時点でむせ返るようなダイナシ感であるが、当然のラフプレー乱舞、ソッコー折れる形見のバット、異様に仕上がったゴロの処理作画、ホームラン王の風格を漂わせるパンダ、飛び出す死人……何もかもが最悪で最高だった。
 ケダモノグループに飲み込まれ、クソカス末端両生類に成り下がったメイドリアン共の場末感も、『なーんでヤクザなのに野球やってんだろうな……』というシニカルな空気を強調し、大変良い感じ。
 紅い超新星があんだけ女を張って激しく散った後に、このろくでもない野球バトル……と思ってたら、ヤクザはヤクザなので怨念が刃携えてしっかり刺しに来るし、野球は野球なのでボコられてもフェアプレー貫いたなごみに引っ張られて、腐れドメイドもメイドの道に目覚めたりしてた。
 野球作画を一切怠けず、『本気は本気でやってるんだ!』と絵力で証明したこと……その力みがバカバカしさを強調し、思わず笑っちゃうロクでもなさに繋がっていて、大変良かったです。
 こんなアニメだもん、そらー形見も折れるよ……。

 とんとことんメンバーが暴力と罵倒にすっかり慣れ親しみ、ヤクザ稼業としてある種の迫力出てきてるのも面白かったが、ねるらちゃんの死、激しき修羅場を超えたなごみが暑苦しく理想を叩きつけ続ける不屈のメイドとして覚醒してて、なんかトンチキな方向に筋金入ったのが、見てて面白かった。
 ここで今までのはわわ系にリセットかかってたら、盃分けた姉貴も天国で涙だったろうが、あくまで暴力に頼らず正しさを貫き、腐った世の中変えていこうとする気概はむしろエンジン全開、つーか勢いありすぎてウゼェのが良かった。
 どういう方向にしろ、物語を受け取ってキャラが変化していくのは見てて面白く、最初は暴力野球に蹴り飛ばされてたなごみの非暴力非服従スタイルも、何回ぶん殴られても罵倒されてもウザく主張を曲げない侠気を裏打ちして、アキバの女達に染みていく。
 自分のメイド道を見つけたなごみが、どうやって敵味方の垣根変えて侠気伝えていくか。
 あまりのろくでもなさと、本気も本気の力み加減に爆笑しつつ、主人公が今後どう暴れていくかのテストケースとして、かなり良かった気がする。
 まぁ死人は出るんだけどね、ヤクザの野球だから……。

 その死体をなかったことにして、グループ内部の火種も勝手に燃え尽きてくれた。
 みやびは想定より早い再登場&散華だったが、まー使い所としてはココか。
 『宇垣さん、あそこで”なかったこと”にまとめられるくらい、求心力なかったんだな……』などと、しみじみしょっぱい感触を味わいつつも、メイドリアン残党の厄介事も消えてくれて、凪としては棚からぼたもちのトンチキ野球だったと思う。
 これで凪の天下は揺るがない感じだが、後半戦どう回していくのか……全然読めないのが面白い。

 

 

画像は”アキバ冥途戦争”第8話から引用

 キャラも製作者も結構真面目に野球野球頑張った結果、『なーんでこんな地獄甲子園で爽やかな決着やねん!』みたいな感じも薄くて、なごみと嵐子涙の抱擁にはグッと来るものがあった。
 ド腐れロクでもねぇ血みどろヤクザ絵巻やりつつ、この二人の感情と関係性はジワジワ積み上げてきたものが確かにあって、結構良い歯ざわりなのが嬉しい。
 ムショ上がりの律儀さを野球でも発揮し、すげー地味に”やってた”描写積み上げていくところが嵐子っぽかったし、それが声だけデカくてプレイからきしななごみと良い対比になってもいた。
 でもなんで左アンダースロー水原勇気パロだったんだろうか……やりたかっただけか、このアニメだもんな!

 嵐子となごみがキテるほど、捨てたはずの過去が鉄面皮にデカい感情包み込んでお出汁される夕焼けも、よく映える。
 凪さん……アンタを待ってたよ。
 押し殺した態度の奥にくすぶる情念と、既に壊れてしまった夢の残骸。
 『もう萌え萌えキュンキュンって年でもないだろ』と、割れた鏡に向かって語りかけるような口調は、尋常じゃない思いと因縁のブラックホールが、かつて姉妹だった女達の間に潜むことを教える。
 真のアキバビックバンは飼いならされた外来種ではなく、生粋のアキバヤクザの絡み合いにこそ眠ってるってワケよ。

 片や栄光の頂点に立ち、片や刑務所帰りの無様な恐竜。
 時代は流れ、人は変わり、街も仁義も腐れ果てていく中で、嵐子も凪も喪われてしまったモノへの郷愁を捨てきれず、生き様を探している。
 ここに暑苦しく自分のメイド道を貫くなごみが、どう突き刺さって女と女が燃え上がるか。
 こういう部分も野球と同じく、ずーっと真顔で抜かりなくやり続けてるアニメではあるので、こっからの終盤戦はとても楽しみだ。
 巨大な感情が炸裂する爆心地って意味じゃ、百合もヤクザもおんなじだからなッ!(暴論)

 

 というわけで、色んな意味でこのアニメらしさがフルスイングされた、大変愉快なお話でした。
 トンチキなダイナシ感を最大限ブン回しつつ、覚醒を経たなごみが今どんなメイドなのか、それが醒めちまった女達の魂にどういう火を入れるか、ちゃんと見える回だったのが良かったです。
 凪と嵐子の間に渦を巻く思いのデカさも感じ取れ、この素材をどうグチャ混ぜにしてお話をまとめていくのか、あるいはさらなるカオスへ飛び込んでいくのか。
 読みきれないのが面白い、オリジナルアニメの醍醐味をたっぷり味わいながら、次回を楽しみに待ちます。