イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

デリシャスパーティ♡プリキュア:第37話『ひそむ怪しい影… あまねの文化祭フィナーレ!』感想

 デパプリ個別回ファイナルラップも大詰め、今回はあまね生徒会長の総まとめ、ナルシストルーも再登場の第37話である。
 最初は洗脳された敵役として登場し、その反動で”しばらく寝込む”という想定外の退場をキめ、ゆいちゃんの言葉に背中を押されてパフェなプリキュアとなって、後輩たちを強く優しく美しく導いてきた頼れる先輩。
 一個上の友達として、視野の広いメンターとしての活躍が多かった所で、第33話でガッツリ過剰な正しさを求めてしまう危うさと、拳と正義の行く先に迷わせた上での今回……大変良かったです。
 悪辣な態度とチャーミングな魅力で、中盤を支えてくれた魅力的な敵役・ナルシストルーの新たな一歩に寄り添うお話にもなっていて、二人分贅沢に未来へ進ませていくエピソードになっていたのは、『そうなってくれたら良いなぁ……』という願いをしっかり叶えてくれる感じで、とても嬉しかった。
 第33話をナルシストルーの実態と向き合わぬままああいう運びにした以上、彼のひねくれた魂と悪意に先回りして答えを見つけていたあまねと、彼女の作ったりんご飴が出口のない悪党に未来を創る展開になったのは、積み上げた物語を無駄にしない、良い料理法でした。

 

 というわけで、クッキングダム関係の因縁を前回から引き継ぎ展開しながらの、あまね最後の文化祭。
 天使の衣装しか着てはいけないと自分を追い込んでた彼女が、ヴァンパイアのコスプレしてるのがまず良かったです。
 闇に潜む悪の貴族も自分の衣装だと、構えず着られるようになった変化も良いんだけど、チャーミングな八重歯が今回対峙するナルシストルーと重なる感じで、自分を歪ませた仇と憎んでいた相手に共鳴していくお話を、無言で支えていたと思う。
 ナル公の顔を実際に見る前から、あまねのなかでは向き合う準備が整ってて、それが衣装に現れてる感じがしました。

 対するナルシストルーも、悪党時代の仮面を外し、文化祭という特別な祝祭に”ナル先生”として人間の暮らしに混ざって、得意の科学技術を誰かのために使う流れ。
 素顔のままの彼が、古巣に命を狙われつつ(ドローンで制圧・暗殺にかかるブンドル団、間抜け集団のようで極めて邪悪な顔が出てて、大変良かった)流れ着いた人間の日々は、ずっと馴染めぬまま横目で睨みつけてきた憧れの光でもある。
 ツンツン強気な態度は崩さぬまま、宿敵から身を隠して触れ合った縁が手渡してくれたりんご飴を、かじってみると食べれるし美味い。
 そういう経験がなかったから自己愛に歪み、他人の顔を見ることがなかった彼が初めて『作ったやつの顔がみたいな』と思えたのは、なんだかんだ獄中で己を鑑み、自分の行く先を考える時間が効いたのかな、とも思った。
 こういうごくごくフツーの”更生”が刺さるあたり、根っからの邪悪暗黒生命体ではなくて、社会から疎外された/自分を疎外してしまった人間が捕らわれ、適切な処置を経て悪行から抜け出すシステムが正しく機能してた感じで、妙に安心する。
 ”プリキュア”においてこんだけ法務執行が機能したの、結構レアケースな気がする……。

 自分を散々苦しめた悪党が、大事な友だちと家族に酷いことしないか、持ち前の責任感、正義感にブレーキかけて”今”の顔を見ようとするあまねと、お礼にもらったりんご飴から人間性を回復させていくナルシストルー。
 二人がダイレクトに言葉をかわすのではなく、りんご飴を媒介に知らぬまま繋がっていく感じが、完璧なあまねに少しだけ欠けていた柔軟性を最後に足す感じで、とても良かった。
 プリキュアになって以来、色々足らねぇ部分も多い後輩を戦闘でも人生でもしっかり支えてきた彼女にも、消えぬ影があり乗り越えるべき壁があると描いた第33話。
 そこで成し遂げた長足の進歩をかき消さず、最後の一筆を足す感じのさじ加減は大変グッドでした。
 己の正しさに軛を付けて、他人の顔をしっかり見る……その過程で自分の気持ちとも向き合う落着きってのを、既に人格を完成させかけてたあまね先輩は手に入れて、よりパルフェになっていくのだ。

 『ごはんは笑顔』をモットーにやってきたデパプリが、悪党改心の決定打を”りんご飴”という甘い料理に求めたことは、オーソドックスな話運びながら、大事な一手だったと思う。
 その甘さがナルシストルーの、食べれるモノが少ない特性に噛み合ったのは偶然なんだけども、そういう出会いが人を変えていく可能性は、このお話がずっと大事にしてきたものだ。
 最初は刑期を踏み倒すために使われかけてた人間縮小装置が、最終的には自分を牢屋に戻すため、ブンドル団の暗殺から自分を守るために使われて、獄に繋がれても世間を恨まず、孤独を感じずにすむ縁として、りんご飴を美味しく噛み砕いて、日々を過ごせる。
 そういう所にナルシストルーを持っていける、今為すべきことを真っ直ぐ見据えて迷わないあまねなりの答えをしっかり示せたのは、彼女がたどり着いた一つのゴールとして、凄く良かった。
 拳の正しい振るい方に関しては第33話で答えが出ていたので、ナル公の煽りも気にせず落ち着いて対応してたのも良かったし、その真っ直ぐさが仮面外しても人道にフラつくナル公に、道を示す形になってたの素晴らしい。
 あまねは成熟した人格に驕らず、新しく出来た仲間の善さとか、そこに反射する自分の至らなさが他人や世間と衝突するより早く、自分を鑑みて改めることが出来る強さがあった。
 その清廉潔白で柔軟堅牢な姿勢がここで、一度は心の闇を占めていた宿敵をぐいっと力強く人の道に引っ張り上げる決め手となること……それで終わらず、パーラーの娘としてお菓子作りが大好きなあまね、その優しさが詰まったりんご飴が満たされる喜びを教えるところも、キュアフィナーレであり菓彩あまねでもある彼女の全部に意味があったのだと思えるフィナーレで、とても良かったです。

 

 話のメインシャフトはそんな感じで展開してましたが、ここに並走してマリちゃんと妖精たちの手がかり探しも、クライマックスに向けて進んでいく。
 いうたかて、頼れそうな手がかり全部拾い上げて、最後のヒントが潰れた……っていう話なだけどさ。
 ここで特別な力を受け継ぐパムパムが、いい塩梅に都合の良い奇跡を発揮して、次回はまさかのタイムスリップ回らしい。
 そらまー死人をよみがえらせるわけには行かないので、ゆいちゃん唯一の瑕疵でありキャラクターの核でもあるおばあちゃんとの対峙は、こういう形になるんだろうけども。
 ここら辺破綻ギリギリで外付けエンジンを貼り付けてる危うさも漂うが、前回らんちゃんのフィナーレを削って掘り下げた部分が無駄にならず、チマチマ伏線まいてたクッキングダム周辺の物語燃料が最後に吹き上がってくれそうだ。
 理想の保護者として、”人間”として一年頑張ってくれたマリちゃんが、抱える薄暗い影も深く彫り込めそうで、デパプリの最終週を加速させるエンジンとして、クックファイターの過去と宿命を選んだのは正解だと思う。
 ここを足がかりに、未だ正体不鮮明なゴーダッツの顔を一気に彫り込んで、作品の目鼻を整えて終わる流れも掴めそうだしね。
 その端緒となりそうな次回のタイムスリップ、ゆいちゃんの見えにくい内心へ深く入る大事な話数ともなりそうで、とても楽しみです!