イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

もういっぽん!:第2話『結成!復活!再始動!』感想

 帯締め直して”好き”に向き合う、柔道青春物語……部活本格始動の第2話である。
 第1話でガッツリ入れたエンジンを少し緩めて、未知たちの高校生活がどんな塩梅か、賑やかに楽しくキラキラと描く回になった。
 勝てれば当然楽しいけども、勝ちだけが意味を持ってるわけではない。
 未知にとっての柔道がどういうモノで、その前向きなひたむきさに仲間たちがどんだけ惹かれているか、どっしりと見せてくれる感じが良かった。
 ズボラで大雑把、しかし人間として大事なところをけして取り逃さない未知のキャラ性のお陰でお話自体は爽やかで明るいのだが、早苗を筆頭に抱えている感情がデカく、それを表現する筆にも適度な湿り気があって……つまり、相当好みの味付けである。

 

 

画像は”もういっぽん!”第2話から引用

 部室追い出されて、畳を運ぶ。
 ”雑用”としか言いようがない友との歩みにこういう”貌”する時点で、生半な思いで未知の隣りにいるわけじゃあねぇんだよなぁ……。
 周りの視線を気にせず、自由闊達に突っ走っている未知の明るさは、何かと思い詰めがちな早苗の太陽となって、少女を明るく照らしている。
 時分の暗さを追っ払ってくれる未知のありがたみを早苗はよく解っていて、しかし言い出せないこともあって、高校一年生の春は当たり前の重たさで転がっていく。
 母との約束を覆して、高校でも柔道部続けられるか。
 ハタから見たらありがちでちっぽけな悩みが、滝川早苗という少女にとってどれだけ一大事か……それを丁寧に刻み込んでいく場面だ。

 ここでわざわざ、早苗が重荷を背負いたがる理由……未知生来の人徳がよく描かれているのも、主役を好きになるうえで凄く良かった。
 全国に選ばれるような才能も実力もなく、キツい部活には不満たらたらで、しかし思い返してみれば三年間の柔道生活、楽しいことばかりだった。
 星取表だけ見てみりゃ、これもありがちでちっぽけな一柔道家の歩みなんだろうけども、そこには確かな輝きがある。
 そんな自分だけの宝物を率直に受け止めて大事に覚えている生き方が、早苗にとってはあまりに眩しい。
 その引力で、何人の女を引きずり込んでいくのか……今後が楽しみな主役だな!

 

 

画像は”もういっぽん!”第2話から引用

 自由で野放図なだけかと思いきや、ダチ初めての一本勝ちを自分ごとのようにしっかり覚えていて、心の底から喜べる器量も見せる。
 『そーいうことナチュラルにこなすから、ズブズブ女が量産されていくんだぞ……』って感じであるが、しゃーない……魂の質量がデカい惑星(おんな)には、色んな存在が引き寄せられていくのだ。
 振る舞いがとにかく自由で、ともすれば軽率に思える主人公の視界が、自分の”好き”だけで塞がれておらず、誰かの嬉しさを共に入れる余力があると判る描写は、凄く良かった。
 大好きな友達が大事なものを、しっかり抱きしめてくれているとわかった早苗の瞳は涙で潤むが、上四方固めに隠れて未知には見えない。
 この早苗→未知の思いの強さが表に立って足かせにならんように、内気少女が結構頑張って”軽み”作っている所が、健気で可愛らしい。
 当たり前の気楽な友達関係をリキ入れて作り、その当たり前の幸福を自身堪能しつつも、そんなありきたりじゃ支えきれない質量を既に抱え込んでいるのがバレバレなの、好感しかねぇな……。

 

 

画像は”もういっぽん!”第2話から引用

 そんなふうに仕上がった二人の距離感に、戦友として割り込む運命にいる前髪ぱっつん女もまた、抱え込んだ質量は重かった。
 つうか重すぎてなかなか切り出せず、唐突に柔道着着込んで土下座を始めるトンチキ人間だった。
 未知ともう一度柔道するために、進路まで捻じ曲げた永遠ちゃんの”質量”が、同じ太陽に惹かれた伴星として早苗に響く場面、面白すぎるな……。
 『理解る……』って貌してんもんな早苗。
 未知自身はさばけた性格なので気楽にグイグイ至近距離までツメてくるけども、自分の心に芽生えた重荷を自覚してる少女たちはその領空侵犯に、心のデフコンがレベル5まで跳ね上がっちゃうんだよなぁ……。

 柔道が大好きな未知を大好きになってしまった二人が、共に柔道をする未来を眩く受け止めていく様子は、作品のメインテーマである”柔道”に跳ね返って競技全体を眩しく照らす。
 まだ勝った負けたの話は出ていないが、しかし柔道それ自体と柔道に励む人々がどれだけ人生を豊かに弾ませてくれるかは、しっかり息をしている第2話だと感じる。
 今は未知の持つ抜群の人間引力がキャラをまとめてる感じだが、楽しく部活に励む中で横の繋がりが生まれ、あるいは厳しい鍛錬と試合の中で思いが練磨され、いろんな輝きが出てくると嬉しいな、と思う。
 そんな期待感を育む上で、未知に重たい気持ちを抱える永遠と早苗の共鳴が描かれていたのは、凄く良かったです。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第2話から引用

 そんな感じで、みんなで切り開いていく未来は明るく楽しい。
 屋上で再確認した絆に背中を押され、意を通したあとダディに早苗が”抱きつく”の、彼女が大事で大好きなもの相手にどういうコトするか、しっかり”癖”伝わる感じで大変良い。
 あと引っ込み思案な永遠ちゃんの高校生活が、未知達と過ごす中でどう変わっていくのか、学食戦争で楽しく書いてるのも良かったな。
 まだ試合が動き出してないせいか、武道場の外側に大きく広がっている高校時代が、柔道する中でどう豊かになっていくのか、溌剌と青春が元気なのはありがたい。
 未知たちが向き合ってる、柔道が真ん中にある高校生活が彼女たちなりの眩しさで輝いて見えるのは、作品に確かな息吹を与える大事な燃料だ。
 そこで一人剣道着の南雲……お前は何を想う。
 はよう魅せてくれやッ!

 ……と思いつつ、顧問の先生が顔を出して次回に続く。
 あまりにも眩く輝く第1話の特別さが霞んだように見えて、どっしり作品の土台に何が埋まっているかを教えてくれる、良い第2話でした。
 早苗にしても永遠ちゃんにしても、巨大で繊細な思いを未知と柔道に抱いていることがよく描かれていて、お話の主役と主題がそういうものをを引き寄せるパワーに満ちあふれていることが、しっかり伝わってきます。
 こういう”芯”にがっぷり食い込んだ強さを感じられる話運びは、大変ありがたい。
 次回もとても楽しみです。