イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

UniteUp!:第2話『歌ってみないと』感想

 小デブの異常な愛情から始まる少年偶像シンデレラストーリー、第2話はユニットメンバーと仲良くなろう! というお話。
 かっちゃんのデカすぎ感情で火が点いた物語、どう主役ユニットに継いでいくか興味津々だったが、静謐で叙情的な筆致を生かして、キャラの可愛げを上手く際立たせる運びとなった。
 初見では奇人集団に思えた”PROTOSTAR”であるが、ジワジワと距離が縮まりお互いの顔が見えてくると、実年齢よりピュアピュアな心根がじわっと染み出してきて、可愛い奴らだと思えた。
 何しろ主役がアイドル活動に後ろ向き(そしてその消極的な白紙を、アイドル色で縫っていくことが1クールの大きな柱になると思われる)なので、芸事やる真芯は一気に近づくとは行かないが、奇妙な縁で出会った新しい友達と打ち解けていく歩みは、ゆったりとした精緻で描かれていた。
 叙事よりも叙情に足場を置いて転がしていく話運びにはやはり独特の味わいがあり、この穏やかで趣深い語り口は、今後話しの温度が上がっていっても維持してほしいな、という感じ。
 同時にこうしてどっしり整えた畑から、感動が大きく実る勝負エピも楽しみではある。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第2話より引用

 というわけで今回は、明良くんが自分を守るように抱え込んだリュックサックが膝に降ろされ、みんなと同じ場所に収まるまでの旅路を描く。
 それは万里くんがマスクを外し素顔を見せてくれるまでの歩みだし、千紘くんがピリ付いた態度を収めて一緒に歌ってくれるまでの道のりでもある。
 周りに流されるまま事務所に所属し、この3人でアイドルやることになった明良くんが、話のメインステージに抱えてる遠さ……自分には関係ないと遠ざけることで、感じやすい自我を守ろうとする防衛行動。
 その防壁たるリュックを降ろさせて、『この人たちとだったら、一緒に歌ってもいいかな……』と思えるようになるまでの、三人の道のりが今回描かれている。

 心象を静物に仮託して描く筆が巧い(そして多い)作品なので、リュックサックの行方を気にしながら見ていたけども、心の行く先をダイレクトにセリフに載せすぎず、ちょっとずれた所に反射させてこちらに届ける筆致は、凄く好きだ。
 それはいきなりアイドル活動とユニット仲間に馴染むのではなく、前回見せつけた内省的なクラさを明良くんの個性と許したまま、共に隣り合っていく時間がその硬さを、だんだん切り崩していく様子を伝える。
 その無理のない歩みの中で、お互いを結びつける大事なファクターとして”歌”が使われていること……三人がUniteする最初のステージとして、明良くんのふるさとであり、歌い手としてのアイデンティティでもある菊の湯が選ばれているのは、とても象徴的で的確だ。
 二話までで僕が見た所、このお話はアイドルのお話であり、懐かしさの物語であり、結びつきのドラマであると感じた。
 主役ユニットが”ユニット”になるあのお風呂に、その全部があるのは凄く……見てて腑に落ちる感じがしたのだ。

 

 

画像は”UniteUp!”第2話より引用

 相変わらず美術が反則的に良くて、それが華やかに色づきつつもリアルな手触りを残す話運びと、そこに漂うナイーブな詩情をしっかり支えている。
 綺麗なんだけども綺麗すぎない、しかしそんな世界の中確かに存在している、特別に綺麗な瞬間を見落とさず抜き取る視線によって構築された、緊張感あるぬくもり。
 この手触りが、奇妙な縁で結ばれてお互いを知っていく少年たちの足取りを、しっかりこっちに伝えてもくれる。
 まだアイドル見習いでしかなく、レッスンすら始まっていない三人を包む景色には、しかし確かに特別な美しさがある。
 これから先華やかな衣装を身にまとい、まばゆい脚光を浴びて”アイドル”やっていく彼らが、この手触りを懐かしく思い出す所まで、お話は進んでいくのだろうか?
 そんな、先読みしすぎた疑問も思わず浮かぶ、とても良い絵だ。

 

 

画像は”UniteUp!”第2話より引用

 そんな三人の間合いは、間に境界線を挟んだ遠くぎこちないものとして、春に転がっていく。
 やや引いた構図を多用して現状を客観させつつ、明良くんが言い出しにくい現状に迷うときは、しっかりクローズアップでそれを切り取る。
 細かく、時に大胆なカメラワークで少年たちの現状を追いかける歩みは、暗号のように関係性と感情を読ませる語り口で、個人的には相性がいいと感じる。
 桜の幹、あるいはブランコの鉄柱。
 見てるこっちも万里くんや千紘くんのことよく知らないわけで、引っ込み思案な明良くんとの間合いがよそよそしい感じになるのは当然……であり、それが穏やかな日差しの中、ちょっと頑是ない公園や裸の付き合いを通じて、緩やかに溶けていくスピードが、作品とのシンクロ率を上げていく。

 事務所での第一印象がやや怪訝で、ちょっと暗い感じになるように仕上げられているのはおそらく意図的で、そういう当たり前のファーストコンタクトから、段々と親しみ馴染んで解っていくという歩みを、作中のキャラだけでなく見ている側にも追体験してもらう物語装置として、この第2話は機能している。
 明良くんが歌い手にもアイドルにも興味関心がなく、な~んも知らない(からこそ、情熱と知識が深い万里くんに仕事ができる)のも、それを主題とする物語に見ている側が素直に乗れるよう、導線を引いた結果だと思う。

 すがるようにブランコを握りしめる手に宿った隔意と戸惑いから、明良くんはだんだん緩んで、”アイドル”と新しく出会った友達に近づいていく。
 好きになれる人と一緒だから、彼らが(自分とは違って)本気でやってきた”歌い手”という活動にも興味が向いていくだろうし、やらされていた芸能活動も”やりたい事”になっていくだろう。
 そうしてアイドルとしての”今”に前のめりになるうちに、一緒に戦う仲間がもっと大事になって、より強いもので結び合っていく。
 それはあくまで予測でしかないが、同時にこの凝った描線の先にあるものを思うと、そうそう的外れでもないかな、と感じている。
 オーソドックスでスタンダードな、市場豊かな芸能青春物語。
 そういう到達点に期待が高まる”二話”なのは、とてもありがたい。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第2話より引用

 クローズアップとロングショット、感情への密接と客観での描線は、唐突なお風呂シーンでも元気だ。
 ここで太眉キツめ生真面目委員長キャラだと思ってた千紘くんが、思いの外ずけずけ明良くんの実家に上がり込んできて、ザブザブお風呂入って親睦深めようとする立ち回り……意外ながら大変Good!
 ”芸”ってことに色々事情と思いを抱え込んでるっぽい千紘くんは、それが警戒と防壁になって他人を遠ざける感じだけども、同時に新天地で自分なり挑んでみたい気持ち、そこで出会った奇跡を大事にしたい心もある。
 それが表情変えないままのグイグイに結びついてると考えると……可愛いじゃん、自分の中の優しさと情熱を、上手く扱えてないボーイじゃん……。
 お互いの事情をいきなり全部話す作りではないので、千紘くんを形作っているものが何かは今後掘り下げていくモノだと思うけど、しかしそこに先立ってお互いのニンが描かれ、それが結びあって生まれる縁が活写されているのは、キャラとお話を信じる足場として大変良い。

 三人きり、だだっ広い銭湯に身を置いていると、ぬくもりと懐かしさに包まれて壁も壊れていく。
 事務所での硬さ、公園で少し縮まる間合いと来て、満を持しての裸の付き合い、ちょっとずつ漏れ出ていく本音と事情。
 一話どっしり緩やかな傾斜をかけて、お互いの心が溶け出し混ざっていく様子に付き合っていくのは、なかなかに心地よかった。
 とにかく焦んないね、このアニメ……。

 一緒に歌う前は距離が縮まりきってないので、万里くんと千紘くんをあえて別カットで抜いて距離感見せたり、”吠えろ!クロスファイヤー”を同性・同世代共通の思いでとして共に語らい歌ったあとは、同じ画角に壁なくおさめたり。
 急に仕事仲間になった三人がどう心を溶かしていくのか、その変化を一個ずつつ追いかける視線は極めて丁寧である。
 第1話で終わらない幼年期、主役が好きすぎて頭おかしい幼なじみとの絆になった子供番組を、新しい友達と共有することで、三人が共通して抱えている幼いイノセントが、鮮烈に輝く作りでもある。

 なんつーかな……この三人めっちゃバブいんだよね。
 どう考えても高校生ではないッ! ”小3”の気(オーラ)があるッ!!
 髪の色もコンプレックスの原因も違えど、根っこの部分が似てると描くから三人の距離がグーンと縮まるのも納得だし、桜とお湯とお歌と、綺麗であったけぇモノが縁結びを助けてくれる牧歌的な雰囲気も、それを助けてくれてる。
 このピュアさで”PROTOSTAR”のアイドル活動が転がっていくのなら、こらー相当俺好みのお話が摂取できそうで、期待も膨らむわ。
 そんな三人を包んでる菊の湯の雰囲気が、放課後の秘密基地めいた特別な”味”宿してんのも、かなり好きだな……。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第2話より引用

 かくしてお互いの荷物を一箇所にまとめ、運命と出会っ少年達の物語が始まる。
 万里くんの自己卑下人見知りキャラを、一話でぶっ壊して素顔晒させたのは良い判断だなー、と思う。
 こっから乗り越えていくオリジンとしてはインパクトあっていいんだけど、引っ張られると正直ウザいからな、マスクとグラサン。
 そういうモンを引っ剥がす積極性は、赤担当なのにうじうじ内省的な(そこが好き)明良くんではなく、つんつん鉄面皮に静かな情熱を宿した千紘くんにあるようだ。
 こういうユニット内部のアンサンブル、人間関係の基本形を初登場エピソードでしっかり見せてくれると、今後物語に付き合っていく羅針盤になってくれるので、とてもありがたい。

 作品の特色(であると、僕が感じてる)たる静かな熱量を精妙に使って、主役ユニットの一歩目を丁寧に描くエピソードでした。
 やっぱ男の子たちの内面と距離感を、美しい世界に反射させながら一個ずつ届けてくれる手付きが、自分好みで凄く良い。
 その丁寧さが”速さ”を遠ざけている感じもあるが、この焦りのない物語でどんな場所を目指していくのか、付き合いながら探っていくのもまた、楽しみである。
 『そうやって一緒に歩いて、損のない気持ちのいい子達だよ』ってメッセージは、しっかり出とるからな。
 次回も楽しみです!