イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

大雪海のカイナ:第2話『雪海の王女』感想

 大樹と雪海の新世代ファンタジック・ジュブナイル、出会いと旅立ちの第2話である。
 前回もド迫力の作り込みで見るものを作品世界に作り込んでくれたが、今回はちょっと腰を落ち着けて世界情勢について話し、運命の少年であるカイナくんが足下の広い世界へと、リリア姫と一緒に旅立っていく展開に。
 虫喰って服作って、異様な環境でもたくましく生き続けてきた人間の営みをしっかり味わいつつも、何かが始まっていく期待感、それを後押しするジジババの温もりを、サナギ汁と一緒にたっぷり腹に収める回だった。
 俺このアニメ好きだな、人間の匂いがするよ……。

 

画像は”大雪海のカイナ”第2話から引用

 というわけで流れ流れて天膜の村、お忙しいだろうがお嬢さん、ご飯はいっぱい食べておきな! という、第2話のスタート。
 やっぱね……カイナくんが純朴実直な気持ちの良い青年で、初めて出会った同年代の異性に興味津々ながら、あくまでジェントルに、リリハの命と心を大事に扱ってくれるのが、とにかく見ててありがたい。
 『滅びに瀕している世界だからこそ、出会いが恋となり愛を育んで未来が繋がっていく様子は、ジュブナイルに重ねてガッツリやるでッ!!』という宣言も力強いが、即座に強火で煮るわけではなく、まず運命が結び合わせた大事な隣人として、世界に馴染み命の糧を共に食むところからスタートしてくれるのは、落ち着きと品があっていい。
 世界すべてを救う知恵を求めて天に上がったリリハにとって、上の世界も壊滅寸前で、いるのはフツーのジジババだけ……てのはガックリ肩を落とす結果だろうが、しかし世界にたった1つの村とはいえ、そこに確かに人は生きている。
 どんなモノだろうと工夫をこらして美味しく仕上げ、毎日を乗り越えていく燃料として腹に収めていく営みは変わりなく、リリハは異界の人々と同じモノを振る舞われ、それを食べる。
 それは単なる物質や栄養を超えて、せっかく助かった命に振る舞われる思いやりの結晶であり、こういう当たり前の優しさがまだ、この滅びかけの世界には生きていることを教えてくれる。

 他方悪辣なるバルギア帝国はマージで超悪くて、資源独占を狙って侵略を繰り返す漆黒の帝国であった。
 上も下も、生活インフラである大樹の水枯れという問題に苦しめられ、滅んだり滅ぼしたりのろくでもないループにハマっていることが、今回分かった。
 上では既に終わってしまった静かな滅びが、下では現在進行系のサバイバルレースとして熱く発火してる対比、結構好きだな……。
 座して終わっていくはずだったカイナくんの物語は、戦乱の火種と共に登ってきたリリハとともに雪海へと降りていくことで、新たな展開を見せていく。
 帝国には帝国なりのロジックがあって他人の庭ボーボー燃やしてんだろうし、極めて穏やかな天上とは違う、血しぶき舞い散る人間のあり方を学ぶことで、カイナくんも人として成長を果たすのだろう。
 願わくばその旅が、戦火と悲しさだけに満ちて終わるのではなく、例えば水涸れに苦しむ世界の理不尽を全部ぶっ飛ばすようなハッピーエンドにたどり着いて欲しいもんだ。

 

画像は”大雪海のカイナ”第2話から引用

 さて旅立つ前にカイナくんとリリハ姫は、服を作り水を貯め、命がけの戦いと隣合わせなちっぽけな村の”生活”に飛び込む。
 ここにどっしり時間使ってくれたの、天膜の村をもうちょい味わいたかった自分の気持ちにピッタリ寄り添ってくれる感じで、大変良かった。
 別に楽園というわけではなく、生きるためには色々工夫し危険もあるけども、しかし当たり前にそういうことを積み重ねて、この異世界に人間は生きている。
 超絶危険な襲撃をわざわざ呼び込むほどに、リリハの心が焦っている……つまりは、皇女としての責任感が強いことを感じ取れることも含め、たっぷりと主役と彼らを包む世界を振る舞ってくれるもてなしだった。

 やっぱ衣食住、人が過酷な自然の中でそれでも必死に生きる術を細かく描いてくれると、創作世界の肌触りは良く伝わってくるし、仮想のキャラクターが確かに宿す”息吹” みたいなものを、身近に感じることも出来る。
 異邦人であるがゆえにトラブルも起こすリリハだが、カイナくんは彼女にぴったり親身に寄り添い、危機を一緒に乗り越えて守ってくれる。
 人が生み出す諍いに満ちてる下界へと、進んでいくだろうこの先の物語においても、彼が未来を力強く切り開いてくれるという信頼感も、上滑りすることなくしっかり届いた。
 あんまり世界が美しく異質なので、確かに運命が動いているロマンティックな予感が画面に常時満ちていて、英雄詩序章に相応しいワクワク感が地道な生活描写に混ざるの、俺好きだなぁ……。
 命を守ってくれた輝く星は、果たして運命の導きなのか、偶然なのか……。

 

 

 

画像は”大雪海のカイナ”第2話から引用

 そんな予感を抱えつつ、少年と少女は古き秘宝を託されて旅立つ。
 旅の準備の中で、『何かを託す、手渡す』という仕草が多めに描かれていたのは、不思議な充実感と期待を生み出す、良い演出だったと思う。
 天膜最後の村に縛り付けていても未来はないと、村唯一の子どもを未来へ送り出す時、常識はずれの偉業を可能にするレーザーカッターを、その手に委ねる。
 あるいはリリハの事情は全くわからぬながら、忠臣が最後に託した一刀を大事に守って、二人の旅立ちに手渡す。
 そういう事ができる場所から、二人の運命は始まっていくのだなぁ……という、しみじみした感慨があった。
 剣を村のオババが『長すぎる包丁』って言ってたの、天膜の闘争なき楽園っぷりと地上の修羅界っぷりが同時に際立って、好きな表現だったな。
 アレも争うほどの人口がいない、この世の果ての村だからこその平和ではあって、それを痛感しているからこそジジババはカイナくんに、全部託して送り出すのだ。

 んで東亜重工フォントの看板からも解るように、ただの原始世界じゃありえねー超技術の片鱗をフィジカル勝負の絶壁滑降に活かしつつ、二人の旅は今始まるわけよッ!
 過剰出力でブッパするとオーバーロードする所とか、最高にロステク物品している”樹壁接ぎ”に宿る、SFとファンタジーが最高の配分で融合したワクワク物品力……素晴らしい。
 『ここまでが僕らの世界だ』と諦め受け入れていたカイナくんが、大人が秘していた特別なアイテムの力を借りて力強く、彼の世界を広げているのも。
 その隣で自身ロープをたくましく操り、故国の危機に上がったり下がったり、汗流しまくってるリリハ姫の勇姿も。
 ”ここから先”を見たくなる力強さにあふれていて、たいへんいい感じです。
 姫様相当頑張って、時分の物語を前に進めるよう必死こいてるの好きだなぁ……カイナくんは良く助けてあげてねッ!(いい子なので、言われなくとも助ける。ジジババそう育ててくれてありがとう……)

 

 というわけで、天膜最後の子どもが己の運命へと旅立っていく、どっしりとした第2話でした。
 今後お話の舞台になるだろう雪海の戦乱に、主役が飛び込むまで二話ってのはややゆったり目かもしれませんが、それ故作り込んだ世界観をたっぷりと吸い込み、そこで確かに営まれる生活を味わえたのは、ありがたい限り。
 そういうモノが積み重なるからこそ人間のいい部分が共有され、それを許さないほど環境が悪化しているから、最悪の部分が燃え盛ってるんだろうしね。
 今後展開していくだろう国単位のサーガが、何を下敷きに進んでいくのか。
 その手触りをちゃんと伝えてくれたことで、今後の旅路にワクワクも高まっております。
 次回も大変楽しみです!