ヴィンランド・サガ SEASON2を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
OP/EDも切り替わっての後半戦開始、ケティル一家が本国で終わりの始まりに首突っ込んでる裏で農場では…というお話。
奴隷編において善き生き方の象徴だったスヴェルケルにも、穏やかに人生の冬がやってくる描写と、逃亡奴隷が燃やす烈火の怒り。
農場接収のために暗く冷たく燃え盛った血しぶきとは、また違った色合いの影が物語に伸びてくる回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
クヌート率いる国軍が武器構えて迫るってだけでも一大事なのに、愛憎の中心に立つアイネルズと関係の深い殺戮者が出てきて、多角的に地獄が煮込まれそうで怖い。
まートルフィンが己の人生を見定めるためには、極めて悲惨なその現実を砥石に生きてる実感を研ぎ澄ませる必要があるわけで、農場接収も逃亡奴隷の来襲も、必要な試練…と。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
冷たく切り捨てられないために、生きることの実感を農場の生活に込めて、ここまで書いてきたわけで。
血が繋がらぬが故に何より温かい、疑似家族めいた人々がスヴェルケルの老いと死に向き合っていく穏やかさが、雪辱の返り血に濡れた逃亡奴隷の襲来でどう燃えるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
なかなか予断を許さぬ後半開始である。
ずっと描かれてきたエイナルの淡い想い、残酷に一刀両断されそうな匂いプンプンしてきたな…。
物語は、大変ショッキングな殺戮から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
幸運にもトルフィンが免れてきた、奴隷主のスタンダード。
人間型の道具が人格や個人史を持ってる事実に想像力がなく、苛烈に使い潰して顧みない生き方のツケを、焰と剣で払わされる。
(画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第13話より引用) pic.twitter.com/xr70alUcCv
あってはならない暴発に思えるそれは、奴隷制度が持つ本来的な軋みがたまり溜まって炸裂した果てであり、1000年前のありふれた風景なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
生きるも死ぬも自分では決められない状況に人間を追い込めば、その理不尽をひっくり返すべく剣を逆手に噛みつかれる可能性も、自然と燃え盛る。
優しいケティル農園の暮らしが、トルフィンに教えなかった厳しい時代の本質。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
殺戮に燃え盛る地獄絵図は、少しの幸運で主人公が回避し得た、あり得たかもしれない未来の一つだ。
そんな悲惨なドラマは対岸の火事ではなく、失われた花嫁を求め、早馬で穏やかな日々に迫る。
生老病死は人の常、老いてなお盛んだったスヴェルケルが畑に倒れ伏し、トルフィン達の日常もその顔色を変える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
しかし決定的な破綻はまだ遠く、やがて来る別れには心の準備を整える時間が、優しく残されている。
…ように見える。
(画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第13話より引用) pic.twitter.com/YojKpGMQcM
血の繋がった息子や孫が、王都で大変な修羅場に飲み込まれている裏で、赤の他人がスヴェルケルの末期を優しく見守り、その生活を助けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
そこにはご馳走を口に運ぶ喜び、恋心の確かな温もりが宿り、穏やかで幸せな臨終への道が、静かに整えられている。
…ように見える。
生きて老いて死ぬ定めをどう飲み込むか、スヴェルケルがその身をもって人生最後の授業を施す時間が、ひどく簡単に消えてしまうことを今回冒頭の殺戮、あるいはここまで描かれた”ヴァイキングの物語”は、既に語っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
穏やかに、幸せに生きたい。
そんな当たり前の願いを誰もが懐き、叶えられない。
なにしろ周到に練り上げられた農園接収計画が迫っていることを、神様視点の視聴者は知ってしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
それに加えて荒々しい来訪者が、美しい女奴隷を奪還するべく襲いかかかってきて、嵐の前の静けさはどこか空々しく、それでいて愛しい。
(画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第13話より引用) pic.twitter.com/EEiBap1r3n
憎まれ口を叩きつつも、枕元で聖書を読み倒れた老人を抱く”蛇”に、戦士の面影はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
その口が語る聖書の教えに、トルフィンは耳を傾け感じ入る。
汝の敵を愛せよ。
実の父トールズが殉じ、仇たるアシェラッドが進み得なかった道は、気高い綺麗事でしかないのか。
忌避すべき老い、その先にある死すら微笑んで抱きしめられそうな、穏やかで優しい日々が続くのであれば、聖人の言を疑う必要はないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
しかしこの穏やかさは嵐の前の静けさ、あるいは過去を置き去りにした夢でしかなく、世界はいつでも発火を待っている。
あるいは、既に燃えている。
『聖書を読む』という行為が富と学識に恵まれた、特権階級の贅沢であると描く今回の描写は、作品の真ん中に座るノルド的現実の厳しさを、面白い角度から補強する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
爺の聖書は売っぱらって一財産になる贅沢品だし、農民から一代で身を立てたスヴェルケル自身は、”蛇”に読んでもらうしかない。
クヌートがその理想に深く感じ入りつつ、現世での実現に覇道を選ぶしかなかった、愛なき世界に説かれる愛。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
門前の小僧よろしく福音を盗み聞きするトルフィンにとって、それは空疎な夢になるのか、全霊を賭して叶えるべき理想になるのか。
それを問う闘いが、唐突に迫る。
辛い労役に擦り切れた奴隷の掌を、そこに刻まれた理不尽を確かに切り取りつつ、カメラは赤毛の勇者が妻を取り返しに来た瞬間を、鮮烈に描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
慈母の如きアイネルズの、見開かれた瞳に宿るグロテスク。
(画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第13話より引用) pic.twitter.com/QnybK9yieH
それは彼女が幸福な過去を断ち切られ、人間であることを否定されてこの農場に縛られている現実を、豊かに語る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
夫がいて、幸せな日常があって、それを踏みにじられてケティルに抱かれ、スヴェルケルの老いに寄り添い、何かを諦めて何かを待つ。
彼女にも、彼女なりの物語がある。
逃亡奴隷の襲来は、そんな当たり前の事実を一気に浮上させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
その過去も真実も知らぬまま、幸せに岡惚れしていたエイナルが背負っている、重苦しい彼自身の人生。
それと釣り合うものを、アイネルズも当然持っているのだ。
生きているのだから。
そういう重たさが剣を携えぶつかりあって、凄くあっさり断ち切られるのも、この時代の習いである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
身内を獲られた”蛇”にとって、譲れない一線は既に引かれている。
艱難辛苦を乗り越え、屈辱を晴らし愛を取り戻す烈火のロマンスは、裏を返せば悲惨な殺戮、誰かの物語を一方的に収奪する行為だ。
そういう個人単位の難しさを、まとめて全部飲み込める巨大な暴力装置が、物語の裏側で蠢いているこの状況で、突き出された新たな物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
スヴェルケルの穏やかな終わりと裏腹で、確かに繋がっている烈火の復讐譚。
その行く末は、さっぱり読めない。
ただ、何かが終わる予感が、漠然と確かに…。
そんな感じの、静かで激しい後半戦開始でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年4月8日
屈辱に狂い果てた元奴隷が、剣を握って血を流しちゃってる以上、収まりどころが穏やかなはずもなく。
こっからどんな色合いで人生と命が燃えていくのか、次回も楽しみですね!
…ぜってー、凄くロクでもなくなるよなぁ…。