イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

BIRDIE WING -Golf Girls' Story-:第19話『輝ける翼』感想

 運命に導かれて出会い、因縁に引き裂かれて、意思と決意で再会を誓う少女たちの旅路、葵サイドを彫り込んでいくバディゴル第19話である。
 イヴ側が腐れマフィアとの因縁を実力で黙らせ、プロでの再戦に向けて万全の状況を整える裏で、葵はこじれた血縁と己の弱さに直面しつつ、日本女子オープンへと挑む。
 額に『噛ませ犬』と刻印された自信満々の賞金女王が顔見世もしつつ、実父の魂が刻まれた新武装と、複雑怪奇な事情と感情を振りちぎって隣に立つ雨音の助けを借りて、輝く翼が少女に宿る。
 イヴが”虹の弾丸”という、ハッタリ効いた強さを持つのに追いつくよう、『アムロが命削って基礎設計した、超すげぇクラブセット』というブツを出してくるの、盛り上げ方がめっちゃ上手い。
 今まで天真爛漫天衣無縫、迷うことなく真っすぐ進んできた葵が亜室監督との関係に悩むことで、弱さを強さに変える説得力もあり、大変良い成長回だった。
 こうして力を蓄えたライバルと、最後にして最初の本気のぶつかり合いをどう描くか。
 クライマックスが燃えてきている。

 

 つーわけで葵がんばる! なわけだが、何より雨音が良かった。
 イヴという本命が物理的に離れた場所に飛んでる今、自分を叩きつける最大のチャンス! っつーことで、自分を縛ってるややこしい事情とか、面倒を押し付けられた天才少女への複雑な感情とか、それを越えてなお燃え上がる純情とか、彼女の全部を出してきた。
 グダグダ始末の継いてねぇ嘘を娘に背負わせようとするセイラに、『あなたは来ないで!』と吠えた所、親世代の都合に振り回され続けている子ども達が反逆の狼煙を上げた感じがあって、マジで良かったです。
 今回葵も延々メソメソしてたし、ほんっとクソ親世代に罪なき子ども達がメチャクチャされている……からこそ、それを跳ね除けて純粋なわがままを押し通す瞬間が、気持ちのいいアニメなわけで。
 結果だけ見て怒鳴り込んでくるジジイのクソっぷりがホントクソで、コイツがギャフンという所見届けるまでこのアニメ止めれないよ!

 人生人質に取られてキャディーを強要され、恨んだことも妬んだこともあった。
 しかし一番間近で葵の才能と人格を浴びる内、胸に芽生えたこの気持は嘘じゃない。
 誰よりも自由に、あなただけの翼で。
 そう強く願う人が間近にいることで、葵が八打差をひっくり返して大逆転勝利をキメる必然性と説得力は、ガガッと増していく。
 葵の勝負はもはや葵一人のものでも、イヴと二人だけのものでもなく、彼女の無邪気な天才に夢を見たすべての人を、背負った勝負になっていくのだ。

 雨音の強い感情が真っ直ぐ強いことで、同じ気持ちを愛娘に抱く亜室監督も、いい塩梅で濁りが取れたと思う。
 (主に恋愛がらみで)『どーなのマジ?』と思うところも多い亜室監督だけども、つーか今回もサラッと部長はべらせていたけども、葵を思う気持ちを今回の主役とシンクロさせることで、結構気持ちのいいポジションに押し上げれたと思う。
 『窮地を乗り越える新武装を、命懸けで我が子に届ける』という、ロボアニメの博士ムーブもぶっこんできたしな……流石サンライズ系列。
 亜室監督の命を吸った(死んでません)新武装は大変ハッタリが効いてて、葵がこっから更に強くなるカンフル剤として、いいタイミングと存在感でした。
 やっぱワクワクすんなー、新たなブツが顔出す瞬間は……。

 

 んで、愛されガール葵ちゃんは今週もかわいくてかわいそうだった。
 ホント葵はケーキもぐもぐな幼さと、厄介に拗れきった血縁に思い悩む純粋さを兼ね備え、話数が進むたび好きになれる。
 天鷲家の呪いに自分の出生が蝕まれていて、あまりに複雑な愛憎の果てに自分が生まれた事実……大人がそれを秘密にしていたショックは、恵まれた環境で思う存分天才していた葵を、大きく悩ませる。
 おまけに親父が謎病でぶっ倒れて心フラフラプレイは冴えず……でもその迷いが、天鷲葵には必要だったと思う。

 イヴがナフレスのどん底からクラブ一本で這い上がり、親と切り離されて強くなってきたのに対し、全てに愛され全てに恵まれてきた葵にはハングリーさが足りない。
 キツい体験を重ねてきたからこそ、イヴだって結構複雑な家庭事情を抱えつつ、それに飲まれることなく、むしろ夢に飛ぶためのジャンブ台に活用してきた。
 そんなライバルと並ぶ強さを手に入れるためには、自分が本当は何をしたいのか、初めてゴルフをしたくなくなる気持ちに思い切り飛び込んで、それでも燃え上がる真実を打球に込める体験が必要だ。
 天鷲葵の子供時代が、複雑な事情にがんじがらめになりつつ愛を届けた父と、陰りに囚われなお愛した大事な相棒に見守られて終わっていく展開は、少しの切なさと多くの手応えがあって、大変良かった。
 幼い葵を大人にしていく物語は、記憶と家族を失い大人になるしかなかったイヴの物語とセットだと思うし、やっておかないと最終決戦に濁りが出るポイントだったとも感じるから、ここで雨音の思いと一緒に強く刻んだのは、正解だったと思う。

 ここから生まれる奇跡の飛躍、それを際立たせるキャンバスに選ばれた敷島プロは……まぁご愁傷さまって感じではあるが、大丈夫! 噛ませ犬フレンズはこのアニメ列をなして山盛りだからッ!!
 身内への利敵行為ではなく、自分が信じる天鷲葵をより成長させるための起爆剤としてデータを渡すあたり、雨音と敷島プロの関係性の書き方もめっちゃ良かったな……。
 血縁と愛憎がネトネトに絡み合う主役たちとはまた違う所で、雨音も因縁の犠牲者でありいろんなものに縛られ……でもただただ愛のために全てを振りちぎり、葵の隣に立つことを選ぶ。
 『束縛と開放が、このアニメの大きなテーマなのだな』と、最終盤に向けて再確認できる回でもあった。
 こんだけ雨音の思いがデカいと、イヴ専属となるイチナも同等の感情質量を求められるわけで、なんもかんも投げ捨ててナフレスに飛んでったの、今思うと納得だな……。

 

 かくして輝く翼を手に入れ、天鷲葵奇跡の逆転劇に向けて飛翔! ……というところで、今回はおしまい。
 新アイテムによるパワーアップ回なんだけども、そこに込められた思いこそが翼なのだとしっかり書けていて、爽やかで熱い……このアニメらしい面白さが分厚かったです。
 色々トンチキもやるけども、人間の一番分厚い部分にドラマの心臓を預けて進んでいる所が、やっぱこのアニメ良いわな。
 父と雨音の愛と祈りを背負って、葵の打球はどこまで飛ぶのか。
 次回も大変楽しみです。