イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

君は放課後インソムニア:第6話『走り星 流星』感想

 能登の夏は熱くも爽やかに、星のごとく駆け抜けていく。
 君は放課後インソムニア、広がっていく丸ちゃんの世界を描く第6話である。
 伊咲ちゃんとの”縦”の深さに支えられる形で、様々な人に触れ合い頭を下げて、”横”が広がっていく気持ちよさがあった。
 観測会という大きなイベント、天文部というオフィシャルな居場所を立ち上げたことがこの変化の源泉になっていて、生真面目すぎて生きにくい子どものために居場所を整え未来を示した、倉敷先生の偉さもじんわり染みる。
 あといよいよ伊咲ちゃんが身にまとった”死”の香りを隠さなくなってきて、どっちの方向に未来が転がっていくのか、明暗合わせて人生なのか……穏やかにハラハラ出来る、得難い視聴体験を楽しんでいる。

 

 

 

画像は”君は放課後インソムニア”第6話より引用

 というわけで前半は丸ちゃんの人生の深い所にぶっ刺さった、世界一可愛い女の子との現状スケッチである。
 め、めちゃくちゃイチャイチャしてた……素晴らしいッ!
 クソ熱い部室に扇風機泥棒が颯爽登場したり、結局天地に星が満ちる絶景は上手く取れなかったり、それでも朝焼けの少女のポートレートに微笑んだり、丸ちゃんの人生伊咲ちゃんに照らされて、なかなかピッカピカである。
 受川くんに”愛”覗き見されそうになった時、メチャクチャ力んだヘンテコな姿勢になるのが、丸ちゃんどんだけ伊咲ちゃんとの繋がりを大事にして、不格好になるほど率直な気持ちを抱えているか分かる感じで、とても良かった。
 そら眠れぬ夜に、思い出しニヤニヤもするよ。
 スカしているようでいて、気持ちをかっこよく装うのが下手くそな所が、丸ちゃんのたくさんあるチャームポイントの一つだ。

 同時に横断歩道の前、そんな大事な女の子が意味深なこと言っても来るので、そういう意味でも眠れない。
 他人の心音で安眠したがったり、今回の意味深な言い草だったり、やっぱ伊咲ちゃん体あんま丈夫じゃないのかな……って感じ。
 いつも明るく青春全力疾走! って感じのヒロインに、なぜ眠れぬ夜が付きまとうのかはこのお話の大事なミステリだけども、その源泉が”死”だとすると……これはなかなか根が深い。

 一瞬を永遠にしうる写真が重要なモチーフになっているのも、永遠に続くはずの時間を一瞬で奪ってしまう”死”に抵抗する、せめてもの武器として選ばれているのなら、これは意味合いが変わってくる。
 丸ちゃんが伊咲ちゃんをファインダーに収める行為、少女が消えた後の思い出確保のためじゃなく、もっと幸せな明日のための滑走路であって欲しいの俺はッ!
 ここら辺、夏が深まるに連れて真相が見えてくるポイントだろうけど、知りたくもあり恐くもあり……。

 

 

 

画像は”君は放課後インソムニア”第6話より引用

 それは先の話として、後半は伊咲ちゃんと出会ったから広がっていく”横”の繋がりを、賑やかに穏やかに描いていくパート。
 これだけは言っておく……丸ちゃん半裸は完全に”趣味”だろッ! 俺も見たかったから良いけども!!
 昼の領分で明るく楽しくやれている伊咲ちゃんの、交友関係を借り受ける形で丸ちゃんは色んな人に、観測会の手助けを頼む。
 外野からなんとなく見つめていたときと違って、友達の友達にはそれぞれ夢中になれることがあって、触れ合ってみると独特の事情と熱さがあることを、丸ちゃんは知っていく。

 ほわほわ人がいいだけに思えるののさんには美術の才があり、素敵なポスターを手渡してくれる。
 スポーツ万能そうなかなみちゃんが思いの外下手っぴノーコンで、だからこそ自主練していることを、直接玉を受ける中で知る
 相性悪いはずのカニちゃんが、店の看板娘としてひたむきに働く横顔を見る。
 そんな風に丸ちゃんの眠れない世界が広がって、色んな人と知り合って、迷惑をかけて助けられても良いんだと、一人で『ちゃんとする』必要はないんだと、丸ちゃんがだんだん解っていってくれれば、僕は凄く嬉しい。

 

 子どもらの対等な視線だけでなく、白丸先輩や倉敷先生の視座も、観測会を形にしていくための歩みには反射する。
 人生の旅路を少し先んじていて、丸ちゃんが今いる場所より俯瞰的に見えるものがあるから、教えてくれる大事なこと。
 白丸先輩が甘酸っぱいロマンスに顔を赤らめつつ、学生としてちゃんとしておくべき所に釘を差してくるの、良いムーブだなと思った。
 丸ちゃん家庭環境かなり荒れてるっぽいから、非血縁から人生に大事なもん輸血しないと、持ち前の生真面目さが毒になっちゃう感じだからな……こういうつながりは大事。

 エピソードをしっかり〆る倉敷先生の立ち回りも大変ありがたく、優しい同級生たちが見落とす純情少年の離席を、しっかり見とがめて追いかけてくるの頼もしい。
 思えばこの人の尽力で、丸ちゃんが『守るさ……』と思える大事な居場所が生まれ、一人では叶えられない大きな夢が動き出し、少年の世界が縦にも横にも広がったわけで。
 『ちゃんとしなきゃ』に呪われている、面倒くさい青年の個性を上から一括で叩き潰すのではなく、同じ星を見上げられる位置キープしたまま手助けしてくれるのは、本当にありがたいことだ。
 『いい大人』の規格には収まらない生き方してる倉敷先生自身も、自分の弱点に悩まされ付き合って、それこそが花咲く自分だけの星なのだと思えた体験があって、だからこそ丸ちゃんの眠れなさに寄り添えるのかもしれない。
 そういう想像が描写の先に広がるのは、色んな人が作品世界の中でしっかり生きている証拠な気がする。

 

 という感じで、夏の大勝負に向けて準備を積み重ね、その苦労が少年に色んなモノを教える回でした。
 このアニメらしい落ち着いたペースが、丸ちゃんが出会ったものを一個一個飲み込み、プレッシャーとありがたさを自分の糧にしていく様子をしっかり教えてくれて、大変良かったです。
 このガッツリした丁寧な手触りは、このお話独自の強みだと感じるな、やっぱり。

 こうして出会えたものが切り開いていく未来には、眠れぬ陰りも眩しい光も両方ある。
 必ず上手くいくとも、絶対失敗するとも決まっていない世界に迷いながら、九曜高校天文部がたどり着くのは、どんな星空なのか。
 合宿に観測回、デカ目のイベントに向けてしっかり盛り上げも作ってくれて、続きがとても楽しみになるアニメですね。