イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

BIRDIE WING -Golf Girls' Story-:第24話『約束』感想

 暗黒街の闇ゴルフ、ロケットランチャー、ゴルフサイボーグの砕ける腕、青春ガールズストーリー、業の赤い迷宮、迫りくる苦難……。
 あんまりにも色んなことがありすぎた物語も、遂に全英オープン最終決戦ッ!
 ただひたすらにお互いを求め続けた若い魂が、ようやくたどり着いた決戦のバトルフィールドで、少女たちは命を燃やして一打に込める。
 撃ち抜け弾丸届け約束、バディゴル第24話である。

 

 話としちゃユーハ”ラスト噛ませ犬”ハミライルさんを狂言回しに、葵とイヴがお互いの魂を燃やしながらゴルフで競う様子を、ずーっと見続ける回である。
 だがここまで見てきた物語を思えば、それが何よりの贅沢であり全ての総決算。
 曲がりくねった運命の回り道を経て、ようやく最高の舞台で最高の勝負に全力を尽くす二人の視線は、恋よりも熱い。
 最後の最後の盛り上がりを、ポッと出のラスボスではなく主人公二人が背負った因縁、死に至る病に持ってきたのは、自分たちがどんな重たさで物語を手渡せているのか、視聴者とお話を信じた展開だと思う。
 僕はすっかりイヴと葵が好きになっているので、ずーっと焦らされてきた二人の決戦に軸足があるのはとても嬉しいし、最後の最後で牙を剥いた病と怪我を乗り越え、思いの外尋常なスコア合戦を繰り広げる姿には、分厚い感慨が滲む。
 散々トンチキ異能ゴルフをやった後で、最終章は難コースとスコアマネジメント、揺れない心と燃える情熱という、メチャクチャベーシックなゴルフ競技の面白さに立ち返ってくるの、強さの逆インフレ……ともまた違う、王道帰還の気持ちよさがあるな。

 さんざん腐したけども、ユーハさんは超新星をナメくさることもなく、己の実力を過信することもなく、淡々と女王のプライドで背骨を支え、背筋を伸ばして強いゴルフをし続けてくれて、大変良かった。
 彼女と彼女のチームが象徴するクレバーな試合運びは、イヴ達のメチャクチャを熱く際立たせる鏡であり、大人になってしまったからこそ、自分を燃え上がらせる対等なライバルがいないからこそ、勝ち続ける女王の生き様が、プレイにしっかり焼き付いていた。
 限界を見定め、当然勝つべくして勝つ。
 そんな大人のやり方を投げ捨て、ようやくたどり着いたこの一回を全ての終わりにしても悔いがないほど、惚れ込み焦がれた。
 ユーハさんのいい大人っぷりが、若い二人が常識を飛び越えて戦える理由をうまく削り出して、この話の主人公たちと、イヴと葵を主人公にしてきたこの話が何を描いてきたか、最後の最後にしっかり確認させてくれた。

 

 イヴが抱える勝利の執念と、葵が体現するゴルフをする喜び。
 それは物語の最初から彼女たちにあったけども、イチナに芝読みを託すイヴや、愛する人全てに感謝しながら一打を打ち込む葵の姿は、ここまでの物語がなければ生まれなかった。
 あるものは鎧袖一触叩き潰し、あるものは執念で食らいつき、またあるものは特別な絆を育んだライバルたちが全員注目し、イヴの家族たちも現地で見守る(葵の家族がモニタ越しなの、”家”にまつわる距離感が出てて残酷だったね……)戦いには、2クール何を見てきたのか、最後にしっかり確認できる分厚さがあった。
 初めてあったあの時と同じように、あるいはそれ以上に美しくなったライバルに見惚れながら、それにもっと近づくために、自分をここまで連れてきた約束のために、決死に戦う。
 ロケランやらサイボーグやら家族の因縁やら、ノイズで片付けるにはあまりに存在感デカすぎるネタは多数ありつつも、結局イヴと葵の純粋過ぎる思い、それを繋げ形にしてくれるゴルフというスポーツそれ自体が、作品の心臓だった。
 『だからこの最終決戦、弾けるほどの鼓動を効かせてやるぜ!』と、強いストレートをバチバチ叩き込んでくれるのは、24話付き合った甲斐がたっぷりとある。

 俺は天鷲葵が好きなので、死病を押して全霊を賭し、イヴと遊べる自分であるために命を燃やす姿は、かなり見てらんなかった。
 号泣する雨音の気持ちが痛いほど分かったが、同時に自分では止められない切なさを噛み殺してなお、運命の女との決戦に挑む葵のキャディーを務めあげるプライドが、どうにも眩しい。
 どこまで行っても天真爛漫、ただただ大好きなゴルフを最高の遊び相手とやり切る。
 天鷲葵というキャラクターの本分は、降って湧いた命がけの病であぶり出しにされ、この最終局面でより強く燃え盛っていく。

 葵がぶっ倒れた時に、雨音は『もう止めて!』と泣き、イヴは『約束を守れ、私と戦え!』と叫ぶ。
 一見後者が残酷にも思えるけども、命も未来も投げ売ってなお後悔がない充実を、生きてきた意味を唯一与えてくれるパートナーと向き合った時、イヴは嘘がつけないのだと思う。
 記憶を失い、ゴルフなんぞ穴ぼこにタマ入れるだけのお遊戯と湿気っていた魂に、約束と炎を宿してくれた女。
 抱きしめるのではなく向かい合う道を、天は少女たちに用意して、葵もイヴもその定めに最後までまっすぐに、戦って戦って戦い抜こうとする。
 その燃え盛る闘志が、不純物が一切ない真っ直ぐな思いを熱く、危うく照らして、哀しくも美しい。

 かつて雨の中対峙した時に、イヴが葵にキツい言葉しかかけれなかったのが、僕は悲しかったんだけども。
 自分の起源を取り戻し、今は亡き父母を間近に感じながら懸命にプレイする中で、イヴは強いままに優しくなれた。
 イチナへの信頼に背中を支えられながら、イヴが叫んだ『戦え!』は、つまり『私と一緒に生き抜け!』ということであり、孤独な戦士がたどり着いた場所、そこに連れてきてくれた沢山の人達を、鋭く照らしていた。
 苛烈にストイックに勝負にこだわりつつ、今ここで戦えている理由と意味を忘れない。
 そういう場所にたどり着いたイヴが、決着を前にぶっ倒れた葵の魂をどう拾い上げ、どう進んでいくのか。
 お話を語り切る準備は、完璧に整っている。

 同時にやっぱさ~~~~~~~~~~~~、葵が苦しい顔してるのホントやだよ~~~~。
 あの子ずーっとゴルフ大好き五歳児のまんまで、そこがマジでいいところなんで、そういうガキを親の都合だの自分に責のねぇ病気だので苦しめて、大好きな友達との勝負も最後までやりきれねぇってさぁ……どーなのよマジッ!
 この『どーなのよッ!!?』こそが、見ているものが作品に前のめりになるポイントであり、上手いこと作ってくれた事に感謝もしてるんだけども、それにしたって葵が苦しいのはイヤだね俺ァ……。
 全てを捧げて人生最高のプレイを作り上げる、健気な祈りすら残酷に踏みにじる運命にも、若き魂は負けない。
 そういうスポ根ど真ん中を最後の最後にぶっ込みたいから、葵がここに追い込まれたってのは解る。
 解るんだが……理解るわけにはいかんのだッ! 俺は葵が好きだからッ!!
 ぜってー生存して、最高ハッピーになって終わってほしいと思いますマジ。

 

 というわけで物語の総決算に相応しい、超王道ゴルフストーリーでした。
 葵が魂を賭した決戦は、残酷に潰えた。
 遥か彼方に飛び去ろうとする約束を、掴むためには魂の翼を大きく広げ、全てを背負って勝ちに行くしかない。
 イヴが握るドライバーに託されたものは大きく、それを空の果てまでかっ飛ばす力を、このお話は持っている。
 最終回、大変に楽しみであります。