ペイジ工房での”仕事”をやり抜くことを選んだアンにあてがわれた、新たな仕事場はいわくつきの古城!?
ワックワクの新章開幕、シュガーアップル・フェアリーテイル第17話である。
ブリジットさんが巻き起こした騒動も一段落ついて、しかし問題の根本は解決しないままさてどうするか……というお話に、怪しげな愛玩妖精だの、クソボロい亡霊城でのお仕事だの、色々混ざってきた。
まだ化学反応が起こる前の段階だが、新しい愛玩妖精絶対ろくでもないし、エリオットとブリジットさんの距離感ミシミシ言ってるし、足跡を残す亡霊の正体分かんないし、いい塩梅にバチバチ行けそうなネタが揃ってきた。
これらの要素を個別で終わらせず、アンちゃんとシャルの恋路とか仕事か、既存のネタと絡ませながら膨らませれると、大変面白くなっていくと思う。
実は妖精関係の設定開示がこのアニメ全然ないので、シャルとグラディスが属する”輝石”がどういう存在なのかさっぱり解ってなかったりもするが、そこら辺削り出すのに良い機会かなと思ったりもする。
俺はこのアニメが結構しっかりファンタジーなところが好きなので、王国成立史とか妖精の社会史とか、世界設定に噛んでる部分をバリバリ食べたい気持ちは強い。
まぁ小説とはメディアが違うので、原作だと分厚い部分をあえて削ることで、アニメとして食べやすく仕上げた結果だとは思うけど。
『逆境は成長のためのスパイス!』つうわけで、シャルを取り戻し選品にも勝ち残ったアンちゃんの前に、オンボロ城が立ちふさがる。
徹底して反逆者の痕跡を消し去る王族仕草が、ふわふわお仕事ロマンスの空気と全然あってなくて、『”シュガーアップル・フェアリーテイル”食ってるわぁ……』と楽しい。
フィラックス公の内乱疑惑の時もそうだったけど、作品の舞台はメチャクチャ普通に政治と軍事こねくり回して維持されてて、庶民であるアンちゃんはそれに翻弄されつつ職人としての人生頑張ってる感じ、不思議な立体感があって好きだ。
教会に押し付けられた仕事場だし、既に終わった動乱なのでそこまで波風かぶんないだろうけど、妖精奴隷制度を基盤に社会成り立たせているところといい、砂糖菓子業界の淀んだ空気といい、主役の溌剌とした活躍の奥に生々しい手応えがある。
よくよく考えるとアンちゃんに都合の良い世界と展開なんだけども、ここら辺の生っぽさを挟み込むことであんまヤダ味なく、恋に仕事にバリバリ突き進むお話を食えている感じ。
そんな物語の両輪は、新たな舞台を得て二つともブン回っている感じ。
『オンボロ工房でも、みんなで力合わせて頑張るぞ!』と前向きな所に、ヒューガ露骨なフラグ抱えて釘刺しに来るところとか最高。
ぜってー新聖祭に間に合わない所まで追い詰められて、借金返せない工房の名前は地に落ちるっ!! って展開来るだろうコレ……(ワクワク)。
二期からアンちゃん親方の仕事ぶりが、一技術者から管理職の色を強めてきているので、ハードなお仕事でそこら辺の手触りも鮮明にして行ってくれると、僕としては嬉しい。
お化け騒動だの恋の行方だの、心揺らされるネタが多いので仕事に集中しきれてない描写もあるしなー。
それもこれも、シャルがイジワル美青年なのが悪いっ!
不当な契約は精算し結果も出し、色々重荷が減ったアンちゃんが、思う存分恋に悶えてて良かった。
シャルを取り戻し自分を証明するために、絶対に負けられない勝負に挑んでいる時はキリッと抑えていた幼さが、ちと緩めな導入に乗っかって前に出てたの、そういうアンちゃんが好きな自分としてはありがたかった。
お化け怖がる様子も頑是なくて、クソみたいな業界にもみくちゃにされてる時は気づかないけど、まだまだ幼い部分も当然あるよねー。
そういう子がどういう風に”仕事”をして、どういう自分であるかを毅然と選ぶ所に、このお話の良さがある。
なので話がまだ加熱していないこのタイミング特有の、ゆるくて可愛い描写が多くてよかった。
こっからお話が転がっていくので、話の種も沢山蒔かれていた。
アンちゃんに語りかける謎の声は、取り潰された城に未だ残る妖精……ってとこかなぁ。
人間が滅んでなお忠誠を保つ妖精とか大好物なので、早く顔を見せてお話して欲しい所だ。
絶対ずっしり重たい過去を背負って、時の流れに取り残された異種族の哀しみを暴れさせてくれるぞ!(ワクワク)
アンちゃんとシャルが結構順調なので、ゲストキャラ通じて妖精と人間の越えられない壁見せてくれると、作品世界のロクでもなさを堪能できてありがたいよね。
そこら辺は謎めいた愛玩妖精が燃やしてくれそうな部分でもあり、『ぜってーロクでもないぞオパール野郎……』ってなった。
そもそも愛玩妖精買うのは、ブリジットさんが乗り越える/救われるべき捻じくれた心の象徴なわけで、シャルが押し込められて拒絶した恋人ペットの場所に、ヘラヘラしながら座ってる輩がマトモなわけねーんだよな……。
社会制度上体等にはなり得ず、命令で虚しい愛を簒奪している関係はあんまりにも実りが薄いけど、それを手渡しできそうなエリオットとの関係もまた拗れているのが、なかなか厄介だ。
軽薄な態度の奥にある、職人としての技量をようやく見せれる状態になったので、仕事が進む中でエリオットの内面とか、ブリジットさんとの関係とかも彫られていくだろう。
そこにアンちゃんがどう食い込んでいくかが、運命に愛されなかった自分の影と主人公がどう向き合うのか、気になっている部分でもある。
シャドウとしての描き方はシャルとグラディスも同じで、自由意志で人間に付き従う戦士妖精と飼われるままの愛玩妖精は、見た目通りの関係では終わらなさそうだ。
アンちゃんが職人としていっぱしになるまで、人間サイドをメインで掘り下げてきたお話だけども、設定としては妖精サイドも相当いろんな因縁を溜め込んでいるはずで、ここら辺がこの接触を機に燃え始めると、なかなか面白くなる気がする。
赤い凶賊が鋼斬糸構えて襲ってきた理由も不明だし、そいつとオパール野郎がどう繋がるかも見えないし、優男の仮面を引っ剥がしてネトネトした内臓見れるのが、今から楽しみだ。
シャルが突っぱねていた間は目立たなかったけど、ヒューマノイドがペットになってるヤダ味が、グラディス出てくることで濃くなってきたのはちょっと面白い。
視聴者が有し主役が共有している近代的価値観からすると、こんなヤベー遊びで親に反抗してるのマジ良くないんだけども、世間一般的には常識の範疇っての、ペイジ工房の風通しで忘れていた異世界感がゴリッと顔上げてきて、大変グッドだ。
俺は飢えた野犬が迷わずけしかけられた所で作品に前のめりになったので、治安とモラルが終わってる様子を確認すると、思わず血圧上がっちゃうのね。
そういうろくでもない所から、ブリジットさんをなんとか引っ張り上げようとするアンちゃんやオーランドも書かれているので、仕事の進みと合わせてここら辺の人間関係、いい方向に進んでくれると嬉しいかな。
シャルの秘められた過去、輝石の妖精たちに絡む因縁を掘り出していくと、なんもかんもふっとばしかねない地雷がいきなり顔出してきそうでもあり、色んな方向に揺さぶられるのは楽しいね。
というわけで、今後面白く芽を出しそうな要素が、山盛り顔見世する回でした。
このお話変にヒネたところなく、視聴者に開示した期待感をそのまんま描ききってくれる作風なので、『今後こういう事やるんで!』って予告を、素直に信じられるんよね。
『裏切りがない』ともいえるけど、勝負どころの演出をロマンティックに頑張ってくれたり、銀砂糖菓子というアートを印象的に描いたり、ロマンスの甘さを裏切るドブ味を時折撒き散らしたり、心地よい意外性もしっかりある。
今回生み出した『こういう感じになるかな~』って予想は、『こうなってくれたら嬉しいな~』という期待と重なっていて、それはここまでの物語を丁寧に積み上げた結果生まれる、信頼の証でもある。
一体どんなお話を叩きつけてくれるか、楽しみに次回を待ちます!