イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜:第6話『隠れ家を作ろう』感想

 溢れるイマジネーションを形にする力……それが錬金術だっ!
 ますます小学生一夏の大冒険味を増していくライザアニメ、タイトル回収の秘密基地大製造&ネームドボス大登場回である。
 完成なった夢の城を前に、大声でそれぞれの願いを叫ぶところとかメチャクチャ岩波少年文庫力高くて、『ムチムチ要素ねじ込むために上げた年齢、やっぱ下げたほうが”嘘”ないんじゃないスカね……』と、思ったり思わなかったり。
 だってさぁ……『パパの前でフルートを吹く!』だよ?
 口を大きく明けてペカーって笑う場面が多かったり、本格参戦を果たしたクラウディアの幼い部分、やんちゃな部分が前に出てきて、しみじみ有り難い回でもあったな……。

 

 『俺地方のガキの将来とか、大して興味ないもんね』みたいなツラしながら、メチャクチャクリティカルに愛弟子の未来を導く、アンペル先生の”ひとりごと”から始まる今回。
 無理があるよ……こんなに偶然行きあっただけの子供に真摯になれる男が、世捨て人気取りは……。
 元々この作品の”錬金術”は、我らが知る科学と魔術の始祖たる学問体系とは結構違っている。
 ブラックボックスに素材投げ込んだら、バンクが発生してアイテム出てくるゲーム的表現に、確たる成功のイメージとそのための準備を足すことで、お話を支える背骨に相応しい厚み出てくるのは面白い。
 自分も世界もさっぱり解ってねぇ子ども達が、出会いと冒険を通じて何者かになっていくという、凄くスタンダードな筋立てのお話なんで、自己確立と世界把握の補助具として錬金術が定義されると、要素とテーマが一気に近づいた感じがあるね。

 その一端としてスーパーパワー駆使して秘密基地作るぞ!……だけで終わらず、クラウディアがプリン作りを通して島に馴染んでいく様子も書くのが、すげーこのアニメらしかった。
 ライザと仲間たちが不思議で特別な力を使って夢の城を作るのも、クラウディアが島の外のレシピを現地に合わせてアレンジし、甘い幸せを手渡していくのも、どっちも大事で価値がある。
 2つのイベントを同時並走させることで、人が育つ様子を多角的に描いて、凄く地に足の付いたレシピ探求と同じ地平で、錬金術が機能しているのだと分かった。
 島には牛のミルクも白い砂糖もないけど、だからこそレシピをアレンジして独特の美味しさを作り上げ、島の生活に馴染むヒントを探すことも出来る。
 自分の目と手と足で色んなモノを知って、生きる糧を学び取っていく姿勢は錬金術のある風景も、ごくごくありふれた生活も変わりはない。
 そういう素朴で大事な手触りが、いかにもゲーム的な要素を掘り下げる回に宿っていた。

 錬金術は最初ライザがナメクサッていたような、パパっと何でも出てくる魔法の釜ではない。
 いや実際起こってることはブラックボックスに素材入れたら、不思議現象でアイテム出てくるわけで、そう思うのも無理ないけど。
 手軽な奇跡を現実に引き寄せたいなら、欲しいものがどんな風に成り立っているのか、どうすればそれが形になるのか、手を動かしてイメージの精度を上げる必要がある。
 そうするために、大雑把で非力なライザには出来ないことが沢山あって、知恵者タオと剛力レントが足りない部分を補うの、パーティらしくてとても良かった。
 ゲーム的な職能分担っていうより、それぞれの得意と苦手を上手く噛み合わせて集団として機能している、仲良しチームっぽい描き方になっているのは、派手な戦闘があんまない作風ゆえの味わいだろうか。
 バトルバトルで押さない造りは、異世界で生きることをじっくり噛み締めたい自分としては有り難い限りなんで、図体だけデカいガキンチョが一歩ずつなにか見つけていく良さを、今後も大事にして行って欲しい。

 

 といっても一応モンスターとか古代文明とかある世界なんで、せっかく作った秘密基地にヤベー強敵が迫ったりもするよ!
 他の二人が腰抜かすヤバい相手に、剣を下ろすことなくちゃんと立ち向かって殿を支えていたの、レントくんが”戦士”になってきた感じがあってとても良かった。
 何でもかんでも即時撤退ではなく、驚異の本質を見定めた上で今後の判断に活かすべく、あえて前に出た選択も過去の教えが生きてて、しっかりした成長を感じる。
 相手を倒すまで戦ったわけじゃないのに、こういう胆力や判断力に変化を感じれるのは、やっぱり好きな描き方だなぁ……。
 弟子の判断と変化をしっかり褒めて、芽生えた可能性を潰さず伸ばしてるリラさんも、凄くいい師匠だったね。

 見事に何かを成し遂げたご褒美に、レシピ完成させればアイテム無限量産可能な激ヤバアイテム貰ったライザが、今後どうなっていくのか。
 モノを作れるとか敵に勝てるとか、そういう即物的な達成感よりも『錬金術は、人を笑顔にするためにある』って発見を最後に描く所に、このアニメらしさがあるなー、と感じた。
 なんつーかな……自分が何者であるかを知らないからこそ、何者かになりたがる若いエネルギーを導いて、何かを生み出していく難しさと尊さに、無茶苦茶真摯なアニメだと思う。
 その生真面目さが、唐突に挿入される肉体のクローズアップと全然噛み合ってないのも、独特の味なんだけどさ。

 色んな面白さを持ったお話が、どういう形に結実していくのか。
 そういう”錬金術”の行方も見守りつつ、夢の拠点を作り上げた子供らのさらなる冒険に、期待も膨らみます。
 ライザ&クラウディアの友情がマジ透明度高く爽やかで、今後もゴリゴリ前に出してほしいパワーあるの、大変良い。
 次回も楽しみですね!