イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜:第8話『錬金術は爆発だ! 』感想

 悪童たちの存在証明は、天を焦がす真紅の火柱!
 爆破工作公共事業系錬金術アニメ、第二の試練を乗り越えていく第8話である。
 成長の証明イベントが『ゴミ捨て場になっちゃってる地元の広場を片付けて、社会の風通しよくしてこい!』なの、めちゃくちゃライザアニメの味がして良かった。
 小さなサークル内部での努力だった錬金活動が、人目に触れ評価されるアクティビティになってる所とか、悪童の成長をアガーテ姉さんが見守ってすごく大事なものを預けたりとか、いい意味で土の匂いのする回だったと思う。
 ブルネンおじさんの田舎のやりて土建屋オーラといい、ちまちま顔を出すPTメンバーの家族といい、しばらく作品が焦点を当てて地なかった地域性を、じっくり掘り起こして匂い嗅がせてくれる感じだったな。
 俺はこのアニメのどっしりした取り回し、独特の土臭さが凄く好きなので、こういう形で何処を舞台に話を演じているのか、再度見つめ直す回がくるのは嬉しい。
 まード派手なことは何も起きないけど、俺はそれが好きだ。

 

 というわけで、バレンツさん第二の試練は錬金土建爆破系。
 序盤に見せてた浅はかな気質はそのまんまなんだが、仲間と師匠の助けを借りて上手いことそれを制御し、ただただ島の外に出たいってだけしかなかった時代から少し変わった様子を、ライザも見せてくる。
 指摘されるまで『んなアホみたいな火薬ぶちかましたら、周辺被害で試験どころじゃないよ!』って事実に気づかないの、やっぱ18の脳髄じゃないでしょ……。
 しかしまぁ、錬金術と出会ってからの日々はそういうクソガキの生き方を確かに変えていて、周りに迷惑かける野放図な爆発は上手く制御されて、公的環境を害する瓦礫を撤去する力に変わっていく。
 弟子の才能をそういう有用性に結びつけるべく、バレバレの助け舟をソッコー出港させるアンペルさん、隠者気取るには人間が良すぎる……。

 今回はアガーテ姉さんがエピソードの主役として、とても良い仕事をしていた。
 正式な叙勲を受けない准騎士として王都から故郷に出戻り、どうしょうもない悪童を見守りながら地面に足付けて生きて、気づけば栄光の証も壊れてしまった、擦り切れた大人。
 しかし外野がガチャガチャいうほど悪い生き方ではなく、口うるさい彼女がいてくれたからこそ、ライザは運命と出会うまでの日々をなんとか腐らず生きてこれた。
 そんな風に、導くべき相手だと思っていたライザがドカンと一発、皆の前でデカい花火をぶち上げ、島の暮らしに芽生えた悪性腫瘍を爆破処理して、自分も役に立つ人間なのだと示す。
 気づけば自分の世界を打ち立てていた妹分の成長を認め、思い出のブローチの修理を託す決断をする所が、人間の匂いが濃くてよかった。

 それは姉さんにとってすごく大事な夢と誇りの象徴であり、地に足付いてないクソガキには預ける気にならない、砕かれた思い出だった。
 それをライザの錬金術で直してくれと頼むのは、ライザが考えている以上に重たい決断であり、新米錬金術師は気負うことなく、親しい人の人生を修復していく。
 ボロボロの隠れ家にしても前回の水浸しの部屋にしろ、ライザの錬金術はとにかく『治すもの』として描かれ続けていて、島の外に出てスカッとサクセスを狙う派手志向に反して、堅実で内向きで優しいものだ。
 そういう、当人は気づいてないけど人生に大事なものをライザが扱えるようになったと、あの花火を見て姉さんが思えるようになったから、彼女も思い出を預けたのだろう。
 そう思ってもらえる人間にクソガキが育ったというのは、地道ながら大事なことだと思う。
 こういうしみじみした味わいを、どっしり煮出してコクに変えている所、やっぱ好きなんだよな……。

 

 ライザなり自分の願いが浅薄で、己がまだまだ未塾なのは理解している。
 だからボオスくんの反発に噛みつきつつ、どっかでその正しさを一部認めてる対応をするんだと思う。
 その証明が『爆破を通じた広場の再生』という、地域社会に根付いた形で行われたのも、今回見てて面白いところだった。
 冒険と修行が始まる前のライザにとって、故郷は『なんか良くわかんないけど、とにかく面白くない所』だった。
 その認識は完全に改まってはいないけども、錬金術という夢に出会いそれを身につけるべく努力する中で、地域の人達と交わり変化しつつある。
 ここではないどこかに漕ぎ出すためには、自分が足をつけてる”ここ”が実際はどんな場所で、そこで育った自分がどんな存在なのかを、ちゃんと知る必要がある。
 そのための教材として、色んな人が見届ける場所でデカい成果を上げることと、身近な人が背負ってきたちっぽけで大切な物語の一端に触れさせて貰うこと、両方が大事なのだ。

 そういう地道な足取りは仲間たちにも共通で、今日もシコシコ修行する描写がしっかり挟まっていた。
 モンスターとバチバチやり合ってバトルで魅せる、分かりやすい味付けに背を向けてる独自路線は、この話数まで積み上がっちゃうと作品の個性であり味だと、僕には感じられる。
 タメが多くしっかりしてるからこそ、デカい見せ場でレントの剣とクラウディアの弓が生きる場面が楽しみにもなる。
 それは蓄えた力を発揮したくてウズウズしている、若人たちと彼らを見守る市庁舎の気持ちを、上手くシンクロさせる作りだと感じる。
 そういう共鳴がフィクションとの間にあるのは、結構幸せな視聴体験だと僕は思うのだ。

 

 というわけで、徹底的にどっしり行くぞ! ルベルトおじさんの試練第二弾でした。
 広場という公的空間の再生に携わることで、島の中で悪童たちがどういう立場だったか、修行を通じてどういう存在になっていくかが浮き彫りにもなってきてて、独自の手触りが面白かったです。
 こういう地道で硬い感触を大事に進めてくれてるの、やっぱ好きなんだよなぁ……。
 次回最後の試練は、子どもらのどんな可能性を輝かせていくのか。
 楽しみですね。