イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アンデッドガール・マーダーファルス:第11話『狼の棲家』感想

 滝壺を抜けてたどり着いた人狼の村で、主なきメイドが事件に出会う。
 不思議の国の静句さん大奮闘、アンデッドガール・マーダーファルス第11話である。

 静句さんが鴉夜と切り離され、彼女個人として描かれるタイミングはほぼなかったので、人狼村の三人娘と奇妙な縁を結びつつ、主の真似事に勤しむ様子はなかなか面白かった。
 鴉夜ほどの頭脳を持たない静句さんは、犯人を見つけて状況を先に進める能力/物語的権限を持ち得ないけども、何かと異様で掴みどころのない鴉夜に比べて、『なぜ事件を解決しようとするのか』つう動機が見えやすい。
 2つの村に起きている惨劇の真実を探って、不幸な目にあっている人達を助ける。
 袖すり合うも他生の縁、奇妙な出会いに助けられた恩に報いたい。
 主大事に張り詰めている時は見えにくい、静句さんの素直な善性が伝わる回だったと思う。
 可愛いなぁ……。

 

 

 

画像は”アンデッドガール・マーダーファルス”第11話より引用

 第9話冒頭と同じく、モノトーンに篝火だけが赤い回想シーンで描かれる人狼の村。
 やはり人間←→人狼の鏡像関係は意識して演出され、因習と無理解に阻まれて通行不能に思える鏡の奥には、流れ着いた静句さんのように行き来が可能……のはずだ。
 一つに思えるものが実は二つで、二つに思えるものが実は一つであるという、数滴認識をヒネったトリックが、人間と人狼、2つの村で同時に起きている少女殺しの奥に隠されてるんじゃねーかな、って感じ。
 バラバラに思えるものは繋がっていて、一まとまりに思えるものは分断されていて、人も狼も気づいていない事件の在り方を、俯瞰で覗き込む誰か……名探偵が必要な状況なのだろう。
 消えているはずのものが消えておらず、誰かに成り代わって舞台裏を歩いているのだとすると、一番最初に疑うべきは最も県議がかかっていない被害者、あるいは死人であって、どっかで死体の取替が起こってんじゃないかな。
 狼の認知が、匂いに頼ってる描写がここら辺、関わってきそうな印象。

 モノクロの回想シーンをつなぎ合わせると、ローザは人狼村においても人間村においても共同体のルールに弾き出され、最終的に焼き殺された。
 閉じた平穏を乱す悪を無理くり生み出し、悪役を作り出して共同体を維持しているやり口は人も獣も同じであって、そういう意味でも鏡写しである。
 殺戮以外に交流がない2つの村、2つの世界両方で”悪役”にされたローザの巨大な遺骸は既に黙視されているが、その無念を継いだ者が生き延びているのならば、2つの村で事件を引き起こす動機にはなるか。
 因習に縛られ死ぬほど空気悪い場所だけども、三人娘はピュアで優しく、住む人すべてが悪魔というわけではない。
 しかし凝り固まった掟はそういう人をこそ怪物にしてしまうわけで、獣に変化する異形の力が人狼を生み出すわけではなく、疑心暗鬼と頑なな因習主義が、ヒトの皮を被った狼を生んでいる。
 あるいはこの構図を暴き立てるために、犯人は少女を殺し、2つの村に疑心をかき立てている……のかなぁ?

 

 静句さんの扱われ方を見てるとノラが主導権を常時握っており、状況がどう推移するべきか、静句さんがどうなるべきかを先導し続けている。
 なぜ彼女が共同体の中で、そういう特権的な地位を手に入れられたかは、探偵が人狼村にたどり着き、過去をほじくり返す中で暴かれてもいくだろう。
 あんまりにも状況のコントロール精度が良いので、まさか死ぬとは思っていなかったが……ここら辺の影響力の強さ(と、あっけなく思える死に方)は、人間村におけるルイーゼの鏡像かな?
 人狼の娘たちを、静句さんを助ける方向に導いていたノラが何を思って善行……と思える行為を重ねていたかは、掘ってみると思わぬ怪物が飛び出すポイントかもしれない。
 色んなモノがひねくれて背中合わせなこの状況、因習村の居心地の悪さから逃れるべくぴょんと飛びつきたくなる素直な善性は、一捻り裏があると疑いたくもなるのよね……。

 囚われた静句さんが現場検証をする時、自身の手で遺留品を触るのではなく、他人に指示して触ってもらうのが、津軽を手足に使ってる鴉夜と同じスタイルで面白かった。
 首だけ探偵はダイレクトな手触りなしでも真実を見抜くが、探偵ならざる武装メイドには真実が見えなかった。
 裏と表、実像と虚像が絡み合う複雑怪奇を視線で射抜いて、真相をえぐり出す権限はやっぱり”名探偵”にこそあるのだ。
 鴉夜不在の状況で従者なりに奮戦し、しかし解決には至らないことで、逆に名探偵が事件解決には不可欠であることを見せるのは、面白い描き方だった。

 

 んで合流が待ち望まれる名探偵とその運び屋は、保険屋従えて山の中である。
 『人狼村に入りたいなら、わざわざ事件解決報酬で入り方を探り当てなくても、そうしてくれる奴にタダノリすればいいじゃん!』という<夜宴>の発想、どう足掻いても事件解決側ではなくて大変良い。
 蓮っ葉なガンマンスタイルで突っ張ってるくせに、怪物相手どるには火力が足りなさすぎるアリスちゃんを置き去りに、横殴り決めてきたフランケンシュタインの怪物がどう動くか……次回が見ものである。
 やっぱ諸勢力がずずいと動き出して、利害が衝突して転がっていく様子は面白いなぁ……。

 静句さんが落ちた時はマジ声出してたのに、自分が落ちるか落ちないかの山行では延々ペラペラくっちゃべってる津軽も、荷物持ち以上の仕事をそろそろ頑張るのか。
 静句さんは男人狼相手に、深夜のスーパースタイリッシュアクションキメていたぞ!!
 静句が見つけられなかった真実を鴉夜がどう暴いていくか、人狼村で<人形遣い>が再合流してからが勝負だと思う。
 その前に<夜宴>とひと悶着あるのか含め、次回も大変楽しみです。