差別、迫害、過酷な運命!
天災と不治の病の影が大地に長く伸び、人間の如何ともし難い業が複雑に絡み合う大人気ソシャゲのアニメ化、セカンドシーズン堂々の開幕である。
八話かけて向き合ったヒロインが主人公の手によって惨殺され、被害者が加害者となった暴力的社会運動は一切の収束を見せないまま終わったファーストシーズンの重たさを、そのまま引き継いでの第9話である。
まーそれこそがアークナイツの味なわけで、変に明るくなってもらっても困る。
というかこっから更に割り切れない重たさは加速していくわけで、初手からガンガン来る力強さが、むしろ作品の重たさと向き合い続ける気概を感じさせて頼もしい。
作品の八割方は暗い色なのだが、暗黒を色濃く描けばこそ眩しく光る人間の証明にこそ強さがあるお話でもあり、妥協なく人間の愚かさ、悩ましさを焼き付けていけばこそ、描けるものもあるだろう。
廃棄都市潜入作戦の行き詰まる感じも、迫りくるフロストノヴァの脅威を際立たせる描き方も、新章開幕に相応しい手応えだった。
憎悪の炎を燃やすレユニオンのスタンダードから離れ、何もかもを氷に飲み込む美しく白き修羅の登場で次回に引くの、アークナイツらしさを保ったまま全8話のシリーズをどう作り上げていくか、今回も頑張ってくれそうな気配を感じて大変良かった。
スカルシュレッダー達が体現していたのとはまた別の重荷を、フロストノヴァもメフィストのクソガキも背負っているわけで、その濃淡や明暗をずっしり重たく、丁寧に塗り重ねていってくれると嬉しい。
アニメなりの筆致でそういう描写を積み上げていくことでのみ、完成する一つの総体というものがあるはずで、第1シーズンはしっかりとそれを作れていたと思う。
ここから始まる新たな物語でも、アニメという表現手段を選んだからこそ描けるもの、アークナイツだからこそ見せれるものを、丁寧に編んでいってもらいたい。




というわけで物語は、廃墟の街を征く三人の兵士から始まる。
戦場を生業とする傭兵メテオリーテと、戦乱に慣れるしかなかったベテラン少年兵フロストリーフ、そして傭兵稼業の修羅場に慣れていないジェシカという並びは、戦闘集団としてのロドスがどういう連中寄せ集めて状況に挑んでいるのか、ちょっと新しい画角から見せてくれる。
臆病なジェシカが後に見せる恐怖の色を、彼女より年少なフロストリーフは慣れた様子で噛み砕いて、敵の潜む廃墟を歩いていく。
そんな風に荒れ果てた世界に慣れていくしかなかった……けど、握った斧槍を無差別に振り回す道は選ばなかった子どもを見ていると、死体を積み上げて過去に復習する道に突っ走ったメフィストとの、残酷な対比も際立ってくる。
生き残るものと死ぬもの、道を間違えるものと迷いながら真っ直ぐ進むもの。
その差はどこにあるのか……てのは、様々なキャラクターとドラマを反射板にして問われ続ける、アークナイツの中心命題だ。
ミーシャの遺品に陰鬱な視線を送るアーミヤも、乗り越えがたい矛盾に思い悩み、雨の中を彷徨う。
初手からメインヒロインがこの顔色ってのが、『二期でも全力で”アークナイツ”やってくぞ!』という気概を感じさせるが、そんな彼女の顔を前に向けさせるきっかけは、ドクターではなくチェンにあった。
第一期では苛烈な秩序の守護者って顔が濃かったチェンさんだが、このあたりから人間味と弱さの描写が濃くなってきて、ロドスの外側で同じ問題に悩み、挑む同士としてキャラが立ってくる。
何も知らないスラムの子どもが差し出した、ミーシャが残した希望のカケラ。
それを受け取る資格がないと自覚しつつ、それでも跳ね除けられず受け取る姿に、アーミヤは自分と同じ影を見たのだろう。
重苦しい後悔と無力感を跳ね除けて、未来に向かって進みなおす契機は共感と連帯にこそあると、凄くスタンダードなヒューマニズムをまっすぐ突き出してくる仕草も、また大変にアークナイツ的である。
この共鳴が『ロドスという組織に加盟している/していない』という枠に固定されていないのが、アーミヤと彼女の組織が人間性を維持できる理由であり、苛烈な線引で敵と味方を分けるレユニオンが、断絶と孤立に飲み込まれていく理由でもある。
それが正しくないと知りつつも、そうせざるを得ない衝動と業に包囲されながら、方舟は荒れ狂う海へと再び出ていく。
その先導足り得るのは、強くて脆い一人の少女だけなのだ。
アーミヤをあまりいじめないでいただきたいッ!(話の展開とか評価とか、全部横においた本音)




雨中に眩いチェンの優しさと強さを目の当たりにして、アーミヤは再び進むことを決意する。
圧倒的な脅威と悪意を目の当たりにしても、怯むことなく仲間を救うという綺麗事に、本気で向き合う心を新たにする。
何しろ衝撃の第一期ラストであったから、ミーシャの末期にダメージを追った姿をちゃんと書いた上で、新たに立ち上がるまでにしっかり時間を使ったのは良かったと思う。
まぁ立ち上がって早々、死体で反撃の狼煙を上げるイカレクソガキと遭遇したり、その全部を氷に封じる魔王の娘と出会ったりすんだけどね……。
メインストーリーはアーミヤの”仕事”を追いかけることになるので、差別と理不尽と運命というデカすぎる敵に、ちっぽけな人間がどれだけ噛みつけるかを延々描いて、ホッコリ息抜きとかは全然ねぇぜ!
アニメだけで追ってる人も、いい加減そういう重ための空気は理解している頃合いだとは思う。
アーミヤがチェンへの共感を立ち上がる助けにしたのに対し、ファウストは自分が受けた迫害や悪意を、そのまま跳ね返して人を殺した。
恐怖こそが人間を支配する最も効率的な方法と、悪魔的な狂笑とともにうそぶくのは、自分自身がそれに飲み込まれ、支配され、レユニオンに参加することでその惨めさから唯一抜け出せた……と、必死に思い込もうとしているからだ。
世界の全てが自分の敵で、復讐し踏みにじるべき怪物なのだと思わなければ生きていけなかった少年は、そんな精神性に引きずり回されるように虐殺の先導者となり、燃え盛る炎で街を焼いた。
それが必ず自分も焼くことを、賢く孤独ではないアーミヤはしっかり理解しているが、その知恵が必ずしも、絶望に落ちた誰かを救わないのがこの世界でもある。
解っていても届かない言葉、手を伸ばしても掴めない命があることをミーシャで思い知ってなお、惨劇から目をそらさず戦い続けることを選んだアーミヤは、選ぶ余地があるだけ恵まれた子どもなのか?
狂気と悪意以外選べなかったメフィストは、弱く情けない悪なのか?
問いは作中にも、それを見ている僕らにもこだまして消えることなく、すべてを飲み込むように冬が来る。
街全体を支配する異様な冷気を、強敵にふさわしいオーラとして迫力満点、堂々登場したフロストノヴァの威容は、新章第一話の終わりを飾るのに相応しかった。
しもやけに赤くなった掌とか、白く丸く吐き出される息とか、じわじわと描写を積み上げた上で待ってましたの登場となって、たいへんいい感じのハッタリだったと思う。
これがハッタリで終わらず、強い魅力と存在感をドラマににじませながらしっかりラスボス兼ヒロインやってくれるキャラなので、フロストノヴァを今後どう書いていくかは、大変楽しみである。
『メフィストが安っぽく飲み込まれている復讐の狂熱とは、違うところに怖さがあるんだぞ』ってメッセージを、炎を飲み込む氷で見せたの好きよ。
というわけで、アーミヤの苦悩と再起、新たに動き出す運命を描く新章開幕でした。
ナイーブな画作りが二期になっても元気で、重苦しく思弁的な作風をヴィジュアルがうまく支えていたと思います。
遊んでいる側も作風や世界観を消化しだし、筆が乗ってくる頃合いをアニメ化するので、どんな風に仕上げてくれるのか、期待の持てるスタートでした。
次回も楽しみですね。