イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

豚のレバーは加熱しろ:第11話『ご褒美はここぞというときに』感想

 旅の果てに行き着いて、暴かれる世界の謎、少女の秘密。
 旅路の最後に何を願うか、異世界転生ミステリロマンス世界の謎解答編……であり、最後の出題編である。

 過酷な旅を終えてヒロインの裸身でぐっへっへ……とは当然ならず、豚と乙女の叶わぬ純情を照らすように、お風呂シーンはなんか綺麗な感じだった。
 豚の豚っぷりは作品(あるいは、その主役たる豚というキャラクター)の本質ではないと、ここまで付き合えば見えてくるわけだが、ジェスがあるがままみて欲しいと思った汚れなき裸身を前に、豚がブヒブヒせずしみじみ、清らかに向き合ったのは良かったと思う。
 そういう目線で奴隷種族を見れる奴だから、豚はジェスの騎士としてここまで一緒に歩めたのであり、イェスマにそうやって向き合ってくれる人があまりに少ないことは、哀れなブレースの生涯が良く語っている。
 『死ねば戻れる』という身も蓋もない真実、少年の霊を豚に縛り付けた少女の呪いが暴かれた後で、こういう向き合い方をした二人が何を選び、どうなっていくべきなのか。
 最終話を前に、見ている側に問いかけるような入浴シーンだった。

 

 王様がぶっ放したイェスマ真実は匂わせていた以上にロクでもなく、過剰な魔力と共食い気質を併せ持つ魔術師をどうにかするべく、イェスマを犠牲に成立するディストピアを、堂々平和と叫んで憚る気配なしである。
 残り話数で想定以上のクソだった世界をひっくり返し、首輪が外れたジェスが真実幸せになれるような世界を打ち立てていくのも難しいとは思うが、豚がこのまんま現状飲み込んで終わるのもちょっとな……って感じではある。
 首輪の形をしたロボトミー手術を外されれば、イェスマは世界を支配する魔術師の末裔に向かい入れられ、システムを管理・運営・継続する側に回る。
 犯して殺して売り飛ばして、イェスマを犠牲に成り立っている狂った世界の狂った平和を、旅を終えた豚と乙女は是とするのか否とするのか……最終回はここ大事かなと思う。
 豚が剣も握れねー無力な存在で、だからこそ心意気一個で苦境をひっくり返してきた様子はここまでも書かれてきたので、気高い豚に似合った決着を用意してほしいなと、彼が好きな視聴者としては思う。

 首輪していない魔法使いの終わりっぷりが作中伝聞でしか描かれていないので、イェスマ犠牲にしてでも制御するほどなのかは、正直僕には良くわからない。
 少数ながらイェスマを自発的に保護しようと考える変わり者も、あの世界にはいるわけだが、そこら辺は秩序維持の生涯とみなされて、積極的に潰されている。
 そういう働きかけの結果歪に平和が維持されているのか、この狂った状態が異世界の自然なのか、ここまで見続けてもなかなか判別がつかないのは、ちょっと面白い味付けだろう。
 主人公に関わりの薄いモブイェスマがほぼ出てこないため、統治や産業のシステムに組み込まれた奴隷種族がどういう働きをしていて、取り外してもなんとかなるパーツなのか、社会全てがイェスマ差別によって成り立っているのか、あんま判然としない感じもある。
 現代人の感覚だと、めっちゃ作為的に状況作ってるクソシステムなんざぁとっとと潰してほしくなるが、現地の感覚としては『んなこと言われても……』かもしれんし、王様の秩序ガンギマリな姿勢をどう扱ったものか、判断材料が(この期に及んで)足んないかなー……。
 そもそも美しく可哀想なヒロイン種族を、高潔な豚以外味方がない地獄に投げ込んで旅を成立させてるプラスティックな質感の異世界なんだし、あんま考えるところじゃないのかもしれないけど。

 

 話の眼目は世界とどう向き合うかから、目の前の少女との対峙にフォーカスを変えていく。
 首輪に奴隷めいた生き方を強要されていても、ブレースがそうであったようにイェスマは地獄からの抜け道を願うものであり、その祈りを拾い上げる形で、オタク少年は豚へと転生した。
 ジェスの献身は、ある種の罪滅ぼしでもあったわけだ。
 天使めいた精神性も、捧げられた優しさも、なにかに後押しされた代用品だったと暴かれてなお、残る真実はなにか。
 何が譲れない本当だったのか、豚が選ぶことで物語は幕を閉じていきそうだ。
 狂った世界の真実を睨みつけ、泥まみれの足でたどり着くミステリから、自分たちなりの決断へ軸足が変わっていくのは、ちょっと面白い変化だなと思う。
 観察から決定へ、三人称から一人称へ、四足探偵の立ち位置が変わってきてる印象。

 ジェスが豚の魂を捉えるほどの、孤独と不安に苛まれていたのなら、やっぱ犠牲を共用するこの世界の平和は、大間違いの嘘っぱちなのだろう。
 個人レベルとしては、豚と乙女は定められた苦難を乗り越えて、ハッピーエンドにたどり着いた。
 その裏に凄く歪で邪悪なシステムがあって、綺麗とはいえない祈りがあって、死ねば終わる結末があって、さぁ何を選ぶのか。
 奥ゆかしくも誠実な人柄故に、自分の欲望を叫ぶことがあまりなかった豚が、最後の最後で魂の選択を迫られる局面が、しっかり整ってきた。
 それを聞き届けられれば、1クール彼に好感をもって見届けてきたアニメの終わりとしては、かなりいい感じだと僕は思っている。
 次回がとても楽しみだから、早いとこ放送日時を確定させて欲しい。
 いやー……アニメが終わるのって大変だねッ!!