イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイドルマスター ミリオンライブ!:第12話『新しい未来へ』感想

 終わりにして始まりのライブは、みんなでたどり着く新しい未来。
 一話まるまるライブの臨場感で、ミリオンシアターという”家”に誰が集ったかを描く、ミリアニ最終回である。

 大変良かった。
 楽曲とCGの力でガンガン押し込んでくる贅沢な作りも、アクシデント含め”生”の現場らしい盛りだくさんの臨場感も、その加速度の中でふとした瞬間、ここまでの物語を振り返れる感慨も、12話描き積み上げてきた物語の幕引きに相応しい強さがあった。
 機材トラブルはアイドルライブの風物詩とも言えるし、10年分の文脈を踏まえた表現でもあると思うのだが、バトンが繋がるか途切れるかの瀬戸際、思いを溢れさせる未来やプロデューサーと同じくらいの強さで、一緒にライブを作り上げていく観客の存在感にクライマックスを預けたのが、最後の最後で作品の視座を広げた感じがあった。
 ミリオンシアターという”家”にはアイドルとPちゃんだけではなく、彼女たちのパフォーマンスに元気と夢を貰いに来るファンたちも入っていて、別け隔てなくみんなでライブを作り上げ、もっと大きな場所へと漕ぎ出していくのだという、小さくまとまらない終わり方になっていた。
 これが杮落とし公演を終えて、街中に”アイドル”を溢れさせていく大成功に説得力を与えてもイて、未来ちゃんを先頭に駆け抜けた物語が凄くハッピーな結末へとたどり着いてくれるのだという、幸せな確信を物語から得れた。
 俺はこの物語の中で必死に歌い踊り、頑張ってくれたみんなのことが好きになったので、そういう前向きな未来に焦点を合わせて終わってくれるのは、とても気分がいい。
 良いアニメだった。

 

 つーわけで楽曲盛りだくさん、パフォーマンス山盛りでガンガンに進めていく最終回である。
 展開の都合上ステージが描けなかったメンバーに、晴れの舞台を用意するという意味でもこのソングラッシュは嬉しいし、幕引きが贅沢な感じになったのも良かった。
 舞台裏で仲間たちを見守るアイドルたちの挟み方が良くて、今当にライブをやっている臨場感がじっくり積み上げられていって、機材トラブルからの奮起で盛り上がりが最高潮に達する流れが、素直に自分の中に入る。
 ミリアニの強み(だと僕が感じていた)たる大人数を上手く捌く手際も輝いていて、第8話を踏まえた上での亜利沙と桃子の絆とか、第5話のテントライブの手作り感からのスケールの飛躍、それでも残っている手作りの温もりなど、過去エピソードを生かした描写が多かった。
 そういう意味では、ASで一番本筋に食い込んでいた千早先輩が危機に震える後輩たちのため全力ダッシュして、こらえていた涙の受け皿になってやる所とか、無印アイマスの続きにある景色として完璧だったな……。
 あの状況で思わず駆け出す、歌を途絶えさせたくない熱い想いはあの頃のまんまで、でも自分の尖り方の使い方を覚えたからステージではなく舞台裏に走っていくってのが、今の如月千早なんだな、って感じ。

 定番っちゃ定番の機材トラブルによる窮地と奮起だけど、書き方見せ方が良くて良く刺さる作りになっているのも、最後までミリアニらしかった。
 ここまでふにゃふにゃポンコツ人間として書かれ続けた紬が、仲間のドピンチに覚醒を果たし、演出含めて圧巻のステージで魅せる流れは、最後の最後で彼女のドラマを完成させた感があった。
 レーザーとARでド派手に決めた紬とは少し手触りを変えて、落ち着いた演出に際立った歌唱力が伸びやかな歌織さんのステージも、アイドルの凄みを見せつける角度をしっかり変えて、それぞれの魅力を際立たせていく工夫があった。
 多彩な楽曲を1話にギュッと詰め込んで、メリハリ付けながら充実感と感慨を作っていく手際が良かったのも、ライブの臨場感を最終話に感じれた大きな理由だと思う。
 優れたステージ表現を多数投げつけつつ、遂にたどり着いた大きな舞台だからこそ顕になってくる人間性、それがここまで見てきた物語に確かに繋がっている手応えがみっしりと繋がっていて、すげーミリアニらしいフィナーレだなと感じた。
 僕は手際の良さと熱量の両立がこのアニメの武器だと感じていて、最後の最後でそれが一番鋭く、適切に活きていたのは凄いことだと思う。

 

 そんなライブの根っこにあるのはやっぱ人間の強い思いで、具体的な問題解決には触らないなりに、アイドルを一番近い場所で見守り支えてきたプロデューサーの絞り出すような叫びとか、何したら良いかわかんないけど駆けるしかない未来ちゃんの熱とか、最後の最後でこのお話が何を燃料に動いてきたのか、確認できる話運びだった。
 やっぱこの二人がすごく思いの強いキャラクターで、心の奥底から湧き上がるものを黙っていられない熱さを持ってくれていたから、このアニメは面白かったと思う。
 重たい挫折を背負う役を静香にまかせて、ペカーっと明るく進んできた未来ちゃんが涙を流すのは、彼女の瞳と同じ色のウルトラオレンジが観客席に溢れ、一緒にライブを作ってくれるという感動ゆえってのも、凄く未来ちゃんらしかった。
 そこに、第2話では飄々と隣に立ってた翼が10話分の蓄積を込めて、凄く近い距離で頭を寄せた時、彼女たちがこの物語でどれだけ近づいたのか、シアターを”家”とする仲間になったのか、強く感じられた。
 あの時は背中を押して貰う立場だった静香も、第10話で思いを解き放ってもらった恩を返すように颯爽と駆け抜けて、Team 8thお披露目の舞台へと進み出していく。
 この三人を大きな柱にして、メチャクチャ沢山のアイドルたちが乗っかって疾走る物語を締めくくるのに、相応しい晴れ舞台をしっかり整えてくれた。
 紬と歌織さんも直前に最高に”強い”ステージを見せていたことで、五人で演る意味が分厚くなっていたのは最高。

 僕はこのアニメでコンテンツに足の先っぽを入れただけの、お客さんでしかない。
 しかし劇場版より約十年、アプリにライブに長く続いてきミリオンにとって、”繋ぐ”という言葉は重たいのだろう……くらいの推測は出来る。
 ようやっと形になったこのアニメを最後の餞になどセず、もっと広く豊かな未来へと繋げていきたいという願いが、アイドルからアイドル、演者から観客へと様々な思いが繋がり、ライブを成り立たせていくこの最終回からは、にわかの勝手な思い込みながら感じられた。
 同時に1クールこのアニメを見た視聴者をないがしろにせず、自分たちが描いた物語の先は明るいのだと、大成功なデビューステージから続く未来の景色を、街を埋め尽くす”アイドル”の姿で示したのも、心地よい終わりだった。
 この後どんな風に、ミリオンのアニメが広がっていくのかは、正直分からないと思う。
 しかし全力で一話一話、自分たちの物語を積み上げたからこそ繋がる未来が確かにあるのだと、信じたからこそこの最終回となり、この物語になったのだと僕は思う。
 だからその真っ直ぐで前向きな、色んな人を”家”に引き込んで広がっていく物語がもっともっと新しい未来へと繋がっていってくれると、とても嬉しい。
 そういう美しい野心みたいなものを、爽やかにサブタイトルと最終話に刻んで終わっていくのは、なんだか凄く良いなぁと思うのだ。

 

 というわけで、”アイドルマスター ミリオンライブ!”、全12話が終わりました。
 大変良かったです。
 山盛りたくさんのキャラクター、積み上げられたドラマと執念がみっちり詰まったアニメだと思うのですが、アニメで『はじめまして』になる自分にも見やすく、好きになれる作りを貫いてくれて、とても面白かった。
 思い入れや文脈は時に鎖となって、重たく作品を縛ることがあると思うのですが、そういう素振りを作中全然見せずに、消化できるだけの豊かさでカメラが捉えているものの外側にある物語にウィンクして、いい塩梅で駆け抜けてくれたのは大変良かったです。
 色んなキャラがいるワイワイ感を大事にしつつ、未来ちゃんという前向きで牽引力の高い主人公をしっかり真ん中に据えて、主役として葛藤や成長を描くべきキャラを選りすぐって多彩なドラマを展開してくれました。
 人数多いと焦点がブレて話に芯がなくなりがちだけど、あえて軽重を付けつつ蔑ろにはしないバランス感覚で、絶妙に人数捌いていたのは凄いなぁと思う。
 飄々とした翼が自分だけの”本気”に出会う物語とか、ポンコツつむつむが土壇場での覚醒を果たす手応えとか、常時苦しそうな表情をしてた静香が顔を上げた時の嬉しさとか、群像それぞれの物語にしっかりした手応えがあったのは、本当に良かった。

 白組の3D表現もそんな物語をしっかり支え、ライブ表現は端正かつ豊かに、コミカルに笑わせる場面では自然に面白く、そして何より女の子たちをとにかく可愛く描こうと、全話揺るがぬ気合で頑張ってくれました。
 ホントみんな全話可愛かったの、マジ偉いと思う。
 アイドルちゃん達が多彩に眩しいからこそ、そんな彼女たちを最前線で信じ支えるPちゃんの頑張りも映えて、見せ場を奪うでも過剰に役立たずでもない、とてもいいバランスで存在感を出していた。
 自分は舞台に立たないからこそ、アイドルと向き合い力になる”プロデューサー”という存在の良さを、とてもいい感じに描ききってくれたのも良かったです。
 やっぱ自分的に、そこのバランス感覚が大事なんだなーと思い返した感じよ。

 というわけで、大変楽しい12話でした。
 10年分積み上がった多くのバトンを受け取り、新たな未来へと繋いでいく。
 そんな使命を力むことなくやり切って、1クールのアニメとして見ていて気持ちが良い作品になっていたのが、とても良かったです。
 ありがとう、面白かったです!