イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

君のことが大大大大大好きな100人の彼女:第12話『君のことが大大大大大好きな 100人の彼女(あと94人)』感想

 戦いすんで日が暮れて、発情女が風呂場に集う……。
 100カノアニメ最終回、女にだって性欲はあるんじゃい! という、恋太郎の裸身がセクシーなエピソードである。
 ヘテロブコメの基本形を徹底的にぶっ壊す、脱構築系ラブコメの趣あるこのお話、恋太郎が性欲の対象となってモゾモゾ言い寄られたり覗かれたり、男女逆転の構図になってるのはフェアでいいなと思う。
 まぁそもそも、同意のない性的関係強要は”やんな”って話ではあるんだが、そういうお行儀良いことぶっこいてたら六股真剣交際とかやってらんないわけで、あくまで明るく楽しいエロギャグとして、彼女たちの性欲は豪邸に燃えていく。
 ただでさえアンバランスな男女比を異常加速させて突っ走るこのお話、恋太郎が性的関係の上流を独占し、欲望を搾取する立場になってしまうとヤダ味が凄いわけで、ワイワイガヤガヤ賑やかに、真夜中の獲物になる展開は不思議に風通しが良い。

 ……と綺麗にまとめるには、羽々里の欲望がアクセルフカシ過ぎで怖くもあるが。
 何しろ成人済み経産婦、ガキンチョが足踏みするところを一足飛びに駆け抜けて突っ走る馬力が凄く、いつものノンストップギャグにもこれまで以上の勢いが乗っていた。
 実際一切の欲望をためらわず、桁違いの財力で理不尽ぶっ飛ばしていく羽々里の存在は、ギャグ漫画として勢い付ける仕事を十二分に果たしており、楠莉の便利ドラッグに並んで作劇に都合のいいキャラでもある。
 そこら辺の便利さを全く感じさせないほどに、欲望ダダ漏れで突っ走るヤバっぷりが大暴れ天童であり、つくづくキャラがつえーなと思い知らされる。
 ラスボス務めていた時の威厳はどこへやら、こっからは母性と欲望の狂ったキメラとして全力疾走していくわけだが、そのピンク色のエンジンがどんだけ馬力持ってて、引っ張られると気持ちいい速度出るか、分からせる前半戦であった。
 矢継ぎ早にボケと不条理が襲いかかり、足を止めてるヒマがないほどに加速し加熱していく100カノらしさが最後の最後、一番元気なのは良かったな。
 ”らしさ”を感じられる最終回でまとまるの、やっぱり好きだ。

 あと一人清純派領域にとどまった静が持ち前の小動物力を発揮し、大変可愛かったのは素晴らしかった。
 彼女仲間にも、犬にすら良いようにされる弱い動物っぷり、『いやそうはならねーだろ!』と思わずツッコむゴロゴロ流され感、どれも美味しい特別感があって良かった。
 羽々里編は半分以上唐音のためのエピソードなので、突っ込み担当としてもむっつり担当としても美味しいポジションにいたが、ドスケベピンクに口ではツッコミいれつつ、寝ぼけてベロは吸うわ足は絡めるわ、どんどん本格派バイセクシャルに仕上がってきてるのも良かったな。
 一対百の超非対称恋愛戦をグツグツ煮込んでいくと、あぶれた女と女でくっついて粘度アガっていくのは道理なので、”始まりの二人”が言い訳できないネチョネチョ感醸し出しているのは、話が停滞しないためには大事なことよ……。
 いやまぁ、そういう言い訳乗っけなくてもナチュラルにお互い好きなんだと思うけど。

 

 

 ドッタンバッタン大騒ぎの発情祭を終えて、Bパートは羽々里との真っ向ロマンスに移行。
 ビビーンから真剣ロマンティックをやって、そっからドタバタギャグに新彼女がドウ挟まるのかを描いてきた今までの定番を、順番変えてお出しする構成といえる。
 いやまぁ冷静になってみれば未亡人寝取り親子丼略奪愛なわけで、後ろめたさを整地しておかないとこっから先バカやれないでしょ! つう話でもある。
 『本物の大好きは、何個あっても良い』が、亡き夫を裏切って若いツバメにデロデロになる免罪符として選ばれるわけだが、複数彼女と本気でガチるこの作品において、この魔法は羽々里だけに乗っかるわけではない。
 あらゆる瞬間で真剣で誠実であり続ける、奇っ怪な恋の化け物となっていく恋太郎が本気でこのお題目を信じ体現するから、このイカレラブコメはギリギリ成り立っているのであって、作品を支える上でまぁまぁ大事な寝言なのだ。
 言葉だけだとどっからどう聞いてもイカれているが、ガチで本気の恋を百人分用意してくる主人公とお話を叩きつけられると、なんか異様な迫力が生まれて飲み込まれていってしまうのが、なんとも不思議なところだ。
 散々バカやりつつも、ロマンティックは本気でやり切るアニメの作風を最後まで貫いて、羽々里とのキスシーンが大変美麗だったのは素晴らしい。

 奪われる……あるいは託す側の元旦那との関係も、パワー重視のゴリ押し感で一気に整地し、後腐れない感じに光の柱がおっ立った。
 もう”整地”なんておとなしい言葉では収まんない、ロードローラーで残骸ごと均すような大暴れなんだが、面白いからどうにでもなってしまうのは強いところだ。
 思い返してみると、ファーストキスも済ませないまま人工授精で処女懐胎してんだから、羽々里もなかなかイカれたマリア様ではあるんだが、今更この作品に勝機を問うてもしょうがない。
 理事長の座を札束でカッパぎ、屋上のアジールへの参入資格を得た羽々里を仲間に加え、物語はまだまだ加速していく。
 最高OPをバックにかけていく恋太郎の背後に、意味深に切り抜かえるまだ見ぬライバルたちの活躍は、二期で存分に堪能しよう!
 いや実際、大変いいアニメ化だったので二期心から楽しみです。

 

 というわけで、100カノアニメ”一期”無事完結致しました。
 大変良かったです。
 ヘテロブコメの都合の悪いところ、ヤダ味あふれるところに全身全霊本気でぶつかった結果、どう考えてもイカレきった何かを大真面目でやる異形の漫画となった原作。
これに、アニメも本気で向き合った、狂気のぶつかり稽古でした。
 ギャグもロマンスも全速力、やりすぎなくらいやりすぎるフルスイングを12話貫き通してくれて、ハイクオリティだからこそ加速する狂気を笑い飛ばせない熱がありました。
 初期設定から実際の展開、味付け濃すぎなキャラとぶっ飛んだギャグ……。
 何もかもがイカレてる過積載を、手抜き無しで大暴れしてくれたのは、大変ありがたかった。
 狂いっぷりが目立つ作風なんですが、女の子たちの可愛いところも、もう屋上にしか居場所がないほど捻じくれた連中の最後の日常っぷりも、しっかり笑わずやり切っていたのが、誠実で良かったと思います。

 あらゆるブレーキを外して大暴走しているように見えて、精妙な計算でギリギリ成り立っている理性的な部分と、考えるアタマ残ってるなら立ち止まっちゃうところで翔ぶ狂いっぷり。
 原作の好きな部分をアニメも引き継ぐように、クレバー&クレイジー&キュートに1クール駆け抜けてくれました。
 狂気、トキメキ、笑いにダイナシ……あらゆる要素を成分無調整でぶっ込んで、毒ガスもくもく出つつも独特の味が出ている闇鍋感が好きなので、色んな場面で色んなネタが楽しい、賑やかなアニメだったのは良かったと思います。
 この訳わかんねぇ感じを勢い殺すことなく、楽しいものとして届けるのは相当大変だと思いますが、めっちゃ頑張って作品の善さフル回転にしてくれました。

 とても面白かったです、ありがとう。
 新たな彼女たちが襲い来るセカンドシーズンも、心から楽しみに待ってます!!