イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

異修羅:第6話『陣営集結』感想

 鮮血燃え盛る全面戦争の寸前、思惑と謀略が夜の街に瞬く。
 5話かけて紹介されてきた修羅達の激突が、思いの外静かな諜報戦として幕を開けることになった、異修羅アニメ第5話である。

 いうても戦争行為が生み出す莫大な損失を考えれば、軍どうしの激突前に政治的目的を達成したいと考えるのが普通だし、戦争抜きでもタレンの命を獲って美味しいとこ取り出来る余地が、黄都にはある。
 勇者決定トーナメントへのエントリー権利を得るべく、ソウジロウはヒドウの提案を飲んで黄都側で暴れる理由があり、彼をここまで引っ張ってきたユノには強者への恨みを密かに抱えて、故郷の復習を果さんとする意志がある。
 ヒドウがソウジロウという大駒を盤面に張ったことが、発火寸前の戦況にどう効いてくるかは今後の注目点だが、どーも暗殺一本で終わる展開にはならない匂いが漂う。
 メタ的に、さんざ時間かけて描いた修羅達が映えるのは戦場ってキャンバスだけだろうし、こっちが想定していたよりダカイが諜報員として優秀だったのもある。
 ここで黄都サイドに良いようにされるなら緊張感も弱まっていたが、点字の日記を悪用した情報漏洩のからくりを抑え、ラナの身柄もエレアに先んじて抑える冴えを見せてくれたおかげで、なかなか先が読めなくなった。
 謀略と暗殺が決定だにならない程に、新公国側の防諜体制が優秀だったからこそ、沢山人が死ぬ戦争での決着以外の道が閉ざされるのは、タレンが民を思い慕われる本物の英雄だったからこそ戦争が始まるのと、どっか似通った皮肉だ。

 

 自分以外に”世界詞”という大駒を知り得る唯一の存在に、エレアがノータイムで『消して黙らせる』という選択をして自らリチアに乗り込んでくるあたり、つくづくロクでもない世界ではあるが。
 人間の街にツンツンしながらもワクワクな、キアのごくごく普通の少女っぷりを見せられると、落差でクラクラもしてくる。
 ここら辺ちょっと思い違いをしていて、エレア自身が情報を閉じた結果、ラナ自身も世界詞の存在をでまかせと信じている状態なのね。
 情報のバルブはあくまでエレアが握っていて、ラナはあくまで雇われ諜報員、使えるけど使い捨ての駒……と。
 その上で個人としては、ラナが戦争を嫌いリチアの現状を素直に認めているのが、なかなかやるせなかった。
 魔王が死んでも……死んだからこそ生まれる、人と人が相喰む修羅界。
 その濁流に押し流されるまま、陰謀というパズルの1ピースになってきた女の未来は、まさに風前の灯である。

 エレアとしては新公国との戦争は本命ではなく、キアを擁立してのトーナメント優勝が狙いなのだろう。
 そのためには自分が超インチキな大駒握っているという情報を伏せ、直接の口封じをしてでもアドバンテージを握りたかったところだが、彼女の想定よりも早く状況が発火している感じか。
 異世界から迷い込んだ、チート盗賊の情報収集能力、状況制圧力が高すぎたって感じもある。
 このまんま雇い主ゲロってエレア大ピンチか、キアを活用して目的達成大勝利か。
 なかなか読みきれないが、お船に興味津々な純朴キアたんを巧いことだまくらかして、都合のいいぶっ殺し装置に変えるのは結構難しそうだなぁ、という印象。
 そこを舌先三寸で動かしてこその”赤い紙箋”ではあろうが、さてはてどうなることか……。

 

 あとレグネジィくんの死相が、更に濃くなっててビビった。
 カーテちゃんが彼を天使として認識してて、その嘘を悟られないために一度も触れさせないの、ロクでもなさを煮詰めたこの世界ではあまりに哀しい夢で、ぜってぇズタボロにされる予感しかしない。
 タレンも『ワイバーンを都合良く使うためだもんねー! 義理の娘に情なんてないもんねー!』って言っとるけども、街の様子からして仁を知る真人間であるのは間違いがなく、だからこそ未来が暗そう。
 ラナがシャルクやヒグアレを新公国に紹介した理由が、『腕利きがいたほうが戦火がよく燃えるから』だったり、人間らしい情とか祈りが混ざるほどに酷いこと起きる話なのは間違いなさそうなので、まーボーボー燃えるだろう。
 はー……やりきれんね。

 ここら辺の情けから遠い場所に身を置いて、仕事に徹して結果を出してるダカイのクールさが、なかなかに眩しいけども。
 たった四年で壊滅した群れを一大空軍に育てたレグネジィくんのからくりにも、気づいてる気配あるが……チート比べにおいて、タネが割れるのは死と同義語だからなぁ……。
 割れてもなお問答無用で押し切れるだけのインチキパワーってのもあるが、ダカイとの速さ比べにビビってる様子を見ると、そういうキャラでもなさそうだし、そういう意味でも死相が濃い。
 こんなにレグネジィくんの死にそうオーラを気にかけているのは、ロクデナシばかりの世界で彼が身にまとう嘘と強がりが凄く綺麗で、醜き翼竜という外見とのギャップもあって、僕がメッチャ気に入ってるからだろう。
 死んでほしくないので、『死にそ~~~~』と事前に言っておくことで、悲劇へのワクチン打っておくオタクの姑息……つう感じね。

 

 というわけで、開戦前夜の調略戦回でした。
 『結局戦争にはなるんだが、関わった奴らみんな損するその現象を避けるために、色々手は尽くしたんだぞ!』つう描写を頑張ってくれると、修羅たちを間抜けに思わずすむのでありがたいです。
 チート野郎大暴れのパワー勝負に見えて、国家制度と外交、その延長線上にある諜報と軍事にフォーカス当てた、地道で結構難しい話だよなコレ……。
 弱いからこそ群れる人間という動物が、手に入れた最強の組織力を飛び超えて、一個人が影響力を行使しうるチートの凄みを際立たせる意味でも、ここら辺キッチリやるのは大事なのだろう。

 ラナの身柄を押さえられ、エレア”先生”の未来は激ヤバ危機一髪。
 新興国の親玉ぶっ殺して戦争回避! どころじゃない情勢は、どう転がってどう収まるのか。
 まだ顔を見せてない修羅の動き含め、いい感じに話が転がってきた気配があります。
 さー、次回サブタイトルは『交戦開始』。
 待ってましたの血みどろが、遂に幕を開けるぞぉッ!!