イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

外科医エリーゼ:第5話『試練』感想

 往くぞ人生三週目!
 破竹の勢いでスーパードクター街道をひた走る、控えめお姫様の医術無双、ラブコメ色の濃い第5話である。

 圧倒的な医術力で偉いお医者さんがたをちょろっと転がし、医師試験への推薦を取り付けたエリーゼ
 『ちょっと余裕も出来ちゃったし、恋愛イベントも進めちゃお!』とばかりに、姿どころか声まで変わるロイヤル変装術で他人になりすました、前世より慕うダーリンとなかなかいい感じになっていた。
 エリーゼは転生者として、リンデン様は青年貴族ロンとして、それぞれ秘密を抱えたまま関係を深くしていくという、ちょっとひねった構造でロマンスが煮込まれていくんだねぇ……。
 リンデン様はエリーゼの正体を知っているけど、エリーゼはロンの正体を知らない。
 エリーゼは自分が転生者であることを知っているけど、リンデン様は知らない。
 ここらへんの認識ギャップが、今後のドラマにどう生きてくるか楽しみになる回だった。

 

 人生三週目のエリーゼにとって、リンデン様との恋は既に終わった思い出話……であると同時に、前世の思い残しでもある。
 ”一回目”の虚栄と断絶を悔いて医術習得に邁進し、己の命を賭してまで人命救助に駆け抜けた”二回目”で、人間的・職業的な後悔は結構乗り越えているエリーゼだが、結婚後の家庭生活まで含めた恋愛は未だ未解決のプライベート。
 前世の夫に操を立てて、”二回目”では個人としての幸せ置き去りに仕事に邁進してた感じもあるので、”三回目”である今回は残念なく真に慕う相手と結ばれ、公私共に充実した人生を送るルートを目指していくのだろう。
 エリーゼのキャラ性、彼女を主人公にした作品全体のムードとしては、私事を置き去りに公益に奉仕する透明感が大事だと思うので、『うぉぉおリンデンLOVE!』と我欲に暴走されると、多分話が濁る。
 なので魔法の仮面を被ったリンデン様が、勝手に婚約者の素を覗き込んで惚れ込んでいくっつう構図になるのだな。

 『心電図ある世界の最高医療機関で診てもらってたのに、触診でいちいち初心な反応すんのかよ!?』とツッコんでもしまったが、それはまー気になる相手ゆえのピュアハート……ってことにしておこう。
 長患いの原因を甲状腺とずばり言い当て、医師と患者として触れ合う中で見えてくる、転生エリーゼの無垢なる性根に、リンデン様もDOKI♡DOKIだ!
 彼も結構なクソ真面目なので、触れ合い方がいちいちぎこちなく、しかし生真面目ゆえの珍妙コンタクトが可愛らしくもあり、応援したくなる恋路であった。
 『オッスオラ国王の懐刀! 国の為なら何でもするぜ!』みてーな顔した偽バンコランが、パパ王のバースデーに爆弾投げつける気満々だが、試練あらばこそ恋は深まる。
 片や前世の因縁に縛られ、片や素直になれない頑なさを抱えた二人の距離が縮まる、いい感じの波乱を持ってきて欲しいもんだ。

 

 それと並走する形で、医師試験への道筋も順調に舗装されていった。
 受験者の目の前でインサイダー情報垂れ流す、国家医療上層部の体たらくに目を覆ったりもしたが、まぁ色々ズブズブなのは初期設定からしてそうなのだッ!
 顔つき合わせることなくエリーゼへの熱量を上げまくっていた、ベン子爵がむっちゃ凄い勢いで”風”吹かせてくれたので、院長先生も支援側に回り無事推薦ゲット!
 ここら辺のノープロブレムっぷりは、恋愛関係の山あり谷あり感と面白い対比で、『医療関係でストレス与えるつもりは、あんまりないぞ!』というメッセージを感じるネ。

 試験自体のハードルは上がっているが、ほぼ一人での脾臓摘出以上に難易度高いネタが降ってくるのか、スーパー医術無双見た後だと疑問ではある。
 ここで『なーるほどそれは難しいわ! ナメてましたすんません!』となる、気持ちのいい裏切りを偽バンコランが差し出してくれるとなかなか気持ちが良いのだが……どうなるかなぁ。
 現状感じ取ってるムードとしては、医術関係で山あり谷ありガッツストーリーというよりは、透明感高い主役がスラッと凄いことして周りが勝手に褒めるのを楽しむ感じなので、ここもすらっと越えていきそうな予感はある。
 あるいは医療としての難しさではなく、政治関係のやらしい工作でもって難易度を上げてくるか。
 エリーゼの願いとは裏腹に、リンデン様と婚約させてその才能を王室に取り込もうとしてる思惑と合わせて、含み笑いの向こう側が楽しみだ。

 王様もリンデン様も医者たちもみーんな良い人なので、ベントくんが『意地悪な継母』役を全部担当しているの、大変だなぁって感じ。
 そんな彼も個人的な感情ではなく、あくまで王室安泰の大義のために色々策をめぐらしているので、分かり易いヤなやつを作らない作風は徹底されてんなー。
 『転生者ってさぁ……転生先の魂を消失させる、生まれついての殺人者じゃん!』っていう僕のモヤモヤを、『現代社会での医者修業を経て、自分自身に転生する』というスクリューで回避してる所とかもね。
 いやまぁ、”一回目”のわがままお姫様と”三回目”の医療聖女の同一性が、一体どうなってんのかって話は結構難しいとは思うが。


 というわけで、試験前夜のラブコメディ回でした。
 転生者と変身王子、お互いの秘密が結構複雑に絡み合って展開する恋模様は、なかなか面白い味わいで応援したくなった。
 分かりやすく序盤の山場として設計されている、医師試験をどんだけ高いハードルとして設計し、それを飛び越えていくエリーゼの様子を活写できるかは大事なところだと思うので、良い前フリしてくれて期待も高まります。
 次回も楽しみッ!